超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER- 作:ブリガンディ
あの後プラネテューヌの教会の一室にラグナは運ばれ、ベッドで寝かされている。
各国の女神たちと教祖たちは彼の目覚めを待ちながら、彼の出自の確認と彼の処遇を話していた。
ラグナは黒い服装に赤いジャケットを着ていて、白い髪をしている。
右目が閉じられていたため、左目しか解らないが左目はエメラルドグリーンだった。
片刃の大剣があると寝かせている内に体が痛むだろうから、外してベッドの近くに立て掛けた。
「うーん・・・中々起きないなぁ・・・あれだけボロボロだから仕方ないけど・・・」
ジャージのようなワンピースを着ている紫髪の明るい少女は寝ているラグナを見ながら呟く。
「ねえネプテューヌ。その人は何か言ってた?」
「自分の名前しか言って無いよ。『俺はラグナだ』って言ってそのまま気を失ったよ」
黒髪をツインテールにした少女は呟いた少女、ネプテューヌに聞くが、大したことは聞けなかったようだ。
「右目が閉じてたままだったのが気がかりね・・・。呪いとかにかかってなければいいけど」
「それも気がかりですけど・・・それ以上にこの殿方がどこから来たのかが気になりますわ」
茶髪の帽子を被っているあどけなさを残している少女はラグナの右目を気にし、金髪を綺麗におろしている美女は彼の出身を気にした。
ラグナの詳細を各国の教祖たちが調べているが、ラグナについての詳細は何一つ判明していなかった。
「まあ、彼が起きたらその時聞こうよ。今はネプギアが彼を見てるから、何かあったら教えてくれるはずだよ」
自身の妹、ネプギアを信じたネプテューヌのその前向きな言葉に、周囲にいた皆は頷いた。
* * *
「・・・兄さま」
「ん?サヤじゃねえか。どうした?具合は良さそうだし、ジンにいじめられたってわけでもなさそうだな・・・」
俺が大きな木の下で一人寝転がっていたところを、実の妹であるサヤが顔を覗かせた。
普段は病弱なサヤだが、今回は体の具合は良く、俺の弟であり、サヤの兄である間っ子のジンに悪口などを言われた訳でも無いようであり、普段あまり見られない笑顔のサヤを見ることができた。
「兄さま、私待ってるよ。いつか兄さまが私たちのところに帰ってくるの・・・」
「サヤ・・・」
サヤが立ち上がるのにつられて、俺も体を起こす。どうやら暫しのお別れ挨拶らしい。
「じゃあね。兄さま。また会おうね」
そう言ってサヤは俺たちの育ての親であるシスターと、ジンが待つ教会に帰っていく。
俺はそれを見送り、後ろを振り返る。その先には、いつもとは違う景色、ゲイムギョウ界が見えていた。
* * *
「うっ・・・」
溜まっていた疲労が痛みに変わってしまったのか、俺は一瞬だけうめき声に近い
声を上げて目を覚ます。やはり左目しか開かなかった。
俺の目の前には紫色の髪をおろし、十字型の髪飾りを一つ付けている、セーラー服のようなワンピースを着ている少女がいた。
「あっ。気が付きましたね。どこか痛んだりするところはありますか?」
俺はその少女を自分の妹と重ねてしまい・・・。
「・・・サヤ?」
「・・・えっ?」
思わずここにはいない自分の妹の名をを言ってしまった。
聞いたことのない名前を聞いて、少女は驚いてしまう。
「あっ、いや、悪ぃな。ビックリさせちまって・・・ただ・・・お前が・・・」
「私が・・・どうかしましたか?」
俺は自分でもどうしてこの少女をサヤだと言ったのかが分からず焦り、右上半身が動かない体をどうにか起こして驚かせたことを軽く謝る。
そして、別に隠す事でもなさそうだと感じた俺は言葉を続けることにした。
「俺の妹に・・・似ている気がしたんだ・・・」
俺がどうしてこの少女にサヤの面影を感じたのかはわからないが、もし、サヤが病弱でもなく、普通の暮らしができたならこんな感じに育ったのではないかと考えちまったみてえだな。
「私が・・・ですか?」
「すまねえな・・・ホントに唐突で」
やはり突然過ぎたのがいけなかったのだろうか。少女は困惑している。
少女の困惑のしようを見て、俺は申し訳ない気持ちになる。
「(やべえ・・・なんか妙に気まずい。何か話題を変えよう。何がいいんだ?)」
自分の出自?それともこの世界のこと?凄い頻度ですれ違いが起きそうだと感じて俺は考え込む。
「あっ、起きたら知らせるの忘れてた。すみません。ちょっとみんなを呼んできますね」
「あ、ああ・・・」
そう言って少女は部屋を後にした。部屋には俺一人になる。
「(みんなって言うなら2、3人・・・多くて4、5人くらいか?)」
それなら名前も覚えきれるし、纏めて説明もできるしなんとかなるだろ。俺は気楽に構えることにした。
「入りますよ。大丈夫ですか?」
「ああ。大丈夫だ」
ノックの後に、さっきの少女の声が聞こえる。俺は入るように促す。
「じゃあ、入ります」
ドアが開けられる音がする。さて・・・多くて5、6人程度なら何とかなるだろ。
どこから話すか?それともどこから聞くか・・・そんなふうに考える。
だが・・・俺の予測は甘かった。
「・・・・・・」
最初に少女と4人入ってきたが、その後ろからぞろぞろと入ってきた。
年端も行かない幼い双子の少女たちがいれば、育ちのいいとこであろう女性もいれば、しまいには本の上に乗った少女までいた。様々な人が全員で14人も入ってきたのだ。
しかも男は一人もいない。何かの拷問か?俺は一瞬錯覚した。つか、本に乗ってるってどういうことだよ・・・。
「・・・もう増えないよな?」
「はい。これで全員ですよ。」
俺は不安になって少女に確認するが、少女はもういないと答えたのに対して少し安堵する。
「えっと、ラグナさんでしたね?初めまして。私はこのプラネテューヌの教祖、イストワールと言います。あなたには色々とお伺いしたいところがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「まあ、俺も話さなきゃなんねえって思ってたからそこは平気だ。その前に礼を言いたい相手がいるんだが・・・パープルハートって人・・・どこにいるか知らないか?」
本に乗っている少女、イストワールが俺に問いかける。答えること自体に抵抗はなかった。
つか。イカルガでカグラにとっ捕まえられる前からは考えられないくらいにあっさり話す気になってんだな俺。我ながらにビックリだ。
「あぁ、そういうことでしたか。ネプテューヌさん。ラグナさんはお礼を言いたい見たいですよ」
イストワールはそう言って後ろを振り返り、紫色の髪をした。少女・・・さっき俺が起きた時にいた少女じゃなく、ショートヘアーに少女と同じ髪飾りを二つ付けている少女に言う。
「なぁイストワール・・・。疑ってる訳じゃあ無いんだが、どういうことだ?」
どう考えてもパープルハートに見えないんだが・・・。でもイストワールは明らかにネプテューヌのことを見て言ってるよな・・・。俺は困惑する。
「ああ・・・そういうことか。ちょっと待っててね」
俺の問いに対して、イストワールの代わりにネプテューヌが答え、ネプテューヌの体が光に包まれる。
そして、その光が消えると、目の前にはさっきと服装こそ違い、黒いレオタードになってはいるものの、パープルハートその人がいた。
「!?あんた、『ムラクモ』か!?いや、そんなはずはないよな・・・」
光に包まれ、その後は戦闘に適した恰好や装備になる点で俺はムラクモかと疑ったが、この世界に魔素がないことを思い出して、その可能性を否定した。
ムラクモ含む『
ムラクモは全身凶器かと思うくらいに剣の数が多いのに対して、パープルハートの姿は全くもって武器が見当たらない。あるとしても飛行能力を与える役割がありそうなウイングくらいだ。
「あなたのいうムラクモがどんなものかはわからないけど、これが『女神化』した私の姿よ。改めて、私はプラネテューヌの女神、パープルハート。またの名をネプテューヌよ。身体の方は大丈夫かしら?」
「女神って言うのか・・・新しいことだらけで覚えきれるか自信無くして来るなぁ・・・。あん時はありがとうな。ネプテューヌ。まだ少し痛むが、問題ない」
良かった。ようやく恩人に礼を言えた。他にも色々とやることはあるんだろうが、最低限のやることを果たせたので一安心する。
「そう。それなら良かったわ。ところで、ここにはどんな用事で来たのかしら?」
「ああ。そのことなんだが・・・」
「ちょっと待って・・・あなた今、女神のことを知らないって言ったわよね?ならあなた、どこから来たの?」
「・・・まあそうなるか・・・」
俺は働ける場所を探しに来たと言うつもり満々だったが、黒髪のツインテールをした少女に待ったを掛けられた。さて、こうなったら俺のことを全部話さなきゃならんのだが・・・。
どれくらいで終わるだろ?正直幼い双子がついていけるかが一番不安だ。
「俺のことを話すととんでもなく長くなるかもしれないが・・・それでも大丈夫か?」
俺は目の前にいる皆に確認をとる。皆は黙って頷いた。双子すら頷いていた。
「わかった。それなら話そう。まず最初に、俺はこの世界の人じゃないんだ・・・」
それから俺は自分の出自。シスターたちと過ごした小さいけど幸だった時間。
『あの日』の惨劇で育ての親であるシスターが死に、妹のサヤが連れ去られ、自分は右腕を失ったこと。
自身が『
サヤが連れ去られた理由を知り、『
素体の一人である自分の妹によく似た少女に窮地を救われたこと。
仇敵を追いかけたが、恩人の少女を正気に戻すために一度とどめを先送りして、その恩人を助けたことで今度は左腕を失ったこと。(左腕は義手をもらった)
その後多くの『戦う理由を持った人たち』と出会い、『奪う力』だった蒼の魔導書を一時的に使うことをやめたが、「何のために」、「誰のために」振るうかを考えた結果、『大切なものを護るため』に振るうように決めたこと。
全ての『可能性』が閉ざされてしまった世界の中で、皆に可能性を与えるために自ら『悪』となり、その可能性を世界に与えることを目的にして奔走したこと。
そして、最後は『蒼炎の書』の力で仇敵を打ち、サヤを助け出し、自分含む世界全て『悪夢』を消し去って、皆に可能性ある世界を与えて自分も消えていったこと全てを話した。
「んで、その後はなんでか知らねえがこの世界にいたから、近くに町らしいのが見えたら
このプラネテューヌだったんだ。後はみんなが知ってる通りだ・・・」
俺が一通り話し終えると、色々な反応を示した。
泣いている人、開いた口が塞がらない人、驚きのあまり体が固まってる人などだ。
「お、おい・・・どうした?」
「す、すみません・・・余りにもスケールが大きすぎたのでつい・・・。」
俺は焦って聞くと、立ち直りの早かったイストワールが反応してくれた。うーん・・・確かに他のやつらの方が圧倒的に普通な生活してたろうな。
俺なんて『あの日』以後は修行とか、反逆の旅とか、まともな生活してたら絶対にしない
ことばっかりだったからなあ・・・。我ながら自分の人生に心の中で驚いた。
「さて、気を取り直しまして。そう言えば右目の方は何かありましたか?」
「ああ・・・この世界、俺の蒼炎の書を使うために必要な魔素がないみたいでな。それが原因で右上半身は動かねえんだ」
魔素がないのは割と致命的だ。蒼炎の書は使えない、右上半身が動かねえから戦闘どころか日常生活にまで支障をきたしやがる。
「そうでしたか。治すためには研究が必要みたいですね・・・。
そのことは今は置いておきましょう。それから、ラグナさんはこれからどうしますか?」
「ん?ああ。そういや全く決めてなかったな・・・」
ここに詳しい人を探すことしか頭になかったので無計画だった。まあ働ける場所を探すつもりではいるが、泊まる場所がねえ。
今までとんでもない生活が続いてたから真っ当な生活をしたいもんだ。
「とりあえず働ける場所がありゃいいんだが・・・何かあるか?・・・ってん?待てよ・・・」
「どうかしましたか?」
こう聞いてみたところで一つ大事なことを思い出した。それは・・・
「俺・・・この世界の戸籍とかが一切ない」
俺にこの世界の戸籍とかがないことだ。学歴なし。職歴なし。住所不明。
経歴話すためとは言え、自身が犯罪やってましたと普通に暴露している始末。
オイオイ、自分から言っておいてこれって大分ひでえぞ!つか、真っ先に牢獄いきじゃね!?
・・・じゃあな。俺の真っ当な生活。せっかく自分を改めようと思ったのにこれだ。
「あっ。そのことは私も完全に失念してました。でしたら、戸籍のほうはこちらで用意しましょう。他にも、ギルドという誰でもお仕事ができるところがありますので、そちらでお仕事をするのも良いかと」
「そんなところがあるのか・・・確かにそれなら俺でもできそうだな」
戸籍を用意してくれるのはありがたいし、働ける場所もある意味確保できた。
イストワールのことだから俺の今までの経歴は当たり障りのないように変わるはずだ。
後は泊まる場所さえ確保すればいいんだが・・・。
「ところで、ラグナはどこか泊まる場所はあるの?」
「泊まる場所は・・・ねえな」
どうやらいつの間にかみんなが立ち直ってたようで、ネプテューヌが俺に訊いてきた。
この世界に来たばっかりだから、当たり前の如く俺は住まいを持たない。
「どうすっかなぁ・・・」
「なら、ラステイションに来るかい?今なら無条件で戦闘要員として雇う枠を開けてあげるよ。ついでに左腕だけでも戦えるようにする時間も作ろう」
俺が悩んでいると、銀髪のショートヘアーをした少女がそういう。
まあ俺の経歴を考えたらその役割は間違ってない。だが・・・蒼炎の書が使えねえ今はやめて置きたいな・・・。なんせ力の大半が封じられてるせいで、実質剣の扱いに長けた隻眼・隻腕の一般人になる。この状態じゃ一般人って言っていいかわかんねえがな。
左腕だけで戦えるように配慮する気持ちはありがたいが。
「ルウィーはどうでしょうか。書物が多いので、この世界のことも学べますよ」
水色の髪をおろし、眼鏡をかけた女性が提案してくる。
まともに本を読んだことねえ俺がいきなりそんな歴史書とか読めるか自身ねえな・・・。
でもゆっくり調べられるなら、その辺はなんとかなるだろ。流石に字が読めないって訳
じゃないしな。
「それならリーンボックスはどうかしら?娯楽の方も充分に揃ってますわよ?」
緑色の髪に派手な格好をした美女が負けじと提案する・・・。
確かに娯楽はまともに触れてないから悪くないな。ああ、マジで悩ましいものばっかりじゃねえか!
「悩むなあ・・・」
悩ましい。本当に悩ましい。一つは俺が現状のまま最大限動けるように配慮してくれる。
一つは資料の充実。最後の一つは俺の生活からして圧倒的に足りなかった時間の提供だ。
「あの・・・私からいいですか?」
俺が余りにも悩んでいたからか俺が起きた時一緒に部屋にいたあの少女が手を上げる。
俺含め皆がその少女のほうを振り向く。
「今日はもう遅いですし、暫くはここに泊まってゆっくり考えるっていうのはどうでしょう?」
「もうそんな時間なのか?」
俺は少女のセリフを聞いて窓を見る。外はすっかり電気の明りが多く見えていた。
それと同時に、俺の腹の虫が盛大に鳴る。
「あっ・・・そういやさっきまでなんも食って無かったの忘れてた・・・」
「でしたら、ラグナさんが皆さんのことを知ることも兼ねて、ここにいる全員でお食事を
取りましょう」
イストワールのその提案に、皆が満足そうに頷く。
俺はこの後全員と飯を食って、互いに改めて自己紹介をした。ちなみにさっきの少女をサヤとダブった理由を追及された時はどう返せばいいか分からず精神的に死にかけた。
さて、明日からどうするかな?俺は結構いい場所にこれたのかも知れない。俺は久しぶりにまだ見ぬ明日を楽しみにしていた。
相変わらずブレイブルーの説明はこれでいいのか悩みますね・・・。
ホントは文章でちゃんと全キャラやりたかったんですけど、一度出来上がった文章に突っ込む間がなかったんですよ・・・(泣)
他の方々の文章って平均何文字くらいなんだろうか?前回3500くらいだったのが今回一気に6500くらいまで増えたんですよね・・・(笑)
追記:改行チェックは投稿前にちゃんとやってるんですけど、また細かいとこでミスってましたorz・・・