超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER- 作:ブリガンディ
今日がノエルの誕生日なので、日を合わせたと考えればまあ・・・。って感じなのでしょうか?
今回は予告通りマジェコンヌ達の回ですが、最初に少しだけラグナが出ます。
ハクメンとの対決の騒動から実に一週間。一応は普段通りの生活に戻れていた。
今現在、俺はパソコンを使って最近のニュースを見ているのだが、ハクメンが一太刀でフェンリルを切り捨てる姿が目撃されている記事や、ネプテューヌが最新ゲーム買って喜んでいる記事などがあった。
前者はハクメンの実力に驚嘆しているようで、見出しに『ルウィーの白き守護神、フェンリルを一太刀で断つ』と書かれていた。
ブランはこのことについて「ハクメンにシェアを盗られそうで不安だ」と言ってはいたものの、妹たちに時間を割けるようになったのはありがたいとも言っていた。
・・・ネプテューヌと違ってそれなりにしっかりと仕事をしてるから巻き返しが大変そうである。一応、ハクメンも「私ではなく女神に礼を言うと良い」とは言ってるらしい。
一方、後者についてはネプテューヌがカメラを見るや、サラッと買ったゲームの宣伝をしていた。女神に宣伝されるって結構すげえ事だな・・・俺はそんな風に思っていた。
ちなみに、こっちの記事は『ネプテューヌ様、最新ゲームを買うためゲーム店へ突撃』であった。
「(おいおい・・・女神のプライベートってこんなあっさりと公開されていいのか?)」
俺は後者の記事を見ながら苦笑する。
女神のプライベートが公開される時というのは、本人がどうしてもという時だったり、これなら別段問題ないと言った時に時々出てくるくらいなのだが、ネプテューヌは特別多かった。
しかも本人が気にしてないため、その記事の残る期間が他国より長かったりするのはザラだった。・・・それでいいのかプラネテューヌ・・・?こんな感じではあるが、常に一定数の信仰者が確保できてる辺り、一部の人たちには根強い人気があるみてえだ。それが分かって少しホッとする。
そして、その後は天気予報と何か面白そうな番組があるかをチェックして、ニュースを見るのを終えてパソコンの電源を切った。この後はアイエフに勧められて以来、度々行っているバイクの教習所に授業を受けに出かけるつもりだ。大分ハイペースでやっていたので、もう少しで終わる。・・・試験に落ちなければだが。
俺がコートに袖を通したところで、右腕から蒼い炎みたいなのが出てきた。
「・・・またこれか・・・」
これが出てきたときは、右腕に重みを感じるだけで、誰かがいるならそっちに向けて引っ張るような感覚で示してくれる。
セリカが治療しても、結局自然経過で治る以上、治療は効果がないと見ていいだろう。
そして、いつものように蒼い炎のようなものは消える。その後は何かしらの影響が暫くの間あるのだが、今回は不思議なことに何も無かった。
「(何も無い・・・?妙だな・・・後で近くを回ってみるか・・・)」
俺は普段と違うことで首を傾げたが、直ぐに割り切って教習所に移動を始めることにした。
しかし、その後誰かを見つけたりすることはできなかった・・・。
* * *
世界を渡った先にて、一人の男が立っていた。薄紫のマントと、目元を覆う金色の仮面が特徴的な男だった。
男はまず初めに周りを確認した。自分の居る場所がどこかの街で、その裏通りだということが分かった。
ちなみに、その街は工業的な雰囲気を醸し出していた。
「・・・『境界』を渡る際に興味を惹かれて此処へと来たが・・・成程。此れは面白い場所へ来たな・・・」
男は自分の行った行動によってたどり着いた場所を見てほくそ笑む。男から発せられる声は低く、落ち着きのあるものだった。
この男は、自身の目に映るあらゆるものを『情報』として捉えるようになっており、来たばかりであるこの世界にある『情報』を僅かに知る。
―ゲイムギョウ界。そのゲイムギョウ界で各国を治める女神達。何故か此の世界に居る『蒼の男』。そして、その『蒼の男』を導いたであろう存在・・・。
それらの情報は、男の中にある尽きぬ知識欲へと刺激を与えた。
「ふむ・・・あの世界で情報は十分集めたかと思ってはいたが・・・此れは興味深いな・・・」
男は仮面のズレを直しながら口元を緩めた。来てみた価値はある・・・そう男は判断した。
早速情報収集・・・と行きたいところだったが、この世界が他の世界と比べて大分勝手が違うことに気がついた男は、大丈夫だろうとは思うが念のため一度左手を肩の高さまで上げる。
「イグニス」
そして、男は何らかの名を呟きながら左指でぱちんと音を鳴らす。
その音に呼応するように、男の背後に円状の空間が現れ、そこから一体の女性的なシルエットをした自動人形が現れた。
この自動人形の名が『
そのため、男は早速、この世界でのイグニスを『観察』する。
「・・・ふむ。動きや仕掛けに異常は見られない・・・。そうであるならば好都合だ」
観察によって得られた結果に満足した男はイグニスに背を向けてから、もう一度左手を方の高さまで上げ、指で音を鳴らした。
すると、その場にいたイグニスは空間の中へと帰っていき、円状の空間が消えるとそこには何も残っていなかった。
「さて・・・此の世界での新たな『検証』と『研究』を始めるとしよう。此の世界には・・・面白いものが山ほど有る」
仮面の裏に狂気的な欲を宿した男は自身の知識欲を満たすべく行動を始める。
街の中心に出ると、最初の数分こそ周りに注目されたが、彼は気にすることもなく、知識欲の赴くままに足を運んでいくのだった。
* * *
「さて・・・大分集まっては来たが・・・。貴様の体を戻すことに関して・・・そろそろ方法を確立させんとな・・・」
プラネテューヌの森林地帯にて、マジェコンヌたちは3つ目のアンチクリスタルを回収し終え、最後の一つを探す準備すべく移動を始めていた。
アンチクリスタルを回収する事は確かに順調なのだが、テルミの体に関しては一切進んでいない状態でいた。
マジェコンヌは自分の知っている方法を試してみたが、それらはことごとく失敗に終わっていた。そのため、マジェコンヌの悩みの種となっていた。
「無理にやらなくてもいいんじゃないっちゅかね?元々、オイラたちだけでやる予定だったっちゅし」
「ネズミお前・・・ラグナちゃんとハクメンちゃんいるのによくそんなこと言えたなぁ・・・」
「うぅ・・・」
ネズミの発言を聞いてテルミが釘を刺すと、ネズミは言葉を詰まらせた。
テルミは実際に両者と対峙したことがあるため、言葉の説得力は十分にあった。
「テルミの言う通りだな・・・。
女神だけであれば問題は無かったのだが、奴らが混ざると策を破られるやもしれんからな・・・。テルミの体は戻しておきたい」
マジェコンヌが考案している策というのは、アンチクリスタルで作った空間に女神たちを封じ込めるものだ。
女神たちだけが相手ならば何も問題は無く、ラグナ一人が増えてても自分で対応すれば問題ないと考えていたが、ハクメンまで増えるとそうも行かないので、安全のためにもテルミの体は戻しておきたかった。
「そうは言うっちゅけどね・・・オバハンの思いついた方法は全部失敗してるっちゅよ?」
「それを言うな・・・考えればまだいくらでも案は出せる。それと、オバハンは止めろと何度も言ってるだろ」
ネズミの言葉が刺さり、マジェコンヌは一瞬だけ弱った言葉を吐いた。
だが、諦めているという訳ではなく、その意を伝えながらネズミの発言に突っ込む余裕はあった。
それと同時に、マジェコンヌは一つのことに気がつく。本来ならばこの辺りで、「なんだ?テメェが弱音吐くなんて珍しいじゃねえか」などと言いそうなテルミが特に何も言わなかったことだ。
「テルミ、どうかしたか?」
「ああ・・・。ちょっと待っててくれや。この『
マジェコンヌが訊いてみると、テルミは何者かの気配を感じているようだった。
「・・・マジェコンヌ。俺が今から言う方に寄り道してもらってもいいか?」
「構わんが・・・何を思いついたんだ?」
「俺の感じている気配が知り合いの奴かも知れねえ・・・だからそこに行って確認してえんだ」
「なるほど・・・知り合いか・・・」
テルミの回答を訊いたマジェコンヌは一度考え込んだ。
知り合いだとしても味方だとは限らない。だが、テルミから行こうと言う以上、完全に敵だと決めるのは早すぎるのではないか?
「分かった。ならば行くとしよう」
「悪いねえ・・・助かるわ」
もし、敵だったのであれば最悪逃げに徹すれば問題は無い。そう考えたマジェコンヌはテルミの案に乗ることにした。
テルミ自身も、自分の予想が合っていれば体のことを協力してもらえるかも知れないと踏んでいた。対価として、その人物の目的を手伝うことになるが。
「・・・大丈夫っちゅか?またヤバそうな奴の予感しかしないっちゅが・・・」
「ああ・・・良く分かったなぁネズミ。
俺の予想通りだと、真っ先にテメェがそいつの実験体にされるかもな・・・。喋れるネズミとかあいつの格好の餌だろうからなぁ・・・ケヒヒ」
「じ、実験体!?餌!?お・・・オバハン。やっぱり止めるっちゅよ・・・!」
テルミはその人物像を頭で描きながら、ジョークでも言うかのように嫌らしい嗤い方をする。
それを訊いたネズミは急激に体が震え上がる。
「よせ、テルミ。話が進まなくなる・・・」
「・・・へへっ。ワリいワリい」
マジェコンヌに咎められ、テルミは大分雑に謝る。それを聞いたマジェコンヌは軽くため息をついた。
「だが・・・実際に体のことで行き詰ってるのも事実だ。会いに行く価値はあるだろう?」
「・・・解ったっちゅよ」
マジェコンヌに再度問われて、ネズミは遂に折れた。
元々マジェコンヌの雇われとしているネズミはあまり意見を押し通すことが出来ず、結局は最後に諦めるというパターンが定着し始めている。
更に、この二人の間に同志として入ってきたテルミも押しが強く、このパターンを確立させてきていた。
「それで?どこへ向かえばいいんだ?」
「おう。それじゃあ言うぜ・・・。今から行ってほしい場所は・・・」
マジェコンヌの問いにテルミは答え、一行はその場へ向かうことにした。
* * *
男は情報を集めるべく様々な場所へ向かおうと判断し、別の場所国へと向かうことにした。
先程の工業的な雰囲気をしていた場所がラステイションと言う名の国と解ったことと、残った三カ国にいくためにはこの国を確実に渡る必要があることも判明した。
三つの国の内、船を使う以上、今の金銭が使えないであろうリーンボックスは真っ先に除外。異世界でいきなり悪環境に片足を突っ込むのは時期早々だと考えルウィーは後回し。
ラステイションは比較的『普通な情報』が多かったために、大まかな情報は得られていた。そのため、彼は残った一つの国、プラネテューヌへと向かおうとしていた。
これには肝心な女神の情報や、女神の持つ『魂の形』などを調べたかったが、ラステイションの女神は情報の管理も滞りなく行っていたため、付け入る為にはわざわざ出向かなければならない状況を作る必要がある以上、あまりにも非効率だった。
そのため、男は早々に情報収集を切り上げて他国に向かい始めたのだった。現在はプラネテューヌとラステイションの間にある森林地帯を歩いている。
「さて・・・次はどのようなモノが『観測』れるか・・・」
男は歩きながらも、今目の前に『観測』える情報を集める。
それと同時に、次の国で得られるであろう情報に期待せずにはいられずほくそ笑む。
男の口元が緩んでから数瞬、男には知らないようで知っているという奇妙な情報が現れた。
「ほう・・・此れは興味深いな」
それに気づいた男は口元を緩める。男の呟きが消えると同時に、物陰から魔女のような女性と巨大なネズミが現れた。
彼自身、この二者に興味はある。だがそれ以上に興味深い状態にいる者がいたのだ。
「おお!レリウスじゃねえか!やっぱり俺様の予想は当たってたぜ!」
「・・・ほう。そこにテルミが居るのか・・・。中々面白い状態になっているな・・・」
赤い光を放つ小さな石の中にいる碧黒い精神体、ユウキ=テルミは男・・・レリウス=クローバーを確認して喜びの声を上げる。
レリウス自身も、最も興味深い状態のテルミを見てほくそ笑む。
「うわぁ・・・ヤバそうな奴の予感しかしないっちゅよ・・・」
「ほう?貴様は中々に面白い存在だな・・・今度じっくりとデータを取りたいところだ・・・」
「ぢゅぢゅーっ!?ね、狙われたっちゅよーっ!?」
「自業自得だな・・・。ああでも、テメェが弄り回される光景も中々見ものじゃねえの?ケヒヒ」
「見てないで助けて欲しいっちゅよ!」
「俺様はアンチクリスタルの中だから動けねえぜ?あ~あ。残念でしたー」
ネズミが喋ったことに反応してレリウスが顔を覗き込ませると、ネズミは体を震え上がらせる。
テルミが軽口を叩くとネズミは咎めるが、テルミはネズミの揚げ足を取り、棒読み気味に煽る。
「・・・一度そこまでだ。話が進まん・・・。
レリウスと言ったか・・・早速で済まないが、こいつの体を戻す方法が解ったりするか?」
「ふむ。では少々見せてもらおうか」
女性がテルミたちを咎め、こちらに詫びを入れながら申し出てきたので、レリウスは渡された赤い石を手に取って、そこから集められる『情報の解析』を始めた。
「成程・・・。だが、今の状態では不足しているな」
「どうだ?なんか解ったか?」
「確かにお前の体を用意する手立てはある・・・が、今の私では情報が不足している」
テルミの問いにレリウスは結論を出した。
確かに、レリウスはテルミが行動するための肉体を用意する技術を持っている。
だがしかし、この世界での情報は殆ど何もないため、その方法を実行できない状態でいた。
それもその筈。レリウスはゲイムギョウ界に来たばかりである以上、この世界での知識などが殆どない状態でいた。
「ならば、その情報は私が補おう」
「・・・構わんのか?」
「ああ。条件として、女神どもの打倒に協力してもらうが」
「良いだろう。私としても、女神のデータは欲しいところでな」
マジェコンヌの出した条件が、自分に取って非常に好都合なレリウスは迷わず承諾した。
ここに、マジェコンヌ一行に新たに一人加わるのだった。
「ならば早速、場所を変えようか。詳しい話はそこでしよう」
「了解した」
マジェコンヌが先導する形で、一行はこの場を後にした。
* * *
場所は変わってラステイションから少し離れた所にある廃工場。
この工場は武力によるシェアの取り合いが禁止になる前は頻繫に使われていた兵器開発所で、和平を結んだ後は軍縮やそれらの開発抑制に従い、使われなくなってしまった場所である。
マジェコンヌたちはここを都合よく根城にしていたのだ。
「・・・成程。女神と此の世界の繋がりはそのようになっているのか・・・」
マジェコンヌの話を聞いたレリウスは顎に手を当てながら頷く。
レリウスがマジェコンヌから知ることの出来た情報は、女神と女神の持つシェアエナジーの仕組み。それに伴って、この世界での一般人の状態も大まかに把握できた。
「どうだ?それだけあればできそうか?」
「確かに、情報はこれで十分だ。人のことに関しては特にな・・・。だが、何かしらのサンプルは欲しいな・・・人でなくとも構わん」
マジェコンヌの問いに対してレリウスは肯定はするものの、確実を求める声を示した。
本来の世界であるならばマジェコンヌからの情報も無しに始めることはできたが、この世界は勝手が違うために、迂闊な真似は慎みたかった。
レリウスが「テルミも動きに支障があると困るだろう?」と問いかけると、テルミは即座に肯定した。
「ならば決まりだ。私は早速サンプルを取りに行く」
「それはいいが・・・手伝いも無しに平気なのか?」
「ああ。その必要はない」
レリウスは身を翻して歩き出したところをマジェコンヌに声をかけられたので、一度足を止めて左手を肩の高さまで上げ、指で音を鳴らす。
すると、レリウスの背後に円状の空間が現れ、そこからイグニスが現れた。
「私には
そう言ってレリウスはそのまま歩き去っていく。妙に説得力を感じたマジェコンヌはそれを止めたりはしなかった。
「ああ・・・ここに広いスペースある場所ってどっかあるか?」
「どうだったか・・・ネズミ、覚えてるか?」
「いくつかデカい部屋はあるっちゅよ。それもエンシェントドラゴンが数体入っても平気なくらいの」
「それが聞けて良かったぜ・・・。・・・さてと。確か術式はシェアエナジーを代用することで使えるが、今の状態だとこっちだな・・・」
レリウスの意図を察したテルミが2人に訊くと、ネズミから知らせのいい回答が帰ってきた。
それを聞いたテルミはレリウスに伝えるべく、元の世界でも使えた方法で通信を試みる。
「何をするつもりだ?」
「まあまあ見てなって。今からレリウスにこの事を伝えんのよ」
マジェコンヌの問いに答えながら、テルミはレリウスと通信を始めた。
* * *
「さて・・・サンプルに使えそうなモノは・・・」
先程の廃工場から少し離れた草原地帯で、レリウスはマジェコンヌに聞いた
目の前に数多くいえうモンスターの内、自分の実験に長く耐えられそうなモンスターを探すべく、レリウスは目の前を見渡した。
中々見当たらず探し続けているところで、術式と同じ方法で通信が送られてきた。この世界ではシェアエナジーを代用して術式が使えることを聞いていたレリウスは普通に応じることにした。
「・・・私だ」
「いきなりワリいなレリウス・・・。
あいつらにテメェが研究で十分に使える大きさの部屋確保してもらったから、その連絡をさせてもらったぜ」
連絡の主はテルミであった。
本来、アンチクリスタルはシェアエナジーの能力を封じてしまうのだが、テルミはアンチクリスタルを一時的に自身の力に変換することによって、それを強引に解決していた。
ただし、これはアンチクリスタルの中にいる間の緊急的な措置である為、体が戻ればこの手段を使うことはなくなり、この方法での通信可能時間は極めて短いという短所がある。
そして、レリウスの方へとやって来る足音が聞こえ、レリウスはそちらを見やる。そこにはエンシェントドラゴンが一体やってきていた。
「そうか・・・。ならば、早速回収にかかるとしよう。あの二名には騒音に気を付けろと伝えてくれ」
「了解だ。じゃあまたな」
短く交信を済ませた二人は同じタイミングで通話を終了する。そして、エンシェントドラゴンが雄叫びを上げるのに対して、レリウスは動じる様子もなく、右手を前に出す。
「バル・テュース」
レリウスの言葉を聞いたイグニスが背後から現れ、自身の両手を鎌状の刃に変形させてエンシェントドラゴンに迫り、踊るように三度斬る。
突然現れた存在と、その存在にいきなり斬られたことにより、エンシェントドラゴンは少なからず動揺する。これには、イグニスの攻撃が予想以上にダメージが入ったことも起因する。
「成程。モンスターとは言えど、本能的な部分は動物に近いのだな」
レリウスが考察をしている内に、イグニスは両手を元の状態に戻してレリウスの背後に戻ってくる。
この反応だけでも十分かと言えば、レリウスにとってはそうでもない。
「だが・・・まだ足りないな。耐久や体の構造・・・これらを把握しておく必要がある」
―もっと検証結果が欲しい。元よりモンスターを一体捕獲するつもりでいたレリウスは、
仮面の影響で目元の表情はわからないが、口元を緩め、狂気的な笑みを感じさせていた。
レリウスの状態に本能的な恐怖を感じたエンシェントドラゴンは、排除せねばという焦燥感に駆られて右腕をレリウスに突き出す。
「成程。付き合ってくれるか・・・ならば」
レリウスは素早く左手でマントをつまみ、自身の左側を隠す。その足元には円状の特殊な空間が表れていた。
「イド・ロイガー!」
そして、レリウスの背後に体を回せば手が届く所にレバーのついた歯車が現れる。
レリウスが右側に体を回し、右手でレバーを引くと、レリウスの眼前から巨大な機械でできた腕がエンシェントドラゴンへ向けて飛び出す。
その攻撃はエンシェントドラゴンの右腕を見事に押し返し、エンシェントドラゴンは一歩後ろに下がりながら動揺する。
訳が分からないと怒りを露わにしたエンシェントドラゴンはレリウスを踏みつけようと前に歩き出す。
「・・・モンスターと言えど、所詮は動物と言うことか。もう少し付き合えるものだと思っていたが・・・下らない」
―戦いによる『観察』は終わりだ。そう決めたレリウスは行動に移る。
「アルター・オブ・ジ・パペット!」
レリウスは一度左手を前に出してから右腕を左から斜めに振ってイグニスに指示を出す。
その合図を確認したイグニスはエンシェントドラゴンの腹を左手で鷲掴みにする。
この時、イグニスの左手からは相手の動きを封じる為の特殊な波動が発せられており、それによってエンシェントドラゴンは脱出ができないでいた。
「では、行くとしようか・・・」
レリウスは笑みを浮かべたまま転移魔法を使い、
* * *
「戻ったぞ」
「戻ったか・・・。しかし、何を使って戻って来たんだ?」
「転移魔法だ。私たちの世界では廃れてしまったものだが・・・幸い、私は使えるのでな」
レリウスは戻って来るや早々、マジェコンヌに問われたので答える。
テルミやレリウスがいた世界では、魔法と科学を融合させて生まれた力である術式が普及しており、科学は残っているものの、魔法は殆ど廃れてしまっていた。
ただし、レリウスは魔法が使われていた時代からラグナ達のいた時代へと、境界を渡ってきたため、魔法に適性があり、魔法を取得していたレリウスは現在も魔法を使える。
「それで?用意してある部屋は?」
「すぐそっちっちゅよ」
「・・・感謝する。さて、先程も言った通りだが、騒音には耐えてもらうぞ」
レリウスの問いにネズミが答えたので、レリウスはネズミに礼を言って、もう一度注意を促した。
「なあレリウス。俺の体・・・後どんくらいで用意できそうなんだ?」
「・・・実験がどれくらいで終わるかだが・・・。実験が終わってからなら、二日もあれば終わるだろう」
「二日か・・・意外と早えな」
レリウスはエンシェントドラゴンを掴んでいるままのイグニスを見ながら答える。その答えを聞けたテルミは顔を緩める。
「そう言えばオバハン。計画の実行まで後一週間切ってた筈っちゅよね?」
「ああ。あと四日だったな・・・レリウス、済まんが三日以内で終わらせられるか?」
「可能だが・・・その理由は?」
ネズミが確認すると、マジェコンヌは日程を詰め詰めで入れていたことを再認識し、レリウスに詫びながら問うと、レリウスは理由を訪ねてきた。
「女神どもがその四日後に、リーンボックスに集まってパーティーを行うという情報を手に入れてな・・・。
そこで私たちは女神打倒の計画を実行に移すつもりでいる。釣り餌で使うモンスターたちは用意してあるから、女神どもと共に居る『ラグナ=ザ=ブラッドエッジ』とハクメンの妨害を想定すると、テルミの力は必要でな・・・。
また、リーンボックスは海を渡る都合上、遅くともその日の昼には着いていたいのでな」
「成程・・・その件は了解した。では、早速取り掛かるとしよう」
マジェコンヌは理由を説明した。
現在、アンチクリスタルは三つあり、残りはリーンボックスにある一つで全てのアンチクリスタルが集まる。
現状はテルミの体をどうにかするために後回しにしていたところで、最悪を想定してリーンボックスのアンチクリスタルは当日の昼に取る予定だったのだ。
それを聞いたレリウスは転移魔法で用意された部屋に入る。
「さて・・・実験の時間だ」
「あ~あ・・・ご愁傷様だなぁアイツ・・・。ケヒヒ」
レリウスが狂気的な笑みこぼしながら実験を始めると、エンシェントドラゴンの絶叫が響き渡った。部屋のドアを閉めているにも関わらずである。
その絶叫を聞いたテルミは思わず笑ってしまう。マジェコンヌとネズミは思わず耳を一瞬だけ塞いだ。
「そういえばよ・・・女神たちがパーティーやるってんだから、なんかイベントとかあんのか?」
「ああ。午前中に着けば、ゲイムギョウ界のトップアイドルのライブを見れるぞ。
まあ・・・私としてはどうでもいいがな」
「へぇ・・・ライブなんて良い趣味してんじゃねえか。バレねえようにコッソリ聴きに行くかね」
テルミの質問にマジェコンヌは呆れ半分に答えるが、聞いたテルミ自身は楽しそうな反応を示す。テルミはライブが好きだという意外な一面であった。
「・・・本当にバレるなよ?」
「大丈夫だって。俺様がそんなヘマするかよ」
マジェコンヌが釘を刺すように言うと、テルミは軽く答えた。
マジェコンヌ自身、テルミをそこまで疑っているわけではないのだが、念には念を入れておきたかったのである。
「ああ・・・流石にここにずっといるのは応えるっちゅ・・・。オイラ、今のうちに仮眠を取ってくるっちゅよ」
「確かに応えてもおかしくはないな・・・良いだろう。今のうちに休んでおけ」
「すまんっちゅね・・・」
こうして会話している間にもエンシェントドラゴンの絶叫は弱まりつつも響いており、頭を痛めてしまったネズミは計画当日に支障をきたさない為にも仮眠をしようと思った。
幸いにもマジェコンヌから許可を取れたネズミは、一言詫びを入れてからそそくさとこの場を後にした。
「さて・・・計画の最終調整をする。テルミ、お前にも確認してもらうぞ」
「はいはい。体をもらえるまでの辛抱だからな・・・付き合うぜ」
以外にもマジェコンヌの計画には協力的で、特に反抗などをしていないテルミは今回もすんなりと従った。
これには体のこととラグナにリベンジを手伝ってもらう代わりに、マジェコンヌの女神打倒に協力することを自ら進んで言い出したことも起因していた。
そして、マジェコンヌ一行は計画のために準備を急ぐのだった。
* * *
「出来上がったぞ」
レリウスが実験を始めてから三日後の夕方。
レリウスは黄色が基調のフード付きのコートが目深にかぶせられていて、コートの中から見える制服を着崩している男性の姿をしたモノを持ってきていた。
「おおっ!それあん時のまんまの見た目じゃねえかっ!気が利くなぁレリウスは」
それを見たテルミは気分が良くなり、思わず一人ではしゃぐように声を上げた。
それは、『エンブリオ』でテルミがハザマから離れて活動している時と同じ姿をしていたからだ。
「本当にこの短期間で完成させるとは・・・感謝するぞ」
「礼には及ばん・・・。私としても、新たな研究が出来たので対価は払えている」
マジェコンヌは素直に礼を言う。それに対して、レリウスは自身の条件に見合ったことを話した。
「さて・・・それではテルミを此の体に定着させるとしよう。
マジェコンヌ、テルミが入っているアンチクリスタルを貸してくれ」
「分かった」
「ここでやんのか?」
「ああ。イグニスを使って、お前の精神を此の体に移動させる」
「マジかよ・・・あんま痛くねえといいけどなぁ・・・」
レリウスに促されたマジェコンヌはレリウスにテルミがいるアンチクリスタルを渡した。
テルミの問いに、レリウスは肯定で返した。それを聞いたテルミは引きつったような声を出した。
「・・・安心しろ。痛みがあるとしても、長くはない」
「え?あ、おい・・・長くないってどれくらいだよ?」
「・・・時間が惜しい。始めるぞ」
レリウスの答えに嫌な予感がしたテルミはもう一度聞くが、レリウスはそれに答えず左手を高く上げる。
合図を確認したイグニスはアンチクリスタルに左手をかざす。すると、少しづつテルミの体がアンチクリスタルから引き出されていく。
「痛え痛えっ!マジ痛え・・・!ヒャーハハハハハッ!」
「わ、笑ってるっちゅ・・・」
テルミは痛みの余りに笑って必死に誤魔化す。その光景を見たネズミとマジェコンヌは啞然としてその光景を見ていた。
ある程度以上テルミの体がアンチクリスタルから出てきたので、イグニスは引き抜きを続けながら、新しい体にテルミを入れ始める。
「オイオイ冗談じゃねえってコレ・・・!ヒヒヒ・・・ケヒヒヒヒ・・・!」
テルミが新しい体に入りだして、今度は新しい体の方からテルミの笑い声が聞こえだす。
その時、新しい体の口が三日月状に開いている為、非常に不気味な光景を醸し出しており、ネズミは頭を抱えながら震えていた。
そして、そこから数分してテルミは新しい体の中に完全に入り込んだ。
「ふぅ・・・死ぬかと思ったわぁ・・・」
「ふむ。問題なく体には入り込めたようだな」
テルミは率直な感想を述べながら体を軽く動かす。
前と同じ感覚で動けることがわかり、テルミはレリウスの技術に改めて感心するのだった。
大丈夫だと解った為、テルミは自分に用意された武器を確認する。
以前と同じくバタフライナイフが二つ程用意されていたので、テルミはそれの内一つを左手に持って、軽く放り上げて取るを何度か繰り返す。
それが終わり、今度は自身が持っている
このウロボロスは蛇の頭がついた鎖の形をしていた。テルミはそれを手元に発生させた異空間から取り出すことで、問題なく使えることを確認した。
「・・・よし。問題ねえな。大分待たせちまったなぁマジェコンヌ。これで俺様も戦えるぜ」
「・・・フッ。それは頼もしい。では、時間も惜しいし、そろそろ行くとしようか」
テルミの宣告は計画が最終段階に移行したことを示していた。それを聞いたマジェコンヌはここにいる全員に移動を促した。
「おうよ。
・・・って、ああそうだ・・・レリウス。体のメンテはどんくらいにするんだ?」
「此の世界はまだわからないことが多いが・・・。元からある技術で作ったことも踏まえれば、一週間を目安で構わんだろう」
「意外と長えな・・・まあ、俺様としては都合がいいがな」
テルミがレリウスに問うと、予想より良い回答が帰ってきたため、テルミは思わず笑みを浮かべた。
テルミの体の目つきが悪いことと、口元が三日月状に開いていることから、どこか残虐的なものを思わせた。
「待ってろよ・・・ラグナちゃん・・・。俺様がもう一度絶望って奴を与えてやるぜ・・・!ヒヒッ」
そして、「ヒャァッハッハッハァッ!」とテルミの笑いが廃工場で響き渡るのだった。
予想通りかもしれませんが、レリウスの登場となります。
今回、術式通信はすげえ強引な感じになってしまいました・・・。
そしてまたもや犠牲になるエンシェントドラゴン・・・。私はあと何回エンシェントドラゴンを犠牲にすれば良いのでしょうか・・・?
後は段々と倒し方やら何やらが雑になってきているような・・・。
ちなみに、ラグナのバイク関連の下りは3話でアイエフがバイク使って現場に向かっていたのを見た時に、ハクメンが走ってバイクと並走するのは違和感ないけど、ラグナはちょっと無茶あるなぁ・・・と個人的に思ったからです。
次回からアニメ3話に入ります。また、次回が今年最後の投稿になります。