超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER-   作:ブリガンディ

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新年あけましておめでとうございます。今年一発目の投稿となります。

早速本編の方、どうぞ!


22話 妹を思う姉、悪夢の影

「ギアちゃんたちはまだみたいですね・・・。・・・?」

 

買い出し組になったコンパたちはリーンボックスにあるショッピングモールにて食材の買い出しにきていた。

その中で最も早く自分の担当が終わったコンパは、事前に決めておいた合流地点である見通しのいい場所で辺りを見回して呟いた。

ネプギアとラグナは最も多い担当を二人掛かりで回っていて、時々ラグナが一つの食材にかなり拘っていた一面が見えたので、少なくともあの二人はもう少し時間が掛かると予想できた。

そう判断した瞬間、右側から何か視線を感じたので振り向いてみるが、そこには誰もいなかった。

 

「気のせい・・・です?」

 

コンパは呟きながら首を傾げる。言い知れぬ威圧感があったので気のせいではないと信じたいが、その真相は結局分からなかった。

考えても仕方ないなら大人しくしてみんなを待とう。そう決めてコンパが正面に向き直ると、目の前でネズミにしては相当大きく、二足歩行をしているネズミが走っているのが見えた。

 

「あ~、急がないとオバハンにグチグチ言われるっちゅよ・・・」

 

ネズミは走りながらも切り詰めた計画を立てていた雇い主のことを想像して嘆いた。

同盟者の二人は「ラグナちゃんたちをブッ殺せるなら問題ない」と言う者と「女神達を研究する機会が無くならないのなら問題ない」と言う二名だからほんの少しの遅れなら気にしないでくれる。

ただし、雇い主の魔女だけはそうもいかなかった。雇い主の魔女は融通が中々効かず、その魔女が予定している時間が迫ってきていたのだ。

また、テルミよりも先に移動を始めているのだが、それでも自分の歩幅のせいでテルミよりも後に到着する可能性が高い。

 

「・・・おわっ!?」

 

更にその距離が遠いのもあって、ネズミは焦りの念に駆られて何もない場所で転んでしまう。

その余った勢いのせいで、鞄のボタンが外れてアンチクリスタルを落としてしまった。

それの光景を目の当たりにしたコンパは職業病・・・ではなく、純粋な善意を持ってネズミの方へ歩み寄ることを選んだ。

 

「うぅ・・・。い、痛かったっちゅ・・・。・・・?」

 

ネズミが痛みを堪えながら顔を上げると、目の前にはこちらを心配そうに見ているコンパの姿があった。

 

「はぁ・・・。・・・って、何っちゅか!?ネズミがこけるのがそんなに面白いっちゅかっ!?」

 

「大丈夫そうで良かったです♪」

 

ネズミはそのコンパの姿に思わず見とれていたが、すぐに気を取り直し語調を強くする。

しかし、コンパはそんなことは一切気にせず、ネズミが大丈夫だと分かって満面の笑みを見せる。

コンパにとって、今回一番心配だったのはネズミが元気を無くすことだったので、それが見られなかったことで心から喜んだのだ。

その瞬間、ネズミの全身に電流が走った。一応、肉体的な攻撃ではないことをここに記しておく。

 

「あっ、でも怪我してるですね・・・」

 

「は・・・ッ!?」

 

コンパはネズミの右手が擦り剝けているのに気がついてその右手を取り、自分の鞄から絆創膏を探し始める。

ネズミは右手を取られただけで体が跳ねるような感覚に襲われてしまう。

 

「これ・・・貼って上げるですね♪」

 

コンパは絆創膏を一つ取り出し、それを見せながら満面の笑みで宣言する。

―目の前にいるこの人は天使か?そう思いながら言葉が出せないネズミは目を泳がせる。

ネズミが全身を振るわせながら心臓が高鳴っている状態でいる間にも、コンパは絆創膏を張り終えて・・・。

 

「もう大丈夫ですよ♪」

 

再び満面の笑みで告げられ、ネズミの心は完全に堕ちる。

・・・恐らくは画面上に『ASTRAL FINISH』と表示が出ていることだろう。『DISTORTION FINISH』や『OVER DRIVE FINISH』どころではない。

恐らくネズミにとってコンパの笑顔は、99HEATの99999ダメージであるはずだ。

 

「気を付けてくださいね?ネズミさん♪」

 

「は・・・はいっちゅ・・・」

 

コンパの忠告を聞いたネズミはただただ、返事をするしかなかった。

ちなみにコンパはこの時も笑顔のままであった。

 

「じゃあ、私はこれで・・・」

 

「ま・・・待ってくださいっちゅっ!」

 

自分にできることは終わったので、友人たちを待つべく移動しよう。

そう決めたコンパがその場から立ち去ろうとしたのを見たネズミは勇気を振り絞って声をかけ、コンパを呼び止めた。

 

「・・・?何ですか?」

 

「あ、あの・・・。お名前は・・・何というっちゅか・・・?」

 

「コンパですっ!」

 

「こっ、コンパちゃん・・・可憐なお名前っちゅ・・・」

 

ネズミの勇気を持った質問は功を奏し、ネズミはコンパの名を聞くことができた。

このネズミはコンパに恋心を抱いたのだった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「・・・大分買い込んだな」

 

「一応、メモ通りには買ったつもりなんですけどね・・・」

 

最後の店で買い物が終えて、店を後にした俺とネプギアは待ち合わせ場所に移動しながら、自分たちの買い込んだ食材の量とメモ書きされた量を見比べて苦笑した。

ハクメンが飲食できないから12人分であるとはいえ、デカい紙袋をそれぞれ一つずつ持っている辺り普通に多い。

俺は普段から鍛えた体を使ったりしている、分どうにか片手で持てるが、それも自分の体格が平均より大きめだからできることことであって、ネプギアくらいの体格だったら間違いなく不可能なものだった。現にネプギアは両手でその紙袋を抱えていた。

 

「それにしても、ビックリしちゃいました・・・。ラグナさんがあんなに食材に拘るなんて思っても見ませんでしたから・・・」

 

「趣味でちょくちょく料理する時があったから・・・それが影響してんのかもな。得意なのは丸焼きだがな」

 

実際のところ、これは本当の話だ。俺は教会で暮らしてた頃、シスターの負担を減らしたいと想い、時々シスターに教わりながら料理を学んで行った。

その過程で作るのが楽しくなった俺は時々シスターに変わって作るようにした。丸焼きが得意なのは確実にサバイバルに近い旅をしていたのが影響してる。

その後、サヤが俺の真似をして料理を作ったのだが・・・。もうそれは絶望的な味・・・いや、味がどうのこうのな問題じゃねえな。死人が出るであろう料理という名の毒物みてえなモノだった・・・。

 

「ラグナさん・・・。意外と女の子みたいな趣味してるんですね・・・?

しかも、得意なのがよりにもよって丸焼きって・・・」

 

「・・・しょうがねえだろ。ほぼ自給自足のサバイバルに近い旅をしてたんだからよ・・・。

・・・つか、機械系統の趣味持ってるお前に言われたかねえよッ!?お前のあの趣味だって明らかに年頃男子の趣味だよな!?」

 

ネプギアに痛いところを突かれて俺は肩を落としながら愚痴をこぼすように言うが、咄嗟にネプギアの趣味を思い出し、その痛い点を突き返した。

 

「むぅ・・・。確かに、そうかもしれませんけど・・・。

いいじゃないですか!最新の技術にだって触れますし、部品の機能を知って自分でオリジナル機械作るのだって楽しいし・・・何よりロマンがありますからっ!

ラグナさんの趣味程地味じゃないですよ!?」

 

「いやいやいや!地味とかそういう問題じゃねえだろ!?

大体・・・そんなこと言ったら、俺のが地味ならお前のはその手の人しか理解できない変なのになるぞ!?」

 

「変なのって・・・。うぅ・・・私、他のみんなより個性が薄いからこの趣味だけは決定的なものだって思ってたのに・・・変なのって言われちゃった・・・」

 

「ま・・・待て!俺が悪かった!お前の趣味は変なんかじゃないッ!

・・・そもそも俺らは話す方向を間違ってたんだ!趣味ってのは人それぞれでそれを(けな)すものじゃない!」

 

「・・・本当ですか?」

 

ネプギアが顔を少しだけ膨れさせながら反論してくるが、最後に論点が若干ずれたのでそれに合わせてまたツッコむ。

すると今度はネプギアが本気で落ち込んでしまったので、俺は慌てて弁明と同時にそもそもの間違いを話す。

そうしたらネプギアはこっちに問い返してきた。落ち込み具合が戻ったのはいいが、落ち込ませたのはマジでやっちまった感がある。

 

「ああ。趣味は人それぞれだし、その趣味ごとの良さがあるからな・・・。変って言って悪かったな」

 

「・・・!そうですよね!?それなら私の趣味だってそれらしい良さがありますよね!?」

 

「あ・・・ああ。その通りだな・・・。・・・?」

 

俺がそれを肯定した瞬間、ネプギアは一瞬の硬直の後すぐに目をキラキラさせながら俺に同意を求める。流石にそんなパァッと輝くような目を見せられたら同意するしかなかった。

話をしながら歩いていくと、目の前に赤い、微弱な光を放つ小さな石を見つけた。

 

「どうかしましたか?」

 

「ネプギア。アレはなんだと思う?」

 

「アレですか?」

 

俺が違う方を見てることに気が付いたネプギアに声をかけられて見ていたモノを指さす。

俺たちは一先ずその石まで近づき、ネプギアはそれを確かめて見るために腰を落とす。

 

「何かの石・・・でしょうか?でも、こんな・・・。・・・っ!?」

 

「・・・ネプギア!?おい、大丈夫か!?サヤッ!」

 

ネプギアが拾い上げて詳しく調べようとした瞬間、ネプギアは急に力が抜け落ちるように背から倒れそうになったため、俺は慌てて空いてる手で抱き留める。

一泊おいても反応しないのが不安になった俺はネプギアの肩をゆすりながらもう片方の呼び方もやってみる。

何度かゆするとネプギアの手にあった石が落ち、ネプギアが目をゆっくりと開けた。それを見た俺は心底胸をなでおろした。

 

「・・・ギアちゃん?」

 

「・・・!触るんじゃないっちゅっ!」

 

俺の声が大きかったのだろう。ネプギアのことに気が付いたコンパがこっちに駆け寄ってきた。

また、自分がそれを大切にしていたのか、デカい二足歩行をしているネズミが語調を強くしながらその石を取り、そのまま走り去っていくのだった。

 

「・・・兄さま・・・。コンパさん・・・」

 

「・・・大丈夫みてえだな」

 

「ギアちゃん、どうしたですか?」

 

「わかりません・・・急に、力が抜けて・・・」

 

ネプギアが一瞬だけ『あいつ』になったが、無事であることが分かって良かったことの方が大きい。

コンパが何があったかを訊いてみると、ネプギアは朧気ながらも質問に答えた。

 

「そうなると・・・貧血か?」

 

「それが一番近いですけど・・・女神さんが貧血だなんて聞いたことないですよ?」

 

サバイバルに近い経験を積んでいる俺と、医者の一員であるコンパは症状かどうかを考えるが、結局は立ち眩みに近いものだと判断するに留まった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

一方、ネズミはそのまま振り返ることはせずに走り去っていく。

 

「(・・・?あいつ・・・どこかで見かけたような・・・)」

 

また、この時アイエフとネズミがすれ違い、アイエフはそのネズミに心当たりがあったので、後で調べてみることにした。

そして、ネズミは人気のない裏通りまでどうにかやって来ることができ、肩で息をする。

 

「ぢゅぅ・・・ぢゅぅ・・・。危なかったっちゅ・・・まさか女神の妹があんなところにいたなんて・・・」

 

流石に計画破綻の危機に見舞われるかと思ったが、ネズミはどうにかそうならなかったことに安堵する。

 

「コンパちゃん・・・マジ天使・・・ちゅぅ・・・!」

 

「ああ。俺もビックリだぜ・・・。ラグナちゃんのあの呼び方・・・もしかしてだけどなァ・・・ケヒヒッ」

 

「ぢゅぢゅぅっ!?」

 

しかし、今日は素敵な出会いがあった・・・。ネズミは、輝く笑顔が魅力な少女を思い出して顔を赤くする。

そんなネズミの独り言に、意見は違えど同意する声が聞こえたネズミは驚きの余り跳ね上がってそっちを見る。

すると、そこには合流ポイントへ移動してる最中・・・またはもう辿り着いてるであろうテルミの姿があった。

 

「て、テルミっちゅかっ!?どうしてここにいるっちゅか!?」

 

「レリウスに頼まれてちょっと寄り道だ。ついでにリーンボックスの地形も覚えられて一石二鳥だから引き受けてた。

ヒヒッ・・・いやぁ・・・それにしても驚きだぜ・・・。俺様の予想があってれば一石二鳥どころか一石三鳥だぜぇ・・・ヒャハハ!」

 

「・・・?ひょっとして、あの女神の妹に何かあるっちゅか?」

 

テルミはネズミの質問に答えながら、思った以上の収穫であったが故に上機嫌になって笑い上げる。

その時、ネズミはテルミがネプギアを見ていたことに気が付いたので追加で質問をしてみると。

 

「ああそうだ・・・。ひょっとしたらあいつ・・・俺たちの世界で利用されるだけど利用されてた・・・。

自分はずっと助けて欲しかったってのに、そいつは途中まで気づけず自分を殺しに来るっつう・・・。そんな辛い目に遭った可哀想な奴の生まれ変わりかもしれなくてな・・・ヒヒッ」

 

ネズミの問いに答えるテルミは再び笑いがこみ上げて来る。あまりにも千載一遇な出来事すぎて抑えが効かなくなってきていた。

 

「もしそうだとしたら、またラグナちゃんに絶望を振りまく最高のスパイスになるなぁ・・・!

レリウスもレリウスでこの世界最高の実験素体になるだろうし・・・。あ~あ~、可哀想だなぁ・・・。せっかく兄ちゃん(・・・・)と会えたってのに、また(・・)俺たちに利用されちまうんだからなぁ・・・ケヒヒヒヒッ!」

 

「・・・な、何がなんだかサッパリっちゅよ・・・」

 

テルミが笑っている理由が解らず、ネズミはついていけなくなってしまった。

ネズミが解らなくても良い。ただテルミはおかしくて・・・面白くて・・・楽しくなって仕方がなかった。

この時テルミが思い出していたのは、レリウスに頼まれて自分がラグナの前から連れ去り、数十回『殺す』ことで精神が崩壊してしまった。

その後体は『冥王イザナミ』の器として利用され、本来切り離されてどこかへ行くはずだった精神の半分は同じく『イザナミ』に、残った半分は『3体の人形』の内の一つに宿り、そうなった状態にも関わらず兄であるラグナに助けを求めていた、一人の少女だった。

 

「オイオイオイ・・・。なんだよこれ最高過ぎるだろ・・・?

マジェコンヌは女神たちを打てるし・・・ネズミは依頼分を果たせるし・・・レリウスには最高の研究材料が・・・そして俺には自由の世界とラグナちゃんをブッ殺せるチャンスだ・・・!

ヒャハッ!ヒャァーッハッハッハッハッ!あ~、やっべえなぁ・・・最早一四鳥じゃねえか!」

 

「・・・・・・」

 

テルミは余りにも自分たちにとって素晴らしい状況が出来上がったことに笑いが収まらないでいた。

それをネズミは、テルミが笑っているところを呆然と見るしかできなかった。

 

「ハァ~・・・笑った笑った。こんなに笑ったの久しぶりだわ・・・。

ワリいなネズミ。そろそろ戻ろうぜ」

 

「わ、わかったっちゅ・・・」

 

いつも以上に上機嫌なテルミに促され、ネズミは呆然としながら共に合流ポイントへ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

食材を料理人たちに渡した後、時間が開いた俺はアイエフに案内してもらってバイクのレンタルをしに来ていた。

今回は時間が購入時の手続きとかそれなりにかかるから今回はレンタルだが、今度はちゃんと買ってきたいものだ。

 

「えっと・・・どのタイプを借りようか・・・」

 

そして早速、俺は借りるタイプで迷った。

一応、教習所でどんな種類があるかとかは学んでて、これがいいかもしれないとか考えてはいたんだが・・・実際に選べるとなるとこうなった。

 

「一応、リーンボックスを流しで軽く回るくらいだから・・・休憩を兼ねて乗るのは大体4時間弱かしらね」

 

「それくらいか・・・じゃあ、これだな」

 

「へぇ・・・中々良いチョイスじゃない」

 

アイエフに参考時間を聞いた俺が選んだのは、赤と黒のツートンカラーが今の俺の服装と統一感を出してくれるツアラータイプのバイク。

短時間ならスポーツ・・・昔はレーサーレプリカっつうらしいタイプでもいいんだが、ポジションの問題だったり、走れる場所が限定的だったりでやりづらいそうだ。

また、俺は鍛えてあるから多少重くても平気だし、短時間のツーリングならポジションもやりやすいこっちの方がいいっつう結論だ。

アイエフは俺が選んだのを見て良い方向でコメントしてくれた。んで、後は借りる時間を決めるのだが・・・。

 

「そうだな・・・じゃあ、この時間で頼む」

 

「そんなに長く借りて大丈夫なの?」

 

「まあ、余裕ができるくらいには稼いでるからな。それにほら・・・。俺朝に弱いから」

 

「ああ・・・そう言えばそうだったわね・・・」

 

俺が決めた時間は明日の正午までだった。アイエフに問われたところで理由を話すと、アイエフは苦笑交じりに納得してくれた。

こうした理由として、まず前途の通り俺は朝に弱い。そして今回はパーティーやった後に夜のツーリングに行くので、寝るのが遅くなる。

それに伴ってただでさえ朝に弱い俺は遅く起きることになる。そう考えたらギリギリこの時間なら間に合うという結論に至った。

こうして全ての手続きが終わり、俺はその間だけバイクを借りることになった。

 

「よし。これで完了か・・・」

 

「そろそろ準備終わってるでしょうし、帰りましょうか」

 

「ああ。ありがとう。おかげで助かったよ」

 

アイエフに促され、俺は担当の人に軽く礼を行ってから二人でリーンボックスまで軽くバイクで走っていくのだった。

また、時間指定の時、担当の人に凄い意外そうな顔をされてしまい、帰り道でアイエフにからかわれる羽目になった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせいたしましたわね♪我が家のホームパーティーへ、ようこそですわ!」

 

時刻はさらに進んで夕方。俺たちはリーンボックスの教会でようやくホームパーティーを始めることができる。

始めることができて、ベールが始まりを告げるように歓迎の言葉を告げる・・・。これは別に良かった。だが、問題はそこじゃなかった。

 

「・・・というかベール。貴方殆ど何もしてない・・・」

 

「やめましょう・・・。言っても虚しいだけよ・・・」

 

結局あの後ベールは大して準備をしていなかった。それだけに清掃組だった皆は疲労感と苦労感が増していた。

その中には当然チカも含まれているが、元々チカは主催側の人間であるためか、そこまででもないようだ。

 

「さっき、立ち眩みしたって聞いたけど・・・?」

 

「うん・・・。でももう大丈夫だよ。心配かけてごめんね?」

 

ネプテューヌに声をかけられて返事をするネプギアはいつも通りの元気な状態に戻っていた。

 

「さあ皆さん、今日は遠慮なく食べて、飲んで、騒ぎましょうっ!

今日のために・・・とびっきりのゲームも用意してありますわ♪」

 

「おおーっ!なになに~?」

 

さすがは女神随一の遊び人ネプテューヌ。こう言うときの食いつきは凄く早かった。

 

「説明するよりも・・・見てもらった方が早いかもしれないですわね」

 

「そうですわね・・・。それでは、ネプテューヌとノワール。少し後ろに立ってくださいな」

 

「ほいなーっ!」

 

「え・・・?何?」

 

チカの話に続くようにベールが指示を出し、ネプテューヌは勢い良く手を上げ、ノワールは少し戸惑う。

 

「では、華麗に戦ってくださいまし♪」

 

必要な機材の設置を終えて、ネプテューヌとノワールに所定の位置に立ってもらったのを確認して、ベールは持っているコントローラーで起動ボタンを押した。

すると、俺たちの部屋の風景が教会の一室から、木々に囲まれた場所に変わった。俺たちはその変わった景色に感嘆する。

 

「あっ!ねぷねぷが・・・」

 

「ねぷぅっ!?スライヌになってる!」

 

「こ、これ・・・私なの?」

 

コンパが指さす方には、スライヌに髪の毛が生えて色違いになっているネプテューヌとノワールの姿があった。

 

「二人の動きを特殊なカメラで撮影して、立体投影しているのですわ。中々の技術でしょう?」

 

「大成功ですわね。お姉さま!」

 

ベールの説明を聞くと、こういう技術はすげえなと改めて実感させられる。

また、上手く行ったことにチカとベールが笑顔になって喜んだ。

もしかしたらチカはこのゲームのチェックもしてたかもしれないと考えると、並大抵の努力じゃないと思う。

 

「じゃあ、この格好でノワールと戦えばいいんだねっ!?やーい、ノワスライヌ!ねっぷねぷにしてやんよ~っ!」

 

「えっ?何よノワスライヌって・・・きゃあっ!」

 

話が早いかネプテューヌはノワールに宣言した。

ノワールが聞き返しているがそんなこと知らず、スライヌとなっているネプテューヌが、同じくスライヌになっているノワールへ体当たりをする。

準備ができてなかったノワールはスライヌの横幅一体分だけ飛ばされてしまう。また、ノワールの頭上から『50P』と出ていたので、恐らくこれはポイントだろう。

 

「いえ~いっ!ポイント先取~っ!」

 

「私を怒らせたわね・・・!覚悟しなさいっ!ネプライヌ~ッ!」

 

やっぱりポイントだったらしく、ネプテューヌがそのスライヌの体で小さく、何度も跳ねながら喜びを表す。

それをみたノワールは反撃をするため、ネプテューヌと同じくスライヌの体で体当たりをする。

 

「・・・うわぁ!?」

 

「や~いっ!逆さノワイヌ~っ!」

 

しかし、ネプテューヌが器用にもジャンプして避けたので、ノワールはこけて逆さの状態になってしまう。

それを見たネプテューヌが煽ったことで、二人はヒートアップして対戦に夢中な状態になってしまった。

 

「ちなみに・・・もっと実戦的なシミュレーションモードも用意してますから、戦闘の訓練にも使えますのよ」

 

「凄い・・・!」

 

そんな二人をよそにベールがもう一つの機能を説明すると、ユニが関心を持った。

また、戦闘の訓練という単語にハクメンも反応した。

 

「・・・ラグナよ。一つ手合わせと行こう」

 

「おっ、いいぜ。馴らしには丁度いいだろ」

 

今日はクエストを一切受けてないので体が鈍るかもしれないと思った俺はハクメンの誘いに乗った。

毎回リーンボックスに行く羽目にはなるのだが、アリーナを借りないで済むのはいいことだろう。しかもタダだし。

 

「あはは・・・。二人とも、練習するのはいいけど、今日はパーティーなんだから楽しもうよ・・・ね?」

 

「セリカさんの言う通りだよっ!今日はみんなで遊ばないと!」

 

「みんなと遊びたい・・・♪」

 

俺たちが軽い手合わせの話をしてると、セリカの案にロムとラムが便乗してきた。

セリカ(シスター)。そして幼い女神候補生の頼み・・・。その純粋さに勝てるわけも無く・・・。

 

「・・・そうだな。では、また今度とするか」

 

「そうだな・・・。じゃあ、俺たちも入ってみるか」

 

「心得た」

 

俺たちは手合わせの話を取り消し、その代わりにネプテューヌたちと同じく特殊カメラに投影してもらうことにした。

 

「おっ・・・。こいつは・・・」

 

俺の場合、背が少し低くなって服装が若干変わり、黒ずくめの格好の上に師匠からの借りていた紅い胴着を着ていた。

 

「・・・あれ?もしかしてその格好・・・」

 

「ああ。セリカは初めて見るか・・・。これはサヤを助けるために、師匠ところで修行中に来てたやつだよ」

 

確かこの格好を知ってるのは師匠とレイチェルと・・・あのデカチチくらいだったな。そりゃ解んねえわけだ。

セリカの場合は暗黒大戦時代の俺、教会暮らしの時の俺、そして今の俺を知ってるから・・・これがセリカの唯一知らない姿になるな。

 

「そうだったんだ・・・。また新しいラグナを知っちゃった♪」

 

「ああ・・・そっちなのね・・・」

 

セリカが嬉しそうに笑顔を見せたのに対し、俺は苦笑交じりに返すしかなかった。

 

「・・・あれ?そう言えばハクメンさんはどこに行っちゃったの?」

 

「どこ・・・?」

 

「ん・・・?あいつどこ行ったんだ?」

 

ロムとラムの言う通り、ハクメンの姿が見当たらないので周りを見回してみる。

だがそれでもやっぱりいないので、俺は首を傾げる。

 

「あっ!ラグナさん、足元!」

 

「足元?」

 

ユニが気づいたように指さすので、俺は足元を見てみると、左側にチラッと何かが見えたのでそっちを注視する。

するとそこには、全身真っ白で、背中に刀を背負っている。腹辺りに『ZEA』という文字が書かれているどこか猫っぽい愛嬌ある奴がそこにいた。

 

「え、ええっと・・・」

 

「ハクメン・・・だよな?」

 

俺とセリカは見た目の変化が激しすぎて思わず疑った。といかける俺は冷や汗を掻きながらだった。

するとそのハクメンであろう奴はセリカたちの方に顔を向ける。

 

「・・・ZEA(ゼア)?」

 

『・・・ハクメンっ!?(・・・ハクメンさんっ!?)』

 

「「ええ~っ!」」

 

ハクメンは普段の低くくぐもった声ではなく、それなりに高めの声だった。

余りにも衝撃的な光景が目の前に広がり、さっきまで夢中になって勝負していたネプテューヌとノワールすらハクメンの姿を見て仰天していた。

・・・いや待てよ?なんか知らねえけど、俺はこいつの呼び方を知ってるぞ?良く分かんねえけど、俺はハクメンに確認してみることにした。

 

「つか・・・お前それ『パクメン』じゃねえか!何でゲイムギョウ界なのにそれ再現されてんの!?」

 

『・・・パクメン?』

 

俺はその名を呼んでツッコむべきところにツッコむ。もちろんパクメンの存在を知らないので皆は首を傾げる。

その中にはノワールとユニも含まれるので、ツッコめるのは今回俺しかいない。

パクメンはハクメンがアマネ=ニシキの大技、『若得命華・業破抱擁(じゃくとくめいか・ごうはほうよう)』を受けることによってなる姿だ。俺もその攻撃を受けた場合こうなるのだが、俺の方がその技本来の影響なのだろう。ジンやノエルは幼少期になるらしいからな。

・・・ハクメンは何をしたらそうなるんだ・・・?ん?ネタバレ防止?正体ばれてるこっちでもそれ続けるのか・・・。こっちくらいジンにしてもいいんじゃねえか?

 

あっ。これは作者に頼まれてちょっとした宣伝だが、パクメンは『ドラゴンコミックスエイジ』から出てる『BLAZBLUE(ブレイブルー) リミックスハート』の1巻と2巻にちょこっとだけ出てくるぞ。まだ読んでない奴はこれを機に読んでもらえたら幸いだ。

後、デカチチの学園生活がメインだから、デカチチを中心に取り巻くドタバタ学園生活ものを読みたい奴にも、オススメだ。俺も1巻と2巻でちょこっと出てるぞ!しかも修行中の格好で。以上、宣伝だ。

 

「・・・何故かは解らぬが・・・投影されたら此の姿となっていた・・・。其れだけの事だ」

 

「その姿とその声でいつも通りに行くのは、いくら何でも無理があるわっ!」

 

パクメンの姿のまま腕を組んでハクメンは答えるが、ノワールのツッコむ通り、いつもの威圧感とかそういうのは無い。

しかし、パクメンの姿のまま腕を組み、パクメンの声で無理にいつも通りをしようとした姿はどこか愛嬌があるようで・・・。

 

『・・・可愛い!』

 

「ええぇぇぇぇぇぇええええっ!?」

 

皆が目をキラキラさせながら手を胸の近くで合わせて言う。ネプテューヌとノワールも目をキラキラさせながらそう言ってた。

こういったことにまだ疎い俺は、ただ驚くしかできなかった。

 

「やだ~。パクメンさん柔らか~い!」

 

ZE()・・・ZEA(ゼア)っ・・・!」

 

「ジタバタするの可愛い~っ!」

 

パクメンの方に歩み寄って皆は指でツンツンしたり撫でたりする。もちろんチカもそのメンバーに含まれていた。

いきなりのことにビックリするハクメンがパクメンの姿で暴れて見せるが、その姿が仇となって皆に火をつけてしまった。

 

「悪いハクメン・・・。そうなったら止められねえわ」

 

「・・・ZEA(ゼア)ッ!?」

 

『きゃ~っ!』

 

俺が断念した瞬間、ハクメンはびくりと体を振るえさせて驚く。

しかし、その姿がまた堪らないのか、皆は黄色い声を上げながらパクメン弄りがヒートアップしていく。

本当に干渉不能なレベルになってしまったので、俺はその光景を見ながら右手で十字架を斬っておく。

すると、それが終わった瞬間に右腕から妙な重みを感じたので見てみる。投影状態であるため詳しくは見えないが、また蒼い炎のようなものが出ていることは間違いない重みだった。

 

「これも何回目だろうな・・・。・・・?」

 

蒼い炎が消え、引っ張る感覚がやってきたので一言入れてそっちへ行こうかと思ったのだが、その感覚がいきなり途絶えた。

まず始めに、こんなに早く消えることはあるのかと思ったが、すぐに違うことに気が付いた俺はそれを否定する。

 

「こりゃ・・・本人にカットされたな」

 

本当ならすぐに確かめに行きたいところだが、これでは探しようが無いので俺は探すのを諦めるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

風が肌に当たるのを感じ、女性は目を覚ました。

目の前には夕焼けの空が広がっていることと、体の背面に何かが当たっているから倒れていると解った女性は体を起こす。

 

「見たことない場所ね・・・」

 

女性は辺りを見渡してみると、自分が今まで見たことの無い場所であることに気付く。

世界にある情報の殆ど全てを知っている自分が見知らぬ場所となった以上、女性は一つの結論にたどり着く。

 

「死後の世界かしら?それにしては賑やかすぎるけど・・・」

 

女性は結論を出すが、まだ疑念が残る。

今までマスターユニットによって、毎回都合のいいように世界が作られ、気に入らなければ何度もやり直しをさせられていた。

その世界の状況が許せなかった彼女は、その世界を破壊するために行動に移った。全てはその世界によって何度も死に追いやられる・・・自身の最愛の妹を護るための行動だった。

しかし、最終的にそれは同じく自身の妹助ける為に奮闘する一人の男に止められてしまったが、彼女は自分の妹を助けるのならと思い、「自分自身の妹を倒すのではなく助ける」ことを条件にその男に賭けて消えていった。

皮肉だと思ったが、それでも『蒼の男』であるあの男なら唯一託すことができる。その確信があった彼女は自身の命を投げ出した。

そして自分の体が消えゆく中・・・自分にとっては絶望だらけの世界の中であったが、最後の最後で『獣人』と呼ばれる種族である自分の夫に護られるという夢の時間が帰ってきていた。

 

「(そうだったわね・・・。あんな世界でも、最後は希望を持っていたのね・・・)」

 

少しの間思考だらけであったが、小休止するように女性は穏やかな顔になる。

確かに自分は死んだ・・・。再び思考に戻り、自分が起こした最後の行動を思い出して、もう一つの答えを導き出した。

 

「まさか・・・信じたくはないけど、異世界だとでも言うの?」

 

『別の事象』ならまだしも、『別の世界』とはどういうことだろうか?自身は時間硬化際に命を落とした以上、死後の世界だと考えるのだが、その割には肉体等がしっかりしている気もした。

生前とあまり変わらないのだろうか?結論を出したとは言え、女性は今一信じられそうに無かった。

 

「アマテラスによる干渉の無い世界なら・・・いえ、それにしては世界の構造と根本が・・・。・・・?」

 

女性は更に考察を続ける。

アマテラスによる干渉が無く、誰もが『願望(ゆめ)』を叶えられる世界だとした場合は、自身が今の格好では説明がつかなかった。

恐らくは自分が託した『蒼の男』があの世界に決着をつけたのだろう。それならばその男が思い描いた世界が出来上がっている筈なのだが、どうしてもそれとは違うと感じた。

ならばこれは誰の望んだ世界なのか?新しく疑問を持ったところで、女性は何かの流れを感じて辺りを見回す。

 

「この流れ・・・魔素と似ているわね・・・。でもそれとは全く違うもの・・・」

 

詳しく調べないと解らないか・・・。女性は顎に手を当てながら判断を下す。

そう決めたら早速行動を・・・と行きたいが、一度その前に確かめておかなければならないことを思い出した女性は左手を肩の高さまで上げる。

そのままの状態で女性が左手に意識を集中させると、その左手の上に小さい火が現れ、浮かんでいた。

 

「魔法は使えるみたいね・・・」

 

女性は十聖に名を連ねる程魔法の扱いに長けていた。

しかし、その魔法が使えなければただの肩書きだけにとどまってしまうので、そうならなかったことに女性は安堵する。

一応、最低限の体術も使えるのだが、それでも自身の力の大半は魔法によるもののため、使えた方が圧倒的に良いことに変わりはない。

一度左手に出していた火を消して、今度は水。風。氷。電気と・・・順番に左手に出しては消していった。

簡単な魔法を一通り確かめた彼女は大方問題ないと判断を下した。

 

「さて・・・それじゃあそろそろ・・・。・・・!?」

 

―行きましょうか。そう言いかけたところで女性は何者かに感知されたことに気づき、咄嗟に魔法でその感知を遮断した。

その間に女性は感知してきた主の場所を掴み、僅かな時間だけその周囲を見られるよう、魔法をかけることに成功する。

 

「随分久しぶりに使うような感覚だったけど・・・上手くいって良かったわ・・・」

 

脱力気味に呟いた女性は気を取り直し、感知してきた者の周囲を『観測()』てみることにした。

女性の左手に蒼い球が現れ、その人物が見ているモノを映し出す。目の前に映った光景は予想とは大きく異なるものが映されていた。

 

「・・・?」

 

目の前に広がる光景は、何人もの少女たちが一つのぬいぐるみであろうモノに群がって愛でている状態で、楽しそうに話している声が聞こえる。これは恐らく、それを傍らから眺めている人物の視点だろう。

余りにも場違いな光景を目の当たりにして女性は首を傾げた。それと同時に、先程の感知は本人の意図せず強制的に発動してしまうものだと推測した。

 

「やれやれ・・・。これでは疑った私が悪者みたいじゃない・・・」

 

何者かの陰謀がまだ動いているのかと危惧したが、余りにも平和な空間を見た女性は苦笑交じりに呟いた。

推測の通り、強制的に発動してしまい、たまたま感知したのが自分なのだろう。ならば時間が切れると同時に解除してやろう。

そう考えて女性が術者に掛けた魔法を解こうとしたが、彼女にとっては最高の知らせがそれを止めることとなる。

 

『ラグナラグナっ!ラグナも触ってみたりしない?柔らかくてハマっちゃいそう♪』

 

『・・・俺はいいよ。俺まで混ざったら本当に止められる奴がいなくなるし、ハクメンの心的疲労が・・・』

 

少女に名を呼ばれたラグナはやや低めの声で遠慮する。普段であればハクメンは何をしているのだろうと疑問が出てきたのだが、それはラグナに声を掛けた少女が理由で出てこなかった。

茶髪の髪をポニーテールにしており、自分の良く知るイシャナの制服を着ていたその少女は、彼女が誰よりも大切にし、護りたい・助けたいと思っていたが、それは叶わずあの繰り返される歴史で何度も命を失わされる少女だった。

 

「っ・・・セリカが・・・セリカがいる・・・」

 

女性は目の前で笑顔を見せる少女・・・自分の妹であるセリカ=A=マーキュリーがいることが嬉しく、その嬉しさのあまり目尻から涙が零れていた。

できることなら自分の手で。自分の力で護り通したかったが、それは叶わず、結果的に最後は自分にとって世界を狂わせた元凶として見ていたラグナに託すことしかできなかった。

それでもセリカがこうして周りの人たちと幸せそうに生きている・・・。それが彼女にとっては最も願っていたことであり、最高の知らせだった。

自分は一度死んでしまっているため、せめてものの時間で見られている夢かもしれない。或いは、自分もセリカと同じで何らかの方法で蘇させられたのかもしれないが、彼女には奇跡とも思える時間だった。

何故か自分が目を離した時にセリカといることが多い2人が、セリカの傍にいることが自分の気に障るかもしれないと思ったが、以外にもそのようなことにはならなかった。

 

「『蒼の男』・・・『ラグナ=ザ=ブラッドエッジ』・・・あんたの持つ可能性は本物だったようね・・・」

 

一つ目の理由は、ラグナが自分の見込んだ通り『蒼の男』として可能性を世界に提示し、あの絶望だらけの世界を変えたこと。

よくよく思い返せば、暗黒大戦時代の時もラグナの機転があったおかげでセリカが犠牲にならずに済み、『黒き獣』を打倒する為の方法・・・『術式』を完成させることができた。

実際には遥か昔に行われた『素体戦争』が関わったことによることが大きいのだが、ラグナが停止時間を作らなければ『術式(それ)』を完成させることもできなかっただろう。

ラグナが世界を変えたかどうかを確かめる術は、本人に訊くほかないだろうが、少なくとも『悪夢』は消し去った・・・。その確信が女性にはあった。

その『悪夢』が消え去った以上、ラグナを憎む理由はもう無い・・・。ここまでが一つの理由だった。

 

「本当は今すぐ行きたいけど・・・セリカの為と言っておきながら、あの時セリカを悲しませた私が・・・。あの子の隣にいる資格はない・・・」

 

二つ目はセリカのことを想っておきながら、セリカの気持ちを汲み取れなかった情けなさからくるものだった。

本当ならば今すぐにセリカの所へ行きたい。また色んなことを話して、今度こそ護り通したい。

だが、それは『エンブリオ』で行った自分の行動を考えると、少なくとも今すぐ行こうとは思えなかった。

 

「でも・・・。私がいなくても、ハクメンとラグナ(あの男)ならセリカを護り抜く。

少なくとも、私がどうするべきかを考えて、戻ってくるだけの時間はあるでしょう・・・」

 

三つ目は暗黒大戦時代、無茶な行動をしたり、話を聞く様子が見られなかったが、自分が間に合わない時に体を張ってセリカを助けてくれたハクメン。

『黒き獣』や仮にも『六英雄』の一人である自分を前に臆せず立ち向かい、その行動がセリカを助け、自然とセリカの心の支えとなっていたラグナ・・・。この二人ならにセリカを任せてもいいかもしれないと言う信頼だった。

そう考えを纏めている間に、蒼い球の光は弱まっていき、最後はセリカが楽しそうにしているの横顔を映してゆっくりと消えていった。時間切れが来てしまったのだ。

 

「時間切れか・・・」

 

女性は名残惜しく思ったが、セリカがいると分かれば自分も頑張れると目尻に残っている涙を拭う。

その涙を拭った顔は穏やかな表情をしていたが、その瞳には一つの決意を宿していた。

 

「(セリカ・・・。私はどうするべきか少し考えてくるわ・・・。

考えが纏まったその時にまた会いましょう。ハクメン。そしてラグナ・・・少しの間セリカを頼むわね)」

 

女性の名は『ナイン』・・・。実のことを言うと、これは本名ではない。

彼女は自身の名を好ましくは思っておらず、『十聖』に名を連ねた時にこの名を貰った。

その名を貰って以来、彼女は基本的にその名で物事を通すことが殆どになったが、名を変えるのに都合が良かった彼女は寧ろ好都合だった。

ナインは己の答えを導き出すため、この新しい地・・・ゲイムギョウ界を歩き出した。

ハクメンとラグナを信じ、いつか再び妹の前に顔を出せる日を思い描きながら・・・。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

時刻は夕刻。場所はリーンボックスの離れ島にあるズーネ地区。

現在は夕陽によって赤く照らされてるこの場所に、マジェコンヌとレリウスがいた。

計画はもう間もなく最終段階に入る。残りは最後の一つを回収したネズミと、レリウスの依頼を聞いてリーンボックスの近くに向かったテルミを待つだけだった。

 

「しかしレリウスよ・・・お前は何を頼んだのだ?」

 

「女神の内誰かから、少々気になる気配を宿している者がいるようでな・・・。其れの確認を頼んだ」

 

「・・・大丈夫なのか?『ラグナ=ザ=ブラッドエッジ』かハクメンにバレたら終わりではないか・・・」

 

「テルミはその点でしくじりはしないさ・・・。奴の情報収集能力は当てにしている」

 

レリウスの頼みにマジェコンヌは危惧したが、レリウスのテルミに寄せる信頼を垣間見ることになった。

 

「ならば・・・それを信じて待つとしよう」

 

レリウスとテルミの能力は既に当てにできると理解しているマジェコンヌはそれ以上追求することはしなかった。

すると数分後、小さい体で必死に走るネズミと、姿勢が悪いものの、自分なりにリラックスした状態で歩いて戻ってくるテルミの姿があった。

 

「遅いっ!危うく計画が台無しになるではないか!」

 

「これでも精一杯急いだっちゅよっ!余裕ないスケジュール組んだオバハンもオバハンっちゅよ!」

 

「まあまあ・・・良いじゃねえかよ。結果的に間に合ったんだからよぉ・・・」

 

マジェコンヌがネズミに怒鳴り、こき使われているネズミは堪らずマジェコンヌのスケジュールに文句を言う。

それを見たテルミはからかい気味にたしなめる。そうするテルミは、どこか上機嫌だった。

 

「・・・そうだな。いちいち腹を立てては持たんな・・・。

しかしテルミ。そこまで上機嫌になるとは・・・何があったのだ?」

 

「ああそうだった・・・。

ヒヒッ・・・朗報だぜレリウス・・・。プラネテューヌの女神候補生なんだけどよぉ・・・どういうワケか、『あの嬢ちゃん』の魂が混ざってたぜ・・・。

こんなの面白過ぎんだろぉ・・・?ケヒヒヒヒッ!」

 

「なるほど・・・それはとても良い知らせだ。感謝するぞテルミ・・・」

 

マジェコンヌに問われたテルミは思い出すように、レリウスに笑いがこぼれながら伝える。

それを聞いたレリウスも満足そうに笑みを浮かべながら仮面のズレを直した。

 

「?ネズミ、お前には解るか?」

 

「いや・・・さっぱりっちゅよ・・・・」

 

珍しくついていけなかったマジェコンヌじゃネズミに訊いて見たが、ネズミは首を横に振る。

 

「ああ・・・まあこりゃ仕方ねえよ・・・また今度話せるときにな」

 

「そうか・・・。さて、ネズミよ・・・そろそろ例の物を貰うぞ」

 

「分かってるっちゅよ・・・コレっちゅ」

 

テルミの言葉を聞いたマジェコンヌは頭を切り替えてネズミからアンチクリスタルを受け取る。

それを見たマジェコンヌは勝利を確信したかのような、いかにも悪役らしい笑みを浮かべた。

 

「これで四つ揃った・・・。さて、テルミ。レリウス。考えていた策は今のうちに頼むぞ」

 

「了解した。理論はすでに完成しているのでな・・・一時間もあれば終わる」

 

「ああ。頼む」

 

マジェコンヌはアンチクリスタルを四つ全てテルミとレリウスに向けて投げ渡す。

テルミとレリウスはそれを片手で一つ、もう片方の手でもう一つとキャッチした。

受け取りながら告げられた回答に、マジェコンヌは満足そうに頷いた。

 

「さて・・・奴らの準備が終わり次第始めるとしよう」

 

マジェコンヌの言葉にネズミは頷き、テルミは作業をしながら軽く右手を振り、レリウスはイグニスを使って作業をしていたため、振り向いて頷いた。

 

「今夜・・・世界というゲイムのルールが、塗り替えられる・・・」

 

夕陽を見ながら呟いたマジェコンヌの表情はこれからの世界を楽しみにしているものだった。




以上で新年一発目の投稿のお話になります。今回はちょっとだけメタ分多いですかね。

今回はワンシーンだけナインの登場となります。
本格的にラグナ達と絡んで行くのはもう少し先となりますね。

ギャグシーンどうしようか迷ったときに『業破抱擁』でパクメンになるハクメンを思い出し、今回のネプテューヌとノワールがスライヌとして投影されるシーンに使ってみました。タロ先輩はパクメン弄りながら超クオリティ高いって言って興奮で顔を赤くしてるし、近くにいたエマ先生も触ってみたくてそわそわしてるシーンがある辺り、パクメンの威力すげえなと(笑)。
ラグナの場合はデッドスパイクさんも考えていたのですが、業破抱擁繋がりならこっちだなと思いました。

次回で3話が終わるか終わらないかくらいになると思います。
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