超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER- 作:ブリガンディ
今回は3話の終盤辺りまで進みます。
また、キャラリクエストでラムダを出して欲しいと頂きました。
調整してうまく出したいと思います。
時間はすっかり夜となり、皆はベールが用意してくれていたゲームをまだやっていた。
俺とハクメンは投影を終了させたので、今は元通りである。セリカも途中までは参加していたが、体力が持たず途中で終了した。
そうして俺たちが楽しんでいる最中、ドアが開けられる音が聞こえた。
「何ですの?パーティーの最中に・・・」
「ベールお姉さま・・・それが・・・」
さっき一度席を外したチカが戻ってきて、ベールに持ってきた情報をひそひそと伝える。
その様子を見て一度ここまでだと判断したノワールは、手元にあったコントローラーの終了用のボタンを押した。
すると、さっきまでの森に囲まれた景色は元の教会の部屋に、モンスターの姿となっていた皆は元の姿になった。
「・・・あれ?もう終わり?」
さっきまでスライヌの姿で体を引っ張られていたネプテューヌは拍子抜けする感じがしているようだ。
ノワールは話の内容を確認するべくベールの方へ歩いていく。
「何かあったの?」
「それが・・・ズーネ地区にある廃棄物処理施設に、多数のモンスターが現れたと言う知らせがあったのですわ」
ノワールの問いにベールが返した答えは悪い知らせだった。
ベールは言うが早いか、仕事用のノートパソコンを開いて操作を始める。
「ズーネ地区・・・離れ小島ね。引き潮の時だけ地続きになるという・・・」
「モンスターくらいどこにでも出るっしょ?」
「国が管理している地区ですから、そんなことはあり得ませんわ・・・。
でも・・・事実のようですわね・・・」
ブランはベールが行った場所のことについて自分の知識の引き出しから情報を引っ張り出した。
引き潮だけ地続きか・・・。なんか嫌な予感がするのは気のせいか・・・?こう感じたのは、素体の隠し場所を見た時のようなことの経験からかもな。
また、ネプテューヌの言葉をベールは否定した。国が管理する際、基本的にその場にいるモンスターは一掃されてしまうそうだ。だからこそ、今回の事態がかなり異常だと言うのが良くわかる。
ベールが確認すると、パソコンの画面にはモンスターの存在を示すようにグラフで描かれていた。
どんな理由でも、国が管理する地域にモンスターがいることは事実で、それに対処せねばならない。パーティーの最中だったこともあります、ベールはため息混じりに呟いた。
「私・・・今から行ってきますわ」
「私も行くよーっ!」
ベールはもちろん一人で行くつもりだった。そんな中真っ先に同行を申し出たのはネプテューヌだった。
「ですが・・・これは私の国のことですから・・・」
「こうして私たちがいるのも何かの縁だしさ・・・手伝わせてよ」
「またお決まりの『友好条約を結んだから仲間』・・・ってやつ?」
「まぁねーっ!」
ネプテューヌのついていく理由に友好条約は最も理にかなったものだ。だがそれ以上にネプテューヌは善意を持って手伝うことを選んだのは想像に難くない。
そんなこともあって、ノワールに皮肉めいて言われてもあっさりと流している。
「私も手伝う・・・誘拐事件の時の恩を返すいい機会だから・・・」
ブランも善意で選んだことは間違いない。ロムとラムがこうして皆といられるからこそ、ブランが善意で手伝うことを選べる。
もしこの二人がいなかったら手伝わないどころか、このパーティーにすら参加しなかったかもしれないと思うと、あの時本当に助けられて良かったよ・・・。
そして本当に・・・俺のようにならないで良かった・・・。改めて俺は安堵した。
「よーし、じゃあ三人で・・・」
「私も行くわよっ!あなた達だけじゃどれだけ待たされるかわからないもの・・・」
ネプテューヌが言いかけたところにノワールが対抗するように参加を申し出る。
口ではこう言ってるけど、結局は善意なんだろう・・・。なんとなくだが俺はそう感じた。
「それなら俺も行くよ。あん時の恩・・・まだまだ返した足りねえからな」
「此の世界の秩序を乱す『悪』を滅するは我が使命・・・。故に私も行こう。
ラグナとの
「皆さん・・・」
俺とハクメンも参加を申し出た。
正直なところ、あん時俺を迎え入れてくれた恩はいくら返しても足りないくらいのものだ。
ハクメンは自分の行動方針の都合上もあるが、参加することに変わりなかった。
『黒き獣』の云々での詫びの分か・・・俺はもう気にしてねえからいいけど、やっぱりそれは皆次第か。
ベールは俺たちの手伝おうと言う気持ちが嬉しかったようで、表情が明るくなる。
「わかりました。では、6人で参りましょう」
「あ、あの・・・!」
ベールの言葉に頷いて早速向かおうとしたところで、ネプギアの声が聞こえたので俺たちはそっちを振り向く。
「私も・・・行きますっ!」
「えぇっ!?あ、アタシもッ!」
「私もっ!」
「・・・私も」
ネプギアは何と俺たちへの同行を申し出てきた。恐らくはただ見ているだけなのはもう嫌なのだろう。
ネプギアの一言が呼び水となったのか、ほかの三人も対抗するかのように参加の声を出す。
「ロム・・・ラム・・・。二人には悪いけど、今回は連れていけないわ・・・。遊びじゃないから今回は留守番よ」
「えーっ!?」
ブランはロムとラムの同行を拒否した。ロムが残念そうに俯くのに対し、ラムは不服そうに声を上げた。
ブランがこれから行く先は戦場になるし、何かがあったらロムとラムを守りながら戦うのは難しい。
だからこそ、二人には悪いが待ってもらうしかなかった。
「ごめんなさい・・・また今度、どこか出掛けましょう」
「・・・分かった。それなら今日はちゃんと待ってる」
「私もちゃんと待ってる・・・」
ブランの申し訳なさそうに出した提案を二人は一泊置いたものの呑んでくれた。
それを見たブランは安堵した。最悪は意地でも置いていくつもりだったのだろう。大人しく話を聞いてくれたことは、恐らくは誘拐事件の後ハクメンが加入したことが大きい。
「あなたも留守番よユニ。あなた、まだ変身できないんだから・・・」
「・・・・・・」
ノワールの言葉がかなり効いてしまったようで、ユニは俯いた。
これはノワールにとってはユニの身を案じてのことだったのだが、ユニにとっては力を認めて貰えないと言うすれ違いが起きているのが原因だろう。
「ネプギア、ここはお姉ちゃんを信じて待っててよ。たまにはいいとこ見せないとね・・・」
「・・・うん」
ネプテューヌは胸に手を当てながら得意げに言うものの、最後は苦笑交じりになってしまった。
だがそれでも、その言葉に安心したネプギアは一泊置いてから頷くのだった。
「それじゃあ・・・変身っ!」
「お前ら、また後でなッ!」
ネプテューヌの合図で四人が変身を始める。
それを確認した俺は猛ダッシュでこの部屋を後にする。ハクメンは『スサノオユニット』の恩恵でトンでもない身体能力があるから問題ないのだが、俺は違う。
このままだと俺だけ一人すげえ遅いという事態に陥るため、バイクを取りにいくのだった。
そして、バイクを取って中庭に戻れば、既に変身を終えた四人とハクメンが待っていた。
「大丈夫ね?」
「遅れて悪かった!もう大丈夫だ」
ノワールの問いに俺は詫びを入れながら答え、それを聞いたズーネ地区に出向くメンバーが顔を見合わせ頷く。
「それじゃあみんな、行くわよっ!」
「・・・承知ッ!」
ネプテューヌの合図にハクメンが代表するかのように力強く頷いた。
そして、女神は各自で空を飛び、ハクメンは地面を蹴って飛び降りて走り出す。
「あ・・・ラグナさんっ!」
「どうした?」
ハクメンも飛べない分、最大速度は幾らか女神たちに劣るのだが、それでも速い。
バイクである俺は小回りや加速が効かないから遅れると置いてかれる・・・。そのためすぐに走り出そうとしたところでネプギアに声をかけられてそっちを振り向いた。
「ちゃんと・・・帰ってきてくださいね・・・」
「・・・ああ。任せろ」
不安になっていたように見えるネプギアを安心させる為にも、俺がちゃんと帰ってくる為にも、俺は帰ってくることを誓った。
こうして答えている内に、かなり距離が開いてしまったので、俺は急いで皆の方へ走るのだった。
* * *
「ゲイムギョウ界・・・女神・・・シェアエナジー・・・。
聞いたことない単語がこんなにあるなんて・・・どうやらここが異世界であることは間違いないようね・・・」
夜の街を歩きながら、ナインはリーンボックスの街中で聞き、図書館で知ることのできた情報を整理していく。
女神のことを訊いたときはこの世界にも『ムラクモ』が存在しているのかと驚いたが、違うと分かって安心する。
そして、この世界に来て驚いたことが彼女にもあった。
「『紅の旅人』と『白き守護神』ね・・・。元の世界とは大分違う見られ方をしているようね」
二人の通り名は元居た世界と大分変わっている。
ハクメンは『六英雄』と呼ばれる暗黒大戦時代に『黒き獣』を打つ際に筆頭すべき活躍をした者の一人で、その中でも彼の強さは飛びぬけていた。
現在は当時の半分も力を出せていないが、それでも並の相手なら手をつけられない程強いので、もしゲイムギョウ界の人たちのために戦っているのなら『白き守護神』と呼ばれてもおかしくは無い。
ハクメンに対して、ラグナの方には大分驚いた。
ラグナの場合、元の世界では統制機構に反逆をしていたことから『死神』と呼ばれ、事情を知らない者から恐れられた。
しかしどういう訳か、今のラグナは自分の大切なもののために戦いながら、時折気の向くままに各国をふらりと旅回っていた。
ゲイムギョウ界に住む多くの人から信頼を寄せられ、彼の着ているコートを中心に、服装が旅人らしく見えるのもあって『紅の旅人』という呼び名は似合っていると感じた。
「さて、次はどこへ行くべきかしらね・・・」
現状、ナインはまだ情報が足りなすぎると感じていた。
恐らくは『境界』で真実を知ったときなど、元の世界では世界の根底にある情報を引き出せたことが起因しているのだろう。
レリウスと比べて狂気的なものではないが、ナインもそれなりに知識欲が高い方だ。
書物で多くの情報を引き出すのならルウィーを勧められたが、運の悪いことにナインはこの世界の通貨であるクレジットを持っていなかった。
そのため、現状はこのリーンボックス内でできる範囲で行動するしかないのだが、一般的な情報収集は既に終えてしまっていた。
また、シェアエナジーの根源は何かと聞いてみたところ、一般市民には「何を言っているのかさっぱり。シェアエナジーは人々の信仰が力になるものではないのか」とご定番のような返答をされてしまった。
しかし、それはナインの聞きたい情報ではなかったため、結果として空振りになってしまった。
「・・・今のままだとたどり着きたい情報にはたどり着けそうに無いわね・・・。そろそろ外に出向いてみようかしら?」
外にはモンスターと呼ばれる存在もいるため、自分の力がどれくらいかもわかるし、ここにいるよりは良いだろう。
そう判断したナインは早速移動を始めようとしたところで、誰かにぶつかってしまった。
「ごめんなさい。怪我は無い?」
「は、はい・・・ボクは大丈夫です・・・」
身体能力がそれなりにあるナインはちょっとぶつかっただけくらいなら平気であるため、真っ先にぶつかった相手を気にした。
非常にたどたどしいものの、無事だということが分かったので、ナインは安心しながら声のする方を振り向いた。
すると、目の前には街中で情報収集を行っていた際に、建物にかけられていたモニターで度々映されていた、水色の長い髪と頭にかけられているヘッドフォンが特徴的な少女が目の前にいた。
「えっと・・・あなたは5pb.・・・で合ってたわね?」
「あっ、はい。ボクは5pb.です・・・」
ナインが訊いてみると、確かに5pb.と名乗ったので本人だろう。モニター越しで新曲の宣伝をしていた時と比べて少し声が上ずっているような感じはするが、こちらが本来の彼女なのだろうとナインは考えた。
「いきなりごめんなさいね・・・。私はナイン。少し訳があっていろんな人に聞き込みをしているのだけど・・・良かったら協力をお願いできるかしら?」
「・・・・・・」
ナインの頼みに5pb.は少し考え込む。いきなり頼んだことなのだから無理もないとナインは思っていたため、急かそうとは思わなかった。
断られる確率の方が高いと思っていたナインの思考とは裏腹に、5pb.の表情が笑みに変わった。
「わかりました。ただ、立ち話しも難だから場所を変えましょう。ついてきて下さい」
「ありがとう。助かるわ」
5pb.の承諾と案内にナインは感謝してついていくことにした。
* * *
「しかしまあ・・・よくこんなにモンスターを集められたっちゅね・・・」
「でなければ、女神どもを纏めておびき寄せられんからな・・・」
ズーネ地区にて、多数のモンスターが地面から出てきたのを見てネズミが呟く。
本来ならばリーンボックス国内で管理しているこの地区にモンスターは現れないが、これらはマジェコンヌたちが地面の中に隠していた機械型のモンスターたちが動き出したものである。
ただし、モンスターがほんの数体だと女神が一人で倒して帰ってしまい、折角用意した女神を倒す為の用意がある台無しになるため、こうして多数のモンスターを集める必要があった。
女神たちを罠に掛ける為に大量のモンスターでおびき寄せる・・・。これはマジェコンヌが当初から考えていた策であった。
「女神がどのような魂を持つか・・・見ものだな」
「まあ、テメェはそうなるよな・・・。ああでも、俺様も楽しみだなぁ・・・自信満々な女神ちゃんたちが足元掬われた時にどんな顔するかがよ・・・ケヒヒッ!」
また、レリウスとテルミはこれから女神たちと対面するにあたって、違う理由ではあるが楽しみに嗤った。
「早く来い・・・女神ども。この私が貴様らに終焉を与えてやろう・・・」
「来いよラグナちゃん・・・今度こそテメェが絶望する時だぜ・・・ヒ・・・ヒヒッ!」
これから起きることに胸を躍らせ、マジェコンヌは帽子を摘まみながらほくそ笑み、テルミも笑みをこぼすのだった。
* * *
「(兄さま・・・まだ見つけてくれないのかな・・・?お姉ちゃんたちも大丈夫だと思うけど・・・胸騒ぎがする・・・)」
『少女とネプギア』はベランダからネプテューヌたちの向かった先の方を見ながら不安になっていた。
一つは未だ本当の意味で兄と再開できぬことに少女が。もう一つは姉たちに何かが起きるかもしれないというネプギアの不安だった。
「ネプギアちゃん・・・大丈夫?」
「ロムちゃん・・・。心配させてごめんね。ちょっと・・・会いたい人に会えないのが寂しかったんだ・・・」
「・・・会いたい人?」
不安に駆られる中、声をかけられたのでネプギアはそちらを振り向く。
声の主はロムで、こちらを心配してくれていた。ネプギアは謝罪して理由を話した。ここで「ありがとう」と出なかったのは後ろ向きの考えをしていたことが大きい。
また、その答えを聞いたロムは首を傾げながらオウム返しに訊いてきた。
「うん・・・今までずっと遠くの方で戦ってて・・・最近になって帰ってきたんだけど、またすぐにどこか行っちゃうの・・・」
「・・・戦う?ネプギアちゃん、もう戦いはしないってお姉ちゃんたち言ってたけど・・・。
その人は勝手に戦いを起こしちゃうの・・・?」
少女は自分が会いたいと思っている人物が最近していたことを大まかに、ネプギアとして話していく。
『あの日』に自分諸共大切なものを奪われ、それ以降は自分を助ける為に戦い、自分を助けた後はこの世界で自分にできることをしていた。
そして今、その人物はネプテューヌたちと共に現場に赴いていった・・・。いつものように何事もなく帰ってくると信じているものの、それでも会えないというのは寂しいものだった。
しかし、戦いと言う単語がその人物は女神の決めたことを破ろうとする人と誤解を招いてしまったらしく、ロムが体を振るえさせながら訊いてきた。
「ううん。そうじゃないの・・・その人はみんなのためにモンスターと戦ってるの。危険種の討伐もできるから、度々いろんなところで倒しに行くの・・・。それでみんなを護れるならって言ってた」
「じゃあ・・・悪い人じゃないの?」
「うん。不器用だけどとても優しい、いい人なんだ・・・」
「ほっ・・・良かった・・・」
ロムが体を振るえさせていたことに気づいた少女は誤解を正すためにその人物の戦いを正確に話す。
するとロムが戸惑いながら再び訊いてきたので、少女は背中を押すように肯定するとロムは胸をなでおろした。
「ネプギアちゃんとその人・・・早く会えるようにお祈りするね」
「・・・ありがとう。ロムちゃん」
ロムが胸の前で両手を合わせて目を閉じて祈る動きを見せる。それが嬉しく思った少女はロムに笑顔でお礼を言うのだった。
「でも・・・何でだろう?大丈夫だと思うのに、今日だけは胸騒ぎがする・・・」
「・・・ネプギアちゃん?」
「あっ、ううん!何でもないの・・・。冷えちゃうからそろそろ戻ろっか」
『少女とネプギア』は体をベランダの先の方へ向けながら再び不安の表情を見せた。それを見たロムは再び首を傾げた。
それに気づいたネプギアは慌てて話を打ち切り、ロムと一緒に部屋に戻る。
ネプギアはこの時の会話の記憶が全てハッキリとしていた。
「そう。分かった・・・ありがとうオトメちゃん」
「どうかしたんですか?」
部屋に戻ると、アイエフが電話をしていた。思った以上に真剣な表情であったため、ネプギアはアイエフに訊いてみる。
「昼間買い物に行ったときに見たネズミ・・・見覚えある気がして諜報部の仲間に調べてもらったの・・・。
そしたら案の定、各国のブラックリストに載ってたわ。要注意人物・・・と言うか要注意ネズミとしてね」
「えっ!?あのネズミさん、悪い人だったですか?悲しいです・・・」
電話の内容はネズミのことだった。自分が善意を持って助けた相手が悪人だと知ったコンパは悲しげな表情に変わる。
「しかも、数時間前にズーネ地区に船で向かったのが目撃されているの・・・。
そこには黄色いフード付きのコートを身に着けていた、体がかなり細い男もいたそうだけど・・・」
「・・・えっ!?黄色いフード付きのコート・・・?」
「セリカ、何か知ってるの?」
「気のせいだと信じたいんだけど・・・私の予想通りなら、とても危険な人・・・。
私の一回目の死は、その人の手にかけられたからだもの・・・」
アイエフの話を聞いたセリカは驚愕の声を上げた。セリカの反応を見てアイエフは訊いて見たが、セリカは自分でも半信半疑だった。
その最大の理由として、ラグナとハクメンの会話からその人物はラグナが倒したことをセリカは既に聞いていることが最大の理由だった。
「そんな奴がこっちに来てるのは大分危険ね・・・。
ネズミのこともそうだけど、今回のモンスターの件はそいつらが関与している可能性が高いか・・・」
アイエフは自分の考えを纏めながら危険な知らせが自分の中を駆け巡っていた。
ネズミがその人物と共にネプテューヌたちをおびき寄せ、その場で倒す為の策を立てているのなら伝えなければ不味いと考えていた。
「今ならまだ引き潮に間に合う・・・私、ちょっと行ってくるわ!」
「あ、あのっ!」
アイエフは短く告げてすぐにズーネ地区に向かおうとしたが、それをネプギアが引き留める。
「私も、連れていってください!」
「えっ?ダメよ。ネプギアまで危険な目に遭わせるわけには・・・」
「どうしても気になるんですっ!お願い、アイエフさん!」
―あの人だとしたら兄さまが危ないっ!
アイエフの拒否を振り切ろうとするのは、兄に無事でいて欲しいという少女の願いだった。
ネプギアも自分の胸騒ぎを確かめたいと思っているが、少女の思いの方が勝っていた。
その必死な頼みにアイエフは仕方ないと軽くため息をついた。
「分かった・・・。でも絶対に無理をしないこと。少しでも危険を感じたらすぐに撤退だからね?」
「ありがとう・・・アイエフさん!」
こうして、アイエフの指示に従うことを条件に『ネプギアと少女』は同行を許された。
そのままアイエフが用意していたバイクに二人乗りする形で夜の道を疾走し、ズーネ地区に向かうのだった。
* * *
「見えて来ましたわよ」
ズーネ地区の上空からモンスターの姿を確認したベールが三人の女神に一言知らせる。
変身を済ませている女神たちは視力にも恩恵を受けており、数十キロメートルも離れているにも関わらず、モンスターの姿を確認することができる状態になっていた。
「ゲッ!うじゃうじゃいやがる・・・」
今回確認したモンスターは球場の機械型で、非常に小型のモンスターが多数だった。その数の多さにブランは少々辟易した。
「でも数だけ・・・。来てもらった二人には悪いけど、これなら私たちだけで事足りるわね」
「そうね。無駄足にさせてしまうのは気が引けるけど、街にモンスターが行ってしまっては元も子もない・・・。
ここはすぐ倒しに行きましょう」
話している間に、女神たちのことを関知したモンスターたちが数体で集まって体を光に変えて融合を始める。
融合が終わり光が消えると、そこには四足歩行をする全身が緑色をしている機械型のモンスターがいた。
他のモンスターたちもそれぞれで集まっていき、最終的には四足歩行の機械型モンスターが四体になった。
四体のモンスターは四人に向けて、光弾による無数の砲撃を始める。
女神たちはその弾幕の間を縫うように避け、無理な攻撃は手に持っている武器で弾いてやり過ごす。
「この攻撃・・・私たちは平気だけど、ラグナたちは少し危ないわね・・・」
「確かにな・・・飛べる私たちはともかく、あいつらは限定的にしか空中にいられない以上、限度がある・・・」
モンスターの攻撃を避けながら、ネプテューヌたちは後から来る二人のことを危惧した。
「なら一人一体・・・。速攻で倒すべきね」
「それは良いけど・・・みんなで一体ずつの方が確実じゃないかしら?」
「ですが、一人一体請け負えばお二方へ攻撃が届く確率がかなり下がりますわ」
ノワールは分断を。ネプテューヌは集中攻撃を提案したところに、ベールが分断に賛成した。
ベール自身、何事も無ければネプテューヌの案に賛成したところだが、今回は女神で無ければ回避の難しい弾幕を張るモンスターが四体いる以上、後続の二人がこちらに来るまでは自分達で引き付けて安全を確保しておきたかった。
「ネプテューヌ。私も一人一体の方がいいと思う。
あれくらいの相手、私らならすぐに倒せるだろうからな」
ここでブランが集中攻撃を選んだ場合は平行線になってしまうところであったが、幸いにも分断を選んだことでそれは無くなった。
「・・・わかったわ。なら、すぐに終わらせましょう!」
最後にネプテューヌが分断を認めたことで話は成立し、ネプテューヌの掛け声に頷いて三人が先にモンスターの元へ向かっていき、ネプテューヌも一歩遅れてモンスターの元へ向かっていった。
モンスターが作り出している弾幕を掻い潜り、一番先にたどり着いたのはノワールだった。
「はぁっ!」
ノワールは一番近くにいたモンスターを右足で蹴り上げる。それによって蹴りあげられたモンスターは一瞬だけ宙に浮いて攻撃を止める。
また、他の三人へ砲撃を続けていたモンスターが一度攻撃を止めてノワールへ銃口を向けたが、ノワールは自分が攻撃を加えたモンスターの方を見続けていた。
モンスターがノワールへ一斉に攻撃をしようとしたところで、遅れてやって来た三人がブラン、ベール、ネプテューヌの順で最初の一体を省いて近い順に攻撃を加える。
それによってモンスターたちの攻撃が再び阻止される。
モンスターたちがそれぞれ自身を攻撃した相手に銃口を向けて攻撃をするが、四人の女神はそれを見抜き、上に飛んで避けながら背後に回り込む。
モンスターたちはそれぞれ背後に向き直るがすでに遅く、四人はそれぞれの技の構えを取り終えていた。
「レイシーズダンスッ!」
「テンツェリントロンペッ!」
「レイニーナトラピュラッ!」
「クロスコンビネーションッ!」
ネプテューヌの刀による連撃、ノワールの剣と足技による連携、ブランの斧を用いた全力の攻撃、ベールの槍による怒濤の突きを受けたそれぞれのモンスターは、四女神の攻撃に耐えられず光となって消滅するのだった。
「終ったな・・・」
「思った以上に早く終わりましたわね・・・」
「ね?言ったでしょ?速攻の方がいいって」
「そうね。あなたたちを信じて良かったわ」
辺りにモンスターがいないため、女神たちは反省会のような空気になっていた。
既に敵が仕掛けた罠の中にいることを知らぬまま・・・。
* * *
「変だな・・・。なあハクメン。いくらあいつらだからって、多数のモンスターをこんな短時間に葬れると思うか?」
「其れについては肯定したいところだが・・・私も回答は否だ」
ネプテューヌたちと違って地上からズーネ地区を渡っていた俺たちは今の状況を見て、お互いの意見を出していた。
あいつらが中枢だけを突破していったと言うのなら、道中のモンスターがおざなりになっていてもいいはずなのだが、そのモンスターが一体もいやしないので俺たちは疑問に思っていた。ちなみに、モンスターの光弾が見えてから消えるまで10分も満たなかった。
そして、暫く進んでいると坂道が終ったので俺たちはそのまま前に進んでみる。
本野少し進むと、バイクでそのまま降りると危険なくらいの急斜面が見えたので俺はバイクを止めて降り、斜面の先を見てみる。
そこにはモンスターの菅田など一切見当たらず、モンスターたちを既に倒し終えたであろうネプテューヌたちがそこにいた。
俺たちを見つけたネプテューヌがこっちを向いて手を振ってきたので、俺とハクメンは顔を見合せて頷いてから斜面を降りてネプテューヌたちの元へ向かった。
「わざわざ来てもらったのにごめんなさい。もう終わってしまったわ」
「あの弾の量見たらそっちに向いたときヤベエって感じてな・・・急いだ結果こうなったんだ」
「なるほど・・・そう言うことだったか」
ネプテューヌとブランの説明を聞いて俺は納得するように頷いた。カグツチでジンに会ったときと似たような状況なので、俺には油断できないからだ。
ハクメンもハクメンで、周囲になにか無いかを見回していた。
「・・・・・・!」
「どうしたハクメン?こっちに何かあるのか?」
「御前たち!今すぐその場から離れよッ!」
「・・・えっ?」
ハクメンがこっちを振り向きながら声を荒げて言う。
その様子からヤバイと思った俺はすぐに何度か飛び退いてその場から距離を取るが、四人はそのまま強行突破していたのが仇となり、困惑するだけに留まってしまう。
そして俺がある程度のところまで飛び退くと、地面が揺れる音がして、ネプテューヌたちのいるところの足元からいくつものコードのようなものが現れ、ネプテューヌたちに絡み付いて拘束する。
「何なの!?」
「・・・ザケンなよぉっ!」
「気持ち悪いわね・・・!」
「・・・こんなもの・・・っ!」
ネプテューヌたちは脱出するため飛ぶことによって高度を上げて、絡み付いてるコードを引きちぎろうとするものの、予想以上の強度があり、もう少しのところで地面に引き戻されてしまう。
「待ってろ!俺が今からそっちに行ってやるッ!」
俺は剣を引き抜いてネプテューヌたちの所へ駆け寄る。
何かあるかもしれないと思ってはいたが、まさかこんなもんを仕込まれてるとは思いもしなかった。
俺が皆の所へ走ってる間にも、皆は体力を奪われていき、飛ぶ頻度が落ちていく。それを見た俺は足を早めようとする。
「ラグナよ!止まれ!」
「っ!?今度は何だッ!?」
ハクメンの制止の声が聞こえた俺は、足を止めながらハクメンの方を見て問い返した。
「さて・・・。そろそろ幕だな」
「「・・・!」」
「あれが黒幕・・・?」
その問いに答えるが如く、女性の声が聞こえたので俺たちはそっちを振り向く。
するとそこにはまるで魔女のような奴がいた。
その姿を見たネプテューヌはそいつを見て疑問に思ったが、それに答えられるやつはここにいない。
また、その女性も今は答えないだろう。
「女神たちよ・・・我がサンクチュアリに堕ちるがいいっ!」
そう高らかに告げながら、目の前にいる女性は十字の形をした赤い光を放つクリスタルを楕円状の機械に嵌め込み、ネプテューヌたちの頭上へと投げる。
それがネプテューヌたちの頭上へ到着すると、地面から三つ同じものがコードで身動きを取れないでいる皆を囲むように現れる。
それからすぐに紫色の光線で三角錐に機械同士を結び、そこから紫色の光でその空間が満たされていく。
幸いにもハクメンの言葉を聞いて止まった俺は数歩手前の所で巻き込まれずに済んだ。
「な・・・!?」
「っ!?この光は・・・!」
俺は光が起きた瞬間だけ明るさが強かった為に思わず右腕で顔を覆った。
ブランはさっきの女性が投げた機械について何か知っているのか、驚愕の声を上げた。そして力が維持できなくなり、ブランは縛り上げられる形になる。
「くっ・・・!」
「力が・・・!?どうして・・・?」
さらにベール、ノワールも力が維持できなくなって縛り上げられる形になる。
「あの石・・・アレを破壊すればっ!」
ネプテューヌは身動きの取りづらい状態のなか、刀を機械に向けて放り投げるが、その切っ先が届く前に刀が消滅してしまった。
「!?うっ・・・ああっ!」
そして、ネプテューヌも力が維持できなくなり、縛り上げられる形となってしまった。
「シェアエナジーを力の源としているものはその石に近づけない・・・。
それが例え武器であろうと、女神自身であろうとな・・・。」
そして、ネプテューヌたちの努力を嘲笑うかのように女性が告げる。その話を聞きながら俺は一つ気がついた。
「シェアエナジーが効かねえなら・・・これでどうだっ!」
俺は自分の剣を、一番近くにあった機械に突き立てようとするが、左側から殺気を感じて飛び退く。
するとそこを赤紫色の影が通りすぎて行き、その影は突然ワープでもしたかのように消える。
「ラグナ、大丈夫!?」
「何ともねえ!大丈夫だ!」
ネプテューヌの問いに俺はなるべくいつものように返した。正直なところ、ネプテューヌたちを今すぐ助けたいところだが、今はさっきの影をどうにかしない限りできそうになかった。
俺たちが影を探すと、そいつは魔女のような女性の隣に佇むようにたっていた。そして、俺とハクメンはその姿に驚きを隠せなかった。
「・・・イグニス!?」
「まさかだが・・・奴も此の地にやって来ていたとでも謂うのか!?」
「ご明察だ。ハクメン。そして『蒼の男』よ」
俺たちの疑問に肯定しながら、その男は突然現れ、当然のようにイグニスの隣まで歩いてきた。
「あなた・・・何者?」
「お前たち女神は初見となるな・・・。
私はレリウス=クローバー。『
「私たちの魂・・・どういうことなの?」
仮面の男。レリウスは自分の連れであるイグニスを見せながら自分の目的を告げた。
ノワールのみならず、四人は困惑しているが、今はそれをゆっくり話すことはできなさそうだ。
「レリウス・・・テメェ。どうやってここに来た?」
「お前たちには『窯』を使ったと言えば・・・もう解るだろう?」
「貴様・・・『境界』を渡って来たという事か・・・!」
俺の問いにレリウスが答えただけで俺たちはすぐに解った。
俺とハクメンも『窯』を使って世界を渡ったことはあるが、どちらも現代から過去へ行ったものだった。
「さて・・・私の目的は話した。そろそろ此れの正体を話すといい」
「そうだな。
その石の名はアンチクリスタル・・・。シェアエナジーとお前たちのリンクを遮断し、力を失わせるものだ」
「・・・アンチクリスタル・・・?」
レリウスの促しに答えた女性がネプテューヌたちの力を奪ったものの正体を告げる。
ネプテューヌが繰り返すように疑問を呟いた瞬間、フラッシュ音が聞こえる。その音の方を見てみると、そこにはカメラで写真を取っているネズミがいた。
「ちゅ~・・・いい写真っちゅね・・・。これは世間に大旋風を起こすっちゅ・・・」
ネズミはそんなことをごちながら更に撮影を続ける。
「こん畜生が・・・」
「こんなこと・・・タダじゃ済まさないわよ・・・!すぐにブッ飛ばしてやるんだから・・・!」
四人はネズミに撮影をされて屈辱の表情をする。
動けないところを撮影して晒しの準備・・・間もなく晒し上げられることを考えたら、これ程恥辱感を煽るものは無かった。
「クソ・・・!さっきはダメだったが、今度こそ・・・!うおぉっ!?」
俺はもう一度剣をアンチクリスタルが入っている機械の一つに突き立てようとしたが、今度は剣が届く前に俺が弾き飛ばされてしまった。幸いにも大した威力はない為、俺はすぐに両足を滑らせてながら体制を立て直した。
「ラグナが弾かれた・・・!?何でだ!?ラグナは女神じゃねえだろッ!?」
「まさかですが・・・あの時、ラグナさんの右腕に宿ったシェアエナジーが妨げているんですの?」
「『蒼炎の書』が・・・!?オイオイマジかよ・・・」
俺はベールの出した結論に愕然とした。『黒き獣』の進行を完全抑制しているシェアエナジーがここに来て足を引っ張る形になるなんて思いもしなかったからだ。
幸いにも剣は届くだろうが、それをやったら今度はイグニスを使って俺を排除することは目に見えていた。その際剣もどこかへ弾かれる以上、俺にはどうすることもできない。
「ならば私が行こう・・・!」
「・・・イグニス」
俺がダメならとハクメンは『斬魔・鳴神』を抜き放ってアンチクリスタルの方へと走る。
しかし、レリウスの指示を受けたイグニスが鎌状の刃に変えた右手を右から斜めに振るってハクメンを妨害する。
ハクメンはそれに対して『斬魔・鳴神』を上から縦に振り、それを弾き飛ばすようにして返すしかできなかった。
そして、準備が出来たと言わんばかりに下側にある機械が地面に隠れてしまった。
「・・・隠されたか・・・!」
「悪いが、盟約の手伝いなのでな」
ハクメンの怒気の籠った声を前にしても、レリウスは相変わらず涼しく返した。
「フフフ・・・さてどうかな?アンチクリスタルの結界の中ではお前たち女神は少しづつ力を失っていく。
お前たちの勝ち目は刻一刻と薄れていくぞ?」
「こっちがダメな以上、向こうを取り押さえるしかねえか・・・!」
女性の煽るような言葉を聞き、俺は自分にできることが減ったことにイラつきながらも、今はできることをやるべく頭を切り替える。今の俺にはあの魔女とレリウスを止めることしかなかった。
「ならば・・・私がレリウス=クローバーを受け負おう。御前はあの魔女を頼む!あのネズミは現状後回しだ」
「ああ。任せろッ!絶対に助けてやる!」
「来るか・・・良いだろう。
『六英雄』ハクメン・・・此の世界ではどのようなモノとなったか見せてもらおう」
俺たちは手早く担当を決め、それぞれの相手に向かって行く。
ハクメンが来るのを見たレリウスは左指で音を鳴らしながらイグニスを呼び戻してほくそ笑む。
一方、女性の方は距離があるからなのかまだ動こうとはしない。
「さて・・・お前の出番だ。『死神』・『ラグナ=ザ=ブラッドエッジ』を葬るのだろう?」
「っ!テメェ・・・その名をどこで・・・。・・・!」
俺は走りながら聞こうとしたが、その女性の右側辺りから緑色のモノがこっちに飛んできたため、俺は剣を右から斜めに振り下ろして弾いた。そして、弾いた瞬間にハッキリと見えたモノに俺は驚愕した。
「『ウロボロス』だと・・・!?てことはまさか・・・!」
「ヒャハハハハッ!そうよ!そのまさかよッ!」
俺が弾いたモノの正体は
そして、『ウロボロス』を飛ばしてきた主が高笑いをしながら肯定する。やや高い男の声だ。
その男は黄色いフード付きのコートが特徴的で、体はかなり細く、肌は生気が抜けているのではないかと思うくらい白かった。
その姿と声を俺は忘れる筈が無かった。そいつは、俺の目の前でシスターを殺し、ジンを利用してサヤを連れ去り俺の右腕を切り落とした男・・・。
「こん時を待ってたぜェッ!さあラグナちゃん・・・。俺にブッ殺される覚悟はできてるか?ヒャァーッハッハッハッハァッ!」
「テルミだと・・・!?テメェもこの世界に来たってのかッ!?」
俺は目の前の光景を信じられなかった。俺が『蒼の境界線』で全身全霊の力を使ってまで葬った男・・・ユウキ=テルミが再び、俺の目の前に立ちはだかったのだった。
今回はギリギリ3話の部分が終了していません。
ようやくラグナとテルミを対面させることができました。ここから上手く書けるように努力していきたいと思います。
マジェコンヌが用意していた策に今回はテルミたちが手を加えている訳ですが、その正体は次回に明かしたいと思います。
次回はラグナたちとテルミたちが対決する話になります。