超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER-   作:ブリガンディ

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今回からアニメの4話に入ります。
タイトルで誰が来るかは丸わかりかもです(笑)。
後、今回殆ど三人称です。


25話 もう一人の『ブラッドエッジ』

アイエフと一緒だったとはいえ、『ネプギア』がこっちに来ていたことに俺は驚きを隠せなかった。

もしかしたら今テルミたちと一緒にいるネズミとかの話かもしれない・・・。もしそうであれば、俺たちだけで向かったのは相当な悪手だった可能性が出てきた。

だが、そんな思慮をしている時間は許されねえようだった。

 

「・・・ほう?この魂の形は・・・。テルミ、あの少女がお前の言っていた存在だな?」

 

「おうよ!あいつがさっき俺の言ってた、『生まれ変わり』かも知れねえ存在だ・・・」

 

「ネプギア・・・?くっ!ネプギアに手出しさせて堪るもんか・・・!」

 

レリウスが『ネプギア』のことに気づき、テルミと共に悪趣味な会話をしながら狂気的な笑みを見せた。

それに反応したネプテューヌは無理にでも動こうとするが、コードにがっちりと縛り付けられているせいで全く身動きが取れないでいた。

 

「こんな時に動けないなんて・・・!アイちゃんお願いっ!ネプギアを連れて逃げて!早くっ!」

 

「分かってる!・・・ネプギアっ!早く逃げるわよっ!」

 

「いやぁっ!兄さま・・・お願い・・・!私を置いていかないでっ!一人にしないでぇ・・・っ!」

 

この状況でもネプテューヌは友人であるアイエフのことに気づいており、絶対に聞こえさせるために声の出る限り。叫ぶようにアイエフに頼む。

アイエフは『ネプギア』の腕を掴んだまま促し続けるが、もう片方の状態が出ている影響で、全く話を聞いちゃいなかった。

今の『ネプギア』はいつもの少し引っ込み思案な時もあるが、真面目で姉譲りの正義感のある聞き分けの良い少女ではなく、俺との別れを恐れる一人の少女だった。

 

「くっ・・・!サヤ・・・」

 

現に今、『ネプギア』は俺に対して泣きながら懇願している。

俺は殆どまともに動けない状態でもう一つの呼び方をしながら立ち上がろうとするが、まるで全身に重しが乗ったかのようにゆっくりとしたものになってしまっていた。

 

「おうおう・・・まだ立ち上がんのかぁ?あの嬢ちゃんの為にわざわざご苦労なこったなぁ・・・。

テメェもテメェで残念だったなァ・・・どうやら、今の(・・)テメェの妹はラグナちゃんしか目に映ってねぇんだもんなァ・・・ケヒヒヒヒッ!」

 

「っ・・・!あんたって人はぁ・・・!」

 

「ヒヒヒッ・・・!いいねぇその顔・・・俺への『憎しみ』を確かに感じるぜェ・・・!」

 

ネプテューヌがテルミへの殺気を向けて数瞬の後、テルミの体から微かに碧い炎のようなものが溢れる。

そして、それはテルミが満足したからもういいのか、すぐに消えた。

また、この時ネプテューヌの足元から何らかの黒い水が零れていたのだが、それに気づいていたのはマジェコンヌだけであろう。

 

「ああ・・・忘れるところだったわ。

レリウス!どうすんだ?あの嬢ちゃんとっ捕まえるんなら俺がハクメンちゃんの相手やろうか?」

 

「感謝するぞテルミ・・・。では、十秒で交代だ」

 

「レリウス=クローバー・・・貴様を逃がす訳には行かぬ・・・ッ!」

 

『斬魔・鳴神』とイグニスの腕がぶつかる状況下、ハクメンはそのまま力を入れてイグニスを押し飛ばそうとするが、イグニスは妙に強い力であまり動かないで踏みとどまっていた。

そして、暫く押し合いが続いていたが、そこに『ウロボロス』を割り込むように送り込むことで、テルミは二者に後退を強いる。

そこからそのまま『ウロボロス』で虚空を掴み、ワイヤーアクションのごとく『ウロボロス』で移動してテルミはレリウスとハクメンの間に立った。

 

「交代完了だ・・・後は俺様に任せな」

 

「感謝するぞ。では、私は対象の確保(・・)に向かうとしよう」

 

言うが早いか、レリウスは仮面の下から極めて危険な笑みを見せて『ネプギア』の方へと歩き出した。

 

「テルミ・・・『ラグナ=ザ=ブラッドエッジ』を始末しないで良いのか?」

 

「今は平気だ。レリウスがあいつ連れてくんのに、ハクメンちゃんがフリーだとおちおち移動できねえからな・・・。

まあ、これができんのもラグナちゃんがボロボロなおかげなんだけどな・・・」

 

「確かにな・・・さて、ネズミ。そろそろ隠れる必要も薄れただろう。アレの準備を始めてくれ」

 

「了解っちゅ。さて・・・回線はっと・・・」

 

マジェコンヌの問いにもテルミは余裕そうに返した。

それを聞いて満足したのか、今度はネズミを促し、それを受け入れたネズミは作業を始めた。

この際、テルミのことや、ネズミのこと以上に大事なことが一つできた。それは・・・・・・。

 

「さて・・・お前の魂・・・余すことなく私が調べつくしてやろう・・・」

 

「・・・!ああ・・・」

 

「サ・・・サヤ・・・!・・・ッ・・・逃げろ・・・ッ!ぐぅ・・・ッ!?」

 

『ネプギア』を逃がすことだった。レリウスに捕まったらそれこそ本当に終わりだ・・・。絶対に助けなきゃ行けなかった。

そのため、剣を杖代わりにしながらそっちを振り向いて呼びかけるが、体全体に走る痛みに負けて再び膝をついてしまった。

 

「に・・・兄さまっ!」

 

「何してんだ・・・ッ!?早く逃げろ・・・ッ!サヤ・・・ッ!」

 

「どうして・・・?やっと会えたのに・・・っ!どうしてまた・・・離れ離れにならないといけないのっ!?」

 

俺が促しても大した効果を見せなかった。こうなると残りはすぐに戻って安心させてから一緒に逃げることだが、俺の体がボロボロなことからそれを許さない。

そうしている間にもレリウスは更に歩を進めて『ネプギア』に近づいていく。ゆっくりと歩いてることが幸いなことだが、それでも後数分すればレリウスの手が届いてしまう。

 

「クソがァ・・・ッ!こんな時に動けねえのかよ・・・ッ!・・・!?」

 

俺が毒づきながらどうにか動こうとすると、右腕から妙な重みを感じ、蒼い炎のようなものが出ていることが分かった。質が悪いことに、普段より重みが増している。

同じ日にまさか二度も起きるとは思っていなかったため、俺は驚く。いや、俺以外にもネプテューヌたちも驚いてはいるが、それに気付く余裕は無かった。

 

「また誰か来るの・・・!?」

 

「どうやら・・・そうみてえだな・・・」

 

ネプテューヌの問いにも俺は擦れたような声で返すのが手一杯になっていた。その反応は一つと・・・微弱な一つだった。

その蒼い炎のようなものが消え、そのやってきた人物たちを位置を示す方向は上で、それもすごい速度で下へと変わり始めていた。

・・・・・・要するにそいつは絶賛落下中だった。恐らく落ちる先はこのズーネ地区だろう。

 

「(頼む・・・味方と思える奴であってくれ・・・!)」

 

動けない体でいる中、俺はただ願う事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「うおぉぉぉおおおっ!?」

 

視界がハッキリした瞬間落下していたので、少年は驚いた。

目の前に広がるのは夜空であるため、ここがどこであるか把握ができないでいた。

 

「えっと・・・確か俺は『あいつ』を助けてから魔素になって・・・」

 

黒い薄着を身につけた癖っ毛のある茶髪をした目つきの細い少年は自分が最後にしていたことを思い返す。

自分は『ご主人様』に「可能性を救え」と言われて行動し、その可能性を宿している・・・自分と信じられないくらいに似ている青年が暴走によって『全ての可能性』が消滅する寸前のところで助け出し、役目を終えた自分は魔素となってあの世界を去った。自身が元の世界に戻れる可能性をその青年に託して・・・。

そして視界がハッキリした瞬間・・・少年の体感としては消えて数秒もしないで落下している状態でいたのだった。

 

「い・・・一体何がどうなってんだ!?」

 

《ナオト!聞こえる!?》

 

混乱している少年・・・黒鉄ナオトを呼ぶ声が聞こえた。それは少女のものだった。

 

「・・・!?ラケルか!?つかお前、それ一体何があったっ!?」

 

ナオトは自身の『ご主人様』であるラケル=アルカードの状態を見て驚いた。

ラケルは本来、綺麗な金髪にどこか冷ややかさを感じる金色の瞳を持った小柄な少女なのだが、今現在は手のひらに収まるくらいな大きさの黄色い光の球となっていた。

―何が何だかさっぱりわかんねえッ!マジで何があった!?ナオトは混乱するばかりだった。

 

《これの状態のことも今から簡単に説明するわ。時間がないから、詳しいことは後で聞いてちょうだい》

 

「わ・・・分かった!」

 

ラケルの有無を言わさぬような物言いに、ナオトは頷くしかなかった。

とにかくまたあの世界のようにどこか走り回るんだろう。ナオトは既にその点の覚悟は出来上がっていた。

 

《まず、あの世界で役目を終えて、『あの男』が世界を救った以上、貴方は本来元の世界にはずだった・・・。

でもその際にトラブルが発生して、貴方は今この世界に来てしまったの・・・》

 

「そのトラブルって?」

 

時間がないと言った以上、ここで文句を垂れてもラケルは答えてくれないのが解っていることと、もうこんなドタバタのようなことに慣れていたナオトは大して動じることはせず、トラブルの原因を訊こうとした。

恐らく元の世界に居ない以上、何かやることはあるのは確実なので、ナオトは自分の状況の整理を優先することにした。

 

《貴方があの世界から消えた時・・・ほんの一瞬とは言え、ここで私と貴方の繋がりにずれが起きたの。

そこへ更に、この世界にいる『ある少女』が貴方を『あの男』と誤認して貴方をこの世界へ呼んでしまったのよ・・・。

その少女は力の扱いが不安定だから、これからも・・・貴方のようにうっかり呼ばれてしまう人たちがやって来る可能性も考えられるわ》

 

「・・・なるほど。俺と『ラグナ(あいつ)』は妙に似てるらしいからな・・・」

 

ラケルの説明を聞いたナオトは自分でもびっくりするくらいにあっさりと納得できた。

これには、自分がレイチェルをラケルと誤認したように、あの世界での多くの人が自分をラグナと誤認したのと同じだったからだ。

 

《どうやらそのようね・・・。

それと、前回は辛うじて声はそちらに届く状態だったのだけれど、今回は以前ほど繋がりが酷い状態ではないから・・・こうして貴方のそばで私の魂の一部を形にして送ることで貴方と共に行動できるようにできたわ》

 

「そりゃありがてえ・・・ああそうだ。こっちで俺は何をすればいいんだ?それを訊いて無かった」

 

ナオトがここで自分の役目を訊きに行ったのは、ラケルが最初に言った「詳しいことは後で」と言われたから今は聞いても意味がないと判断したのである。

この世界でのやるべきこと・・・それはナオトが本来自分のいた世界に帰るため最も重要なことだった。

この時、ラケルはナオトに一つだけ隠し事をしているが、これは落ち着ける場所でしっかり話そうと思っていた。

 

《『可能性の象徴(あの男)』は今、この世界で生きているわ・・・。だからナオト、貴方はこの世界で『あの男』を助け、この世界をより良い方向へ導く手伝いをするの。

幸い、前回と違って時間が無いから急げと言うことは無いわ・・・。悩んでも、立ち止まってもいい・・・最終的にこれでいいと思える方向に導けるようにするの・・・いいわね?》

 

「ああ・・・任せろッ!俺がぜってえ良い方へ変えてやる!それに・・・いつか本当のお前も見つけてやる!・・・約束だ!」

 

ラケルの話を聞いてナオトは迷うことなくそれを受け入れた。

始めてラケルと出会った時こそ無茶苦茶な奴だとナオトは感じていたが、今はそんなことは全く無かった。

慣れてきたと言えばそこまでかも知れないが、自身が死にかけた時に結んだ契約として「『蒼』を手に入れて私を見つけなさい」と言われ、ナオトは「見つけ出す」と約束をしていた。

それを裏切ることは自分の恩人と、何よりも自分自身を裏切ることになるため、ナオトは拒否をしなかった。もし拒否したのなら、ナオトは自分自身を許せないだろう。

 

《頼もしいわね・・・。流石、あの世界で私の与えた無茶な役割を果たしたことだけあるようね・・・》

 

「みんなを助ける為なんだ・・・何てことねえよ」

 

ラケルの安堵の声が混じった称賛を聞いて、ナオトは柔らかな笑みを見せて返した。

その目つきの悪さから、時折第一印象で他人に怖がられる可能性のあるナオトであったが、笑っている時は間違いなく少年らしい明るさを見せていた。

 

《っ!ナオト!『あの男』の居場所が特定できたわ。よく聞きなさい》

 

「マジかっ!?どこなんだ?」

 

ナオトはラケルから飛んできた朗報に食いつく。今回の目的の為に、ラグナの情報は最も重要なものだったので、ナオトは何としても聞きたかった。

 

《・・・・・・この真下よ》

 

「・・・・・・」

 

ラケルの予想外過ぎる回答にナオトは呆然とする。

―真下?何をどうしたらそんな回答が出てきたんだ?そう問おうとしたところでナオト周りが突如雲で覆われたことで、ナオトは自分の置かれている状況を思い出した。

 

「・・・はぁっ!?って、そっか!そりゃそうだよな!?いきなり落下してたもんなそう言えばっ!

ラケルっ、何か落下を抑える手段はあるか!?」

 

《・・・・・・》

 

自身は絶賛落下中であったことに―。素っ頓狂な声を上げながらもナオトはそこまでパニックに陥らずに済んだ。

前にもこうして落下を経験したことがあったので、慣れによってナオトはそこまで慌てないで済んだのである。・・・こんなことに慣れたくは無かったのだが、慣れてしまったものは仕方ない。ナオトは若干ながらこのことには諦めが付いていた。

ナオトは最後の望みとしてラケルに訊いてみる。すると、ラケルは何か申し訳なさそうに黙りこくってしまった。

 

「お・・・おい、ラケル?」

 

《ナオト・・・》

 

不安になって思わずもう一度聞いたナオト。するとラケルは彼の名を呼んで一泊置く。

 

《ごめんなさい。今すぐには用意できないわ・・・幸い私との契約のおかげで身体能力は上がっているのだから、それで何とかしなさい》

 

「な・・・・・・」

 

そして、ラケルから告げられた回答は無慈悲なものだった。それを聞いたナオトは一瞬呆然とし・・・。

 

「何でこんな時だけ不都合なんだよおおおぉぉぉぉぉおおおおッ!?」

 

ナオトは情けない声を上げながら、成す術もなく地面に向けて背から落ちていった。

それをラケルは置いていかれないようについていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

時間はラグナがテルミと対決している最中に遡る。

リーンボックスの端っこにあるアパートの一室で、ナインは5pb.にいくつか質問をしていた。

今回ナインが聞いていたことは、シェアエナジーについてだった。

5pb.にシェアエナジーと人々の関係性を聞くと、「人々の信仰する心がシェアとなり、それは女神にシェアエナジーとして力を与える。また、女神はその力を使って土地を良くしていき、人々を護る為に使う」・・・と大体の人達と似通った回答が帰ってきた。

ここまでくれば、シェアエナジーと人々の相互関係は間違いないと踏んでいいだろう。そうナインは判断を下した。

 

「なら質問を変えるわね。シェアエナジーの根源・・・それが何かは解るかしら?」

 

ナインは本来聞きたかったものを訊くために本題に踏み込むことを選んだ。

一般の人達は聞いても「それが当たり前」と言うかのように味気ない回答しか返ってこなかったため、あまり期待してない面と、5pb.のようにそれなりに立場が変われば別の回答が来るかもしれないという期待もあった。

 

「こ・・・根源?ごめんなさい。ボクもそれについては解りません・・・。せめて、教会の人達なら何か知ってると思うんですけど・・・」

 

「いえ・・・大丈夫よ。流石に無理があったみたいね・・・」

 

ナインは5pb.の回答を聞いて自分が相当無茶苦茶な質問をしていたことを反省する。

しかしながら、そんな中でも5pb.はヒントのようなものをくれただけありがたかった。

また、5pb.は本来極度の人見知りであったそうなのだが、意外と早めにナインのことは慣れていたらしく、今は殆ど普通に話している。

 

「(そうなると・・・教会に行くべきかしらね?)」

 

『エンブリオ』にいた頃であれば、間違いなく一言入れてすぐにこの場を立ち去っていただろう。

だが今回は時間もあることと、どうするべきかを考えている以上、急ぐ必要もないのがあった。

 

「あの・・・ボクからも一つ訊いてもいいですか?」

 

「構わないけど・・・何を聞きたいの?」

 

「え、えーっと・・・」

 

「・・・?」

 

5pb.に質問されて了承するナイン。しかし、そこで5pb.が迷うようなそぶりを見せるので、用意してもらっていたコーヒーの入っているカップを手に持ったままナインは首を傾げる。

ちなみに、ナインの手にするコーヒーは5pb.が用意できていたものに砂糖を入れているが、一袋5g(グラム)分の砂糖を大量に入れていたのを見た5pb.は一瞬だけドン引きしてしまったのだ。

最初の3袋までは甘党なのだろうと軽く流せたが、4袋目から怪しくなり、7袋も入れた時は顔に出てしまっていた。

そんな苦みではなく、甘味しか感じないコーヒーを一口飲んで、ナインがカップを置いたところで5pb.は決心を固めて聞くことを決意する。

 

「ナインさん・・・もしかしてあなたは、どこか違う世界から来た人なんですか?」

 

「・・・!」

 

5pb.の質問にナインは息を飲んで目を見開いた。この時、コーヒーを口に含んだままでなくて良かったとナインは心底安心した。

しかし、ナインは自身の出身が見抜かれているのを確かに感じ取っていた。

 

「確かにそうだけど・・・どこで気が付いたの?」

 

「シェアエナジーの根源っていう聞き方をしてきた時かな・・・。

仕事柄、色んな人と話すことはあるんですけど、シェアエナジーを・・・引いてはシェアのことをそこまで深く踏み込んで話す人なんて一人もいませんでしたから・・・」

 

「・・・なるほど。そういうことだったのね・・・」

 

一応理由を訊いてみたが、5pb.適格な回答を聞いてナインは納得する。

また、それと同時に女神たちにとってもシェアエナジーは元々そういうもので片付いてしまっていると言う結論を付けた。

 

「そうね・・・こうして一方的に訊いてばかりなのも釣り合わないでしょうし、私のことも話しましょうか・・・」

 

そして、ナインは5pb.に自身のいた世界と、そこで歩んだ自身の道を話すことにした。

まず初めに家族は両親と妹、そして自分の四人家族であったこと。母親は妹を生んだ直後に死んでしまったこと。

父親が妹のことを子として以外に、研究対象としても見てたことから父親には嫌悪感を抱き、妹はつけていた父親のミドルネームを、自分は付けなかった。

また、妹は絶対に自分が護るとこの時心に誓ったこと。

やがて月日が経ち、魔法の扱いに長けていたナインは、とある魔法学校で十聖と呼ばれる存在にまで登り詰め、以後はその時九番目に十聖になったから『ナイン』と言う名を授かり、以後はこの名で普段を過ごすようになったこと。

それからしばらくして、父が実験を行っていた国に核が撃ち込まれて数年後、その国で生存者がいると聞いた妹が行方不明になった父を探しに飛び出してしまったので、友人に手伝ってもらいながらも必死に探したこと。

その時に妹を見つけると同時に片目と片腕が動かない青年・・・『ブラッドエッジ』とであったこと。また、その後に自身の夫になる者とであったこと。

父親の実験の内容を知り、その過程で生まれた『黒き獣』を止めるために妹が我が身を犠牲にしようとしたところで、『ブラッドエッジ』が代役を買って出て、自身に一年で『黒き獣』を倒す手段を作り上げることを約束させたこと。

そこからは妹を狙う者達から、妹を必死に護りながらその手段を完成させ、『黒き獣』を倒したこと。

ただしその後すぐに、『黒き獣』に勝つために、拘束付きで解放した危険人物の手段に友人が引っかかってしまい、その危険人物の急襲を受けた自分は入ってしまえば帰ってこれない危険性の高い場所に放り込まれてしまったこと。

 

その場所に放り込まれて世界の真実を知った自分は神様として仕立て上げられていた少女に激怒した。

自分はその少女によって作られている予定調和の世界を破壊するために行動しようとしたが、出られないことにはどうしようもなく、逆に危険人物に拘束をかけられて暫くの間利用されてしまったこと。

そして潔くその拘束から解放された瞬間、予定調和で作られた世界の完全破壊の為に行動を開始し、その途中で再び現代を生きる『蒼の男』・・・『ブラッドエッジ』その人と顔を合わせたこと。

意見の違いから『蒼の男』らと敵対し、自分は敗北したこと。また、その直後に自分はその『蒼の男』が世界を変えることに賭け、自身の命を投げ出したので本当は死んでいるはずであること。

ただ、どの時も自分が護ると決めていた妹は結果的に他人が助けていたことが殆どで、自分が時々情けなく感じたことを話した。

 

「どうしてか解らないけどまたこうして動ける身になっていたわ・・・。この世界のことが全く分からないから、色んな人に聞いて回ってみていた途中であなたと会って今に至るわ」

 

「なるほど・・・そんなことがあったんですね・・・」

 

「意外と驚かないのね?」

 

「とんでもない!寧ろ驚きっぱなしですよ・・・」

 

5pb.が声を上げたりしなかったので、もしやと思ったナインが訊いてみると5pb.は普通に驚いていたようで、両手を前に出して首を横に振りながら主張した。

流石にこんな話をして驚かない筈はないだろう。この時、ナインは知らないことではあるが、ラグナも皆に似たような話をして既に驚かせている。

 

「そう言えば、『蒼の男』って人のことを聞いてみて思ったんですけど・・・あの紅の旅人にそっくりですよね?

もしかして・・・何か関係があるんですか?」

 

5pb.はナインの言う『蒼の男』が非常に気になっていた。5pb.はラグナのことをニュース等で時々彼の話を聞いたりするのだが、そのラグナの外見や性格等があまりにも似すぎていたのだ。

 

「ああ・・・『蒼の男』はね・・・紅の旅人その人なのよ」

 

「え・・・ええぇぇぇぇぇええええっ!?」

 

ナインから予想以上の回答が帰ってきて、5pb.は一瞬だけ飛び上がってしまう。

もしかしたら何か関係性があるかもしれないと思っていたが、まさか同一人物だったとは誰が信じられただろうか?恐らくは無理であろう。

 

「フフ・・・素直な反応ね」

 

そんな5pb.の様子を見ながら微笑みを浮かべたナインはラグナの動向が気になって現状を『観測』ることにした。

前回確認した時にこの魔法は解除しておこうと思ったのだが、暫く離れる以上、いざ合流するときに場所がわからないとどうしようもない為解除はしなかった。

左手を円型テーブルの上に置き、手のひらに蒼い光の球を出現させ、様子を見てみる。

 

「・・・!」

 

そこに映された光景にナインは絶句する。

周囲の状況が現れるや否、視点がゆっくりと持ち上がっていることからラグナが非常に危険な状態であることが容易に伺え、更に目の前には自身が最も憎む外道がいた。

 

「ユウキ=テルミですって・・・!?あいつまでこんな所に来てるの・・・!?

それに、その右側に映っているのは・・・」

 

自身の妹を死なせ、友人を利用した仇敵ユウキ=テルミがこの世界にいることを確認してナインは驚きを隠すことができなかった。

一瞬ラグナが何故負けているかが分からなかったが、ここが『エンブリオ』でないことを思い出したナインはこのままだとラグナが死ぬ可能性が出てきたことを理解した。

救援に行くべきだと考えながら、ナインは右側に映る三角錐の中にいる四人の少女女性が気になった。

 

「・・・どうかしたんですか?」

 

「これ・・・何か解るかしら?」

 

ナインは5pb.に自身が『観測』ていたものを見てもらうことにした。促された5pb.は蒼い注視する。

 

「え・・・?女神様が捕まってるの・・・?」

 

「何ですって?それはマズイわね・・・」

 

目を見開いて呟いた5pb.の言葉を聞いたナインは顔をしかめる。

5pb.の言っていることが正しければ、ゲイムギョウ界で築き上げられてきた秩序が崩壊することを意味するからだ。

 

「こうしちゃいられないわ・・・この映っている場所がどこだか聞いてもいいかしら?」

 

「はい・・・ここはズーネ地区の廃棄物処理場ですね・・・。でも、どうしてこんな所に人が・・・?」

 

どうやら5pb.でもその場所に人がいることは予想外のことらしく、首を傾げていた。

話を聞いてナインもそのことは疑問に思ったが、今すぐに行かないと取り返しがつかなくなる可能性を考えたナインは行くことを決め、蒼い球を消滅させる。

 

「都合よく釣り場にしたってところかしらね・・・。私は今からそのズーネ地区に行くわ。方向だけ教えてもらってもいい?」

 

「はい!こっちです!」

 

ナインの頼みを聞いて5pb.は立ち上がり急いで玄関から外に出て、それを見たナインも5pb.を追うように外へと出た。

 

「あの方角へ真っ直ぐ進んで下さいっ!そうすれば廃棄物処理場にたどり着けます!」

 

「ありがとう!私はこのまま行かせてもらうわっ!」

 

「あっ、待って下さい!」

 

ナインは一言入れてすぐにズーネ地区に向けて飛んでいこうとしたところで5pb.に呼び止められる。

 

「・・・また会いましょう!今度はボクのことも話させて下さいっ!」

 

「・・・ええ。また会いましょう」

 

5pb.が笑顔で頼んできたのを見たナインは一瞬硬直してから笑みこぼして返した。

そして、ナインは魔法を使って空を飛びんで行った。

 

「(予想より早くなってしまったけど・・・私も今一応、やるべきことは見えたわね)」

 

―ラグナを手助けし、セリカを今度こそ護り通す!ナインの瞳には強い闘志が宿っていた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「うおぉぉぉああああっ!?」

 

上から少年の絶叫が聞こえ、その少年は殆ど間を置かず地面に激突して土煙を巻き起こした。

 

「何!?何があったのっ!?」

 

「えぇえっ!?落下は主人公の専売特許じゃないのぉっ!?」

 

ノワールとネプテューヌはそれぞれが驚きの言葉を口にする。

ネプテューヌに至っては少々ついていきづらい発言をしているが、それだけのインパクトはあった。

 

「ネズミ、機材は大丈夫そうか?」

 

「巻き込まれなかったから平気っちゅ・・・」

 

マジェコンヌはこれからやることに支障が出ていないかが気になってワレチューに訊くが、幸いその心配は無いようだ。

 

「此の気配・・・似てはいるが、ラグナでは無いようだな・・・」

 

「なあレリウス・・・今のってよぉ・・・」

 

「ああ・・・どうやらあの男も呼ばれたようだな・・・」

 

ハクメンはその気配に引っ掛かるものがあった。

訝しげに尋ねるテルミに対し、今回来た声の主に見当が付いていたレリウスは仮面のずれを直しながら答えた。

その少年は傷だらけの青年・・・ラグナとよく似た気配を持つ少年だった。

 

「いっててて・・・」

 

そして、煙が晴れると少年が姿を現した。

癖っ毛ある茶髪に黒を基調とした薄着を身につけている少年は、あの高さから落ちたにも関わらず大した怪我をしていなかった。

 

「身体強化の恩恵ってすげぇなチクショウッ!つかどこだよここ!?」

 

少年は自身の身に起こった事に応えたのか、怒声を飛ばす。

その少年の姿や雰囲気がラグナによく似ていることもあってその姿を見た四人の女神どころかこの場にいたラグナとレリウス以外の全員が息を吞んだ。

 

「・・・ラグナ?」

 

その中でもネプテューヌは更に思わずラグナの名を口にした。

 

「悪いけど俺はラグナじゃねえぞ?俺は・・・」

 

《ナオト、無事ね?》

 

「ラケル・・・一応確認だけど事故なんだよな?トラブルなんだよなこれ!?」

 

ネプテューヌの問いに答えかけたところで、黄色い光の球となっているラケルに声をかけられ、ナオトと呼ばれた少年は確認を求める。

 

《トラブルなのは事実よ。それにしてもナオト・・・貴方空中制御くらいできないの?》

 

「あんな状況下でできるか!俺らの世界で平時から使うもんじゃねえぞアレッ!」

 

「ありゃクソ吸血鬼か?にしちゃあこっちのことは全く気にしてねえが・・・」

 

テルミはラケルの声を聞いて自身が鬱陶しく思っている人物を思い起こしたが、その様子を見て猜疑心が沸いた。

自分の知っている人物であれば、こちらを見て真っ先に敵意を向けるか、ラグナを見て何かを言うはずだからである。

 

《それよりもナオト、やることは解っているわね?》

 

「ああ・・・前の時と同じなんだろ?」

 

ラケルに促され、ナオトは自分に必要なものを探す。

辺りを見回していくと、ナオトの視界に傷だらけのラグナが入り、ナオトはそちらへ駆け寄る。

 

「テメェ・・・ナオトっつったっけか?元の世界に・・・帰ったんじゃねえのか?」

 

―どうしてこっちへ来てるんだ?ラグナはボロボロの体の中、どうにか思考を働かせてナオトに問いかける。

あの時世界に『可能性』を与えたのだから、ナオトは無事に帰れたはずなのにここにいることがラグナには理解できなかった。

 

「うちの『ご主人様』曰く、どうやらトラブルらしくてな・・・それでこっちの世界に来ちまった。

・・・そんなことよりもだ。俺はあんたの手助けをするよう言われてるんだ・・・取りあえずはあの子たちを助けるでいいんだよな?」

 

「・・・ああ。できるなら・・・そうしてくれ」

 

ナオトは事情を説明しながらラグナに確認を取ると、ラグナはそれを肯定した。

それを聞いたナオトは三角錐の方へ向き直り、目を閉じて集中を高める。

するとナオトの茶髪だった髪は白くなり、彼が目を開くと、褐色であった目は鮮血で染まったかのように赤くなっていた。

 

「よし・・・ちょっと待ってろよ!今助けるからなっ!」

 

ナオトは彼女たちを見据えて右手を顔の高さまで持ってきて、自身の持つ能力を発動しようとしたが、それは掛けられた言葉によって遮られる。

 

「あっ!ちょっと待って!私たちならまだ大丈夫だから、先にラグナたちを避難させて上げてっ!」

 

「な・・・本当に大丈夫なのか?」

 

ナオトは後で知ることになるが、目の前で待ったをかけたネプテューヌに再確認を取った。

ラグナに頼まれたことは今捕まっている彼女たちを助け出すことだが、彼女は気丈に振る舞ってそれを断ったのだった。

また、この時ナオトが即座に彼女の言葉を呑むことができなかったのは、彼女たちの頭上に映る『数値』が非常に緩やかにではあるが、減っているのが原因だった。

ナオトの両目は『狩人の眼』と言う少々特殊な目になっており、それは人の持つ生命力を数値化して表すものだった。

それらは日によって僅かなながらも変化し、感情の起伏でも変化する。

下降させるのは悲しみ。恨み。自棄。辛さ。

上昇させるのは喜び。幸福感。怒り。焦り。好意。恥じらいである。

ただし、その増減幅はせいぜい1ケタで、大怪我もしていないのに数十単位で変動するのは異常である。

また、人間が死ぬと数値が『0』になり、体が端から黒く染まっていき数秒で全身が黒く染まっていく。

そのため『狩人の眼』を持つナオトには、死者は『その形から、ようやく人間だろうと推察できる程度』の黒い塊と映る。

ただし、ラケルの眷属となったナオトは、数値は『0』だが黒くは染まっていない・・・つまりは半死人である。

一般人であれば、その数値は平均『10000』前後なのだが、彼女たちの数値は現状おおよそ『150000』と平均より圧倒的に高かった。

だが、それでも放っておけばその内『0』になる危険性は否定できなかった。

 

「大丈夫だよ。それよりも、あっちを助けてあげて欲しいのっ!」

 

動けぬ体のままネプテューヌが顔を向けた方をナオトは見る。

するとそこには今にも球状の機械モノに襲われそうになっている二人の少女がいた。

映る数値として、青いコートを着た少女は『10678』であった。

また、球状の機械は『12082』で、先程確認した際にラグナは傷だらけの状態であるためか『8026』と低い数値になっていた。

そして、これは非常に例外的なことではあるが、制服のような格好をしている少女は『167439』と『8947』の二つの数値が、まるで最初からそうであるかのように入れ替わったりしていた。

 

「おいおい・・・あっちもあっちで大分ヤバいな・・・」

 

ナオトは思わずぼやいた。かと言って、自分のことを間違えて呼んでしまった少女とやらを恨むつもりもなかった。

彼女たちの友人だろうか?その内一人は自分の助けを拒否した少女と似ているから、もしかしたら肉親かもしれない。そう考えたら今は手出しされない彼女たちよりも、助からない可能性のある二人の方が危険だとナオトは判断する。

数値のことがどうなってるか非常に気になることではあるが、今はそうではないためこの疑問は胸にしまっておくことにした。

 

「(と言うか、あの子はサヤなのか?いや、違うな・・・少なくとも俺の知るサヤじゃない)」

 

ナオトは制服のような格好をした少女をみて思わず自身の妹かと疑ったが、それをすぐに振り払った。

 

《ナオト・・・私は一つ賭けに出ようと思うわ・・・》

 

「賭け?賭けって・・・何をする気だよ?」

 

《先程からこればかりで申し訳ないわね・・・それも一先ずの安全が確保できてから話すわ》

 

ラケルが言うのだから恐らくは相当な緊急事態だろう。それだけがナオトには分かった。

そんなことをこっちの人たちとやって大丈夫なのかと言う不安もあるが、助からなければ元も子もない。

色々と言うべきところはあるのだが、その前に乗り切らなければどうしようもない。そう結論づけている間にも、ラケルはその二人の少女の方へと飛んで行ってしまった。

 

「ほう・・・あのような状態になっているとはな・・・。此れはまた興味深い」

 

「っ!テメェ、レリウスか!?何だってテメェがここにいるんだ!?」

 

レリウスがこちらに近づいてきながら、ラケルを見ながら呟いたのが見えたナオトは弾かれるようにそちらを振り向いた。

レリウスは自分が知る頃と同じなのは、仮面を使ってではあるが素顔を隠していること。前と違うのはすぐそばに女性型の機械人形がいたことだった。

また、『狩人の眼』に映る数値は彼がそれなりに楽しんで過ごしていたのか、『9213』まで上がっていた。

 

「黒鉄ナオト・・・此の世界で再び相まみえるとは予想外だったな」

 

「そりゃ俺もだよ・・・『サヤ』の騒動以来だっけ?左手と右足は世話になったな」

 

ナオトはレリウスを見て確認しながらその日のことを思い返していた。

自身の妹・・・輝美(てるみ)サヤが音沙汰もなく帰ってきた日に纏めて起こった騒動は、非常に慌ただしいものだった。

ラケルが当時最も『蒼』に近いと言っていた男・・・。スピナー=スペリオルに宣戦布告を受けた三日後、溜めこんでいた洗濯物を本当は自分がやるつもりではあったのだが、その日は「ナオくんがやるとシワだらけになる」と言って、幼馴染で同い年である少女、早見ハルカが洗濯物を代わりにやっていた最中のことだった。

その最中にゲームパッドのボタンを連打するくらいの勢いでインターホンが押されたので、自分が行こうとしたところでハルカがそっちへ向かい、顔色を変えてナオトを呼んだことから始まった。

その時のサヤの目的は「輝美家再興の為にナオトを殺し、『狩人の眼』を手に入れる」ことだった。自分とサヤが部屋で2人になったところを狙われてしまい、ラケルの分の命がなければ間違いなく死んでいただろう。

サヤがその場を去った夕刻、ハルカに頼まれて夕飯の買い出しをラケルと共にしていたのだが、ラケルから「『蒼』の気配を強く感じる」と言われ、そこへ向かえば疲労困憊のサヤと、以前自身を『不死者』として襲いかかってきたヴァルケンハインと、その同僚であるレリウスがいた。

当時のレリウスは仮面と言うよりは、アイマスクに近いものを掛けていたとナオトは記憶している。

そして、それを目撃した直後に現れたスピナーにサヤは取り込まれてしまったが、「快いと思えない奴でも家族だ」とナオトはサヤを助ける為、スピナーに戦いを挑んだ。

その際、どうにか撃退はできたものの、自身はラケルとの繋がりが薄れている最中に左腕と右足をやられてしまい、レリウスが用意した義足と義手を貰って今に至っていた。

 

「あの世界の人々の日常に関わることだったのでな・・・気にすることはない」

 

「・・・まあ、向こうじゃそうなるか・・・」

 

話しこそ普通にするナオトではあるが、警戒は一切解かない。

ナオトがこうした形で話に応じるのは、レリウスがどういう人物かを知っているからこそできることだった。

 

「そんで?俺んとこにわざわざ来たんだ・・・なんか目的があんだろ?」

 

「ああ・・・確かに目的はあるが、然したることではない・・・ただ・・・」

 

レリウスの口調は淡々としているものの、仮面の下は笑っていたのが見え、ナオトは身構える。

そして、レリウスの隣にいた女性型の機械人形が動き出す。

 

「そこにいる『蒼の男』の中にある真なる『蒼』が気になってな・・・研究をしようと思ったまでだ」

 

「・・・っ!」

 

「・・・クソッ!」

 

その言葉を皮切りに、機械人形の右腕が振り上げられ、ラグナを鷲掴みせんと一気に振り下ろされた。

ラグナは現状傷だらけのせいで反応することができない。そのため、ナオトはラグナを助けんと咄嗟に行動へ移った。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「こいつら・・・まだこんなにいたって言うの!?」

 

背後から現れた機械型のモンスターたちを見てアイエフは顔を歪ませ、歯嚙みする。

すぐに逃げようと思ったが、今から走らせたところでモンスターの砲撃を受けてしまうのは確実だったからだ。

―ネプギアは大丈夫なの?不安に思ったアイエフがそちらを見やると、ネプギアは固まって動けないでいた。

 

「(くっ・・・どうすれば・・・)」

 

《そこの貴女、少しいいかしら?》

 

「えっ・・・?私?」

 

アイエフは声をかけて来た主を見て驚く。その声の主は黄色い光の球で、更に声が殆ど自分と同じだった。

 

《この状況を乗り切るために協力するのだけど・・・私が協力するにはちょっとした条件があるから、それを満たすのに力を貸して欲しいの》

 

「・・・何をすればいいの?」

 

声の主の話を聞いてアイエフは真剣な表情で尋ねる。その声の主から出された提案は思いもよらぬものだった。

 

《このひと時だけでいい・・・。私に・・・貴女の躰を貸してもらえないかしら?》

 

「・・・躰を?」

 

《ええ・・・私が持っている打開策は、この状態じゃできない・・・。人の躰が必要なの》

 

光の球から発せられる声は冗談を言っているようには感じられなかった。そのためアイエフはまた困惑する。

だが、実際のところ今のままでは対処しきれず、やられてしまう可能性が極めて高いのは目に見えていた。

 

「・・・他の人はダメなの?」

 

そこまで考えたアイエフは、受け入れる前に確認として訊いて見た。自分は動けるので、できるのなら今動けないでいるネプギアの体に入って彼女を護って欲しいと思ったからだ。

 

《残念だけど、誰でもいいという訳では無いわ・・・。今からやることは、私の魂と波長の良い人の躰でなければ成功しないの・・・》

 

「なるほど・・・それで波長が良かったのが私ってことね・・・」

 

《ええ・・・無茶も承知のこと・・・それでも頼めるかしら?》

 

ラケルの説明を聞いて、アイエフは「そうね・・・」と呟きながら顎に手を当てて考える。

 

「ならこうしましょう。まず一回!この後またこうするかもしれないから、その時は頼むわね!」

 

アイエフは声の主に指さしながら許可することを示した。一回だけでも使えれば自分としては良かったのだが、この後も借りられるのはとてもありがたかった。

声の主は自分の心に暖かさを感じることを自覚した。

 

《ありがとう・・・なら、早速使わせて貰うわ・・・。ところで、貴女名前は何と言うの?躰を借りるのに名前を知らないのは無礼だったわ・・・》

 

「私はアイエフ。ゲイムギョウ界に咲く一陣の風・・・と言ったところね」

 

《風・・・やはり私が相性が良いと感じた理由はそれのようね。

私の名はラケル=アルカード・・・このひと時かもしれないけどよろしくお願いするわ。アイエフ》

 

光の玉となっていたラケルはアイエフの胸辺りから吸い込まれるように、彼女の体に入っていく。

この際に目を閉じていたアイエフは、ラケルが中に入って少ししてから目をゆっくりと開く。

瞳の色はいつもと変わらない緑色をしていたが、纏う雰囲気は完全に別人のものとなっていた。

視界にはアイエフが見ていたものと変わらず、モンスターが複数でこちらを囲んでいたが、直前と違うのはモンスターに囲まれていてもさして恐怖感は無かった。それどころか余裕で倒せると感じていた。

 

「それでは、始めましょうか・・・」

 

アイエフの口から発せられた声は普段と変わらない。

しかし、その口調は普段より明らかに上品さを感じさせるものだった。

アイエフの躰は今、一時的にラケルへ預けており、口調にもその影響が現れていたのである。

そして、アイエフの躰を借りているラケルは両腕を外側へと広げる。

この時、アイエフの躰に変化が起きており、ラケルはそれによって発現したものを使うつもりでいた。

 

「風よ吹き荒れろ・・・」

 

ラケルはアイエフの両手に風を纏わせ、顔の前で交差するように両腕を振るう。

 

「舞い上がりなさい!」

 

そこから間を置かずに、モンスターたちの横から現れた竜巻がモンスターたちを巻き込み上へと昇っていく。

一時的とは言え、ラケルと躰を共有したことによってアイエフはドライブ能力に目覚めたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 

 

ナオトはイグニスを右足で思いっきり蹴ることによって、イグニスを押し返す形でラグナを護る。

その直後、アイエフたちがいたところで青い竜巻が二つ巻き起こり、巻き込まれたモンスターたちは彼方へ飛ばされながら光となって消えていった。

 

「っ!?」

 

「・・・レイチェル・・・なのか?」

 

その竜巻を見てナオトは驚き、ラグナは自信に『蒼の魔導書』を渡した人物を思い起こしていた。

 

「ほう・・・そのような強引な策を使うとは・・・。面白いモノが見れたな」

 

レリウスは仮面のずれを直しながら嗤った。

この三人の中で、レリウスだけは瞬時に何が起きたかを把握できていた。

すぐ近くにいたネプテューヌたちは何が起きたかを把握しきれていなかったが、それに答えるかの如く、ナオトに対して術式を応用した通信がやって来た。

 

『ナオト、聞こえる?』

 

「ラケル!?お前、その躰・・・」

 

「えっ!?アイちゃんこの人と知り合い!?」

 

ネプテューヌとナオトはそれぞれのことに驚いた。

アイエフとラケルの声は信じられない程同じであったため、ラケルの状態で話していても事情がわからないのネプテューヌはアイエフがナオトを知っていると誤認した。

また、ナオトは自分の事を呼んだのでラケルだとそのまま認識していた。

 

『賭けには成功したわ。後はその男を連れてここから離れるわよ!』

 

「賭けってそれだったのかよ!?つか、元々その躰使ってる人は大丈夫なのか?」

 

『その心配は要らないわ。私が離れればすぐに普段通りになるから。貴方もその数値が見えているでしょう?』

 

ラケルにそう言われ、ナオトは数値を確認してみる。

すると、先程の『10678』と言う平均的な数値はラケルの持つ八千万代に変わっていた。ラケルの言うことが正しいのなら、ラケルが離れた瞬間、元に戻るのだろう。

納得できないものもあるが理解できる。ナオトはそんな状態だった。

 

『それよりもナオト、今のうちに逃げて体制を立て直すわよ!』

 

「そりゃいいけど、場所は解るのか!?」

 

『ええ。幸いこの世界の情報も共有できてるから、場所は既に割り出しているわ!』

 

ラケルはアイエフに躰を借りる時、このゲイムギョウ界の情報を、アイエフの観点で知る限り知ることができていた。そのお陰で逃走経路は既に出来上がっていた。

 

「本当か!?けど・・・」

 

ナオトには一つ心残りがあった。それはネプテューヌたちのことである。

ラグナに助けるのを手伝って欲しいと言われたが、何もできていなかったことが、ナオトに踏み留まると言う選択肢をちらつかせていた。

 

「ナオトでいいんだよね?後で来てくれればいいから先にラグナを逃がして上げて!

後いきなりで悪いんだけど、あっちにいる私の妹・・・ネプギアのことも頼んでいい?」

 

「なっ・・・!?本当に・・・いいんだな?」

 

ネプテューヌの頼みを聞いたナオトから踏み留まる選択肢が少し薄れる。だが、完全に消えた訳では無いナオトは一度問い返した。

 

「大丈夫よ。これくらいで音を上げてなんていられないもの・・・私も妹のことを頼んでいいかしら?

何かあったとき、あの子のことを護って欲しいの・・・」

 

「私からもお願い・・・。私の妹は双子で幼いから迷惑をかけるかも知れないでしょうけどね・・・」

 

「私には妹はいませんが・・・貴方に頼みたいと言う気持ちは同じですわ。

休んでからでも構いませんわ・・・。万全の準備ができたらまた来て下さいな」

 

「・・・やっぱり、その目には逆らえそうにねえな」

 

ノワールが返事を代返するかのように答えて追加でナオトに頼み、更にそこからブランとベールが続く。

それを目の当たりにして、ナオトは自嘲するように呟く。

 

「分かった・・・それなら・・・」

 

「私が行かせると思うか?」

 

ナオトは覚悟を決め、一言言ってから行こうと思ったところでレリウスが問いかけ、彼の意を汲み取ったイグニスが腕を左腕を振り上げる。それは再びラグナを・・・またはナオトを捕まえんとする動きだった。

 

「っ!させぬぞ!」

 

「ぐおぉっ!?テメェ・・・!」

 

イグニスが腕を振り上げる瞬間を見たハクメンは、弾かれるように動きだし、話を聞いていたせいで準備の出来ていなかったテルミに左目で掌底をぶつけ、即座に地面を強く蹴り、レリウスの方へと飛んでいく。

テルミはハクメンの攻撃をまともに受けてしまい、数歩後ろに後退しながら硬直してしまう。

そして、ハクメンはイグニスが腕を振り下ろす直前にたどり着き、『斬魔・鳴神』を振り下ろしてイグニスへ斬りかかる。

その一撃でイグニスの体が横に動かされ、体制を崩したまま振り下ろされる腕は虚空を掴むに留まった。

 

「少年よ・・・ラグナを連れ、行くが良い。此の場は私が引き受けるッ!」

 

ハクメンはナオトたちとレリウスたちの間に割って入り、『斬魔・鳴神』を構え直す。

 

『ナオト!時間が無いわ!早くっ!』

 

「だあぁ、もうっ!分かったよチクショウッ!

お前ら!約束だからなッ!俺たちが来るまで絶対に死ぬんじゃねえぞ!いいな!?」

 

ラケルに急かされたナオトはせめて最後にと四人の女神に念入りで言うと、四人は頷いた。

 

「よし・・・ラケル!頼むッ!」

 

『・・・誰に物を言っているのかしら?それよりもその男をしっかりと支えてなさい!』

 

ラケルに言われた通り、ラグナを支えるように体制を整えると、すぐに青い風が二人をラケルの側まで運んで行った。

 

「悪いラケル!待たせたッ!」

 

「相変わらず世話の焼ける下僕ね・・・。それよりもここから離れるわ。ナオトはアレに乗って!」

 

「アレ・・・?」

 

ラケルが指差した方を見ると、そこには赤と黒のツートンが目を引くバイクがあった。

ただし、ここで一つ問題があった。

 

「マジかよ・・・俺、ぶっつけ本番だぞ?」

 

ナオトにはバイクの免許が無く、教習等も受けていないため、文字通り初乗りとなる。

ナオト自身、普段通る道が狭かったり、人が多かったりするのがあって、交通は基本的に徒歩で行っている。

それが今回仇となってしまっていた。

 

「仕方無いわね・・・それならこの躰で発現したドライブで運んで行くから、それ近くにはいてちょうだい」

 

「分かった!」

 

それならばと、ラケルはもう一つの方法を出す。それを受け入れたナオトはラグナを支えながら、可能な限り早くバイクの隣まで来た。

 

「おいアンタ、まだ大丈夫だよな!?」

 

「・・・どうにかな・・・。ちょっと待ってろ」

 

ラグナは残った力を振り絞って、邪魔をしまいと剣を自身の腰の後ろに納める。そこでラグナは力尽きてしまった。

 

「・・・っ!兄さまぁ・・・!」

 

「大丈夫だ!ラグナは生きてる!」

 

ナオトはラグナが力尽きた時に慌てて数値を確認したが、まだ『8021』と生存を表していた。

 

「でもここに居続けるのもマズイか・・・」

 

「そのようね・・・ナオト、行くわよ。貴女も乗って!」

 

ラケルは目の前の少女を急かして後ろに乗せ、ナオト達をドライブで運びながらバイクで疾走してこの場をすぐに離れた。

ラケルがこうしてバイクに乗れるのも、アイエフの持っている素の能力を使わせて貰っているからである。

 

「・・・クソッ!逃げられちまったか・・・」

 

「だが、追うこともあるまい。あの様子なら戻ってくるだろう」

 

「本当に戻って来るっちゅかね?万全のって言うから、下手するとその最中に時間が来るかも知れないっちゅよ?」

 

イラつくテルミをマジェコンヌは自分なりになだめる。

そんな中で、疑問を持っていたのはワレチューだった。

アンチクリスタルの力で女神達を倒すのにはまだ時間が掛かる。しかしそれでも、向こうの準備が遅れれば間に合わないだろう。それをワレチューは危惧していた。

 

「いいや、ラグナちゃんのことだ・・・。最悪一人でも戻って来る。あいつはそういう奴だからな・・・」

 

ワレチューの疑問をテルミは確信した言い方で否定した。ラグナのことに関しては、テルミの方が圧倒的に詳しい以上、ワレチューは特に否定せず納得した。

 

「さぁて・・・。俺様の楽しみを取り上げてくれたんだ・・・」

 

テルミは『ウロボロス』をハクメンの足元へ飛ばし、再びワイヤーを利用するかのように、『ウロボロス』を巻き取りながらハクメンに肉薄する。

 

「来るか・・・!ユウキ=テルミ・・・!」

 

「落とし前を着けて貰うぜェ、ハクメンちゃんよぉッ!」

 

近づいて来るテルミの方を向きながらハクメンは『斬魔・鳴神』を構え直す。

ここに、ハクメンにとっても非常に苦しい戦いを強いられることになる。




三人称ムズいですね・・・(汗)。

そんなこんなでナオトがラケルとセットで参戦しました。
参戦させたのと強化イベント挟んだのもあって全然話が進んでませんね・・・(汗)。

また、アイエフにドライブを持たせましたが、ドライブの設定に『何らかのきっかけで唐突に目覚める者もいる』と書かれてあったので、「これ使えるな」と思って持たせました。
ブラッドエッジエクスペリエンスだとまた違う設定が出てきますが、こちらには条件の一つに『自分から蒼に近づく』と言うものがあり、こちらは「境界のお陰で大量の知識を持つラケルの干渉なら行けるのでは?」と思い至った次第です。

また、ドライブ能力が風を操るものになった理由として・・・
・アイエフは自身を「ゲイムギョウ界に咲く一陣の風」と度々ゲームで名乗っている。
・レイチェルとラケルのドライブは風を使うもの。
・全員CVが一緒。
と言う最早こうするしか無いだろと言うくらいのものだったので風を使うものになりました。

後、情けないことにドライブ名が現在未定です(泣)。
『シルフィード』は風の妖精。
『テンペスト』は嵐と言う意味を持っていますが、どうするべきでしょうね・・・。
次の投稿までにはしっかりと考えておきますが、もし皆様が「こんなドライブ名どう?」と言うものがありましたら、是非ともお申し付け下さい。私は涙ながらに喜びます(笑)。

長くなってしまいましたね。
次回ですが、教会でのやり取りが中心になると思います。
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