超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER-   作:ブリガンディ

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今回でアニメ4話が終了します。



28話 共闘を決める魂

「大分溜まって来たね・・・」

 

ネプテューヌたちを捕らえている結界の中で黒い水はかなりの高さまで溜まって来ており、後もう少しでネプテューヌたちの所まで届こうとしていた。

マジェコンヌが自分たちを倒す為のものだと言っていた為、時間が迫っているかもしれない。そう考えると呟いたネプテューヌですら参ったと言う表情になった。

 

「こうなるのなら、もう少し調べておくべきだったわ・・・。私は遠ざけることしかしなかった・・・」

 

ブランは自分の選んできた選択に後悔した。

自分たちが発見したアンチクリスタルを「得体の知れないものだからとりあえず保管しよう」ではなく、「一度調べて危険なら手の届かないところに封印し、対策をたてよう」と決めていたなら、少なくともこの様なことになってもまだやりようはあったはずだ・・・。

そんな選択をあの時してしまった自分を、ブランは責めずにいられなかった。

 

「仕方ないわよ・・・過ぎちゃったことだし。それよりもこれがこっちに届いた時が問題ね」

 

ノワールは割り切っていることをブランに伝え、溜まっている黒い水へと意識を向けた。

マジェコンヌの言葉通りであるならば、あの水は必ず自分たちに悪影響を及ぼす。

しかし、今自分たちはこの結界から抜け出す手段がなく、仮に抜け出せたとしても弱った状態でマジェコンヌやテルミを撃退しなければならない。

これが自分たちだけで脱出しなければならないのなら、間違いなく八方塞がりだっただろう。

ただ、今回は必ずしも自分たちがやる必要はない。彼女たちには今、頼ることのできる人たちがいたからだ。

 

「ええ。あの水が私たちに届くよりも早く、ラグナたちが間に合うと良いのだけれど・・・」

 

「ううん。絶対に間に合う・・・。だって、どんなに酷い状況だったとしても・・・どれだけ体がボロボロだったとしても全部乗り切ってきたラグナがいるんだよ?絶対何とかなるって」

 

「・・・そうね。そう考えたら少しは気が楽になるわね。私もそれに賭けることにするわ」

 

ブランの呟きに続くように、ネプテューヌが絶対の自信を持って言う。

ネプテューヌがこうしてハッキリと言うことができるのも、ラグナが立ち塞がる壁を越えていく瞬間を、最も多く目の前で見ているからであった。

この世界で初めて『蒼炎の書』が動いた時も。『黒き獣』になりそうだった時も。そして、ハクメンとの対決の時も・・・。何らかの要因があったとしても、ラグナは全てを乗り越え自分たちの元へと戻ってきていた。

そんな人がいるのなら今回も乗り越えてくれる。それは、ネプテューヌが持つ彼への信頼だった。

その自信を持ったネプテューヌの発言を聞き、ノワールも同意しながら表情が和らいだ。

 

「いいえ。逆転の手段なら他にもありますわ」

 

ここまで一言も話さなかったベールが唯一反論を見せたので、三人は思わずそちらを振り向いた。

ただし、ベールの表情は険しいものではなく、寧ろ穏やかであった。

 

「いるじゃありませんか。あなたがたの妹が」

 

ベールが出したのは彼女たちが大切に思っている妹だった。

ただし、こう言ってもすぐには理解されてはもらえないだろう。現に三人は驚いた表情をしていた。ベールは薄々と感じてはいたが、顔には出さない。

これは普段は自分に妹も、ラグナたちの世界から来た人も共に過ごすことがなく、基本的に教祖と自分で活動することが多い故に、物事を広く見る余裕のあるベールだから言えたことだった。

 

「・・・ユニ?確かに最近は少し頼れるようになってきたけど・・・。それでもあの子には荷が重いわ」

 

「ロムもラムも、まだ私たちで護ってあげなきゃいけない歳だわ」

 

「ネプギアもしっかりしてるようで甘えん坊だし・・・ラグナのことで最近はああだし、無理なんじゃないかな?」

 

「それはあなたがたのエゴではなくて?確かに、あの子たちはかわいらしい・・・わたくしだって、いつまでもそのままでいてほしいと思いますわ。

・・・でもそんな思いが、あの子たちを変身できないかわいい妹のままでいさせているのかもしれない・・・。特にネプギアちゃんはそんな状態だからこそできるかもしれない・・・そうは思いませんこと?」

 

やはりと言うか、三人はそれぞれにまだ早いと返してきた。

だからこそ、ベールはそれをハッキリと否定して自分の思っていたことを三人に投げかける。

ベールは三人と違い妹のような存在はいても、本当の妹はいない。それは常々寂しいものだと思ってはいたが、今回はそれの影響で一人だけ「妹はまだ未熟だから」と言った固定観念に捉われないで済んだのだ。

この時もネプギアに関して、ネプテューヌはラグナに何かあった場合、それこそ戦いどころじゃなくなるのではと心配していたのに対して、ベールはラグナが奮闘する姿に焚き付けられて女神の力が開花するかもしれないと考えていた。

ベールの言葉を聞いた三人はまだ疑問符の残る表情をしていた。特にネプテューヌは混乱しかけていた。

 

「・・・ほう?この魂の数は・・・」

 

「ああ・・・ようやく来やがったみてえだな」

 

レリウスが何やらに気づいてテルミがそれに同意した。ラグナたちが来たのだった。

 

「お前たちの読みは当たっていたようだな・・・ならば、迎えの準備をしようじゃないか」

 

「おうよ。そろそろ行きますかね・・・」

 

マジェコンヌに促され、テルミはマジェコンヌと共にラグナたちが来るであろう方向へゆっくりと歩き始めた。

 

「大丈夫・・・約束は守ってるからね・・・」

 

ナオトに「自分が来るまで死ぬな」と言う約束はどうにか守っている。

何も身動きができない自分たちにできるのはそれだけだったため、ネプテューヌは言い聞かせるように呟いた。

そして、そんな間にも黒い水は無情にも一滴、また一滴と・・・ゆっくりと溜まって行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「ギアちゃんたち・・・まだ変身もできないのに・・・」

 

ズーネ地区に到着し、全員がすぐに動けるように戦う準備は済ませているものの、コンパは四人のことを心配していた。

あの四人が訓練をしようとした理由は変身のためにあり、地の力は上がってもそれは過程によって身についたものであって、本来の目的は達成できてなかったのだ。

 

「ばら撒かれた以上、仕方ないわよ。女神様が捕まったとしても、妹たちが頑張ればそこまでシェアが減らないと信じてやるしかないわ」

 

アイエフの言っていることは事実で、先程イストワールから各国のシェアエナジーが僅かとは言え減っていると言う連絡があった。

こうなると俺の『蒼炎の書』にも影響が出るかも知れねえな・・・。ともあれ、これ以上女神たちが晒し上げになっている状態なのを止めることと、これ以上待って肝心の候補生の四人が動けなくなると、それこそ取り返しのつかないことになるのもあって、救出を強行するしかなかった。

アイエフは諦めのついた表情でコンパに言うが、今回はそれだけでは終わらなかった。

 

「それにね・・・私も信じたいの。ネプギアや、ここにいる皆ならってね・・・私にだってできることはあるんだから、諦めるには早すぎるでしょ?」

 

アイエフは柔らかな笑みを浮かべて付け足した。

あの写真が撒かれたことによってシェアエナジーが低下し、候補生四人の力が減少する危険性があり、テルミの用意している策で『善』と判断された場合は、ラグナのように不利な状況下で戦わされる羽目になる。

普通であれば諦めたくなるような状況下でも、この中には姉を絶対に助けようと思って来ている候補生や、火事場の天才とも呼べるべき土壇場での強さを誇るラグナのように、その不利をひっくり返せる人材は少なくない。

だからこそ、アイエフは助けられるかもしれないと言う可能性を信じたくなったのだ。

 

「それじゃあ、確認だけど・・・。まず、ハクメンと候補生の四人は正面から進んでもらうわ。本当なら候補生の誰かに先陣を切って貰いたいところだけど、今回の相手の特徴からハクメンにお願いするわ」

 

ナインが確認を取るのは、まだモンスターたちがいない場所だからだ。居たらもう既にそのまま行動を始めている。

今回ナインが正面突破組の先陣をハクメンに頼んだ理由として、アイエフから機械型モンスターは遠距離による攻撃が基軸になっていて、それをハクメンなら正面から無効化できるからだった。

五人が特に反論することなく頷いたことで、正面突破組の編成は問題なく完了した。

 

「次に、私とセリカ以外の残った人たちは横から回り込みをお願い。途中で一つになる場所があるから、そこでみんなと合流よ」

 

「数が少ないとは言え、ラグナが一人やるってなってるけど・・・大丈夫なの?」

 

アイエフが危惧していたのは、恐らく俺が傷の残るまま覆い方を担当することになっているからだろう。

確かに正面から行くのに比べてモンスターの数は少ないし、後々合流する際もネプギアたちに注意が逸れている状態から始まるからそれなりに楽ではある。

ただそれでも、最も数が少ない所を担当するとは言え、アイエフたちが三人に対して俺は一人。しかも傷が治ってないのだから不安にもなる。

 

「そうね・・・。確かに普通の人だったら、私も絶対にこんな陣形にはしないでしょう。でもラグナには『ソウルイーター』がある。それを使って傷を回復しながら進んでもらうなら、一人でやった方が多く回復できるでしょう?」

 

ナインの狙いはこれにあった。一人で多くの敵を倒し、『ソウルイーター』の力で傷を治しながら進んでいく。幸い、モンスターが遠距離の攻撃をしてくるとは言え、そこまで威力がないから攻撃を受けても『ソウルイーター』でおつりがくる・・・。そんな強引な戦法だった。

こんな無茶苦茶な作戦も、俺のドライブが『ソウルイーター』であるからこそできることだった。他のドライブだったらできやしないことだ。今回ばかりはこのドライブに感謝しかなかった。

 

「ああ・・・問題ない。それに、ラケルのこともあるし、アイエフとナオトはあまり離れない方がいいし、『ソウルイーター』を使う以上巻き込む危険が増えるからな・・・。今回は一人の方が寧ろ良かったりするんだよ」

 

納得させるように俺はこういうが、ぶっちゃけた話、周りに味方がいない方がブラッドサイズで薙ぎ払えるから効率が良かったりする。

だからこそ、今回ナインが用意してくれた配置はありがたい。デッドスパイクといいブラッドサイズといい、一部の広範囲攻撃で皆を巻き込むことを考えたら、その攻撃を渋りそうだったからだ。

 

《ここはラグナの意見を組み入れるべきよ。アイエフのドライブであれば、ダメだと判断した時すぐに逃げることも逃がすこともできるわ》

 

「確かに・・・後は私のもラグナと同じ・・・いえ、それ以上に広範囲になりかねないものだったわね・・・。それなら納得よ」

 

ラケルはあっさりと受け入れ、アイエフも自分の能力を照らし合わせて纏めていく。

実際のところ、コンパがナオトたちと一緒に行動する理由として、俺やセリカは負傷した際に自力で回復できる。ハクメンやナインは負傷する前に片づけるか、負傷しないように動けるだけの余裕がある。

そうなると残りはこの世界来てから最も間もないナオトと、ドライブを発現してから間がなく、不慣れであるアイエフのところに行くのが最も良い。

ナオトに話を聞いてみたところ、ラケルとの繋がりがあればナオトも自然に傷の治療ができるらしい。ネプギアたちも大勢で動く以上フォローしあえるので、残った場所がここということになるのと同時に、最も身軽で逃げる判断が早めにでき、尚且つ逃げる手段が最も豊富になるのがナオトたちのところだった。

そこまで考えたアイエフは納得して頷いた。

 

「・・・ラケルもアイエフさんも言うんだし、それならそうする方がいいか。ただ、あんまり無理すんなよ?その前にバテちまったらどうにもなんないだろ?」

 

「ああ・・・そんなヘマはしねえようにするよ」

 

ナオトは納得しながら俺に言ってきたので、俺はそれに頷く。

確かに『ソウルイーター』によって回復を狙ってはいるのだが、それに失敗して倒れたら元も子もないのは事実だった。

一人である以上、大胆には動けるのが慎重さは忘れないようにしねえとな・・・。そこまで考えた俺は気を引き締める。

 

「そうしてちょうだい。最後に、私とセリカは一番後ろよ。セリカの力をあいつらに届かせる前に打たれたら元も子もない・・・。だから比較的安全になった所を通って行くわ。仮に打ち損ねがあってもそれは私が倒すから・・・」

 

「・・・分かった。信じてるよ、お姉ちゃん」

 

「ええ。任せなさい・・・何があっても、今度こそ護ってみせるから・・・」

 

ナインがセリカに伝えると、セリカは微笑みながらナインへ向ける信頼を伝えた。

それを聞いたナインはつられるように微笑みを返して決意を伝えるのだった。

 

「さて・・・ここまで決まってるのはいいけど、不安要素はいくつか残っているわね・・・」

 

「テルミとレリウス・・・其れに、あのマジェコンヌと言う輩だな」

 

「ええ。奴らがいつ、どのタイミングで来るかが分からないからみんなも気を付けて」

 

ナインの呟きに反応したハクメンの言葉にナインはすぐに頷いて皆に注意を促す。

当然のことながら、注意しておくに越したことはないが、それでも幾つか可能性に考慮しないで済む場所も幾らかある。

 

「とは言っても、幾らか大丈夫そうな可能性はありそうね・・・」

 

「ああ。まず、俺はマジェコンヌを除外して良いだろうな・・・あいつの目的は女神たちだし、テルミが俺を倒してえのを分かってんなら尚更来ないだろう」

 

俺が最も警戒しなきゃなんねえのはテルミで、その次は俺の持つ『蒼』に狙いがありそうなレリウスだ。

マジェコンヌは盟約だの女神打倒だので俺の方にはほぼ来ないだろうから除外できる。

 

「なるほど・・・そうなると、俺たちはレリウスだけでいいんかな・・・?多分、アイエフさんのドライブ関係と俺のことくらいだろうしな・・・」

 

「レリウスって、あの仮面つけてるのよね?何してくるか読めないから質悪いわね・・・」

 

アイエフはレリウスの特徴を思い出しながらぼやいた。

それも仕方ないだろうな。確かに警戒すべき相手が少ないのはいいが、警戒しなきゃなんねえのが最も分かりづらい奴ってだけでも気力は落ちるもんだ。

 

「最も危険なのは我らだろうな・・・」

 

「そうですね・・・。マジェコンヌはそうですし、ハクメンさんのことを考えればテルミが・・・ネプギアのことでレリウスも気を付けないといけませんからね・・・」

 

自分たちの狙ってくるであろう相手が全員くる危険性があり、それを纏めながらユニは苦い顔になった。

自分たちが変身できるのならまだしも、このままの状態で当たることを前提とした場合、そのままだと殆どハクメン頼みになってしまう為、避けたいところだった。

 

「確かにモンスターと戦いながらの可能性が高いから、ハクメンたちはかなり危険ね・・・。でも、本当に危険なのはこっちかもしれないわね・・・。向こうはセリカのことを知っている。そのマジェコンヌと言う奴も、テルミの身動きを保証するため・・・または障害を排除する為に、狙ってくる可能性が高いわ」

 

ナインのいうことも最もだ。もしそうなったらいくらナインでも限界がある。

仮に三人が全員ナインのところに来てしまった場合、間違いなくセリカが真っ先にやられるだろう・・・。そうなる前に何とかしなきゃなんねえ・・・。

 

「・・・これ以上はうだうだ言っててもキリがねえな・・・。やれることはやってきた。後はやるだけだろ」

 

俺は結論を出した。実際、俺がそこまで頭が回らないせいなのかも知れないが、それでもこれ以上は話が同じところを回る気しかしなかった。

もう一つは時間がないことだった。繰り返し言うことになるが、女神たちが捕まっている写真がばら撒かれてしまっているので、例え女神たちがまだ生きていようとも、時間が掛かり過ぎればシェアが無くなって変身どころじゃ無くなるからだ。

ともなればもう、割り切るしかなかった。何事もなければそれでよし、何かあったらその時だ。

 

「そうね・・・。ならこうしましょう。誰かが来てしまった場合、術式通信を行える人が伝えてちょうだい。それで誰かが救援に向かうか足止めを頼むかを決めるわ」

 

ナインも腹を括ると同時に提案を出す。勿論俺たちは迷うことなく頷いた。

元からゲイムギョウ界で住んでる人たちは術式通信を基本的に使うことができない為、自然と通信を担当する人は決まっていく。

 

「此方は私が受け負おう」

 

「こっちは俺一人だから当然俺になるな・・・」

 

「そうなるとこっちは・・・俺か?アイエフさんは使えるのか?」

 

俺とハクメンたちの所は何も問題なく担当が決まる。この場合ハクメンの負担がかなりのものになるが、それだけハクメンが宛にされている証拠でもあった。

ナオトたちの方は基本的にはナオトが担うべきなのだろうが、一つの疑問が残る。もしアイエフができるのであれば、

 

「うーん・・・今一解らないのよね・・・。ラケルがやってたからできると思うんだけど・・・」

 

《それなら、術式通信が必要な時は私がやるわ。大気中のシェアエナジーを応用すればできるから、今度はそっちも練習しておきましょう》

 

「そうするわ。それなら、こっちは二人できるし、手の空いた方にしましょう」

 

ナオトたちの方は二人臨機応変に行うすることで決まった。これで術式通信を行えるのは俺、ハクメン、ナオト、ラケルと交代してる時のアイエフ、ナインの五人になった。

これなら多少は気休めになるだろう。何も不安要素だらけでやるよりは絶対にこの方がマシだ。

 

「どうするかは決まったわね?最後に一つだけ言うけど、周りで何か見つけたり、異変があったらすぐに伝えてちょうだい。術式通信を使えない人は、使える人に向けてなるべく正確に伝えるの・・・いいわね?」

 

ナインの言ったことに俺たちは何も反論せず頷く。ただでさえモンスターが多い以上、俺たちは臨機応変に動くしかない。

ここまで決めたら、後はやるだけだな。皆はそれぞれの武器を手に取り、準備を整える。

 

「じゃあ・・・行くわよっ!」

 

ナインの号令に合わせて俺たちはそれぞれ決められた方へと走り出す。

俺は左、ナオトたちは右、ハクメンたちが正面。俺たちが走っていくのを見てからセリカとナインがミネルヴァと一緒にハクメンたちの後ろに距離を置いてついていく。

こうして、賭けに近い極めて危険な戦いが幕を開けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「おぉッ!」

 

モンスターから距離がさほど無かった俺はすぐに交戦距離に入り、正面からエネルギーの弾幕を張っているモンスターに近づいてから、剣に黒い炎のようなものを纏わせて上から縦に振り下ろし、その内一体を斬る。

このモンスターたち、弾幕の量自体は凄いんだが、如何せん威力が小さすぎた為、俺は剣を盾替わりにして強引に近づいて行くことができて、思ったより一体目まで剣を届かせるのに苦労はしなかった。

そして、そのモンスターは光となって消滅し、そのモンスターから現れた紅い球が現れて俺の右手の甲に吸収される。

 

「(これだとちと少ねえか・・・)」

 

この方法だと咄嗟に攻撃を出せるのはいいが、紅い球がその分小さくなってしまって吸収量が少なくなり、回復が後れてしまうのが難点だ。

だがそれでも一歩は一歩なので、そんなことでグチグチ言うことはない。足りないと感じるなら上手くデカい攻撃を当てるだけだ。

そう考え俺は、左右にいる今倒したモンスターと全く同じ奴二体を確認する。そいつらはゆっくりとこっちに体を向けて狙いをつける。その狙いをつけ切る直前に俺は動き出した。

 

「ブラッドサイズッ!」

 

俺は剣を鎌型に変形させ、それを左に一回転しながら右から水平に薙ぎ払った。

変形させた時に刃の付け根部に発生させた、血の色をしたエネルギー状の刃が二体のモンスターを斬り裂き、二体のモンスターは光となって消滅する。

その時現れた紅い球が俺の右手の甲に吸収されて再び傷が回復していく。『黒き獣』への進行は体内のシェアエナジーが抑えてくれるし、最悪はイデア機関で強引に抑えることも視野に入れることができる。何事もなければ割といい状態だった。

それでもまだ完全に回復するまでは程遠い。この調子だと十体近くは斬る必要があるだろうな・・・。

 

「治りきってねえから慎重に行きてえところだが・・・仕方ねえ」

 

モンスターたちが再び弾幕を張ってきたので、俺は飛びのきながら剣を鎌の状態にしたまま構え直す。短時間でモンスターを薙ぎ払って進むのなら、剣に戻すよりこのままの方がいい。

遠くに離れて入れば弾幕の精度が甘くなって当たらなくなる為、その距離まで飛びのき切った俺は弾幕が止むまで暫く待つ。

そして、弾幕が止むと同時に俺は腰を落として飛び出せる準備をしておく。

 

「テメェらに恨みなんて特にねえけどよ・・・。あいつら助ける為に、ここは通してもらうぞ」

 

俺は呟くようにモンスターの群れに告げて、弾幕が止んでいる間に再び飛び込んでいき、鎌にしている剣を横に振るってモンスターを数体斬るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「でぇやッ!」

 

「そこっ!」

 

「ご、ごめんなさいですっ!」

 

ラグナの次にモンスターとの距離が短かったナオトたちも、モンスターとの交戦を始めていた。

ナオトが右腕を上から下へと振るい、モンスターの一体を頭から殴りつける。

それに続いてアイエフが暗器を右から斜めに振り下ろし、コンパが注射器でモンスターの一体を刺した。

ナオトはモンスターの一体を倒した際にコンパたちの様子をちらりと見たのだが、アイエフはともかくコンパの攻撃を見て目が点になってしまった。

 

「・・・・・・」

 

「?どうかしたですか?」

 

「どうかしたですかってそりゃ・・・そんな光景見たら固まるわ」

 

思わず注視してしまっていたら、コンパは微笑みを見せてこちらに問いかけてきたので、ナオトは固まった表情のまま本音を語った。

実際にこんな光景を見たらハルカやシンノスケが見たら何て言うんだろう?こんな土壇場だというのにそんな考え事が出てしまっていた。

 

《ナオト・・・気にしたら負けよ。受け入れましょう》

 

「はぁ・・・仕方ねえ、そうするか・・・。・・・!?」

 

ラケルに言われてナオトも溜め息交じりに呟いた瞬間、自分たちに攻撃が来ると感じたナオトは即座にその場から横へ飛んで離れる。

ナオトが飛んだ瞬間、無数のエネルギーの弾幕がその場を通り過ぎていった。

 

「惚けすぎてんのはダメか・・・。ラケル、平気か?」

 

《ええ。速度が落ちたわけではないから平気よ》

 

「そっか。なら良かったよ」

 

ナオトは不安になってラケルに訊くが、案の定平気だったので安堵する。

どうやらラケルは今の状態になっても移動速度自体はさほど変わらないらしい。それどころか、地に足をつけると言う人としての制約が外れている今はドライブ無しなら普段より楽に動けるだろう。

それならあまり気にしすぎないで良さそうだ。ナオトは少しだけ気が楽になって周りを見てみる。

自分たちの攻撃で倒したのは三体。それでもまだ周りには多くのモンスターがいた。

 

「まだ結構いるみたいだな・・・」

 

「ええ。面倒だし、ここは一気に倒してしまいましょう」

 

ナオトのぼやきを訊いたアイエフは暗器をしまって右手に青い風を纏わせる。

つまりは今日散々練習してきたドライブ習熟の成果の確認も含まれていた。

 

「これで吹き飛びなさいっ!」

 

風を纏った右腕を右から斜めに振り上げると、一泊遅れてからアイエフの目の前を青い風が通り過ぎていき、そこにいたモンスターたちを巻き込んで飛ばしていく。

それによって巻き込まれたモンスターたちは光となって消滅した。どうやらモンスターたちは一体の耐久力とかは高くないんだな・・・。『狩人の眼』で数値を見た時はどうなのかと思ったが、思ったより楽なのでナオトは肩の力が抜けきっていた。

思えば、当時の数値が『2394211』のヴァルケンハインと『9152』のレリウスが同じく凄腕の不死者殺しだったから強さは関係ないんだろうな・・・ナオトそう結論付けた。

 

「よし・・・どうにか上手くできた・・・」

 

「アイちゃん・・・やったですね♪」

 

「ええ。どうにかね・・・」

 

肩で息をしながら拍子抜けしたような顔で自分の右手を見つめるアイエフにコンパが嬉しそうに声をかけ、アイエフも微笑みで返した。

どうやら練習の成果はしっかりと出ていた。それが解ってアイエフは一つの安心を覚えていた。

しかし、その安息も束の間の事。いくらアイエフが『ディベート』の力で敵を薙ぎ倒したとは言え、まだ少数残っており、そのモンスターたちはアイエフを優先警戒対象として認識したのか、一斉にこちらへ銃口を向けた。

 

「っ!」

 

「アイちゃんっ!」

 

今から対応しようにも時間と距離が足りず、アイエフには距離をとることしか残されていないのだが、それでもどれか一体が倒されないとまだ危険だった。

 

《・・・ナオトっ!》

 

「任せろッ!」

 

ラケルに促され、ナオトは即座に体を右に回して右手を肩の高さまで持ってくる。

そこから右手に意識を集中力させることによって右腕の前腕部から血が出てきて、それが右手に集まる。

それを見た瞬間アイエフとコンパは思わず息を吞んだ。アイエフは一瞬死ぬつもりかと疑ったが、それが自身と同じドライブによるものだと解って少しホッとした。

 

「おおぉぉぉおッ!」

 

ある程度以上右手に血が集まると、ナオトは右腕を前に突き出しながら血を結晶のように固めていき、不出来な剣のようなものを作り上げる。

それが真っ直ぐに並んでいたモンスターを三体ほど貫き、モンスターたちは光となって消滅する。

この時、アイエフは飛びのく準備はできていたのだが、モンスターたちが攻撃をせずにナオトへ狙いを変えたことによってその必要がなくなっていた。

ナオトはモンスターを倒したことを確認すると、次の行動へ移る為に結晶化されている武器の硬化を終了させる。

それによって結晶化されていた血は、まるで水風船が破裂するように砕け、小さい血しぶきが潮風に流されていく。

 

「ナオト・・・今のって・・・」

 

「ああ。俺のドライブ・・・『ブラッドエッジ』だ」

 

アイエフに問いかけられたナオトは答えながらモンスターの群れへと走っていく。

―やっぱりドライブだったのね・・・アイエフはそれが解って安堵すると同時に、自然とアレがドライブだと分かったことによって戸惑ってもいた。

しかし、その戸惑いはガサゴソと聞こえる音にかき消される。何かと思って見てみると、コンパが救急箱で何かを探していた。

 

「?コンパ、どうしたの?」

 

「血を使ってたですから、止血の準備をしておくです」

 

「あー・・・コンパ。多分、その準備はいらないわよ?」

 

コンパの答えを聞いたアイエフが苦笑交じりに答えると、コンパが「な、何でですかぁっ!?」と素っ頓狂な声を上げた。

ラケルと先程情報の共有をしたことで解っていたのだが、ナオトのドライブは自分の命を削るほど危険なものではないのだ。ただ、全開で暫く使用すると痛みが走るのが懸念材料である。

 

「まあ、とにかく大丈夫よ。それよりもコンパ、残りの敵が減ってきたから移動の準備をしましょう」

 

「は、はいです。それなら先に行くですよ?」

 

コンパは今回、大勢を連れてくるために車をわざわざレンタルしていた。しかもオープンの五人まで乗れるタイプである。

これによるレンタル費は馬鹿にならない値段をしているのだが、コンパはみんなの手助けになるならと出費を迷わなかったのである。

医学系の職に就いてるので確かに資金に余裕が出やすいコンパではあるが、それでも無茶をさせてしまったなとアイエフは感じずにはいられなかった。

 

「いえ。私も行くわ・・・。あっ!ラケル、通信入れるから代わって貰える?」

 

《もちろんよ。ナオト、少しの間頼むわ。終わったらすぐに戻って来るから》

 

「分かった!」

 

ナオトは既にモンスターにあと一歩で触れるくらいまで近づいてきており、強化されている身体能力で走るナオトに今一追いつけす、モンスターたちは狙いをつけるのに苦戦させられていた。

そして、モンスターがようやく狙いをつけられると思えば、既にナオトの攻撃が始まっていることを示すかのように、ナオトが動くと青い残像が幾つか見えていた。

その間にラケルがアイエフの中に入り込み、交代を完了する。

 

「待たせたわね・・・それじゃあ行きましょう。時間が惜しいわ」

 

ラケルの促しにコンパは頷き、二人は来た道を戻りだす。

 

「バニシングッ!」

 

ナオトは右足で強く踏み込みながら左脚で上から叩きつけるように蹴る。

身体能力が強化されたナオトは、走って勢いをつけることによって自身の中にある『エンハンサー』を作動させ、次の一撃を強化できるようになっている。

今回見えている青い残像はその『エンハンサー』によるもので、それによって今の一撃も勢いが増していた。

その強化された一撃を受けたモンスターは機械状の体の一部が破損しながら地面に激突し、跳ね返りながら光となって消滅する。

 

「ファングッ!」

 

消滅していく敵には目もくれず、そのまま体を右に回しながら左脚を強く踏み込み、左側にいた一番近いモンスターに向けて右腕を左から斜めに振り下ろす。

この時も『エンハンサー』が持続しており、青い残像が出ている強力な一撃になっていた。

その攻撃を受けたモンスターは耐えられず、そのまま光となって消滅する。

 

「バッシュッ!」

 

ナオトは更に奥にいた一体に目掛けて右、左の順で一歩ずつ踏み込んでから右足を前へと大きく突き出した。

この時の一撃も例外なく『エンハンサー』の恩恵で青い残像が出る強力な一撃を繰り出していた。

その一撃によってモンスターは正面から球状の体を貫かれ、光となって消滅する。

正面にモンスターがいないので、振り返ってみると奥にまだ三体のモンスターがいた。

それを面倒に思ったナオトは一気に片づけることを決める。

 

「ディヴァイン・・・スマッシャーァァッ!」

 

左手で地面に向けて垂らしている右の前腕を抑え、右手の拳に血を集めていく。

そして、十分に集めると同時に右腕を思いっきり右に引いてから、術式を応用した低空飛行をしながら右腕を突き出してモンスターの群れに突撃していく。

その時、集めていた僅かに硬化させた血が、自分の突き出した拳の前で螺旋状に回転していて、まるでドリルのようであった。

その勢いを殺すことなくモンスターたちにぶつけていき、残っていた三体のモンスターは光となって消滅する。

これによって、ナオトは二人が席を外した状態で全てのモンスターを倒したナオトは一息ついた。

 

「終わったし、向こうに合流してもいいけど・・・・。勝手にどっか行って焦らせるのも良くねえな・・・」

 

ナオトはすぐにネプギアたちの元へ行こうかと思ったが、アイエフに待ってくれと頼まれた以上、待つしかなかった。

 

「はぁ・・・・・・しょーがねぇ。皆来るまで待つしかねえや」

 

ナオトは半ば諦め半分納得半分くらいにため息を着いたナオトは三人をゆっくり待とうと思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

『聞こえるかしら?こちらはもうじき終わるから、移動手段を回収してから奥の人たちと合流するわ』

 

『こっちも今終わった。俺も移動手段を取りに一旦戻るが・・・大丈夫か?』

 

「ラグナは一旦そこで待っててくれる?一度ハクメンたちを確認したいわ。ラケルたちはそのまま行ってしまって構わないわ」

 

二人の知らせを聞いてナインは即座に指示を出しながらハクメンに向けて術式通信を飛ばす。

 

「ハクメン、聞こえる?答えられるなら応答して」

 

『聞こえるぞどうした?』

 

厳しいかも知れないと思っていたが、ハクメンはしっかりと反応してくれた。だが、戦闘音がかなりの頻度で聞こえてきているので、ハクメンは無理にでも応答したと考えると時間も使えない為、ナインはすぐに要件を伝えることにした。

 

「ラグナたちはもう終わったみたいだけど、そっちはどうなの?」

 

『此方はまだ掛かる・・・予想よりも敵が多い。殆どが行く手を阻むために回されたのだろうな』

 

ハクメンの答えを聞いた限りでは、ラグナたちがかなり早く終わった理由がそれだろうと伺えた。

こうなるとハクメンにあまり手を止めさせてはいけないだろう。

 

「どれくらい持ちこたえられそう?」

 

『全員がであれば最低でも5分は持つだろう・・・。だが、その先は保証できんぞ?』

 

「結構不味いみたいね・・・」

 

予想よりも悪い回答にナインは苦虫を嚙み潰したような顔になる。

せめてもの救いはラグナを待たせていることか。それでもテルミたちが来たらシャレにならないので早めに行動する必要がある。

 

『ナインよ。此れは私の『秩序の力』で辿っているものだが・・・テルミたちは此方に向かってきていない。この奥で待ち受けている』

 

「総力戦の構えってやつね・・・正直なところ各個撃破が一番怖かったから寧ろ安心したわ」

 

ハクメンが危険な中でわざわざ伝えてくれた情報にナインは安堵する。

これならば現在単独で行動しているラグナが袋にされる心配もなければ、セリカを安全に連れていくことがしやすくなる。

セリカの身の安全が保障されることは、ナインにとって何よりも嬉しい情報だった。

 

「ただ、どちらにせよ危険なのは変わりないわね・・・ラグナはそっちに向かわせるわ。誰かが来たらすぐに伝えて」

 

『承知した。では、切るぞ』

 

ナインの指示を受け入れハクメンは通信を終了する。この時ナインの一言を待たない辺り、かなり状況が良くないのだろうと伺えた。

候補生たちは今回の救出における最大の可能性を残している為、一人でも欠けると不味い。彼女たちの戦意が喪失してそのまま敗北が決まると言う危険まであった。

そこまで考えたナインは即座にラグナ通信を送る。

 

「ラグナ、待たせたわね。あんたは戻らないでそのままハクメンたちの所へ行って欲しいの。どうやらかなり不味いみたい」

 

『・・・そんなにか?』

 

「ええ。万が一のことがあったらそれこそ取り返しがつかないわ」

 

ラグナはナインからの知らせに一泊置いてから訊き返した。恐らくは向こうは五人でやってるからまだ平気だと思っていたのだろう。

またはハクメンへの信頼と、候補生たちへの期待が大きいはずだ。ラグナは自分が頼れたり、信じることができる人には基本的に信頼を置く人間であることを今日教えられたナインはそう推測を付けた。

 

「だから頼むわね・・・あんたの戦いは、大切なものを護る為でしょ?」

 

『ああ・・・そうだったな』

 

ナインが促すように焚きつけると、ラグナは思い返しながら呟いた。

勿論忘れた訳では無いだろう。後のことを考えて、即時移動できるよう準備をするつもりだったのは解る。ただ、今回はそれを状況が許さなかっただけだ。

 

『悪いなナイン。それなら俺は行ってくるぞ!』

 

「ええ。頼んだわよ」

 

『ああ。任せろ!』

 

ナインの念押しに対し、ラグナはいつものように強気で返しながら通信を切った。

あの様子のラグナなら間違いなくやり遂げるだろう。ナインは確信をしていた。

 

「セリカ、大丈夫?」

 

「大丈夫。足がちょっと疲れてきたかも知れないけど・・・」

 

「足場が悪いから無理は禁物よ。セリカが万全の力を発揮できなくなったら、それこそどうにもならないわ」

 

セリカに問いかけてみれば、いつもより疲れの色が増しているように見える。

そんなこともあってか、セリカの笑みもいつもより弱めに見えていたナインはセリカに気を遣いながら注意する。

 

「そうだね・・・。でもまだ大丈夫だよ」

 

「そう?ならいいけど、無理そうならすぐにミネルヴァに運んでもらいなさい。それならもう少し動けるでしょ?」

 

「うんっ!ミネルヴァもお願いね?」

 

「・・・・・・!」

 

ナインがセリカの身を案じて提案すると、セリカはいつものような笑顔を見せてからミネルヴァに頼む。

すると主人であるセリカの頼みを聞き入れたミネルヴァは、「任せろ」と言う念を送った。

 

「大丈夫ね?少しペースを上げるけど、無理そうならすぐにミネルヴァを頼るのよ?いいわね?」

 

「うん。分かった」

 

ナインの促しに、セリカは強く頷いた。

暗黒大戦時代に無茶をしたこともあり、恐怖を感じることはあってもそれくらいで竦んだりしないくらいにセリカは肝が座っている。

本当はそうなって欲しくは無かったのだが、ナインは今、セリカがここで動けなくなったりしないで良かったと心底安心していた。

 

「(ラグナが着くころには最低限の時間はとっくに過ぎる・・・。どうにか間に合ってちょうだい)」

 

「(ハクメンさんたちが結構危ないって言ってたけど、大丈夫だよね?ラグナならどうにかしてくれるよね?)」

 

ペースを上げて走る中、ナインは候補生たちの元へ向かうラグナへ祈り、セリカはラグナを信じながら心の中で問いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「ズェアッ!」

 

「ええいっ!」

 

ハクメンが『斬魔・鳴神』を左から水平に振るい、ネプギアはビームソードを上から縦に振るってモンスターを斬る。

ハクメンの振るった刃によって二体、ネプギアの振るった剣によって一体のモンスターが切り裂かれ、そのモンスターは光となって消滅する。

 

「・・・そこっ!」

 

ハクメンたちを背後から撃とうとしていたモンスターの二体をユニがライフルで撃ち、それによって撃ち落とされたモンスターは地に落ちる。

そこから間もなくしてモンスターたちは光となって消滅する。

 

「っ・・・!」

 

「それっ!」

 

モンスター一体から放たれた弾幕を、杖で赤い防御方陣を張ったロムが防ぎ、ロムの横から飛び出して近づいたラムが、魔力を込めた杖でモンスターの横腹を殴りつける。

それによって攻撃を受けたモンスターが光となって消滅したが、その隙をついてラムの横を取っていたモンスターがエネルギーの弾幕を浴びせかけるが、間に合ったロムがそれを防御方陣で防ぎきる。

 

「ありがとう、ロムちゃんっ!」

 

「うん。ラムちゃんは私が護る・・・!」

 

ロムとラムが笑顔で受け答えをする。

ここまでは順調に進んでいたのだが、まだモンスターが非常に多く残っており、その数の差が顕著になる瞬間が現れた。

モンスターの攻撃を防いでいるロムの横から、ラムが再び攻撃しているモンスターを攻撃しようとした時、そのタイミングに合わせていたかのようにモンスターの一体が背後からラムに弾幕を浴びせてきた。

 

「きゃあっ!」

 

「・・・ラムちゃん?・・・きゃあっ!?」

 

ラムの悲鳴を聞いたロムは思わず防御方陣を解いてしまい、そこから防いでいた弾幕が襲いかかってきた。

それに耐えられなかったロムと、遠くからとは言え、弾幕をまともに受けてしまったラムは地面に手をついてしまう。

 

「・・・二人ともっ!」

 

二人の危険に気づいたユニがライフルで攻撃しているモンスターを撃とうとしたが、ライフルはガチャりと音を立てるだけだった。

 

「弾切れ・・・!?っ!?」

 

弾が出なかった原因について気が付いたユニはマガジンを新しいものに変えようとしたが、自身の眼前にモンスターが迫ってきており、それは叶わなかった。

更には近づききっていたモンスターがその球体を使って体当たりをしてきた為、ユニは多少強引なりとも弾の入っていないライフルを鈍器代わりとして殴りつけるように振るうことで応戦した。

 

「この・・・!寄るんじゃないわよ・・・っ!」

 

ユニは体当たりを続けるモンスターに拒否の言葉を投げながらライフルで繰り返し殴りつけるが、ライフル本来の威力もない為、大したダメージを出せておらず、モンスターの勢いを削ぎきれないでいた。

 

「っ!みんな・・・!」

 

「此方は私が引き受ける・・・!御前は向こうを頼むッ!」

 

「は、はいっ!」

 

ハクメンはユニの方を指さしながらロムとラムの方へ走り、指示を受けたネプギアも弾かれるようにユニの方へ走り出した。

 

「虚空陣禁義・・・!」

 

ハクメンはラムを撃っていたモンスターを右足で蹴り飛ばし、そのまま高く飛んでから、ロムを撃っていたモンスターを左足で踏み潰して更に高くジャンプする。

この時、攻撃を受けたモンスターたちはハクメンの放った威力に耐えられず、あっさりと光となって消滅した。

ハクメンは飛びあがり切ると、『斬魔・鳴神』に気を乗せながら頭上に大きく振りかぶり、自身の正面にいる一番近いモンスターの元へと急降下していく。

 

天骸(てんがい)ッ!」

 

ハクメンは地面に足がつくタイミングに合わせて『斬魔・鳴神』を全力で振り下ろす。

その時、周囲に叩きつけられた気がハクメンを中心に扇状へ広がっていき、モンスターたちを巻き込んだ。

それによってハクメンに叩きつけられたモンスターは当然のこと、気に巻き込まれたモンスターたちも光となって消滅する。

 

「これ程攻撃しても、まだ残っていると言うのか・・・!」

 

しかし、それだけやっても奥の方にモンスターが残っていことに、ハクメンは声を荒くする。

 

「は、ハクメンさん・・・ありがとう」

 

「っ・・・ありがとう」

 

「安心するにはまだ早い・・・動けるのなら止まってはならぬ・・・良いな?ズェアッ!」

 

二人に礼を言われたハクメンは促しながら、迫りくる弾幕に向けて『斬魔・鳴神』を振るい、『封魔陣』を作り上げて弾幕を防ぐ。

その間に二人はこくりと頷いて隠れられる場所を探すべく走り出した。

 

「はぁっ!」

 

ネプギアはどうにかユニの所まで辿り着き、再び体当たりをしようとしていたモンスターに、ビームソードを上から縦に振り下ろすことで切り裂き、そのモンスターは光となって消滅する。

 

「ネプギア・・・?」

 

「ユニちゃん、大丈夫・・・?・・・っ!?」

 

戸惑うユニにネプギアは安否を問いかけるが、モンスターが攻撃してくる気配を感じ、慌ててビームソードを横に傾けて防御態勢を取る。

しかし、ビームソードでは十分な防御範囲が確保できず、いくつかの弾がネプギアの体を掠めていた。

 

「っ!ネプギアっ!」

 

ユニは助けるべく、急いでライフルのマガジンを交換し、ネプギアを撃っているモンスターに向けて撃った。

寸分違わずモンスターに弾が当たり、モンスターは光となって消滅する。

 

「ごめんネプギアっ!大丈夫・・・?」

 

「どうにか・・・ありがとうユニちゃん」

 

「まだ安心できないわ・・・どうにかこの場を・・・」

 

―切り抜けないと・・・。そう繋がるはずの言葉は再び近くに現れたモンスターに遮られた。

 

「うぉりゃッ!」

 

既にモンスターはこちらに狙いをつけている為、迎撃が間に合うものではなかった。

せめて避ける努力をしよう。そう思ってユニはネプギアを押しながらでも避ける動作に入るが、何者かがそのモンスターを斬り捨てたことで杞憂に終わった。

 

「・・・え?」

 

「・・・間に合ったか。お前ら、大丈夫だな!?」

 

ユニが困惑していると知っている声が自分たちに気遣いの声をかけてきた。

 

「ラグナさんっ!?」

 

「ああ・・・ナインに頼まれて大急ぎでこっちまできた。このままじゃ埒が明かねえな・・・。一先ず、お前らは固まって動くんだ。それなら互いのフォローも早くできる」

 

「わかりましたっ!」

 

ネプギアは声の主がラグナだと解って驚く。

ラグナはどうしてきたかを話してから簡単に指示を出し、そのままハクメンの元へ走っていった。

走っていくラグナに向けてユニは強く返事を返したが、急いでる為、返事がないのは仕方ないとユニは割り切っているので、気にしてはいなかった。

 

「ネプギア、二人の所へ行くわよっ!」

 

「う、うん・・・」

 

ユニは促しながら先を走り、ネプギアはどこか迷いがあるように頷き、後を追うように慌てて走り出した。

 

「(・・・また誰かに頼らないといけないのかな?ラグナさんが『あんな想いを二度としたくない』って言ってたのは、こういう事なのかな?)」

 

ユニの後ろを走りながら、ネプギアは胸の中にある気持ちに困惑していた。そして、ネプギアの足取りは段々と遅くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

《ねえ・・・聞こえる?》

 

「・・・えっ?誰?どこにいるの・・・?」

 

どこだかわからない真っ暗な空間で、少女の声を聞いたネプギアは困惑しながら辺りを見渡す。

 

《ここだよ・・・》

 

「っ!?あなた・・・私?」

 

ネプギアが辺りを見渡していると、正面から金髪の髪を持った少女が現れた。

その少女を見たネプギアは思わず問いかけた。自分がみんなを不安にさせていた時の少女の感覚と同じだったからだ。

 

《そうとも言えるし・・・そうじゃないとも言えるかな・・・》

 

「・・・どういう事?」

 

少女が困ったような笑みを浮かべて返してきた理由が分からず、ネプギアは再び問い返した。

自分と交代していた人が目の前の少女だと言うことは、ネプギア自信の体に残る感覚が告げていた。自分じゃないと断言されるならまだしも、その曖昧とも見れる回答の意味が、ネプギアには理解できなかった。

 

《それは認識次第なの。あなたが私を自分だと思えば私はあなただし、あなたが私を違う人と思えば私は私自身なの》

 

「認識次第・・・」

 

なんとなくではあるが、ネプギアは少女の言いたいことが分かった。そして、昨日の深夜からあったことで知らず知らずのうちに少女を封じかけていたことも・・・。

ラグナたちも、恐らくはゲイムギョウ界に来てから面倒な事柄が減ったことでその辺りの警戒や意識がが薄れてしまったのか、話すのを躊躇っていたのだろう。

そうであれば、ハクメンが何かを言いたげにしながらも黙っていたことや、皆が混乱する中ラグナが極端に落ち着いて見えたのも納得がいった。

そして、そこまで考えたネプギアは自分の認識を決めるために数瞬目を閉じる。

 

「じゃあ、『あなた()』に聞きたいんだけど・・・どうして私に声をかけたの?」

 

《・・・!》

 

ネプギアは少女のことをもう一人の自分として受け入れることを決め、改めて問いかけた。

それを聞いた少女は一瞬驚いた。何度か勝手に体を使ってしまったことから拒絶される危険性を考えていたのだが、ネプギアは自分を拒絶したりはせず、あろうことか自分のことをそれも自分だと受け入れてくれた。

それが嬉しくなりながらもどうにか、平静さを保った少女は微笑みながらも決意を固める。

 

《私ね・・・兄さまと、兄さまの大切な人たちを護りたい・・・『あなた()はどう?』》

 

「私も、お姉ちゃんたちを助けたいし、ラグナさんたちを支えられるようになりたい・・・。でも、私一人だと限界みたい・・・」

 

少女は自分の気持ちを伝えながらネプギアに問いかけ、ネプギアは答えながらも沈んだ表情になった。

どれだけ練習しても変身を習得することはできず、今回もラグナに助けてもらってしまったことが大きかった。

それが悔しくてネプギアは一粒の涙を流すが、それを少女が右手の人差し指で拭った。

 

《諦めないで・・・。一人で無理なら『二人』で戦おう》

 

「・・・えっ?二人で(・・・)?」

 

少女から告げられた言葉にネプギアは驚きを隠せなかった。

少女が冗談を言っているわけでないのが解っているので、その驚きは倍近くに増えていた。

 

《うん・・・。この世界で眠っている『本来の私』は無理でも、『あなた()』と一緒に・・・『ここにいる私』ならできるよ。でも・・・一つだけ危険があるの》

 

「・・・その危険って?」

 

ネプギアは深いことは気にしないことにして、少女にその危険を訊くことにした。今は一刻も早く大切な人を助けに行きたいからだ。

 

《それは・・・『あなた()』にはこれまで以上に『私の魂』が混ざり込むようになるから、今まで通りの『あなた()』じゃいられなくなる危険性があるの・・・『あなた()』はそれでもいいの?》

 

「私は・・・」

 

少女の言葉を聞いたネプギアは回答に詰まる。何事もなければそれでいいが、人格が急変すると言う危険性は余りにも大きすぎるからだ。

 

「私は・・・大丈夫だよ」

 

《っ!?ほ・・・本当に言ってるの?》

 

「うん。だって、何もしないとお姉ちゃんたちを助けられないし、護れないんでしょ?それなのに何もしないなんて私は嫌だな・・・」

 

《・・・そっか。ありがとう。私を受け入れてくれて・・・》

 

ネプギアの迷いなき回答に少女は困惑しながら問い返した。

そして、ネプギアの受け入れることを選んだ理由を聞き、少女は一泊置いてから礼を述べ、左手を開いた状態で前に出した。

 

《一緒に戦おう・・・私たち(・・・)の大切な人を助ける為に》

 

「うん。一緒に戦おう・・・」

 

少女の呼びかけを受け入れたネプギアは少女の左手に向けて自分の右手を開いた状態で前に出した。

そして、互いの手を重ねた二人がそっと目を閉じると、重ねた所から眩い光が広がった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「うん・・・そうだよね」

 

「ネプギア?どうしたの?早く行かないと・・・」

 

ネプギアの走る足はいつの間にか止まっていて、それに気づいたユニが不安になって声を掛けた。

 

「ごめんね。今まで気づいてあげられなくて・・・目を逸らしてて・・・」

 

「ネプギア、聞いてるの?早くこっちに・・・死にたいのっ!?」

 

ネプギアは左手を自分の胸辺りに当てながら目を閉じて呟く。それはここにいない人物へのものであり、その意図を理解できないでいるユニは声を荒げながら怒鳴り半分でネプギアに問いかける。

そして、気がつけばまだ来ていなかったナオトたちが車やバイクと共にやってきていて、救援のために走り出していた。

 

「私も諦めない・・・!絶対にみんなを助けるっ!」

 

目をゆっくりと開きながら宣言するネプギアの目には、ゲイムギョウ界で始めて『蒼炎の書』を使った時のラグナと同じように強い意志が宿っていた。

そして、ネプギアが言い切った瞬間ネプギアを紫色をした光の柱が包んだ。

 

「っ!?」

 

「・・・この気配は・・・少女よ、事を成したか」

 

目の前でそれを見たユニは驚愕し、気配が変わったことに気が付いたハクメンは安堵の混じったような声があった。

そして、光の柱が消えると、そこには白いレオタードを身につけ、レオタードと同じようなカラーをしている独自の形をした銃剣・・・M.P.B.Lを手にした桜色の髪を持つ少女がいた。

つまりは変身したネプギア・・・パープルシスター誕生の瞬間だった。

変身したネプギアは空へ高く上昇し、上空からM.P.B.Lで狙いをつけ、ロムとラムに近づいているモンスターを撃つ。

その銃口から放たれたビームは寸分の狂いなく、球状のモンスターのど真ん中を貫き、モンスターは光となって消滅する。

ロムとラムは困惑しながら上を向いて見ると、ネプギアが変身できるようになったことがわかり、顔を合わせて喜んだ。

そこからネプギアは一体、また一体と次々にM.P.B.Lで狙いをつけては撃ち、周囲のモンスターを何ら苦も無く倒していく。

その勢いは、何も知らぬ身が今の光景を見たら、降り注ぐ暴力のように見えるかもしれない程だった。

 

「何だ!?何が起きたんだ!?」

 

《ナオト、アレが彼女たちの言っていた変身だと思うわ》

 

「ええそうよ。ネプギア、凄いじゃない・・・」

 

「ギアちゃん・・・変身できるようになって良かったですぅ♪」

 

その光景を見たナオトは驚き、ラケルは聞いていた話を思い出してナオトに告げる。

ラケルの言葉を聞いたアイエフはそれを肯定しながらネプギアを称賛し、コンパはネプギアが変身できたことをまるで自分のことのように喜ぶ。

反応こそ人それぞれではあるが、これで消えかけていた希望の灯が強くなったことは確かだった。

 

『誰か聞こえる!?何か物凄い光景が見えたんだけど・・・どうなっているのッ!?』

 

そして、ナオトたちが反応を見せてからすぐに、ナインから術式通信ができる全員に通信が送られてくる。

どうやら間近で見ていた自分たちはともかく、遠くから見たナインは何があったか解らないから焦りの色が伺えるくらいに声が荒げていた。

 

「大丈夫です。今のは私がモンスターを攻撃して起きたことですから・・・」

 

『ネプギアなの・・・?それに、自分でやったってことは・・・』

 

その通信にはまさかのネプギアが反応したことにナインは驚きを隠せず、同時にネプギアの言葉で大方察しをつけることもできていた。

状況が分かったナインは『ビックリしたじゃない・・・』と安堵の声が出ていた。それを聞いたネプギアは「お騒がせしました」と詫びを入れる。

 

『とりあえず、状況が分かって安心したわ。もうすぐでそっちに合流するから、移動の準備だけ済ませておいて』

 

「わかりました。それではまた」

 

ナインの言葉には地面に降りながらネプギアが答え、それを聞いたナインが通信を切ったことで全員の通信が終了する。

 

「ネプギア・・・その姿ってことは」

 

「はい。これが変身した私・・・パープルシスターの姿です」

 

ラグナが笑みを浮かべたところに、ネプギアも微笑みながら答えた。

ここまではみんなの知るネプギアであるが、ここからが違った。否、既に変身する前からネプギアは変わっていた。そして、それが今露わになる瞬間が来た。

 

「これで私も一緒に戦えますね・・・兄さま」

 

嬉しそうな笑顔で告げる『ネプギア』は今までにない程、少女の気配をラグナに感じ取らせていた。




これにてアニメ4話分まで終了しました。
どうにかネプギアを変身させられる所まで持って来れました。変身直前のシーンは完全にオリジナルの状態である為、これで大丈夫かどうかがかなり不安でもあります・・・(汗)。

さて、本日午前10時にアズールレーンとのコラボが終了しました。
ガチャの結果を報告させて頂きますと・・・残念ながらホワイトハートとブラックハートを引けなかった事からコンプリートならずでした・・・(泣)。
ピックアップで確率上がっている時に合わせて引いてもこの二人だけは出てきませんでした。何故かノワールはラストに4回回したらその内二人出てくるという・・・。
なんと言うか、確率の恐ろしさを思い知りました・・・(笑)。

さて、次回からそのままアニメ5話の方に入りたいと思います。
山場の一つである為、頑張っていきたいと思います。
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