超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER-   作:ブリガンディ

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前回の予告通り、今回から毎週日曜日の投稿でいこうと思います。


31話 対面する者たち

ニューが背中から飛ばしてくる八枚の刃を掻い潜って懐に飛び込み、俺は剣を上から縦に振るう。

対するニューは両腕を顔あたりで交差させることによって、腕の近くに付いている刃を使って攻撃を防いだ。

 

「ラグナ・・・『ムラクモユニット』の性質、忘れて無いでしょ?」

 

「チィ・・・ッ!」

 

ニューが口元を緩めながら投げかけてきた言葉で、大方次にやることを察した俺はそのままニューを押し飛ばして後ろを振り向く。

振り向いた瞬間に八枚の刃が連続で飛んできたので、俺は横に飛んで避け、避けきれなかった後続の二枚は剣を左右に振って弾き飛ばし、八枚の刃がニューの方へ戻っていくのを目で追いながら正面に向き直った。

 

「やっぱり当たらないよね・・・でも全然いいよ。だって、その方がいっぱい殺し合えるからッ!」

 

「付き合うって言った側から訊くのもアレだが・・・。本当にそれ以外の生き方を探す気はねえのか?」

 

一通りの攻防を終えてニューの声は確かに笑っているのだが、そのバイザーの奥に隠されている目が笑っているとは思えなかった。

そんなこともあってか、俺は望みをかけ、改めてニューに訊いてみることを選んだ。

 

「・・・何言ってるの?ある訳無いじゃん。ニューにとってはこれが全てなんだから・・・他に探す必要なんて無い」

 

「・・・ったく、この石頭が・・・」

 

ニューの回答を聞いた俺は残念な気持ちになり、剣を逆手に持ち直した。また、それを見たニューも八枚の刃を自分の側に浮かせる。

大事なものを奪われ、一時期は統制機構を叩き潰すことしか頭になく、カグラに取っ捕まって治ったものの、結局は真っ当な生き方をできなかった俺はゲイムギョウ界へきて変われた。

だからこそ、俺と殺し合うだの『黒き獣』になって世界を潰すだのしか考えられないニューも、こっちで生きていけば変われると思って問いかけたのだが、その声は届かなかったようだ。

 

「・・・で?もう話はお終い?だったらニューから行くよッ!」

 

「んの野郎ッ!」

 

ニューが弧を描くように八枚の刃を横へ滑らせて俺を斬ろうとしたので、俺は剣を右から斜めに振り下ろして防ぐ。

普通の武器同士での激突だったらこれだけで終わるものの、今回はそうも行かず、激突はすぐに終わってすぐに次の刃が当たるといった形で、剣と刃がぶつかる度に衝撃が伝わるので、俺がかなり不利であった。

そして拮抗していたのも束の間、最後の刃が剣にぶつかったところで俺は押し返されてしまう。

 

「・・・ッ!」

 

「じゃあ・・・次はいっぱい行くよ?レガシーエッジ!」

 

「・・・!?やべぇ!」

 

ニューが頭上辺りで腕を交差させるのを見た俺は自身が攻撃を受けないように、結界の中にいて身動きの取れないネプテューヌたちが巻き込まれないように、そこから離れるように横へと走る。

両腕を外側へ振り下ろしたニューから放たれた無数の黒い剣は俺のいた場所を、まるで追いかけてくるように飛んできていて、俺がその場を通り過ぎた瞬間とほぼ同時に地面に当たってそれを抉り、土煙を起こしていた。

 

「ラグナ、大丈夫っ!?」

 

「ああ平気だッ!戦った経験があって良かったわ・・・」

 

不安そうに問いかけてくるネプテューヌに、俺はデカい声で返してから息を吐くように呟いた。自分たちがヤバいって言うのに、俺の心配をしてくれるのは少し感慨深いものがあった。

だが正直なところ、もしここにいる俺がカグツチに行く前だったら今の攻撃で動けないくらいに傷つき、ニューと融合して『黒き獣』になっちまっていただろう。

そんなことになったら最悪だ。すぐ近くにいるネプテューヌたちを、助ける為に来たのに真っ先に殺すことになっちまう・・・それも見境無くだ。

そんなのは嫌に決まってる・・・。気を引き締めて俺は剣を構え直した。そんな時、ネプテューヌの声の方に気づいたニューがそっちに顔を向け、嫌悪感を露にした。

 

「・・・ねえラグナ。誰こいつら?」

 

『・・・っ!?』

 

その途端、急に冷ややかな声で俺に訊くニューを見て、四人は思わず息を吞んだ。

あいつらはまだどうしてそうなったか分からない。俺は知っているからか、またはその嫌悪感が俺に向けたものでは無いからか、対して動じることは無かった。寧ろ、お前はまだそんなことを言うのかと言う呆れが大きかった。

ニューは俺以外全てが嫌いであり、それはゲイムギョウ界のあらゆるものも例外では無かったようだ。

ハクメンから聞いた話では、あいつの事象でニューと出くわしたのは俺以外にジンとツバキ=ヤヨイがいたが、恐らくはツバキ=ヤヨイにも同じようなものを向けたのだろう。暗黒大戦時代でセリカに向けたのも全く同じだった。

そのことを考えるに、どうやらニューは自分以外の女性が俺とニューのことを邪魔するのが筆頭して嫌いなようだ。何故かノエルの時は例外だったが、アレは俺が後から来たってのが大きいんだろう。

 

「ラグナ・・・ニューあいつら嫌い・・・。早く殺して?じゃないとニューが殺しちゃう・・・」

 

「あ、あの子・・・正気なの・・・?」

 

「まるで殺気の塊だわ・・・」

 

俺にあいつらを殺すよう急かすニューを見て、ノワールは何か見てはいけないものを見てしまったのではないかという顔を見せた。それだけニューが異常だと感じているんだろう。

また、ブランもニューが持つ殺意を感じ取っていて、身動きできないからこそ目の焦点をニューに合わせながら驚いていた。

 

「ざけんな・・・誰が殺すかよこのタコ・・・『蒼炎の書(こいつ)』は護る為の力だ。そんなことの為に使うかよ」

 

当然のことながら俺はニューの頼みなんざ聞き入れるつもりは無い。その証拠として右足を僅かに外側へ動かす。

勿論ニューは俺と殺り合うのが目的な以上そっちを優先することは間違いない。結界を破るのは時間が掛かるし、四人はニューの邪魔をできない。

更に確定でニューの意識をこっちに向けるなら、殺し合うってことを否定してやればいいから、もう簡単だった。

 

「それに言っただろ?俺は殺しはしねえ・・・お前を助けに来たんだってな」

 

俺はニヤリ顔で言い切って見せる。すると、ニューの口元が震えているかのように悲しそうなものになった。

 

「ラグナ・・・どうしてそんなことを言うの?だって、ニューとラグナが殺し合って一緒になるのは『予定調和』なんだよ?」

 

「ニュー・・・。もうその『予定調和』は成立してねえよ。その証拠が、今ここにいる俺だ・・・。今の俺は、ノエルの助けがあったとは言えその『予定調和』を乗り越えてるし、その『予定調和』でできたものがある暗黒大戦時代へ行って、それから護れる奴らも護ったッ!」

 

「・・・ッ!」

 

戸惑うニューに、俺は一つ一つ、語調を強くして答えていく。

あまりにも予想外過ぎる回答と俺の語調が重なって、ニューの体がびくりと震える。女神たちがついていけない様子になっているが、このことは後で話すしかない。

 

「悪いなニュー・・・。俺からすれば、お前の言ってる『予定調和』なんて消えちまったようなもんなんだよ・・・」

 

「・・・ラグナ・・・ッ!ラグナァァッ!」

 

完全にニューの怒りのスイッチが入りきり、ニューは溢れる殺気をこっちに向けながら突っ込んできた。

薄々こうなるとは思っていたが、こうなると少し罪悪感が出てくる。

カグツチにいた頃の俺だったら「テメェが何でキレてんだ?」って言い放つところだが、今は違う。俺にとってはもうサヤと同じ顔、同じ声をした許せない奴じゃなくて、何をすればいいかわからないまま、殺すだのなんだのしなきゃいけないと言い張ること以外を奪われた可哀想な奴だった。

 

「(もう少し我慢してくれよ・・・そうしてくれれば、俺が絶対にお前をそんな『悲しい呪縛(予定調和)』から解放して、道を選ぶことのできる時間を用意してやるからな・・・!)」

 

俺は迎え撃つ為に、向かってくるニューを見据えながら剣を構え直す。

『イデア機関』の使用制限ありで、俺がしくじったら『黒き獣』になるという不安要素を抱えたままだが、やるしかない。元より俺はそのつもりでいた。

そして、十分に近づき切ったニューが八枚の刃を同時に振り下ろし、対する俺は、タイミングを合わせて剣を右から斜めに振り下ろして八枚の刃にぶつける。それによって、ぶつかった所から小さい火花が咲いた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「ミラージュダンスッ!」

 

「レイニーナトラピュラッ!」

 

ネプギアのM.P.B.Lを使った踊るような連撃と、武器をベールが使っている槍に変えた、マジェコンヌの連続で放たれる高速の突きがぶつかり合う。

 

「そらッ!」

 

「・・・!」

 

ネプギアが最後に放った横一閃の斬撃を避けてすぐ、マジェコンヌは締めの一撃として全力で突きを放つ。

反応が間に合ったネプギアは、体を右に逸らしながら同方向へと動いてどうにか避ける。

 

「ま・・・間に合った・・・?」

 

「む・・・。時間を与えすぎたか?馴染んできたように感じる・・・。それだとしても今のを避けたのは見事と言っておこうか」

 

避けたネプギア自身も反応できたことに驚いている。体が動きづらくなっているとは言え、それでも女神化による身体強化の恩恵の方が大きいようだ。

また、マジェコンヌに言われて候補生四人気付いた事だが、心なしか動きづらさが少なく感じていた。マジェコンヌは変身に慣れてきたと推測していたが、実際に動きの阻害を受けている彼女たちは、その動きづらさに体が適応したが故に動けるようになったと体で感じていた。

避けきれたのはいい。体が追い付いてきたのが分かったのもいい・・・。ただ、ネプギアにはそれどころじゃない程気になってしまうものが一つだけあった。

 

「(どうしよう・・・。ラグナさんに任せたのはいいけど、あの子のことが気になってしょうがない・・・!)」

 

ネプギアはニューのことが気になって仕方なかった。遠目で少ししか見えなかった為に今一判断できなかったが、よくよく思い返してみれば、異様なまでに自分と似ている気配をしていた。

ラグナが言っていた『少女』・・・ひいては自分の中にいる『もう一人の自分』でないことは何となく判っている。ただ、それでも自分とあまりにも似すぎていた。そんなこともあってネプギアの意識は時々ニューの方へと向いていた。

 

「・・・?動きが止まったか?ならば死ねいッ!」

 

「つ・・・!?」

 

ネプギアの動きが止まっていることに気が付いたマジェコンヌが、自分の武器を元に戻してからネプギアへと投げつける。

マジェコンヌが槍を投げつけてからようやくネプギアの意識は元に戻ったが、それでも回避するには到底間に合わないものであった。

 

「させないっ!」

 

「ロムちゃんっ!」

 

「うん。私たちはあのおばさん・・・!」

 

「チィッ!反応の早い奴らだ・・・」

 

ネプギアの様子に気が付いたユニがランチャーでマジェコンヌの武器を撃って弾き飛ばし、ロムとラムはマジェコンヌに牽制をすべく、それぞれのペースで杖から氷の塊を作ってマジェコンヌに飛ばす。

いい結果を出せなかったマジェコンヌは、舌打ち混じりに歯嚙みしながら飛んでいく武器に追い付いてそれを掴み、距離を取って立て直した。

 

「ネプギア、もしかしてさっきの子が気になるの?」

 

「うん・・・。最初は何とも無かったんだけど・・・どうしても気になっちゃって・・・」

 

もしかしてと思ったユニがネプギアの傍まで寄って訊いてみると、案の定当たっていた。ネプギアも悩むよりは素直に吐いてしまった方がいいという判断で、あっさりと話したのだった。

それを聞いたナインはどうしたものかと考え込むが、ロムとラムはもう考えが決まっているようでお互いに顔を見合わせてから頷いた。

 

「じゃあ、いっそのこと行ってきちゃいなよ!」

 

「・・・えっ?」

 

ラムが言ったことにネプギアは思わず困惑してしまった。これからやることは、自分の疑問を確かめる為だけに戦線離脱するようなものであるため、ネプギアはみんなに負担をかける訳にはいかないという思いの方が強かったからだ。

だが、実際にラムが言ったことはどうだろうか?否定するどころかこちらの背中を押しているではないか。

 

「悩んでるよりはずっといいと思う・・・」

 

「確かにそうね・・・。それに、ラグナさんもあの子相手に手一杯そうだから、手伝うついでにいいんじゃないかしら?」

 

「ロムちゃん・・・ユニちゃんも・・・」

 

更にロムとユニが背中を押すようにラムと同意であることを伝える。

そのことに、ネプギアは戸惑いながらも嬉しく感じた。しかし、行っていいと言われたものの、本当に行っていいのかどうか・・・そこでまだ思い悩むのだった。

 

「悪いが、そう何度も会議を待つつもりは無いぞッ!」

 

「獄砕のクンツァイトッ!」

 

マジェコンヌは話している間に攻撃すべく近づこうとしたが、ナインが上空から岩石を呼び出し、マジェコンヌの眼前に来るように落下させたため、マジェコンヌは仕方なく接近を中止する。

 

「ナインさん・・・?」

 

「行くなら早く行きなさい。大丈夫・・・。後は私たちだけでどうにかなるわ」

 

最後にナインがネプギアに勧めることで、全員が賛成ですあることを示した。

仮に動きづらいメンバーが三人いたとしても、女神候補生であり、しかもその空間に長時間いたことで慣れ始め、動きが良くなって来ている。

さらに、ナインはクンツァイトを外した時にちらりと来た道の方を見ていたのだが、そちらから自分たちに残されている最後の手札が近づいてきていた。

そうであれば、自分たちが耐えるだけ耐えて、後はそれと一緒に逆転するだけだった。

 

「みんな・・・。ありがとうございます。私、行ってきますっ!」

 

ネプギアは四人に礼を言いながら身を翻し、ラグナとニューのいる方へ飛んで行った。

 

「(ネプギア・・・分かってるとは思うけど、無理しないでね)」

 

ネプギアを見送ってから、マジェコンヌの方に向き直ったユニはランチャーを構え直した。

 

「バル・ライア!」

 

「シフトスウェーッ!」

 

レリウスはイグニスに指示を出し、一瞬でナオトの背後に回り込ませる。

イグニスが回り込みを終える頃には両腕の肘から刃を出し終えており、それでナオトを挟み斬るように腕を振るう。

それに対し、背後に回り込まれた段階で危機感を感じていたナオトは、一瞬だけ助走をすることで『エンハンサー』、を発動させたナオトは青い残像を一つだけ残してその場から姿を消した。

それによって、イグニスの放った斬撃は空を斬ることに留まった。

 

「・・・ほう」

 

「ファントムペインッ!」

 

ナオトはレリウスの背後に回り込んでおり、これなら反応できまいと判断したナオトはそのまま左足、右足の順番で飛び上がりながら回し蹴りを浴びせる。

しかし、レリウスはどうにか反応を間に合わせており、最終的に弾かれながらも、機械の腕を二つ使うことで防ぎ切った。

 

「これは驚いた・・・まさかイグニスを出し抜くとはな・・・」

 

「いやいや、今のが間に合うテメェも大概だろ・・・まあ、今回は倒す必要ねえからいいけどよ・・・!」

 

レリウスはナオトの動きに称賛を送るが、ナオトはレリウスの反応速度を見て呆れかえっていた。

―何で普段戦わない奴がここまでやれるんだ?ナオトはそんな気持ちで頭がいっぱいになる。

実のところ、確かにレリウスの反応が追い付けなさそうなところまでは来ているのだが、あと一歩が足りない・・・今回はこれでもいいのだが、次戦う時の為にもっと早く動けるようにしておいた方が良いだろう。ナオトはそう感じた。

 

「まだこの程度では終わらんだろう?次はこちらからだ・・・。バル・ラント!」

 

「うぜぇんだよぉ!インフェルノクルセイダーッ!」

 

レリウスは再びイグニスへ指示を出し、その指示を受け取ったイグニスは、自身後頭部にある二つの刃を回転させながらナオトに突進する。

対するナオトは右腕から右の前腕部から必要な量だけ血を集め、それによって右前腕部の近くに鉤爪を作り上げて、下から掬い上げるように振りながら飛び上がる。

当たり所が良かったのか、先程突進してきていたイグニスを打ち上げることに成功した。

 

「・・・落ちろッ!」

 

ナオトはそのまま術式と同じ要領で空中制御をしながら、オーバーヘッドキックをイグニスの頭上にぶつける。

それによって勢い良く落下していくイグニスは、途中でどうにか姿勢を直すものの、勢いまでは殺し切ることができず、結局は地面に足を滑らせて強引に体制を整えることとなった。

驚くこととして、イグニスはそんな最中にもレリウスの近くに来るように、尚且つ巻き込まないように気を配っていたのだ。

 

「こんなのはどうだ?カド・レイス」

 

「・・・!させるかッ!」

 

降りてくるナオトを見て、タイミングと位置を合わせたレリウスは背中から、緑色の武器を取り出し、それから刃を回転させながら前に出す。

レリウスの動きに気づいたナオトは、空中制御をしながら右腕の前腕部から右手に血を集め、それを剣のようなものにして上から下に振り下ろす。

それによって互いの攻撃がぶつかり合い、奇襲に失敗したレリウスは武器をしまい、ナオトは血の硬化を終えさせる。

 

「成程。魂の性質・・・物事に対するぶつかり方・・・極めつけには『ブラッドエッジ』か・・・。確かにここまで類似点が多ければ、間違えられるのも不思議ではない」

 

「ああ・・・全く。お前は何をしたら満足するんだ?」

 

ナオトはレリウスの見せる反応にげんなりとする。

欲望というのは人の根底にあるものだが、レリウスのそれは異様なまでに深く、それを垣間見る羽目になったナオトがこう言いたくなるのも無理のない話だった。

レリウスはそんなこといざ知らず、愉しそうに呟き、自分が見つけたものとまだ足りないものを照らし合わせていた。

 

「オラ死ね・・・死ね、死ね、死ねッ!一辺死んでみろやァッ!」

 

テルミは左手のバタフライナイフを右から水平に振りながら前方宙返りをし、その途中で左足を前に出して蹴りを放ち、そのまま体制を直しながら右手に持ったバタフライナイフを上から縦に振り下ろす。

しかし、それだけでは終わらず、右足を高く振り上げて蹴り、右足に履いてる靴の踵から隠されているナイフを出し、返しの勢いを使って踵落としをする。さらにそのまま姿勢を低くして、体を右回りに回しながら右足で足払いをする。

対するハクメンは、その迫りくる連撃を『斬魔・鳴神』で、己の体で防ぎながら反撃のタイミングを待つ。

 

「・・・デヤァッ!」

 

「・・・チィッ!」

 

一通りテルミの攻撃が終わったのとほぼ同時に、ハクメンは『斬魔・鳴神』を右から水平に振って反撃に出る。

しかし、テルミは寸でのところで飛びのき、どうにか避けきって見せた。そこから再びテルミが近づいてくるので、ハクメンは『斬魔・鳴神』で迎え撃つ。

この二人の戦いは不毛な状態になっていた。テルミがハクメンが繰り出す技の威力を警戒して、それを出させないために連続攻撃をしているが決定打には程遠く、ハクメンの方は確かに決定打こそ受けてないものの、気を練る為の時間がもらえず、こちらも決定打にはなり得ない攻撃が多くなっていた。

 

残影牙(ざんえいが)ッ!牙昇脚(がしょうきゃく)ッ!」

 

「蓮華!」

 

全くダメージを与えられないテルミが、右のバタフライナイフに碧い炎のようなものを乗せ、右から左へ掬い上げるように振るい、そこからすぐ、右足に碧い炎のようなものを纏わせて勢い良く振り上げる。

対するハクメンは、両足に気を乗せた状態で、左足での足払い、右足による蹴り上げの順で受け流す。

決定打にはならず両者は再び膠着状態に戻ってしまった。

 

「チィッ!やっぱり埒が明かねぇ・・・!テメェ、横槍二回でよくもパァにしてくれやがって・・・!おまけにやたらタフなのが更にイラつくわ・・・!」

 

「フッ・・・一つのことに固執するとはな・・・。テルミ、貴様も随分と器量の小さい男になったな」

 

イラつきのあまり、嫌な顔を隠す気もなく、テルミがハクメンに吐き捨てるが、ハクメンから返って来たのは煽りに近い嘲笑だった。

その声音を聞いたテルミは怒りが限界を超え、カチンとなったテルミはハクメン以外視野に入らない状態に陥った。

 

「テンメェ・・・!二回も横槍入れるわコケにするわでふざけやがって・・・!そんなに殺されてぇならテメェからブッ殺してやろうかッ!」

 

「どう思われていようと関係ない・・・。我が使命に従い、私は貴様を滅するまでッ!虚空陣奥義・夢幻!」

 

怒り狂ったテルミは、全身から碧い炎のようなものを溢れ出させながらハクメンに向かって行く。

それを見たハクメンは慌てる事などせず、『斬魔・鳴神』を構え直して溢れ出る気を発した。

 

「(思いがけぬ形で注意を引くことができたな・・・後は我らの汚点を雪ぐのみ・・・!)」

 

迎え撃つ準備が整ったハクメンは技を、放つべく『斬魔・鳴神』を頭上へ振りかぶるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「悪夢は・・・!」

 

「スープラレイジ・・・!」

 

ラグナは黒い炎のようなものを纏わせた剣を左側に振りかぶり、それを縦に振り下ろしながら急降下していく。

対するニューはラグナを迎え撃つべく、体を横にしながら回し、その動作に合わせて八枚の刃を弧を描くようにラグナのいる方へ振るう。

黒い炎のようなものと、急降下している時の勢いで威力が増していたため、ラグナの一撃は弾き返されずに済み、互いの武器がぶつかり合ってから逸れるように通り過ぎた。

 

「終わらせてやるッ!」

 

「クレセントセイバー・・・!」

 

ラグナは体を左に一回転させながら剣を逆手に持ち直し、黒い炎のようなものを纏わせた状態で上から縦に振り下ろす。

ラグナが今の攻撃を用意しているところを突こうとしたニューは体半分程の高さへ飛び、体を右に一回させながら左腕を振り下ろし、黒い鎌状の刃を自身の前に呼び出して、弧を描くように振るう。

二人が放った攻撃がぶつかり合い、その場所から小さい火花を散らした。

 

「ラグナ・・・どうしてニューを否定するの・・・?どうして悪夢だなんて言うの・・・!?」

 

「・・・ある人物が死ぬと絶対に『やり直し』が起こる・・・。その人物は俺で、しかも毎回お前と融合した直後に消されたのが原因なんだ・・・。そりゃ、今まで懸命に生きてきた奴らからすれば『悪夢』以外何ものでもないだろうよ・・・」

 

自身の事を否定されて怯えているような様子のニューに、ラグナはやるせない気持ちになって答えた。

確かに世界を救う為、自分を含む全ての『悪夢』を消し去ると言うことはしたが、その『悪夢』の中心が自分であったことが分かった時は、流石に「今までの罪の結果だな」で片付けられなかった。

ラグナ自身、特別ニューを否定するというつもりは無い。ただ、その在り方だけが非常に気掛かりとしていたのだ。

 

「だったらどうして・・・?どうしてニューはあそこに残って、ラグナだけが消えるの!?そんなことだったらニューも消えたかったよ・・・!ラグナがいないなんて耐えられないよ・・・!」

 

「・・・・・・」

 

ニューの悲痛な叫びを聞いたラグナはすぐに答えを出せずにいた。否、答えられるのだが、答えていいかどうかで迷っていた。

ラグナにとって、ニューは『悪夢』の一部というよりは、その『悪夢』の内の一部に振り回された『初めから罪を擦り付けられた可哀想な存在』だった。

そう言ってしまえば楽なのだが、ニューはまだ自分が持つ不満などを吐き切れていない為、今言ってしまうのは良くないと思ったからだった。

現に彼女は泣きそうな声であった。一歩間違えればそれこそ取り返しのつかないくらいの脆さを見せていた。

その様子を、四人の女神たちはただ見ていることしかできなかった。入り込む余地が全く持ってないことと、ニューが先程見せた異様な殺気、そしてラグナがいた世界に関する知識がまだ不十分なことがそうさせていた。

 

「ラグナも分かってるでしょ?ニューの望みはただ一つだって・・・」

 

「ああ。それは分かってる・・・。だがそれでも、俺にはその望みを叶えさせる訳にはいかない理由がある・・・」

 

「・・・どうして?」

 

ニューが言う望みを理解している上で否定を示すラグナに、ニューは理解ができずに問い返した。

 

ゲイムギョウ界(この世界)には・・・俺が世話になっている人や大切な人・・・。護りたいものが沢山ある・・・それも数え切れないくらいにだ。そんな大事なものを、『黒き獣(バケモン)』になって見境なく壊そうだなんて思えねえよ・・・」

 

ラグナはニューの問いに対して真剣に答える。

これらは全て紛れもない本心だった。『黒き獣』になるつもりはさらさら無いし、大切なものを護りたいという思いも本当だった。

とは言え、ニューがそれで納得しないことはわかりきっていた。ニューにとっては言われた通りに自分と融合し、『黒き獣』になることが望みにして全てだからだ。

しかし、それもニューは初めから植え付けられているようなものであり、本当に自分でやりたいと思えることが何もなかった。

だからこそ、ニューに新しい道を探せる時間を与えてやりたいのだが、問題はニューがそれを望むようなきっかけを作れるかどうかだった。

 

「ふーん・・・そこまで言うなら、無理矢理にでもやっちゃおうかな・・・?」

 

「(クソ・・・ッ!ダメだったか・・・!ならタイミングを待つしかねえか・・・)」

 

ニューが背後に浮いてる八枚の刃を自身の側まで持ってきたところを見たラグナは、姿勢を低くして身構える。

その直後に八枚の刃が連続してラグナに襲いかかり、ラグナは右に左にと飛びながらもどうにか避けていく。

ネプギアが二人の所へ近づいて行くと、丁度その状況が目の前にあった。

 

「(やっぱり、私と物凄く似てる・・・。今の状態なら姿は全く持って違うんだけど・・・そう感じさせるのはどうして?それに・・・)」

 

ニューの姿を見たネプギアの中に、元々持っていた疑問が大きくなった。

どことなく、彼女の漂わせる雰囲気が自分と似ているように感じられていた。ただ、ネプギアにとってはもっと大きな疑問があった。

 

「(何でだろう・・・?私が・・・『あの子()』と同じものを感じたのは・・・)」

 

ネプギアの持つ最も大きな疑問はこれにあった。『少女』と同じものを感じさせる以上、気にするなと言う方が無茶なものだった。

しかし、その考え事は続かず、目の前で起きたことに中断させられる。

 

「・・・っ!いけない・・・!」

 

ラグナの周辺が殆ど土煙で覆われてしまい、視界が塞がれたところを、ニューが自身の側に残している、最後の一枚の刃を飛ばしてラグナを貫こうとしていた。

流石にアレは助けなければマズいと判断したネプギアは、全速力でそちらに飛んでいく。

そして、ニューがその刃を飛ばすと同時にラグナとニューの間に割って入ることができ、ネプギアはすぐさまM.P.B.Lを左から斜めに振り上げ、一枚の刃を弾き飛ばした。

 

「・・・何だ?何が起こって・・・。・・・ネプギア・・・!?」

 

「間に合って良かった・・・。ラグナさん、大丈夫ですか?」

 

「ああ。助かった・・・」

 

僅かな時間だけ肩で息をしながらラグナに問いかければ、すぐさま大丈夫な事を伝えてきてくれたのでネプギアは安堵した。

いくらスタミナが有り余る女神でも、焦ってしまえば体力に余裕があってもこうなるときはあるんだな・・・ネプギアはそう感じた。恐らくは自分の気持ちが反映した影響だろう。

 

「ネプギア・・・!?みんなは大丈夫なの?」

 

「うん。大丈夫だから、私はこっちに来たの・・・どうしてもこの子のことが気になってて・・・」

 

ネプテューヌの声が聞こえ、心配そうにしてる自身の姉に、ネプギアは大丈夫だと言う事を伝える。

自分が来た理由を告げながらネプギアが正面に向き直ると、そこには殺意が滲み出ているニューの姿があった。

 

「アンタ・・・よくもニューとラグナの邪魔を・・・!・・・?」

 

「・・・?」

 

怒りに震える声でこちらを糾弾して来たニューが、途端に何か気づいたように様子が変わったため、ネプギアは思わずその場で凝視してしまう。

 

「対象、照合・・・。同一体と認識を確認・・・」

 

「同一体・・・?何を言って・・・。・・・っ!?」

 

ニューが機械的に告げる言葉にネプギアは困惑し、ニューにその意味を問おうとするが、突如として強烈な頭痛に襲われ、ネプギアは思わず左手で頭を抱えた。

―知っている・・・?誰が?私が?それとも『あの子()』が・・・?ネプギアはわからずに混乱する。

 

「貴女は私・・・私は貴女・・・」

 

「わ、私・・・私は・・・っ・・・!あぁ・・・っ!」

 

「ね・・・ネプギア!?しっかりして・・・っ!ネプギア!」

 

畳み掛けるように、機械的な口調でニューは告げることを続け、ネプギアは頭を抱えたまましゃがみ込んでしまった。頭痛がより強くなって、立つのが難しくなってしまったのだ。

妹が苦しそうにしているのを見たネプテューヌは慌ててネプギアに声をかけるが、ネプギアは彼女の声を聞く余裕すら無くなっていた。

 

「(ちょっと待てよ・・・?ニューはサヤのクローンと言っていい奴だ・・・。じゃあ、ネプギアの中にいる『あいつ』は一体・・・)」

 

―サヤなのか?ラグナは頭の中にそんな疑問が走ったが、それをすぐに肯定することはできなかった。

確かに、ネプギアが最近になって急激にサヤの気配を強くしているのは解っている。だが、そうだとしてもサヤそのものと決めるのは早すぎるのではないか?だが、ニューのあの告げ方を見た感じ、サヤとの関連性があるのは最早否定のしようがないのもまた事実だった。

 

「ち、違う・・・あなたは・・・!私は・・・!」

 

「ら、ラグナ・・・!ネプギアをどうにかできないのっ!?」

 

「・・・やってみる・・・!」

 

ネプテューヌの懇願する声を聞いたラグナは、流石に今持っている思考を放棄するしかなかった。

武器を一度しまい、すぐにネプギアの傍まで駆けつけて背中に右手を乗せて呼びかける。

 

「ネプギア、しっかりしろ!・・・聞こえるか!?」

 

「うっ・・・!兄さま・・・私は・・・っ・・・!」

 

至近距離で話しかけることでようやくネプギアは反応を示すものの、余り良い結果は出なかった。

極めつけにはネプギアではなく、『少女』の方が表立ってしまっているので、かなり呑まれかけていることがラグナには判ってしまった。

 

「そうだよね・・・ラグナならそっちを気にするよね・・・。でもいいよ。ニューがそいつからラグナを取るって楽しみが増えるから・・・!」

 

「(クソがぁ・・・ッ!こんな時に手の打ちようがねえとは・・・!・・・ッ!?)」

 

一瞬沈んだ様子を見せたものの、ニューはすぐに明るい調子を取り戻し、執念深さが垣間見えることを言う。

ラグナが苦い顔をしている時に、再び右腕に重みを感じたので見てみると、蒼い炎のようなものが現れていた。

 

「オイオイ冗談だろ・・・?なんだってこんな頻度で・・・。それにこの感じ・・・」

 

その炎のようなものが消えた瞬間、ラグナは何かに見られているような感覚が右腕にあった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「ニュー?どこにいるのー!?」

 

ニューが消えてから数時間後のことで、部屋に彼女がいないことを知った少女は教会中を探し回っていた。

黒いシスター用の服を着ているものの、綺麗に下ろしている金色の髪がよく見え、エメラルドグリーンの瞳をしている少女は、友人が帰ってからというものの、今日のやることをすぐに終え、こうしてニューのことを探していた。

 

「そっちにはいた?」

 

「・・・いなかった」

 

「どこに行っちゃったんだろう・・・?」

 

金髪の少女は、自分と一緒にニューのことを探してくれていた、金色の髪を三つ編みに纏めている、真紅の目を持った少女に訊いてみるが、その少女は首を振った。

エメラルドグリーンの瞳を持った少女は、ニューの面倒を見ていたので、元気になってくれたならそれでもいいのだが、出ていくならせめて何か一言言ってくれたり、置手紙の一つは欲しいと思った。

顎に手を当てながら彼女の行方を考えていた少女は、一つだけ思い当たったものがある。

 

「(もしかしてだけど、さっきニューのいた部屋で見たアレが原因・・・?)」

 

先程見かけた蒼い球・・・。それによってニューがどこかへ行ってしまったというなら、それが最も納得できると彼女は考えた。

しかし、何も考え無しにそれを実行するのは危険だった。そこで、彼女はニューを探すのを手伝ってくれた少女に目を向けた。

 

「・・・ノエル?」

 

「ラムダ、私は今からあの蒼い球のことを調べてみようと思う・・・。だけど、何が起こるか解らないから、ラムダには私に何かあったら、誰でもいいから、あの球のことで連絡を入れて欲しいの」

 

ノエルと呼ばれたエメラルドグリーンの瞳を持つ少女は、真紅の目をしているラムダに頼み込む。

何が起こるかわからない・・・。しかし、二人とも巻き込まれたらそれこそ取り返しのつかないことになる・・・。その為ノエルは一人でいくことを決めたのだった。

 

「・・・分かった。ノエルも気を付けて」

 

「ありがとうラムダ・・・。それじゃあ、ちょっと行ってくるね!」

 

ラムダが首を縦に振ってくれたことに、ノエルは礼を言ってからニューの部屋に入った。

部屋を見回しても先程の変化は一切なく、ベッドの上には蒼い球が同じように浮いていた。

 

「この中に・・・ニューがいるの?」

 

ノエルがその蒼い球を凝視した瞬間、自身の身に異変が起こった。

 

「・・・えっ?なに・・・?目が熱い・・・!」

 

目元が焼けるような感覚に襲われたノエルは、思わず目元を両手で塞いだ。

少しすると焼けるような感覚が終わり、塞いで両手をどけたノエルは、目元に熱さが残ったまま蒼い球を見た。

すると、今度はその蒼い球から、その先にある情報が送り込まれてきた。

―見たこともない町並み。『ムラクモユニット』のようなものを使う人たち・・・。どれも知らないことだらけだったが、その中に信じられないと言いたくなるような情報があった。

 

「・・・ラグナさん?そこにいるのはニューだから・・・。っ!じゃあ、ニューが向こうに行ったのは・・・!」

 

赤いコートを着ている青年、ラグナを見たノエルは、今まで忘れていたものを思い出しているような感覚が走った。

そして、それと同時にニューの目的も思い出して、彼女がそこへ向かった理由を悟った。

 

「元気になってくれたのはいいけど、それは止めないと・・・!」

 

本当なら誰かと一緒に行った方がいいのかもしれないが、待ち続けた結果ニューの目的が果たされ、何の罪も無い人が巻き込まれる・・・。そんな最悪の事態だけは、何としても避けなければならなかった。

 

「ニュー・・・そっちに行くから、待っててね・・・!」

 

覚悟を決めたノエルは、蒼い球に右手で触れた。

その瞬間、蒼い球の光が強まり出し、蒼い光が部屋ごとノエルの体を包んだ。

そして、光が消えるとそこにノエルの姿は無く、再び無人の部屋となった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ん・・・」

 

自分の体右側に固い感覚がしたノエルは、目を開けて体を起こした。

先程蒼い球で見たものとは違い、近くに建物などは無く、海が広がっているのが見えることから、ここがどこかの島だろうと推測できた。

 

「ここが、ラグナさんとニューがいた世界で合ってるのかな・・・?」

 

ノエルは辺りを見回してみるが、人影が全く見当たらないので、その答えを出せなかった。

確かに、自分の意志でここへ来たのはハッキリと覚えている。しかし、本当に辿り着いたかどうかの判断材料に欠けていた。

もう少し遠くを見れる場所にいけば何かわかるかもしれない。そう考えてノエルは立ち上がった瞬間、腰辺りに妙な重みがあることに気がついた。

その為、腰の後ろ辺りに探りをかけて見ると、何かが当たったので、それを手にとって眼前に持ってきた。

 

「っ・・・!?これ、『ベルヴェルク』・・・!?それに・・・」

 

ノエルは自身が手に持っている白い二つの二丁拳銃を見て、驚きを隠せなかった。

事象兵器(アークエネミー)魔銃(まじゅう)・ベルヴェルク』。それは普通の銃として使う以外にも、狙った空間を(・・・・・・)打ち抜いて、その場所に術式を発生させ、それを炸裂させることで攻撃も可能にしていた。

後者の方法で攻撃する場合、その場所を認識さえしていればいいので、障害物は無視可能である。

また、二つの銃を重ね合わせることによって、様々な形の銃を扱うことができるものだった。

そして、それ以外にも、ノエルが驚くことが自身に起きていた。

 

「この格好・・・イカルガでココノエさんから貰った・・・」

 

ノエルは『ベルヴェルク』を持った時、自分の目に映った手袋を見て、自身の身なりを確認して気が付いた。

自身の格好は今、先程まで着ていたシスターの格好でも、統制機構衛士の制服でもなく、イカルガに来た時、ココノエからもらった、衛士の制服と色合いが似ていて、「肌が出過ぎている」と自身が感じていた西部劇にありそうなガンマン風のものだった。

―どうしてこの格好に?そう呟くのも束の間、突如聞こえた轟音に、ノエルは思考を中断してそちらを振り向いた。

 

「今の・・・もしかして戦闘の音!?」

 

これは『先程までの(シスターとしての)』自分ではなく、『前の世界での(戦いに関わっていた)』自分の経験が告げていた。

 

「っ!そうだ!ニューっ!」

 

自分がここへ来た目的・・・ニューを連れて帰るため、ノエルは音の聞こえる方へと走った。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

戦闘の音を頼りに先を進んで行くと、崖であろう所にノエルは辿り着いた。

 

「やっと着いた・・・!ニューはきっとラグナさんの近くにいるはず・・・!」

 

ノエルは落ち着いて、しかし速やかに辺りを見回して行く。見知らぬ地でありながらここまで順応できたのは、前の世界での記憶や経験による賜物だった。

まずは自分と同じ高さの所に何かないかを見て行くと、ハクメンとテルミ・・・レリウスとラグナによく似た少年が戦っているのが見えた。

 

「あの人たちもここに来ているの・・・?ううん。気になるのは分かるけど、早とちりはダメ・・・」

 

何も無ければそのまま彼らの所まで走ればいい。そう割り切ってノエルは自分より高い場所を見渡す。

すると、そこにはナインと、先程みた『ムラクモユニット』のようなものを使う少女が三人が手を組んで、魔女のような女性と戦っているのが見えた。

 

「ナインさん・・・今はどっちなんだろう?」

 

ノエルは前に彼女の工房にて、存在そのものを嫌悪されているようなことを言われたため、味方と判断しきれなかった。

テルミのこともあるので、味方と見てもいいかもしれないが、まだ判断しきるのは早いため、迂闊によるわけにはいかないだろう。

 

「後は・・・」

 

最後に自身より下の場所を確認する。

すると、何らかの結界のようなものが確認でき、その近くにラグナとニューの姿を確認できた。

 

「・・・いた!」

 

見つけたが早いか、ノエルは何の躊躇いもなく崖を滑るように降りて、二人の元へと走っていく。

走って二人の方へ近づいて行くと、ラグナが自分と一緒にいる桜色の髪をした少女に呼びかけているのが見えた。

頭痛にやられているかのように苦しそうしている少女を見て、何かを感じ取ったノエルは思わず足を止めた。

 

「あの子・・・似てる・・・。まるで私みたい・・・」

 

不思議なくらいに自分に似たものを感じ、ノエルはその少女のことを眼の力で『観測』てみることにした。

彼女の眼の力は、繰り返される『予定調和』からラグナを助け、世界に可能性を示したことで得たもので、『マスターユニット』の眼の代わりとなって世界を観測できる力を持っている。

この眼の力の持ち主が、見たものを『事実』として観測すれば、それこそどのような事象でも『事実』になると言う代物だった。

ノエルは前の世界で、ツバキを助ける際に、ジンに頼まれて彼女を『観測』ることで、『封印兵装・十六夜』の真の姿を見たことがある。

その経験を生かして、ノエルは彼女の奥底に眠るものを『観測』ることを決意した。

 

「っ!?嘘・・・?いくら何でもそんなことって・・・」

 

ノエルは彼女から『観測』えたものが信じられなかった。

自分とよく似た少女・・・もとい、自分の元になった少女が、彼女の中から『観測』えたのだった。

そして、周りから見た個の存在は殆ど確率しているものの、何らかがきっかけで自身があやふやになってしまっていること、そのあやふやな状態をニューにつけ入れられてしまったという事がノエルには把握できた。

 

「(あの子は対処法を持っていないんだ・・・。なら、私が教えて上げないと・・・)」

 

―まずはあの子を助けよう!どうするかを決めたノエルは再び少女の元へ走り出した。

身体能力が前の世界の状態である為、距離が短めだったとはいえ、ノエルは全力で走っても大した息切れを見せなかった。

 

「落ち着いて・・・大丈夫。例え似ていたとしても、貴女は貴女だよ・・・」

 

「・・・・・・私は私・・・」

 

ノエルは彼女の右側から左手を背中に乗せて、少女が自己を保てるように促しの言葉をかける。

それは少なからず効果があり、少女は落ち着きを見せ始めていた。

 

「うん。怖がる必要は無いよ・・・例え他人に何と言われようと、自分はこういう人だっていう考えを持ち続けて、必要であればそれを伝えればいいの」

 

「・・・必要なら伝える・・・。っ!そっか・・・それでいいんだ・・・」

 

もう一押しとノエルが少女を肯定すると、少女の表情は、自己が確保できずに怯えているものでは無くなった。

 

「・・・確かにあなたと私は似ている・・・でも、それは似ているだけであって同じじゃない・・・!私は、プラネテューヌの女神候補生、ネプギアっ!」

 

「・・・・・・何をしたの?」

 

ネプギアと名乗った少女が急激な立ち直りを見せたことで、ニューは猜疑心を持った目を彼女に向けた。

だが、それでもネプギアは怯む様子などなく、ノエルの方に顔を向けた。

 

「あなたが教えてくれたおかげでどうにかなりました。えっと・・・」

 

「私はノエル・・・ノエル=ヴァーミリオン。ネプギアちゃん、もう大丈夫だね?」

 

ネプギアがお礼を言いたくても名前が分からないと言いたそうにしていたので、それを理解したノエルは彼女に名乗りながら気遣いの言葉をかけた。

 

「はい。もう大丈夫です・・・ありがとうございます、ノエルさん・・・」

 

名前を知ることができたネプギアは、ノエルへ嬉しそうに礼を述べた。

自分と妙に人としての波長が似ているため、この二人は平時に会えたのなら、すぐに仲良くなれそうだと感じていた。

 

「ノエル!?お前、本当にノエルなのか!?」

 

「はい。お久しぶりです、ラグナさん・・・」

 

彼女の名前を聞いて驚いたラグナは、思わずそちらを振り向いたので、ノエルは迷うことなく肯定した。

その姿を見て間違いないと分かったラグナは、すぐに味方の通信ができる全員へ術式通信を行う。この時、ノエルも同時通信に巻き込んでおいた。

 

「お前ら、ノエルだ!間違いなく味方な奴が来たぞッ!」

 

『ここへ来て『蒼の少女』が来たか。確かに、少女であれば御前と敵対することはあるまい』

 

「・・・えっ?あ、あの・・・何がどうなっているんですか?一応、ハクメンさんがテルミと戦っているのは見えたのですが・・・」

 

ノエルがハクメンたちの方を見て見れば、ノエルが来たことで再び戦場が混乱を呼んだのか、交戦が一時中断となっていた。

レリウスは交戦を目的としていないのか、ラグナとよく似た少年はそれに倣って戦闘を中止していた。

最後にナインたちだが、戦闘こそ止まっているものの、いつの間にかかなりこちらへ近づいてきていた。

 

『・・・ノエル。あなたが『エンブリオ(あの世界)』で私たちに受けた仕打ちには思うところがあるかもしれないし、どうして私たちがこうしているかが分るまでに時間がかかると思う・・・。でも、今は第十三素体(そいつ)と、その結界の中にいる人たちを助け出すのが先・・・。こんなこと身勝手過ぎるかもしれないけど、力を貸してくれるかしら?』

 

ナインの頼みに、ノエルはすぐに首を縦に振ることはできずに考え込んだ。

少しだけ考えて、考えが決まったノエルはナインに自分の意思を伝えることにした。

 

「・・・わかりました。私も協力します」

 

『・・・良いのだな?ラグナはまだ良きにせよ、私とナインは御前を狙った者だぞ?』

 

「構いません・・・それに、いつまでも抱えているわけにもいかないですから・・・。何しろ私、つい先ほどまで前の世界の記憶が無かったんです」

 

ハクメンに念押しで訊かれるが、ノエルは曲がる事など無かった。それどころか、彼女の回答を聞いたナインたちが逆に混乱することになってしまった。

 

「・・・そういやニューもそんなこと言ってたな・・・。てことは、ノエルも・・・」

 

「はい。ラグナさんが作った、新しい世界の方から私も来たんです・・・」

 

ラグナはノエルの回答を聞いても、そこまで大きく驚くことは無かった。

とは言え、何故そんなことをしてしまったかまでは理解しきれなかった。

 

「そうなると・・・ノエルは誰かに呼ばれたのか?それとも・・・」

 

「後者の方です。私は、ニューを追いかけて自分から来ました」

 

ラグナの質問に答えながら、ノエルはニューの方に向き直った。

 

「・・・どうしてニューを追いかけて来たの?」

 

「どうしてって・・・そんなの決まってるでしょ?ついさっきまでまともに身動きができなかった貴女が、急にどこかへ消えたなんてことがあったら心配するし、探しにいくよ・・・」

 

「何でそこまでするの?だって・・・そのままにしておけば、ニューのことを気にしないでいいからそっちも楽でしょ?」

 

ノエルの回答が理解できず、ニューは首を傾げながら再び問いかけた。

 

「それだけじゃない・・・私、元気になったニューを迎えに来たの。」

 

「・・・迎えに?」

 

「うん・・・せっかくニューも元気に動けるようになったんだし、今度、ラムダも連れて三人でどこかに出かけようよ・・・。そこにはニューが見れていないものだっていっぱいあるし、もしかしたら、ニューが本当に好きになれるものだって見つかるかもしれないよ?」

 

それでもなお困惑を見せるニューに対し、ノエルはその良さを伝えようとする。

ラグナにはその姿がまるで、自分たちと一緒に暮らすことを始めた『セリカ(シスター)』のように感じられた。

 

「で、でも・・・ニューは・・・」

 

「自分に正直になって、ニュー。貴女が本当にどうしたいのか、今まで生き方で本当にいいのかを・・・」

 

「今の生き方・・・?本当にやりたい事・・・?うぅ・・・っあうぅぅぅ・・・ッ!」

 

ノエルの言葉は核心を突いたのか、自身に残されたものと、欲しているものが分からなくなり始めたニューが、混乱しながら頭痛に呻き始めた。

そして、ハクメンたちがいる方にて、セリカはようやく、ハクメンに大声を出せば声が届くであろう所まで辿り着いた。

―一度落ち着いたらすぐに使おう。そう決めたセリカは一度深呼吸してから、大きく息を吸った。

 

「ハクメンさーんっ!」

 

「ナインよッ!到着したぞ!」

 

『ッ!いいわ、セリカッ!』

 

セリカの声が届き、ハクメンがそれを伝えると、ナインは迷うことなく使うことを許した。

 

「分かった・・・!ミネルヴァ、お願いっ!」

 

セリカはミネルヴァに寄りかかるに背中から身を預ける。

それを確認したミネルヴァは尻尾のように伸びているコンセントの先端を、セリカの胸元に持ってくる。

セリカはそれを優しく握ると、セリカの中にある『秩序の力』が増幅され、セリカは全身を縛られるような感覚に襲われる。

 

「ぐうぅ・・・ッ!?、これは・・・!?」

 

「ぐおぉぉぉッ!?な・・・何だ?何が起きやがったァッ!?」

 

セリカの力の影響を強く受けたマジェコンヌとテルミは、思わず呻き声を上げた。

特に、セリカとの距離が近かったテルミは強烈な痛みや吐き気が襲いかかってきて、まともに動ける状態では無くなってしまった。

混乱して、動きづらい状態のまま、テルミはハクメンがいる方に向き直る。するとそこには、近くにいればテルミに深刻な悪影響を与えかねない存在が、その能力を一時的に強化して使っている姿があった。

 

「せ・・・セリカ=A=マーキュリーだとォ・・・ッ!?なんでだ!?何でテメェがこんなところにいやがるッ!?」

 

「ナインがセリカ=A=マーキュリーを大切だと思っているのは間違いではない・・・。だが、貴様はセリカ=A=マーキュリーがどのような人間かを失念していた・・・。それが貴様が無様に地面に倒れ伏している今の結果だ・・・」

 

「・・・畜生ッ!冗談じゃねえぞ・・・!二度もこんなオチなんてシャレになんねぇだろうが・・・ッ!ぐおぉぉぉ・・・ッ!」

 

ハクメンの回答を聞いたテルミは吐き捨てるものの、襲いかかってきた痛みに耐え切れず、再び呻くのだった。

 

「テルミよ・・・己が慢心を呪うがいい・・・」

 

倒れ伏すテルミを見て、ハクメンは『斬魔・鳴神』をゆっくりと頭上に掲げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「は・・・はは。ネプギアがどうにかなってくれたから良かったかな・・・?」

 

「そうね・・・。少なくとも、今はもうああはならないでしょうね・・・」

 

ネプギアがどうにか戻ったことに、ネプテューヌと、彼女の呟きに同意したノワール、そしてブランとベールも安心していた。

しかし、周りの状況はそれで良かったのだが、彼女たちの状況は改善されてない。寧ろ悪化の一途をたどっていた。

 

「それはいいのですが、私・・・体の感覚がありませんわ・・・」

 

「・・・ええっ!?」

 

「わ、私も・・・体がいう事を聞いてるか分からなくなって来たわ・・・」

 

無数の黒い腕に、体の至る所を掴まれていた彼女たちの限界が、もうすぐそこまで近づいていた。




今回はノエルが参戦になります。
大分駆け足な形な形で新しいキャラを呼ぶ形となりましたが、そろそろ入れ時だったので、このような形を取りました。

人気投票の方で遂に最終結果が出ました。
一位はラグナで、主人公の面目躍如といった形になりましたね。全てラグナに票を入れていた私としては非常に嬉しい結果になりました。
個人的に凄いと感じたのは、三位のヒビキでしょうか?上位十名の中、彼は中間発表の後から唯一順位を上げています。

さて、今まで気がつかなかったのが物凄くお恥ずかしい限りですが、ネプテューヌのRe;Birth1+の公式サイトが出ていましたね。
しかも発売日は何の因果でしょうか?なんと、ブレイブルーの最新作と同じ5月31日となっています!
私自身、この小説を書き始めた頃は・・・
VⅡRを買ったし、ネプテューヌと何かを混ぜた小説を書こう!→そういやブレイブルーは本編完結してるし、最新作も出るじゃん!これで行こう!
と勢いで書いていました。決して狙っていたわけではないのですが、なんだか物凄い奇跡を見たような気がしました・・・。

最後に、次回はこの山場に決着が着くと思います。
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