超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER-   作:ブリガンディ

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ちょっと遅くなっちゃいました。
今回で山場が終わります。


32話 蒼い空取り戻す

「な、なんだ・・・!?何をしたんだあの小娘はッ!?」

 

マジェコンヌはセリカを見ながら、自分の身に起きたことが解らず狼狽した。

セリカのことをよく見てみると、何やら身を預けている自動人形らしきものと共同で何かをしていて、しかも思った以上に体に負担のかかるものだというのは予想できる。

そうであればセリカを殺めてしまえばいいのだが、近づいて殺そうものならテルミと同じく殆ど身動きが取れない状況に追いやられ、成す術無くハクメンに斬られるのがオチだろう。

 

「おのれ・・・!何をしたかは知らんが、それ以上はさせんぞッ!」

 

断罪せし紫苑の咆哮(モーベットロア)ッ!」

 

近づいてダメならば遠くからやればいい。そう判断したマジェコンヌは自身の持っている槍をセリカの方へと勢い良く投げつける。

しかし、それがマジェコンヌとセリカの真ん中に辿り着くはおろか、候補生たちの横を通り過ぎるよりも前に、どこからか現れた巨大な足がそれを蹴り飛ばし、ズーネ地区の外まで飛んで行ってしまった。

―こんな時に横槍したのは誰だ!?焦るマジェコンヌが足の現れた方に目をやると、そこには自身の周囲に火の魔法によって熱気が走っているナインがいた。その表情は、この世界に来てから初めて見せる、冗談が一切通じなくなる本気の怒りだった。

セリカに危害を加えようとした瞬間から、マジェコンヌは絶対に踏んではいけない特大の地雷を踏み抜いてしまったのだ。

 

「・・・ラグナやハクメン、それから女神たちとその関係者のように、信頼できる人がセリカと一緒にいたというならまだいいわ・・・。でもね、あんたみたいな害にしかならない奴がセリカに関わる。あまつさえ殺そうとするだなんて良い度胸じゃない・・・!」

 

「な・・・に・・・!?」

 

ナインから発せられるとてつもない殺気や怒りに晒され、マジェコンヌは思わずたじろいでしまった。

マジェコンヌがやってしまったことは、ナインも言った通りセリカを手にかけようとした事だった。

そもそも、ナインは気の許せる相手以外が不用意にセリカに近づくことすら許すつもりがない為、マジェコンヌの行為は暗黒大戦時代のセブンとエイト以上に許せないものである。

決定的にダメだった理由として、セブンとエイトはまだ話し合いから始まったのに対し、マジェコンヌは最初から実力行使に走ったせいである。

状況が話し合いの余地など無かったにせよ、その行為に走った段階でマジェコンヌは完全にナインの敵として見なされることになった。

 

「セリカを手にかけようとしたこと・・・あんたの命で償わせてやるわッ!」

 

怒りに震えたまま、ナインは腰を落としてゆっくりと右腕を引きながら、右腕と左足に魔力をこめていく。

 

荒れ狂う灼熱の(フレイム)・・・消滅結尾(バニッシャー)ッ!」

 

十分に魔力を溜めこんだところで右腕をマジェコンヌの方へとその場で突き出し、突き出した腕の先からビームを飛ばす。

マジェコンヌは自身からみて右側へ避けるが、まだ攻撃は終わらない。右腕に溜めた魔力を出し切るや否、今度は左足をマジェコンヌの方に突き出し、ナインは左足の先から再びビームを飛ばす。

今度は左側へ避けることで、マジェコンヌはどうにかやり過ごすことができた。

 

「ええい・・・このままでは危険か・・・!」

 

しかし、何も良いことばかりでは無かった。前までは涼しい顔で避けることができたのだが、今回は半分慌てながら避けたのだった。

その為、マジェコンヌは声に出してしまうくらいに焦っていて、額にも冷や汗が数粒できていた。

セリカがミネルヴァによって増幅した能力は、それ程まで自分に悪影響を与えていた事を悟ったマジェコンヌは、この状況をどう打開するかを必死に考え始めた。

 

「(クソがぁ・・・!こうなったら、せめて置き土産だけでも残してやらぁ・・・)」

 

一方、体がまともに動かず、痛みと嘔吐感に襲われているテルミはニューを見やって悪足搔きを画策し、右手をニューの方へと向けた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

ノエルに言われてからというものの、ニューは頭を抱えながら考えていた。

―どうしてラグナと一つになろうとした?そうして世界を壊せと言われたからで、自分もラグナを省く世界の全てが嫌いだった。

だが、それは前の世界での話であって、この世界はどうだろうか?自分はそもそもこの世界には何も関わりが無い。世界を壊せと言った者はいないし、この世界に抱く感情はない。

極めつけに、自分が唯一好き、大切と言える存在であるラグナはこの世界にそれなり以上の愛着を持っているようだ。もしかしたらこの世界が好きなのかもしれない。

そうなると自分がラグナと一つになろうとした理由が、ここでは意味をなさなくなる。そこまで考えたニューは、強まってくる頭痛を感じ、頭を押さえ直す。

 

「うっ・・・」

 

その頭痛を振り切りながら、ニューは違うことを考える。

―それなら自分が今やりたいことは?何か出てくるだろうと思ったが、何も出てこなかった。

ラグナと一つになるというのは出てきたが、それはやるべきことと植え付け得られていたもので、本当にやりたいかと言えばそうとも言い切れなかった。

―なら、ニューが本当にやりたいことは何なの?その考えに至った瞬間、ニューは硬直してしまった。

 

「あ・・・ああ・・・っ」

 

頭の中が混乱し始める中、今の生き方でいいかどうかを思い返してみる。

やりたいことは何も無かったし、そんなすぐには思い浮かばない。ただそれだけと言わんばかりに、ラグナと一つになることしか頭に無かった。

世界を壊そうとしたのは世界の全部が嫌いだったから。前の世界であれば、ラグナも世界を嫌っていたし、上手く行けばラグナも乗ってくれるという期待は確かにあった。

しかし、この世界で再開してみたらどうだろうか?今までのラグナとは思えないほど別の考えを持っているではないか。

否、そもそもラグナはあの世界で戦っている内に、考えが変わったと考えた方がいいのだろう。恐らくは自分が気が付いてないだけだ。そうして、ラグナがやり直す前の世界のことを少し振り返ってみる。

最初にハッキリ違う言えるところは、『タケミカヅチ』の中でのことだった。イカルガに来た直後は今までと対して変わらず、思い通りにさせない為に自分を(たお)そうとするラグナだったが、『タケミカヅチ』の中で再び会った頃にはもう違っていた。

それからというものの、ラグナはナインの工房では非常事態だから断念していたが、それ以外では自身に手を差し伸べていたのだった。しかも『エンブリオ』の影響で記憶を失っていた時ですら例外では無かった。そこまで思い返して、ニューは一つのことに気が付いた・・・否、気が付いてしまった。

―ラグナと一緒にいたいなら、こんなことをする必要はない。それなら自分はどんな生き方をして、どうしたい?ニューは今まで自分のやってきたことが全て無意味に等しいことになっていた。

 

「ああああああ・・・ッ!嘘だ・・・そんな・・・!そんなのって・・・!」

 

その結論に辿り着いてしまったニューは、頭を抱えながら、半狂乱にそのことを信じられない、認めたくないというかのようにに首を横に振る。

今までそうしてきたことが当たり前だったニューにとっては、その根底を否定されてしまうようなことであり、実質的に自らの意志で行動したことがほとんど無いせいで想定外のことに弱くなってしまっていたことが重なり、このような結果を招いていた。

 

「私たちと一緒に行こう・・・やりたいも生き方も、これから見つければいいよ」

 

「これ・・・から・・・?」

 

「だって・・・時間はいくらでもあるじゃない。その時間を使って探していけば、絶対に見つかるよ」

 

自分の言葉を聞いて戸惑うニューを前に、ノエルは赦すように優しく告げていく。

ラグナもその言葉に反対はない。寧ろ、ニューの境遇を理解してるから賛成であった。

ニューはまだ、新しいことや、知らないことに触れて見たりするのへ臆病になっているだけだ。だったらそれは時間をかけて克服させてやればいい。ラグナたちには、それだけの時間を与える機会が残されている。

受け入れる準備はすでにできていて、この世界では特に大きな確執も無かった。後はハクメンの心の持ち方と、ニューの踏み出す勇気だけだった。

 

「・・・うん。ニューは、ラグナたちと一緒に・・・」

 

―一緒に行きたい。ニューがそう言いかけた時、結界の中で大きな動きが起きた。

 

「ベールっ!」

 

「ネプ・・・テューヌ・・・」

 

ネプテューヌの悲痛な声が聞こえ、ラグナたち四人はそちらを見やる。

結界の中にたまっていた黒い水は、四人の中で最も低い場所に動きを止められていたベールの下半身全体まで浸かっていて、ベールは寒さにやられて目を開いてるのが辛そうな表情で、ネプテューヌの方に手を伸ばしていた。

ベールが伸ばしている手を掴む為に、ネプテューヌは緩んできているとは言え、拘束がされている状態でどうにかベールの所まで行き、その手を掴む。

 

「っ・・・だめぇぇぇっ!」

 

その瞬間、自身の手が届いたことの安心と、意識の限界が来てしまったベールは、まるで力尽きるかのように気を失ってしまい、それを目の当たりにしたネプテューヌが張り裂けるかのような声で叫んだ。

 

「っ・・・ノワール・・・!」

 

「・・・っ・・・!」

 

また、ベールと殆ど同じ高度にいたブランも、体の殆どが黒い水に浸かってしまっていて、彼女は近くにいたノワールへと手を伸ばす。

ネプテューヌと同じように、ノワールも拘束されている中でどうにかブランの手を掴むが、ブランもまた、ベールのように気を失ってしまった。

 

「・・・えっ!?」

 

「お姉ちゃん・・・!?」

 

マジェコンヌと戦っている最中、候補生たちもその異変に気付き、その様子を見て事を悟ったマジェコンヌは勝ちを確信した笑みを浮かべた。

この時、結界の中から異常な収束を見せる『悪』を見たハクメンは、思わずそちらに目を見やった。

 

「(よし、今だな・・・!)」

 

ハクメンは思わず『斬魔・鳴神』の構えを解いてしまっており、それがテルミの悪足搔きをするだけの時間を与えてしまった。

その状況にチャンスを見出したテルミは、完全に動きを止めているニューに向けてウロボロスを飛ばした。

 

「ヴェントバレル・・・!」

 

流石に隠れているわけにもいかない状況になり、結界の前まで戻ってきたアイエフは何度かハンドガンの弾を結界に撃ち込み、それがダメだと判り次第、今度はドライブで風の勢いを乗せて弾を撃った。

しかし、結界の強度が固すぎるせいか、放たれた弾はぶつかった瞬間に勢いが止まってしまった。弾が弾き返されず、その場で潰れるように止まったことから、少なくとも威力が上がっていたのは間違いでは無かった。

 

「全然訊いてない・・・!?」

 

「私もやるです・・・っ!」

 

「コンパちゃん・・・悲しいけど、それ効き目ないっちゅのよね」

 

元の銃の威力が足りないのか、それとも自身のドライブの練度が甘いのか、結界を破れなかったアイエフはハンドガンの銃口を見ながら苦い顔をする。

また、結界の状況でどれ程の危機かが分かったコンパも駆けつけ、巨大な注射器で攻撃をしてみるが全く効き目が無かった。

ワレチューは立場の関係上、協力するわけにもいかなければ、仮に協力できたとしてもまともな攻撃手段を持たないため、こうして寝そべりながらその様子を見ていた。

 

「・・・ダメなんですか・・・?」

 

「・・・!お姉ちゃんっ!」

 

全く効き目が無かったことが分ったコンパは驚愕する。ドライブも持たず、女神のような超絶的な力も持たないからあまり効かないだろうと思ってはいたが、それでもここまで結果が悪いとは思わなかった。

大切な人を失うかもしれないという恐怖巻に駆られたネプギアは、真っ先に結界の方へ向き直り、周りを見る余裕すら無くしてそちらへ向かって行く。

 

「ラグナさん、アレは一体何が・・・!?」

 

「あの黒い水が、あそこに捕まってる四人に悪影響らしくてな・・・。時間がねえ、お前も手伝ってくれ!『イデア機関』接続ッ!」

 

「わかりましたっ!」

 

ノエルの問いに簡単な説明だけ入れたラグナは、弾き返されないですむように『イデア機関』を使用して結界の方へ走っていく。

ノエルもそれに倣うように、『ベルヴェルク』を手に取って走り出した。

 

「はあぁ・・・きゃあっ!?」

 

ネプギアはM.P.B.Lを上から縦に振って結界に攻撃しようとしたが、攻撃が当たる直前に自身が弾き返されてしまった。

 

「そ、そんな・・・」

 

シェアエナジーを力の源としているものはアンチクリスタルに近づけない・・・。女神候補生であるネプギアは見事にそれが当てはまってしまったのだ。

 

「おおッ!」

 

ラグナは手始めに剣を右から斜めに振り下ろして結界を斬りつけてみる。

その結果攻撃は弾かれてしまうものの、自身が弾き飛ばされはしなかった。つまるとこと『イデア機関』の恩恵はしっかりと効いていたのだった。

ノエルも『ベルヴェルク』で結界の壁になっているところを認識し、その空間を撃ち抜くが、結界が頑丈過ぎてダメージらしいものを与えられなかった。

 

「一応、弾かれねえ・・・なら!カーネージ・・・シザーッ!」

 

「このやり方じゃダメなら・・・フェンリル!うおぉぉぉぉっ!」

 

通常の一撃がダメなら大技で。そう決めた二人は次の攻撃に移る。

ラグナは剣を一度上から縦に振り下ろし、そこから体を左に回しながら剣を右から斜めに振り上げることで、鋏状のエネルギーで結界を攻撃し、ノエルは二つの『ベルヴェルク』を前後で繋ぎ合わせて砲身の短いガトリング砲を作り、結界にそれを押し付ける。

そしてそのまま、真正面から少しずつ上へ向けて掃射をかけていき、ある程度の高さになったと同時に掃射を止めて、体を右に回しながら『ベルヴェルク』を一瞬元の形にし、左手に持っている方を結界の方へ突きつけるようにしてから再び前後に繋げ、一風変わったボウガンの様な形にして構える。

 

「ネメシス・スタビライザーッ!」

 

そのボウガンのような形になった『ベルヴェルク』から強力な一撃を放ち、ノエルは『ベルヴェルク』の形を元に戻す。

しかし、ノエルの攻撃、ラグナの攻撃共に殆どダメージを与えることができなかった。

 

「っ!?効いてないの・・・?」

 

「何の冗談だよ・・・」

 

少しは効き目があるだろうと思って放った攻撃も、目立った効果を見せなかったことに二人は啞然とする。

更に、彼らにとっての嫌な知らせはこれだけでは終わらなかった。

 

「あ・・・ッ!?」

 

「・・・!?」

 

「ニュー!?」

 

ニューの小さい悲鳴が聞こえ、近くにいた三人が振り向いてみると、ニューの背中に何かが嚙みついていた。

 

「・・・!?それ以上はさせんぞッ!」

 

嚙みついていた先を見てみると、緑色の鎖が見えた。つまりはテルミが『ウロボロス』を使ってニューに危害を加えている最中だった。

しかし、それがニューを殺害するものではなく、精神に攻撃するものだと気が付いたハクメンは、『斬魔・鳴神』でニューへと伸びている『ウロボロス』の鎖を斬った。

 

「テルミ・・・貴様の足搔きも此処までだ」

 

「あ~、なんだよもう終わりかよ・・・。でもまあいいや。これであいつはまともな判断ができねえだろうよ」

 

「・・・何?」

 

『斬魔・鳴神』を鼻先に突き付けられてもなお、ヘラヘラとした笑いを見せながら話すテルミを見て、ハクメンは疑問に思った。

テルミの見ている方を確認すると、何やら非常に苦しんでいるニューの姿があった。

 

「あ・・・ッ・・・ダメ・・・ううぅぅッ!?」

 

テルミはニューに対し、『ウロボロス』を伝わせて強制拘束(マインドイーター)を掛けたのだった。

それによる命令内容は、奇しくも『エンブリオ』の時と同じで『殺せ』という内容だった。

しかし、それは効果を掛けきるのには時間が不十分で、ニューはその命令と、殺さないでいいならそれがいいという感情に激しく揺さぶられることとなり、ニューは頭を抱え、うめき声を上げたまま八枚の刃を自身の周囲へ滅茶苦茶に飛ばすのだった。

 

「なッ!?ニュー、どうした!?」

 

「ニュー、しっかりして!ニューっ!」

 

飛んでくる刃の中には自分たちに当たる動きをしているものもあり、ラグナとノエルは各々の武器で自身に当たりそうなものを迎撃しながらニューに呼びかける。

しかし、その声はニューには届かず、彼女は苦しむまま八枚刃を飛ばし続ける。

 

「ニュー・・・!お姉ちゃんっ!」

 

自身に当たらないように、迫りくる刃をM.P.B.Lからビームを撃って迎撃し、ネプギアは結界の方を見やる。

黒い水は更に増していて、既に他の二人より比較的高い位置にいたネプテューヌとノワールすらも、全身が浸かっていた。

 

「あ・・・アレは何なの?」

 

流石にマジェコンヌと戦う余裕すら無くなり、ユニたちも結界の近くまで降りてきていた。

結界から少し離れているだけにも関わらず、黒い水のせいで姉の姿が見えず、その状況にユニたち候補生は絶望を示すような表情を見せた。

そんな彼女たちの背後に、セリカの力によって体に悪影響が出ている中、余裕さを見せるマジェコンヌが降りてきた。

 

「アンチクリスタルはああやって女神を殺すのだ・・・あと一歩、届かなかったな」

 

―よく頑張った方だよ。マジェコンヌはせめてものの称賛を、勝ち誇った笑みと共に送った。

その顔には大粒の汗が一つ程浮かんでいるが、状況が状況であったため、気付く者はいなかった。

 

「・・・嘘だろ?数値が・・・」

 

「ふむ。時間が来たか・・・」

 

彼女たちが危険な状況だということは、ナオトには『眼』によって嫌でも解ってしまう。

結界の方を見てみると、昨日は『150000』近くあった彼女たちの数値が、おおよそ『11000』まで減っていた。

あの水に浸かったことが影響して、急激な数値の低下を起こしていたのだ。

レリウスはその結界から伝わってくる『情報』を把握し、彼女たちの魂の輝きが消えかかっていることを悟った。

 

「・・・ラグナちゃんをブッ飛ばせなかったのは痛ぇが・・・最低限できたからいいだろ・・・」

 

「届かなかった・・・と言う事なのか・・・」

 

テルミは吐き気に襲われながら呟き、ハクメンはその場で立ち尽くした。

 

「くっ・・・ネプテュー・・・ヌ・・・」

 

「の、ノワー・・・ル・・・っ」

 

ネプテューヌとノワールはせめて最後にと、互いに手を伸ばし、それを掴むと同時に気を失ってしまった。

そして、アンチクリスタルによって作られていた結界は、時が来たと言うかのように、紫色から真っ黒に染まった。

 

「お、おいお前ら・・・!生きてるかッ!?返事しろッ!」

 

ラグナは結界を右手で叩きながら彼女たちに呼びかけてみるが、返事は帰って来なかった。

最悪の事態を考えてしまい、ラグナは「嘘だろ・・・?」と呟きながら二歩後ろに下がった。

 

「そんな・・・っ・・・お姉ちゃん・・・」

 

ネプギアは呆然としながらその場に座り込んでしまい、その目尻には涙を浮かべていた。

―自分たちの力が足りなかったから?来るのが遅かったから?考えても答えは出てこない。しかし、それ以上に悲しみがネプギアの心を支配していた。

何がどうであれ、もう姉と話したりすることはおろか、会うことすらできないからだ。

 

「・・・嫌ああぁぁぁぁぁああああああっ!」

 

その悲しさに耐えられなくなったネプギアの悲鳴が、ズーネ地区に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

何も見えない真っ暗な空間で、ネプテューヌはゆっくりと目を開けた。

 

「(どこだろう?ここ・・・私、死んじゃったのかな・・・?)」

 

戸惑いながら辺りを見回してみるが、何も見えないし、答えてくれるものもいなかった。

しかし、自身から確かに聞こえて来る鼓動が、自分の死を否定していた。しかし、それともう一つ信じられないことが起きていた。

 

「(ううん、違う。でも・・・シェアエナジーはもう、届かないはずなのに・・・)」

 

アンチクリスタルの結界の中にいる自分たちにはもう、シェアエナジーは届かないはずだった。

だというのに、ネプテューヌはシェアエナジーが自身に届いているのが分かった。

―それならどうしてここまで届いているの?彼女が疑問を深めていると、両手に誰かと手を握り合っている感覚が伝わってきた。

自分たちが黒い水の中に沈みそうな直前、全員で手を繋げるだけ繋いでいたものの、一方通行のような形で精一杯だった。

そして彼女たちが沈んだ直後、気を失っているにも関わらず、彼女たちは打ち合わせていたかのように円になるように集まり、最後に繋げなかった手を繋いで輪を作っていた。

―あったかい・・・。黒い水の影響で体が冷え切っていたが、互いに繋いだ手は、ネプテューヌに温かさを感じさせていた。

 

「(そっか・・・そうなんだね・・・。私たち・・・)」

 

つい最近に、シェアの源は『国民が女神を信じる心』だと、イストワールやネプギアと確認していたネプテューヌは目を閉じたまま、自分の周りを感じる。

自身の左手と掴み合っているノワールの右手。自身の右手と掴み合っているベールの左手。そして、その二人の空いている手と掴み合っているブランの両手。互いの手から繋がるように、シェアエナジーの温かさで繋がっていた。

また、ネプテューヌは近くにあるものと大きな繋がりを感じた。

感じた繋がりの正体は、ラグナの持つ『蒼炎の書』で、それが取り込んだことでラグナに宿ったシェアエナジーと共に、ネプテューヌに一つの答えを伝えてきた。

 

「(どこにあるかまでは教えてくれないか・・・。でも、今はそれだけで大丈夫)」

 

―『蒼』は存在し、シェアエナジーは『蒼』を根源としているが故に、『蒼炎の書』を含む『魔素』を使った行動は問題なく行使できている。

それが、三人と共に共鳴していく中のネプテューヌに、『蒼炎の書』が伝えた一つの答えだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「そんな・・・っ・・・お姉ちゃん・・・っ!」

 

「・・・残念だったな。愛し姉はもういない・・・」

 

地面に手を付けたまま嗚咽しているネプギアと結界の間の所まで歩きながら、マジェコンヌは無情に告げた。

 

「だが、貴様らの起こした奇跡は無意味という訳ではない・・・。もしあと一歩ずつ早かったのなら、負けていたのは私たちかもしれんのだからな」

 

「・・・・・・」

 

マジェコンヌはせめてものの称賛を送ってみるが、ネプギアは反応を見せなかった。自身の大切な人を失ったショックが大きかったからである。

ネプギアのみならず、候補生の四人を筆頭に、ゲイムギョウ界出身組は呆然と立ち尽くしていた。

しかし、彼女たちが死亡したとは微塵も思っていない者もいた。

 

「・・・?この魂は・・・。どうやら素晴らしいものが見れそうだ」

 

「素晴らしいだ?何を言ってやがんだテメェは・・・」

 

「黒鉄ナオト・・・お前には見えている筈だ」

 

その内の一人はレリウスだった。黒く染まった結界をみたまま呟く彼にナオトが猜疑心を持った目を向けると、レリウスは顔だけ向けてナオトに告げた。

半信半疑でありながらも、結界の方を『狩人の眼』で見たナオトは、映し出された数値に驚くこととなった。

 

「・・・あいつら・・・。まだ倒れてねえんだな・・・?」

 

ナオトの『眼』に映る数値は『11000』を下回っておらず、減るどころかその数値を徐々に増やしていった。

その数値を見たナオトは、まだ希望はあると自身に言い聞かせた。彼女たちが必死に足掻いている以上、諦めるのには早すぎた。

 

「・・・さて、姉の死んだという事実に耐えるのも辛かろう?そこでだ・・・」

 

マジェコンヌは息を吐いてから提案するかのように話しながら、体を少しだけ宙に浮かせる。

 

「貴様らを奴らの所へ送ってやろう・・・向こうで仲良く暮らすのだなッ!」

 

「・・・っ!」

 

マジェコンヌが槍を振りかぶるのとほぼ同時に、ネプギアは顔を上げたその瞬間に、黒く染まっていた結界の中から四つの光が現れたのを見た。

紫、黒、白、緑。それらは姉たちの持つシェアエナジーが色となって現れたものであり、ネプギアに自分たちはまだ戦っていると伝えるには十分なものだった。

―お姉ちゃんが頑張ってるのに、私が諦めちゃったらダメ!自分に言い聞かせたネプギアは一瞬にして立ち上がり、マジェコンヌが突き立ててきた槍をM.P.B.Lで防いだ。

 

「・・・何?」

 

その事態にマジェコンヌは驚きを隠せなかった。

―さっきまで打ちひしがれていた小娘が、何故急に立ち上がったのだ?マジェコンヌは結界が自身の背後にあったせいで、その原因に気づけていないのである。

 

「お姉ちゃんは・・・お姉ちゃんたちは・・・!」

 

「お姉ちゃん・・・?」

 

ネプギアの自身への奮い立たせを聞いた三人の候補生も、結界の方を見てそれに気づいた。

あの中でも、自分の姉たちはまだ生きている。否、それどころか・・・。

 

「お姉ちゃんたちは・・・戦っているっ!」

 

「う・・・おぉおッ!?」

 

ネプギアはマジェコンヌと候補生の疑問に、まるで答えを告げるかのように言い切りながらマジェコンヌを押し返した。

マジェコンヌが思わず背後を見やると、四つの光が見えたので、今回は想定外のことが多かったとは言え、これで死んだと思っていた女神が生きている、ないしは死にかけの状態で彼女たちに力を与えているという事態はそう簡単に信じられるものでは無かった。

 

「お姉ちゃんたちは諦めてない・・・まだあの中で、私たちを信じて戦っている・・・!」

 

立ち上がるネプギアの体から、虹色の光が溢れ出し、それを見たレリウスは「待っていた」と言わんばかりに口元を緩める。

どうやら、レリウスの見たかったものの予兆が起きているようだ。

 

「それなら、アタシたちが倒れているわけにもはいかないわ・・・!」

 

「お姉ちゃんたちが待っているなら・・・!」

 

「私たちも諦めない・・・!」

 

ネプギアの行動が活気づけとなり、ユニたちも立ち上がる。

その時、彼女たちも例外なく体から虹色の光を溢れ出させていた。

―この期に及んで、まだ奇跡を起こすと言うのか!?それを見たマジェコンヌは狼狽に近い表情を見せた。

 

「・・・あなたを倒します。私たちの、全身全霊を賭けてっ!」

 

「これは・・・シェアエナジーの共鳴・・・!?ぐぅ・・・!?」

 

その瞬間、候補生四人の体から溢れ出ていた光が一瞬だけ強くなって、大気中に虹色の波となって広まっていった。

自身の周囲を通り過ぎていく光の波を見たマジェコンヌは、自分たちに取っては最悪の軌跡が起きてしまったことを悟った。

更に、セリカの力によって動きが悪くなっていたマジェコンヌに、より強くのしかかってくるかのようにセリカの力が影響してきた。

シェアエナジーの共鳴は、自分たちと協力的なものに良い影響を与える力もあるようで、セリカの力は見事にその条件が当てはまっていて、更に能力が強まっていた。

それが影響して、マジェコンヌは更に体に重みがかかり、額から大粒の汗が幾つか落ちる程だった。

 

「ぐおぉぉぉおおおぉぉおッ!?な・・・何が・・・起きてんだよォ・・・!?ぶオェ・・・」

 

「躰の重みが薄まった・・・気のせいでは無い様だな・・・」

 

「何だ・・・!?体から力が漲ってくるみたいだ・・・」

 

「ハクメン。そして黒鉄ナオト・・・。どうやらお前たちも、この世界で『善』とみなされたようだな」

 

セリカの力が元々天敵と呼べる程に相性の悪いテルミは、最早身動きが取れない程に悪影響を受け、僅かながらに胃液を吐いてしまった。

それとは逆に、ハクメンとナオトは体の動きが急に良くなったため、自身の体を見回しながら戸惑った。

そして、この中で唯一何も影響を受けていないレリウスは、彼らの変化を理解して呟いた。

しかし、レリウスに取って重要な内容はそこでは無かった。

 

「シェアエナジーの共鳴か・・・これは素晴らしい魂の輝きだ・・・。大変興味深いが、もうじきそれも終わるか・・・。」

 

―しかし、得られたものとしては十分すぎる。後はデータを纏め、不足している部分を洗い出すとしよう。結論を出したレリウスはそのまま立ち去ろうとして、テルミの方へと目をやった。

このままでは間違いなく消されるだろう。それは今まで関わりを持っていた身としては少し面白く無かった。

 

「イグニス。奴をどこかへ飛ばせ」

 

レリウスは目の前で起きている現象から目を離さないまま、テルミの方を指差してイグニスへ指示を出した。

イグニスは迷うことなくテルミの側まで低空を飛ぶようにして近づいていく。

 

「ボル・テード!」

 

「おおおッ!?」

 

「何・・・ッ!?」

 

イグニスは自身の左手をテルミに押しつけ、黒い球を発生させてテルミを呑み込んだ。

ハクメンが気づく頃にはもう遅く、イグニスの発生させた球が爆発寸前になっていたので、ハクメンは飛びのくしかなかった。

そして、その黒い球が爆発して消えると、そこにテルミの姿は無かった。

 

「消えた!?」

 

「一歩先を行かれたか・・・」

 

「これは私なりの、奴への恩を返す行為だ」

 

戸惑うナオトとテルミがいた場所に目を向けるハクメンをよそに、レリウスは淡々と回答した。

そして、この場でレリウスのやろうとしていたことは今終了したため、後は去るだけだった。

 

「さて、私はそろそろ退散するとしよう。また会うかもしれんな」

 

そう呟いて、レリウスはイグニスと共に転移魔法でこの場から消えていった。

 

「ああ・・・絶対にまた会うだろうな」

 

ナオトはレリウスがいた場所を見ながら、確信を持ってそう呟いた。

 

「あんなに・・・」

 

「輝いてるです・・・」

 

アイエフとコンパは、その光景にただ呆然としながら呟いた。

確かに彼女たちもシェアエナジーの共鳴によって、良い影響が出ているのだが、それ以上にその暴力的な光の奔流に目を奪われていたのだ。

 

《この輝き・・・まさかだけど・・・》

 

ラケルはシェアエナジーが見せる輝きを見て一人、この世界は非常に重要な見落としがあると感じていた。

見落としているものは、ラグナが所有していて、ナオトが人に戻る為に探し求めているものだとラケルは考えていた。

その理由は、ラグナの『蒼炎の書』にあった。

 

「・・・!?何が起きたんだ?」

 

「ッ!?アンチエナジーが・・・私の、奇跡が・・・打ち消されていく・・・!」

 

ラグナは右腕にを見ながら驚きを見せた。

シェアエナジーの共鳴と同じ虹色の光が、右手の甲から発せられていたからである。

この場にいる中で、女神候補生以外で最も多く影響を受けているのは、味方側はラグナ、敵側はマジェコンヌだった。

ラグナは体の疲労感が吹き飛んでいて、マジェコンヌは自身の現在の姿の背後にある、機械状の翼の一部が悪影響を受けて砕け散った。

 

「・・・くっ!」

 

―このままでは危険だ!そう感じたマジェコンヌはとにかく上空へと、彼女たちに背を向けて全力で飛び去ることを選んだ。

女神の打倒も、死んでしまっては元も子もない。逃げることは屈辱ではあるが、辛うじて冷静さが残っているマジェコンヌの頭は自らの命を無駄にする選択を選ばなかった。

 

「う・・・ッ!?ニューはどうすればいいの・・・?何をしたらいいの・・・?わかんない・・・ッ!わかんないよ・・・ッ!」

 

ニューはテルミに掛けられた強制拘束(マインドイーター)と、誰かに助けてほしい、もう戦いたくないという想い三つのがせめぎ合って混乱していた。

これは強制拘束(マインドイーター)が不十分だからこそ起きている状態であり、もし完全に強制拘束(マインドイーター)を受けていたのなら、ニューは今度こそ本当に救うことができない状態に陥っていた。

その状態を見て、ラグナはまだチャンスがあると確信していた。左腕にある『イデア機関』も、ナインがバッチリとは言えないものの、最大限修復してくれていたお陰でもう一度だけ使える。

その状況が、ラグナにこれ以上ない絶好の機会を与えていた。

 

「ニュー、お前は助けて欲しいか?」

 

まずは問いかけてみることにした。問答無用の状態で行っても上手くいかないかも知れないとラグナは考えたからだった。

幸いにもニューの周囲にあった八枚の刃はニューの背後に止まっていて、迎撃する必要が無くなっていた。

その為ノエルは、ラグナがやってくれると信じてその状況を見守ることにした。

 

「・・・助けて・・・くれるの?」

 

「ああ。お前がそう望むなら、俺は今すぐにでも助けてやるよ」

 

混乱する中、ラグナに問いかけてみると即答で返って来た。そして、この時ニューは一つのことに気が付いた。

―ラグナはあの時からずっと、自分に救いの手を差し伸べていた・・・。何度自分が拒否しても、ラグナはいつでも待っていると言うかのように辛抱強く、差し伸べるのを引っ込めないでいた。

その真実に気づいたニューは、その手を今度こそ掴もうと思った。

 

「ラグナ・・・ッ・・・!ニューを・・・ニューを助けて・・・!」

 

バイザーの影響で目元は判らないが、ニューの頬には涙が伝っていて、その口元も悲しさを表していた。

 

「ようやくだな。俺はずっと・・・お前からその言葉を聞きたかったんだ・・・」

 

「ラグナさん・・・」

 

ニューから言葉を聞くことのできたラグナは、この状況下でも思わず口元が緩んだ。否、緩んだのではなく、彼女を助けられることに一種の嬉しさを感じて口元を緩めたのだった。

その姿をを見たノエルも、ラグナに同意するように微笑みを見せていた。彼女もまた、ニューを助けることができると解って嬉しかったのだ。

―答えは聞けた・・・後はやるだけだ。ラグナは剣を握り直しながら腰を落とした。

 

「待ってろよニュー・・・。今助けてやるからなッ!」

 

「っ・・・ラグナぁ・・・ッ!」

 

ラグナが自分を助ける為に走ってくる姿を見たニューは、頭を抱えながら嗚咽する。

出会ってからずっとすれ違いあっていた二人に、ようやく向かい合う時が訪れようとしていた。

 

「・・・!?な・・・!?」

 

これならば追ってこれまい。そう考えていたマジェコンヌが後ろを振り向いてみると、候補生の四人は完全についてきていた。

彼女たちの周囲から発せられている虹色の光は、罪を償えと言うかのようにじりじりと近づいて来ていて、それはマジェコンヌに強迫観念に近いような恐怖を与えた。

 

「逃がさない・・・っ!」

 

「う・・・ッ!?ああ・・・!」

 

急いで逃げようとマジェコンヌは再び背を向けるが、ユニのランチャーから放たれたビームによる正確な狙撃が、マジェコンヌの背にある右側の翼を撃ち砕いた。

翼を破壊された時の衝撃よって、マジェコンヌはバランスを崩し、一回転半程左に回ってしまう。

 

「ああッ!?ラグナッ!」

 

八枚の刃がニューの意図せずラグナの方へ飛んでいき、不安に感じたニューは思わず叫んだ。

しかし、ラグナは全て剣を使って、弾き返しながら正面を進んで行く。待たせてしまった分、最短距離でニューを助けに行くつもりでいたのだ。

 

「俺は平気だから、そこで待ってろよ・・・!もうすぐだからなッ!」

 

自身が最初にいた場所と、ニューの今いる位置の丁度真ん中までラグナは来ており、ラグナは更に一歩の幅を大きくした。

 

「「ええーいっ!」」

 

「ぐああぁぁッ!?」

 

マジェコンヌが思わず閉じてしまっていた目を開けると、ロムとラムが二人で杖に魔力を込め、星形の巨大な氷塊を作っていて、それをマジェコンヌに飛ばしてきた。

今から避けようにも既に遅く、そうなれば防御するしかないとマジェコンヌは槍で防ごうとするが、圧倒的な質量差に負けてしまい、その氷塊を顎下に受けて吹き飛ばされる。

そして、マジェコンヌはその一撃の影響で高度が落ちていき、勢い良くアンチクリスタルの結界にぶつかってしまった。

 

「ぬああああああぁぁぁぁぁああぁぁぁああぁあッ!?」

 

アンチクリスタルは異様に強度があり、その頑丈さが仇となってマジェコンヌに更なるダメージを与えた。

その痛みにやられて、マジェコンヌは貼り付けられるように動きを止めてしまった。

その一方で、ラグナは十分に近づいたと判断し、最後の一歩は地面を強く蹴る。

そして、そのまま地面スレスレを滑空するように飛んでいき、左手をニューの額に押し当てた。

 

「あ・・・」

 

「大丈夫だ。すぐに終わるからな・・・」

 

戸惑うニューに対し、ラグナは安心させるように告げる。

ラグナは一度だけ深呼吸をしてから、左手に意識を向ける。以前ノエルにもやったことを、ラグナはニューにやろうとしていた。

 

「ああ・・・ッ!?」

 

「消えてっ!」

 

自身が動こうとする瞬間にはネプギアが迫ってきており、かなり近い距離でM.P.B.Lの銃口をこちらに向けた瞬間、マジェコンヌは完全に固まってしまった。

そして、ネプギアは迷うことなくマジェコンヌに向け、M.P.B.Lによる最大出力のビームをマジェコンヌに浴びせた。

 

「『イデア機関』接続・・・反転ッ!」

 

ラグナはニュー逆精錬させるべく、『イデア機関』を最大稼働させた。

その瞬間、ニューの背後にある八枚の刃と、腕と足に付いている鎧が光となって、風に流されるように消えていく。

更に、目元を覆うバイザーが砕け散って、彼女の涙で潤んでいた目元が露になる。

それと同時に、ネプギアのM.P.B.Lから放たれたビームの奔流が結界の表面を砕いてマジェコンヌごと地面に叩き付けた。

その瞬間、結界の底辺の中央から、虹色の巨大な爆発が発生した。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「いでででで・・・。マジで死ぬところだったわ・・・うおぉ・・・ッ!」

 

ズーネ地区の地下にて、レリウスの強制転移を貰ったテルミは受け身を取れず、地面に思いっきり叩きつけられてしまっていた。

セリカの力とシェアエナジーの共鳴という、最悪のダブルパンチを受けたせいで暫くはまともに動けない程弱っていたのだった。

 

「クソがァ・・・せっかく立てた計画がパァじゃねえか・・・あんなに都合のいい話があるかァ?あの様子じゃ第十三素体もこっちに引き込めねえだろうしよ・・・」

 

「・・・ん?テルミ、そこにいるっちゅか?」

 

自分の声を聞いて反応を示した声の方に、動けないなりに顔を向けてみると、そこにはマジェコンヌを抱えたワレチューがいた。

 

「何だ・・・ネズミじゃねえか・・・。どうした・・・?マジェコンヌを抱えてこっち来るなんてよ・・・」

 

「オバハンも今さっき、女神の妹たちにやられちゃったっちゅよ・・・。あの現象が全部決めちゃったっちゅよ」

 

「やっぱりアレかよ・・・全く。こりゃ前途多難だな・・・」

 

ワレチューから状況を聞いたテルミはげんなりとした。ただでさえ体の調子が悪いのに、悪い知らせが来ると余計に調子を悪くしたと感じてしまうのだった。

 

「何か話し声が聞こえるかと思えば・・・ここに転移されていたか」

 

「レリウスか・・・さっきは助かったわ・・・。マジで死ぬか捕縛されるかだったぜ・・・」

 

「礼には及ばん。向こうで研究を協力してくれた礼だと思ってくれ」

 

どうやら長いしすぎたようで、レリウスがワレチューが進もうとしていた道から顔を出した。

テルミの礼に対し、さほど気にしていない様子を見せるレリウスを見たテルミは「そうかよ」とだけ返した。正直なところ、それ以上言葉が出ないくらいに疲労感に襲われていた。

 

「ネズミだけでお前たちを運ぶのは無理があろう。故に私も手伝おう」

 

「た、助かるっちゅよ・・・オバハンが重いし、むっちりしてるせいで体がきついっちゅよ・・・」

 

レリウスはイグニスを呼び、テルミを運ぶことと、ワレチューのサポートを指示する。

命を受けたイグニスは素早く行動し、左腕でテルミを抱えて、右腕でワレチューの負担が軽くなるように右腕でマジェコンヌを軽く持ち上げる。

 

「・・・脱いだら私は凄いぞ?」

 

「そんな情報はいいっちゅよ・・・とにかく行くっちゅよ」

 

マジェコンヌは痛みが伴う中、笑みを作って見せるが、疲労が溜まっているワレチューは然程いい反応を見せずに歩き出した、レリウスとイグニスも歩き始めた。

 

「二人とも暫く休む必要があるっちゅよ・・・これ、まともに目的達成できたのはいるっちゅか?」

 

「私は大方出来上がったが、まだ足りないな」

 

「あ、アレでまだ足りんと言うのか・・・」

 

「しょうがねえ。レリウスは一度こうなると中々止まらねえからな・・・」

 

ワレチューの問いにレリウスが答えると、マジェコンヌは呆然とした反応を示す。

―アレだけ楽しそうに研究してたのにか?マジェコンヌは気が遠くなりそうだった。テルミも軽く呆れてる程だった。

 

「ところで、本来ならばここで解散だったが・・・お前たちはどうする?」

 

マジェコンヌは大事なことを思い出し、それを皆に訊いてみる。

自分たちの盟約は、本日の女神たちとラグナを倒すまでだったのだが、それは失敗して日にちが変わってしまったからだ。

 

「俺は残るかね・・・。ラグナちゃんブッ殺すのにこれ以上の協力者はいなかったしな」

 

「私も残ろう。お前たちと協力していれば、より良いデータが集められそうだ」

 

その問いにテルミとレリウスは即答だった。

彼らとしては女神たちと敵対した以上、行く当てが無くなる可能性が極めて高いのもあるが、それ以前にこの言葉に偽りは無かった。

 

「それならおいらも残るっちゅよ。せっかくの縁っちゅからね・・・オバハン休んでからでいいから契約更新するっちゅよ」

 

「・・・お前たち・・・。そうだな。では、休んでからまたやり直そうじゃないか・・・」

 

マジェコンヌは三人の回答に少し嬉しさを感じながら告げる。

そして、その言葉に反論する者はおらず、ここに同盟は再結成された。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

爆発が消えた後、そこにはネプギアの攻撃によって新しくできたクレーターがあった。

アイエフやコンパのように崖から降りていた者たちの中で、飛べないメンバーは候補生の四人とナイン、『クサナギ』を装備したノエルが運ぶことによって一時的な避難を成功させていた。

マジェコンヌたちは確かに追い払った。ニューも助け出した。しかし、肝心な目的を果たしていなかった。

 

「お姉ちゃん・・・」

 

自分たちが助けたかった姉たちの姿がそこには無かった。

ネプギアの呟きに答える声は無く、遅かったと思わせるには十分なものだった。

 

「お姉ちゃん・・・どこにいるの?」

 

ネプギアは数歩前に出ながら呼びかけてみるが、答える声は無かった。

力を手にしたのに助けられなかった。その事実はネプギアに十分すぎる打撃を与えた。

 

「っ・・・お姉ちゃん・・・っ」

 

「ここよ・・・ネプギア」

 

朝日が昇りだした瞬間、聞き覚えのある凛とした女性の声が聞こえ、ネプギアたちは顔を上げる。

するとそこには変身した姿の女神四人がいた。

 

「お姉ちゃん・・・!会いたかったよぉ・・・っ!うわぁぁぁ・・・!」

 

「会いたかった・・・っ!」

 

「子供みたいに泣きやがって・・・。でも、心配かけたな・・・」

 

ロムとラムは真っ先にブランの方へ飛んで勢い良く抱きつき、その思いを伝えながら涙を流した。

他の候補生と比べて幼いにも関わらず、良く耐えた方であり、再び姉と会えた嬉しさによる嬉し泣きであった。

ブランもその気持ちは理解しており、その二人優しく抱き返して迎え入れた。

 

「・・・えっと、ごめんね。お姉ちゃん・・・遅くなっちゃって・・・」

 

「何謝ってるのよ。大分成長したじゃない・・・」

 

ユニの謝罪に対し、ノワールはいつもとは違って、ユニの頑張りをハッキリと認めている発言をした。

 

「・・・よくやったわね」

 

「っ!・・・お姉ちゃん・・・!」

 

それは、いつかノワールに認めてもらえるように頑張っていたユニの努力が認められた瞬間だった。

大切な姉が生きていたこと、姉に認めてもらったこと。その二つの嬉しさから、ユニは目尻から涙をあふれさせながらノワールに抱きついた。

 

「あのねお姉ちゃん・・・私・・・」

 

ネプギアはネプテューヌに言っておかなければならないことがあった。

本当は全員に伝えておくべきだろうものだが、今は状況が状況である為、少なくとも自分の姉にだけは伝えようとしたが、言い出すのに言い知れぬ恐怖感があり、言い出せないでいた。

 

「ネプギア・・・頑張ったわね。これからはずっと一緒にいるわ・・・」

 

「・・・お姉ちゃん・・・。でも、私・・・!」

 

ネプテューヌはそれを知ってか知らずか、ネプギアが懸念していることには触れず、心配させたことを詫びる。

それでも納得できず、ネプギアは食い下がるものの、まるで詰まるかのように言葉が出せない。しかし、ネプテューヌはそれすらも理解していたかのように、穏やかな笑みを見せ、ネプギアを優しく抱きしめた。

 

「大丈夫よ・・・あなたに何があったとしても、私の目にはネプギア・・・。この世界でたった一人の、私の妹として映ってるから・・・」

 

「っ!お姉ちゃん・・・お姉ちゃんっ!」

 

ネプテューヌはまるで、全てに赦しを与えるようにネプギアに告げる。

それはネプギアが一番聞きたかった言葉で、それを聞けたネプギアは嬉しさから満面の笑みでネプテューヌに抱きついた。

その光景を少し離れたところで見ていたベールだが、やはり自分の所に来てくれる妹がいないのは寂しいものがあった。

 

「あっ・・・。お姉ちゃん、ちょっとごめんね」

 

「・・・?」

 

ベールのことに気づいたネプギアは一度ネプテューヌから離れ、そちらへ飛んでいく。

事態を呑み込めなかったネプテューヌは首を傾げながらネプギアを目で追う。

そして、ネプギアがベールに優しく抱きついたのを見て、ネプテューヌもその理由を理解した。

 

「お疲れ様です」

 

「・・・!ありがとう・・・」

 

「ベール、今回だけだからね?」

 

自分のことに気を遣ってくれたネプギアの行動が嬉しく思い、ベールはそのまま受け止めた。

今回ばかりは仕方ないなと思ったネプテューヌも、ベールに強く言うことはなく、少しの間だけそれを容認するのだった。

 

「今回は無くなるなんてことは無かったか・・・」

 

ニューをお姫様抱っこで抱えているラグナは、左腕にある確かな感覚を感じて呟いた。

以前ノエルに同じことをやった時は左腕が消えてしまったのだが、今回はそんなことにならないで済んだのだった。

 

「ラグナ・・・ニューはもう、戦ったりしなくていいの・・・?」

 

「ああ。最終的決めるのはお前だけど、少なくともこれで、誰かに命令されて戦うことはねえよ」

 

戸惑いながら訊いて来るニューに、ラグナは優しく答える。

ラグナの言った通り、何事も無ければ、ニューは誰かに強制されるような生き方はしなくていいのだ。

 

「ここにいるみんな・・・ニューを酷いことしないよね?」

 

「しないさ・・・それに、俺がさせねえ」

 

先程と同じ表情でニューは問い、ラグナは答える。

今まで利用されるだけされてしまったニューの恐怖を、ラグナは全て振り払うつもりでいた。

 

「随分と待たせちまったな・・・。でも、もう大丈夫だ。今日からお前は自分でどうしたいかを選べる。明日を見る自由だってあるんだ・・・」

 

「ニューはまだ・・・何もやりたいこと決まって無いよ?」

 

「それなら私も手伝うから、一緒に探そう。慌てる必要はないよ。時間はいっぱいあるから・・・」

 

ラグナの告げる言葉に、ニューは戸惑うばかりだった。

今までの生き方が全て変わったニューに取っては、ゼロからやり直すも同然である為、不安なことだらけだった。

そこに、ノエルも一緒になってニューに伝える。これはこちらに来る直前であるシスターとしての面が大きかった。

 

「・・・・・・」

 

「・・・どうした?」

 

「疲れちゃってるのかな?眠くなって来ちゃった・・・」

 

反応が無かったのでニューを注視してみると、ウトウトとしている姿があった。

 

「そうか・・・新しいことだらけで疲れてんだろ。今はゆっくりと休みな」

 

「そうする・・・ありがとうね。ラグナ、ノエル(ねえ)・・・」

 

「・・・えっ?」

 

ラグナは無理をさせず、ニューを休ませてあげることにした。

ニューはラグナの言ったことをすんなりと受け入れ、二人に礼を言いながら睡眠に入った。

その時、ノエルはニューの呼び方に思わず戸惑った。

 

「あの、ラグナさん。ニューが今・・・」

 

「ああ。ノエル姉・・・だってな。まあこっち妹の方が違和感ねえのは確かだな」

 

ノエルの言おうとした事を理解していたラグナは、ニューの寝顔を見ながら笑みを浮かべて率直な感想を告げた。

 

「ラグナーっ!」

 

そんな中、声が聞こえたのでそっちを見てみると、セリカやナオトたちが走ってこっちにやってきていた。

よく見れば、ナオトの近くにラケルもいた。

 

「っ!セリカちゃん!?」

 

「えっ!?ノエルちゃん!?いつ来てたの!?」

 

「ついさっきだよ・・・それにしても久しぶりだね」

 

二人は思わぬ再開に喜びを隠せなかった。『エンブリオ』で別れて以来の再開だったからだ。

 

「『蒼の少女』よ・・・先の世界での事を詫びさせて貰おう」

 

「私の方からも、改めて謝罪させてもらうわ・・・私の見ていたものが完全に間違っていたわ・・・」

 

「そ、そんな・・・!大丈夫ですから、顔を上げてください・・・」

 

この世界では関係なくとも、『六英雄』の二人に頭を下げられたノエルは両手を振りながら慌てる。

ノエル自身、もうその事は終わったのだから、深く気にしていなかったのが大きい。

 

「例え貴方たちがそう思っていても、私は『エンブリオ』の時の記憶を持っているだけで、そことはまた別の世界にいる身なんです。だから、そこまで気にしないでください・・・」

 

「ノエル、あなた・・・」

 

苦笑交じりに説明するノエルを見て、ナインは完全に面食らった。

『エンブリオ』では存在そのものを否定するくらいに糾弾していたから、少なからず恨んでいると踏んでいたナインの予想は、完全に外れていたのだった。

 

「ああ、それよりもなんだけどっ!その子・・・助けられたんでしょ?」

 

「ああ・・・ようやく助けられた。本当に助かった。お前らが居なけりゃ、絶対に無理だったよ」

 

セリカは無理矢理その湿っぽい空気を遮り、ラグナに問いかける。

ラグナはそれを肯定しながら皆を見て礼を言う。これは紛れもない本心で、ナオトが来なければテルミにやられていただろうし、ナインがいなければ『イデア機関』が使えずニューが助けられなかった。

更に、ハクメンがあの時テルミを受け負わなかったらずっとテルミと戦うことに時間を喰わされ、セリカがいなければ自分がニューを助けたとしてもその後はどうすることもできかっただろうし、ノエルがいなければネプギアが大変なことになっていたかも知れなかった。

今回ニューを助けることができたのはそれらの因果が重なった奇跡だった。そうラグナは確信していた。

 

「その子・・・俺を見て大変なことになったりしないといいけどな・・・」

 

《流石に大丈夫な筈よ。もう、ラグナだけが全ての悲しい時間は終わったのだから・・・》

 

ナオトが不安視していたのは、ニューが自分を見た時、発狂にも似たような叫びをした事だった。

ラケルは今回の事を踏まえてそれを否定した為、「そうだよな・・・考えすぎだよな」と呟きながらナオトも納得した。

 

「フフッ・・・んにゅ・・・」

 

『・・・・・・』

 

突然笑った声が聞こえたのでそっちを見てみると、ニューが幸せそうな顔で寝ていた。

きっといい夢を見ているのだろう。顔を見合わせていたラグナ達は一斉に噴き出して盛大に笑った。

 

「みんなーっ、そろそろ帰りましょーう!」

 

ネプテューヌの呼びかけを聞いた全員は、何も反対することなく頷き、帰る準備を始めた。

こうして、丸一日以上をかけた女神救出戦は終わりを告げるのだった。




という訳でどうにか山場を終えることができました。

テルミは迷った末にレリウスの手による逃走を選択しました。どの道ボロボロだし、暫く動けないのに拘束だったらオーバーキルスレスレじゃないかと考えた結果です。

ニューの『ノエル姉』呼びですが、CPのギャグシナリオで実際に言っていたことと、実際にも姉妹のような存在だし、12のノエルと13のニューだとノエルの方が先だし、これ行けるんじゃないかと思った次第です。

さて、一昨日にヴァリアブルハートの3巻目が出ましたが、ご購入はされましたでしょうか?マイママの能力がヤバいなと感じました。
また、メイファンもメイファンで最後のシーンは悲しいものを感じましたね。

最後に次回ですが、エピローグのようなものをやってこの章に区切りが付きます。
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