超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER- 作:ブリガンディ
「へぇ・・・向こうじゃ随分とシスターの行動が染みついてるみてえだな」
ラグナはネプギアに買い出しを頼まれてラステイションに来ていた。何でも、ダウジングマシンを自分なりに改良してみたいからパーツが必要なのだが、ネプテューヌと共に行く仕事が入ってしまっているから今日は行けないそうだ。
その為、代わりに必要な物を買って帰路に着いたところで、ノエルとニューの二人と合流したので、現在は話しながら町中を歩いている。
ノエルが向こうの世界でシスターをやっているという話を思い出したので、気になったラグナはノエルに訊いて見たところ、予想以上にしっかりとやれているようだったので一安心した。
「でも、まだまだですよ・・・。私一人でやってた訳じゃないので・・・・」
ただし、ノエル自身はそこまで嬉しそうにしていない。
その大きな理由としてはセリカが一人でラグナたち三人の世話をしながら、自分よりも多忙な一日を何の苦も無さそうにしていたからだろう。
とは言え、ノエルがセリカと比べて圧倒的に日が浅いので、その点は仕方ないと言える。ラグナからすれば、シスターの仕事を真っ当にこなしているだけでも十分に凄いことだった。
「そんなことねえよ・・・俺からすりゃ、どっちも十分立派にやってるさ。そこに上下なんてありゃしねえよ・・・」
だからこそ、ラグナは正直に伝えることにした。
サヤを連れ去られてしまい、統制機構の裏の事情を知ったラグナは大罪人になってしまっているので、シスターとして頑張っていた二人が眩しく見えるのだった。
周りにいるのが事情を知った人たちだからそこまで責められてはいないが、元大罪人と言う言葉だけを伝えたら普通は混乱すること間違いなし。最悪は警察沙汰だろう。
そんなこともあるので、この事は信頼できる人にしか伝えられないし、無理に伝える必要もない。一人で抱えて行くのが正解なのだろう。
「それによ・・・」
「・・・それに?」
どちらも立派にやっているという発言は紛れもなく本音だが、もう一つの本音を伝える為、ラグナは一度前置きを作る。
ノエルが首を傾げたところで、ゆっくりとニューに向けて指を指す。
「他人と協力したとは言え、お前にしかできなかったことはあるだろ?その証拠に、お前の隣で元気にしてる奴がいる・・・それで良いじゃねえか」
「・・・!」
ラグナの言った一言で、ノエルはハッとする。
ラグナはあの時、自分にも力があったら
それに対して、ノエルはニューのことを諦めず、自分たちと協力したことで最後は暖かく迎えることができている。
勿論、このことは家族と一緒に帰れるというノエルにとっても、暗黒大戦時代での経験から大切な人たちを護る。苦しんでいる人たちを助けると決めたラグナにとっても喜ばしい結果となった。
ラグナの言った通り、現にニューは平時でも明るい顔になることが多くなっており、ノエルと出かける時はあまりの元気の良さにノエルを振り回す光景がよく見受けられている。
ネットで調べた限りだと、その光景は最近になって見られるようになった、ラステイションにおける微笑ましい光景の一つとして度々取り上げられているそうだ。
「ラグナとノエル姉が諦めなかったから、ニューはこうしていられる・・・。だから、本当にありがとう・・・」
「ニュー・・・そうだよね。私にも・・・ううん。私だからできたこと、確かにあるんだね・・・」
ニューが笑顔で礼を言ったのを見て、ノエルはこみ上げてくる想いに任せてニューを優しく抱きしめる。
様々な因果が重なり、諦めない意思と実行できる力が兼ね備えられたからこそ、ニューを助け出すことに成功しているのだ。
だからこそ、ニューは感謝の意を言葉で伝え、それを受け取ったノエルは今のように抱きしめることで応えてやるのだった。
「(本当に良かった・・・。助けることができたから、ニューは新しい道を選べてる・・・。それだけでも儲けモンだ・・・『
ラグナは目の前に映る微笑ましい光景を見た後、己の右腕を見つめる。
手に入れてから間もない頃はこんな力があったところで、己の自己満足の為に他人を傷つけるだけのどうしようもないものだと思っていたが、今はそうではなかった。
そんな危険な力でも、使い方さえ間違えなければ多くの人を助けられる力に変わる。
ラグナがそう言った認識ができるようになったのは、暗黒大戦時代でセリカたちと共に行動した部分が大きく、今回ニューを助け出したことで改めてそれを実感することができたのだった。
「そういうわけだから、今のうちに楽しもう!後で向こうに行こうよっ!」
「えぇっ!?い、いいけどまたお金の使い過ぎで怒られちゃうよ・・・?」
ラグナが考え事にふけっていると、いつの間にかニューがノエルを振り回すと言ういつもの光景になっていた。
どうやら今まで自由な行動ができなかったニューは新しいことを始めて見たり、ハマったものにのめり込んだりしているのだが、その都度金を使うことが多い余り、ノワールに注意されることがあるようだ。
しかし、ノエルはノエルでニューの事を考えて強く拒否できないが故に、ニューは更に振り回して・・・という悪循環が出来上がっていたのだった。
「(これからも、俺は『
とは言え、ニューが問題なく日常に溶け込めているその光景を見ながら、ラグナは右手を握りしめて決意を固めるのだった。
全ては和平を結んでから、トラブルが起きながらも確実に平和になっていくゲイムギョウ界の為に・・・。
* * *
ノエルが蒼い球の中に入ってから半日が経った早朝。ラムダは一人で帰りを待っていたが、彼女が帰ってくる気配は一向に無かった。
彼女に言われた通り、手始めにシスターとしての活動準備に支援してくれていたカグラの所へ連絡を入れれば、「一日もしないうちに調査に人がくるように手配する」と言ってくれた。ノエルが突如としていなくなったのはかなり驚いているようだった。
ノエルが居ない分、自分でできる事をやっていこうとしたのだが、料理以外の殆ど全てをノエルが担当していたのが仇となり、一日でものにできるようなものではなかった。
「・・・・・・成功・・・・・・」
床掃除を終えて上手く行ったことが分かったラムダは小さく微笑む。
今現在、床の掃除くらいならどうにか自分一人でもできるのだが、洗濯物はこれから干すのでまだ解らず、取り込む時は思いっきり外にある草むらに付けたまま持って行ってしまっていたので、全くできる気配がしなかった。
朝食は一人分であったが為にすぐに準備が終わり、一人であるが故に無言で食べた結界、ものの十分で食べ終わってしまった。その後の片付けも一人分だけだったこともあって大した時間を要さなかった。
そして、本来自分が担当している朝の分が終わったラムダは、そのままノエルがやっていた事を一つずつやっていこうとして今に至っている。とは言え、半日しか経っていないので殆ど何も解らず終いな状態ではあるが・・・。
どんなに遅くとも夕方には人が来るという話ではあったが、時間次第では食事を用意しておかねばならないと感じたラムダは早めに昼食の用意を始めようと考え、食材のしまわれている場所に向かおうとする。
「・・・・・・」
しかし、その途中でニューがいた部屋にまだ蒼い球が残っている状態であることが一瞬だけ目に入ってしまい、ラムダは足を止めてその部屋に入る。
半日しか経っていない為、部屋の状態は何も変わっていない。強いて言えば、夜間冷え込まないように窓を閉めたくらいだった。
そして、半日前と全く持って同じ場所にその蒼い球は浮いていた。
「この中に・・・二人が入っていった・・・」
ラムダはその蒼い球を暫しの間見つめる。
もしかしたら、これを見た事が原因で、ノエルは何かを思い出してしまったのではないかと考えたからだった。
ラムダはこの時知らないが、ニューとノエルの場合は効果がすぐに出ていた。その例に溺れずラムダにもすぐに効果が現れる。
「・・・!?」
この時の突拍子でラムダは幾つかの物事を思い出した。
まず初めに自分が本来は『次元境界接触用素体』の一体であることを思い出した。しかし、これ自体はラムダ自身がそこまで重く捉えていないため、重要ではあるが然程問題にはならなかった。
また、短い期間ではあるが、ココノエの下で活動をしていたこともあったが、こちらも恐らくは記憶程度に留めておく程度で構わないだろう。これはあくまで以前がそうであったということであり、今は違うからだ。
しかし、最後の一つ・・・これだけはどうしても忘れる訳にはいかない。否、忘れたくないと言った願望に近いのかもしれない。
「ラグ・・・ナ・・・」
元々は記憶等全てを抹消された所に『境界』に落ちたニューの魂を定着され、以後はココノエの駒として動いていたが、ラグナに対する想いが蘇ったことで命を投げ捨て、命令違反を犯してまで庇ったことがある。
ただし、これは以前のニューのように、「自分以外にラグナを取られるのは嫌だ」等の悪感情というよりは、「ただ助けたかった」という咄嗟の行動に近かった。
ただそれでも、当時のニューと比べれば非常に純粋な気持ちを持っていたと言え、『エンブリオ』で持っていた『
そのことから、彼女は最も自力で叶えることのできる『願望』を持ったと言える。
「・・・うん。もう一度・・・会えるなら会いたい・・・ラグナに・・・」
その純粋な願いは記憶が戻ると同時に思い起こされ、ラムダはその気持ちに従って蒼い球へ手を伸ばす。
ラムダが蒼い球へ手を伸ばすと、その球は強い光を放ち始め、次第にラムダの視界を覆っていく。
そして、その光が消える頃には、ラムダの姿が見当たらなくなっていた。
* * *
「・・・・・・」
体に何かが当たっているのを感じ、ラムダは目を覚ました。
どうやらいつ間にか眠ってしまったようだ・・・と片付けたかったのだが、いきなり木々に囲まれている場所にいたのでそういうわけにもいかなかった。
「・・・現在位置の詳細情報・・・特定・・・ゲイムギョウ界・・・初めて聞く名前・・・」
情報をくみ取っただけではあるが、自分が異世界に来てしまったことが判明した。
そうであるならば普通は戻るべきなのだろうが、自分がそうしたくて来てしまったのを覚えている為に踏みとどまる。
また、ラムダの格好はシスターの格好ではなく、『ムラクモユニット』を起動する前の格好でいたが、ラムダ自身は特に気にしていなかった。
「・・・うん。どうせならラグナに会ってから・・・」
ラムダは帰るならそれからでも遅くないと考えていた。何せ自分がその人に会おうと思って飛んできてしまったのだから、目的は済ませておきたい。
そう思って早速ラグナの場所へ向かおうと思ったが、肝心な居場所が解らず終いだった為、辺りを見回すものの、木々に囲まれていて、殆ど効果を成さなかった。
このまま当てずっぽうに移動すればラグナに会える確率はかなり低いが、何もしないでこの場で待つ事を選んだ場合は限りなくゼロに近くなると判断したラムダは、木々に囲まれている状態から脱する為に移動を始めようとした。
「◎#=%×~・・・」
「・・・・・・?」
しかし、ラムダが歩き出そうとした瞬間に、彼女を呼び止めるように何かの声が聞こえた。
その為ラムダは一度足を止めて声が聞こえた方へ顔を向けると、その声の主に驚くことになった。
「・・・・・・ターター・・・?」
「◎#=%×~・・・♪」
ラムダが見つけた黒い体を持つ虫のような存在・・・ターターは見つけてもらったことを喜ぶような声を上げ、体を左右に揺らして喜びを表現した。
ターターは以前、ラムダがアラクネに襲撃されラグナに救出された時、そのアラクネの体内からはぐれ、取り残されてしまった存在だった。
ラグナがラムダのマスター・・・つまりはココノエを探すのを手伝う際、ターターに興味を引かれたラムダは、そのターターも連れていくことにしたのだった。
しかし、アラクネの体内にいなければ栄養などといった、活動に必要な成分をターターは確保することができず、その先は極めて短いものとなってしまったのだった。
そんなターターが目の前にいるのだが、宿主はいないのだろうか?そんな不安がラムダの心の中を支配した。
「あの宿主はいないの?」
「◎#=%×~・・・」
ラムダの問いかけに、ターターは首を振って否定の声を上げる。
ターターは自分の言葉が通じないのが分っているのか、自分の意志などを主張しようとする際、必ず身体も一緒に使うのだった。
その為、この世界にアラクネは存在していないことがラムダはすぐに分かった。しかし、それだけでは疑問が解決しない。
「・・・体は大丈夫なの?」
「◎#=%×~・・・」
アラクネがいないとターターは必要なエネルギーを確保できない。その為ラムダはターターに再び問いかけるのだった。
そして、その回答はどういう訳か、アラクネが全くいなくとも平気かのような返答を感じられた。
もしかしたら、ターターにとってはラムダと再開できたことの方が嬉しいのだろうか?そんな雰囲気を感じさせる声だった。
「そっか・・・それならよかった」
「◎#=%×~・・・♪」
どうしてそうなっているかは解らないが、ターターが縛りなく活動できるようになったのが分かって安心したラムダは笑みを浮かべた。
ターターもラムダが嬉しそうにしてくれて安心したのか、それとも自分も嬉しいのか、喜びの声を上げていた。
「ターター、近くに何かある?」
「◎#=%×~・・・」
ラムダは早速ターターに訊いてみることにした。ターターが自分よりもこの世界に詳しい可能性が十分に考えられたからだ。
ターター自身は町などであれば解らないが、落ち着くことのできる場所なら知っているとでも言いたげだった。
「じゃあ、案内を頼める?」
「◎#=%×~・・・♪」
ラムダに頼られたのが嬉しいのか、ターターはその小さな体を跳ねるように動かして先に進んで行く。
そんな姿を微笑ましく思ったラムダは、置いていかれないように、そして見失わないように、気を付けてターターについていく。
そして、ターターについていって辿り着くことができた場所は木々に囲まれている湖がある場所だった。
「ここ・・・?」
訊いてみれば、ターターは無言で肯定した。
ターターがいかにもリラックスしているような姿勢を見せたので、ラムダも湖を眺めてみると、自然と心が落ち着いて行くのが感じられた。
暫しの間その場で湖を眺めている内にそよ風が優しく吹き付けてきた。それと同時に、あるものがラムダの目に入った。
「・・・葉っぱ・・・?・・・!」
それは一つの長い雑草に付いていた葉っぱであり、ラムダはそれを見て以前ラグナが葉笛をやっていた事を思い出し、今度は自分で作ってみようと行動を起こした。
「・・・・・・上手くいかない・・・」
しかし、以前はラグナが既に自分で作り上げた物を渡してくれただけで、自分で作ってないが故にやり方が解らなかったラムダは上手く行かずに困り果ててしまった。
ターターが協力したそうにしていたので一緒に作ろうとしたが、お互いにやり方がわからないで作ろうとしていた為、結局は平行線を辿ってしまっていた。
「・・・原因がわからない・・・」
「◎#=%×~・・・」
ラムダが顎に手を当てながら考えるように、ターターも体を左右に傾けながら考え出した。
しかし、お互いに外に出て行動する時間・・・もとい、自分の意志で行動する機会が少なく、一般知識等も欠けていた為、上手く考えをまとめ上げられないでいた。
「何か分かった?」
「◎#=%×~・・・」
「そう・・・」
ラムダの問いにターターは期待に応えられなかったのか、残念そうな声で返答し、それを聞いたラムダもしぼんだような表情に変わる。
今度はしっかりと葉笛を吹けるようにしたかったのだが、肝心の葉笛を作れないのであればどうしようもなかった。
「えーっと・・・確かこっちに来ていたと思うんだけど・・・」
「・・・!」
どこかからか近づいてくる声に驚き、ラムダは辺りを見回す。
まだ見えないので確証はないが、知っている声であり、その足音は少しづつこちらに近づいてきていた。
「ああ。いたいた・・・って、お前ラムダか!?」
「っ!・・・ラグナ・・・!?」
背後から聞こえた声に振り向いてみれば、そこには自分が会いたいと願っていた青年・・・ラグナがいた。
ラムダは些細な願いが叶ったことに嬉しくなり、ラグナは予想外の再開に驚いている様子を見せる。
しかし、ラグナはラムダと違い、そこまで大きく驚いている訳ではなかった。
「・・・ラグナ・・・そこまで驚いてない?」
「・・・ん?ああ・・・ここへ来てから結構な奴と再開したからな・・・」
ラムダに問いかけられて、ラグナは自分の感覚が麻痺し始めていることに気付く。
人間慣れるとこうなるのだろうと思う反面、こう言った事態に対する感覚が麻痺するのはそれなりに不味いのでは無いかと感じてもいる。
あと一人、二人自分のいた世界から来てしまったら間違いなく麻痺するだろう。ラグナはそんな予想を立てていた。
「それについこないだだって・・・」
「・・・?」
ラグナが言葉を止めると、ラグナが来た方から足音が聞こえ、ラムダは首を傾げる。
その答えはラグナの背後の方からやって来た二人がその答えになっていた。
「ラグナさん・・・早いですよ・・・。・・・って、ええっ!?ラムダもこっちに来ちゃったの!?」
「ラムダ姉・・・?どうしてこっちに・・・?」
「こいつらと再開したからな・・・」
「ノエル・・・ニューも・・・?」
ノエルとニューはラムダを見て驚きを示し、ラグナは理由を伝えながら苦笑する。
ラムダもラムダで、二人がいることに困惑していた。
それとは別に、ラグナもラグナでラムダと一緒にいた存在に気が付いた。
「なあラムダ・・・そこにいるのは・・・」
「うん・・・。ターターもここにいた・・・」
「◎#=%×~・・・」
「なにこれ!?ラムダ姉のお友達?」
ラグナが指を指して問いかけると、ラムダは両手でターターを拾い上げて、肯定しながらその姿を見せる。
ターター自身もラグナを覚えているのか、少し嬉しそうに体を左右に揺らした。それをみたラグナも笑みがこぼれた。
また、ニューもその存在に興味を惹かれたのか、目をキラキラさせながら顔を近づけてターターを凝視する。
「ひ・・・っ!む・・・虫・・・!?」
ただ一人、ノエルだけは例外にその姿を見て顔を青くした。
始めて会った段階から平然と触れていたラグナとラムダは勿論のこと、あらゆることに興味を持つようになったニューもターターのことが変だとか、そういうことには全く気にしていない。
しかし、ノエルは虫が・・・特に足の多いものを大の苦手としている。
ターターは足こそ二本足であるものの、口の中から何かが出ていたりしているのもあり、生理的に受け付けられないのかもしれない。
「お前・・・もしかしてダメなタイプか?」
「な、なんでみんなは平気なの・・・?」
その反応を見たラグナは訊いてみると、逆に訊き返されてしまった。
どうやらノエルはそれだけ虫が苦手らしい。最も、ターターを虫と言っていいのかどうかは解らないが・・・。
「◎#=%×~・・・?」
「ご、ごめん!やっぱりすぐには無理っ!」
「おい、ノエル・・・何で俺の後ろに隠れる?」
ターターが首を傾げるような動きを見せた瞬間、耐えられなくなったノエルはラグナの背に隠れるようにしがみつく。
以前ネプギアがミネルヴァを見て解体だのなんだの言った時に、ミネルヴァが自分の後ろに隠れたのをラグナは思い出し、半ば疲れ気味に問い返した。
しかし、ノエルは答える様子がなく、ただ震えていた。
「・・・◎#=%×~・・・」
「ターター・・・落ち込んだ?」
「・・・・・・」
今まであっさり受け入れてくれる二人にしか出会ってなかったのが災いしたのか、実際に否定気味な反応をされたターターはショックを受けたのか項垂れる。
それをみたニューは色んな動きをするターターを興味津々に見つめるのだった。
「やれやれ・・・せっかくだから、アレをやるか・・・ノエル、悪いけどちょっと離れてもらうぞ」
「・・・えっ?」
ノエルに離れてもらったラグナは近くの葉っぱを手に取って葉笛を作り始める。
先程ラムダが作った時は全く上手く行かなかったのだが、ラグナは一分と掛からずにそれを完成させた。
「よし・・・」
「・・・!」
ラグナは一呼吸置いてから葉笛を吹き始める。葉笛を使って発せられる音を始めて聞いたニューは驚きながら葉笛を吹くラグナに注目する。
「◎#=%×~・・・♪」
「・・・喜んでるの?」
ターターが体を左右に動かしながら楽しそうにしている姿をみたノエルは思わず呟いた。ラムダはまた共にいられる時間が帰ってきたことに喜んだ。
思えば、ターターはラグナの葉笛を最後に聞いてから、衰弱死してしまっている。
最後に葉笛を聞いたターターは安堵していたのだろうか?それは解らないが、またその葉笛を聞けることに喜んでいることは確かだった。
「ふぅ・・・」
「◎#=%×~・・・♪◎#=%×~・・・♪」
「そうか・・・お前がそうなら吹いた甲斐があったもんだな」
やがて、ラグナが葉笛で一曲を吹き終え、皆の様子を見てみるとターターは飛び跳ねて喜びを示していた。
ラグナ自身、ここまで葉笛が役に立つものなのだとは思っても見なかった。
正直なところ、ジンとサヤを楽しませる物でしかないかもしれないと考えていたが、思ったよりも自分の葉笛に影響を受ける人はいるようだ。
ラムダもそうだったし、ニューも凄いやりたそうな目をしていた。前に『
―後で
「・・・で、お前らもやってみるか?」
ラグナがラムダとニューを見て訊いてみると、二人は首を縦に振って頷いた。
「じゃあ・・・作り方からだな・・・」
ラグナはそう言って二人に葉笛の作り方を教える。
ラムダはそのおかげで解らなかった部分が解決し、ニューもラグナの教えがあってサクサクと作ることができた。
「んで、吹き方なんだが優しく吹くんだ。強く吹くなよ?」
そう言われてラムダとニューは実際に吹いてみるのだが、二人共ラグナのように綺麗な音が出ない。
どうやらまた強く吹いてしまっているようだ。
「えっとな・・・もう少し吹きかける力を弱くするんだよ。そんなに思いっきりやったら音が出ない」
「・・・弱くする・・・」
「・・・思いっきりやらない・・・」
ラグナに指摘されてもう一度吹いてみると、一瞬ラグナのように綺麗な音が出たので二人は驚いて吹くのを止める。
「「・・・!」」
「そんな感じだ。後は微妙に吹く力を変えて音程を変えるんだ」
ラグナにアドバイスをもらうものの、今までこう言った経験の少ない二人は力加減に苦労することになった。
しかし、それでも少しすればすぐに音程を変えるコツを掴み、簡単に一曲吹けそうなくらいにはなっていた。二人共飲み込みが早いようだ。
そこまでの段階に至ったところで、ラグナは二人に提案を出すことにした。
「試しに俺と合わせで吹いてみるか」
「・・・!」
「いいの!?」
「ああ。せっかくだしな」
そのラグナの提案に、二人はさも嬉しそうに食いついた。
ラグナ自身、基本的に一曲しか吹くものが無いが、これが役に立つことが少し嬉しく思っていたりする。
それに、二人が楽しんでいるのだから、教えて上げてもいいだろうと考えていた。
「んじゃあ、行くぞ?」
二人に確認を取り、頷くことが確認できたので、三人で同時に同じ曲を吹くことにした。
もう少し違う曲を用意できたら良かったかも知れないが、何せ長い時間練習する期間を失われていたのだから仕方ない。
「◎#=%×~・・・♪◎#=%×~・・・♪」
ラムダとニューはまだ慣れてないこともあり、どうしても所々でムラが発生してしまうが、それでもよく吹けている。
再び葉笛が聞ける事を嬉しく感じているターターは、先程と同じように体を左右に揺らして喜んでいた。三人が吹いていて嬉しさも三倍なのだろうか?
また、ノエルはいつの間にかターターへの恐怖感などがなくなっていた。ターターは厳密には虫とは言い難いので、そのおかげで平気になったのかもしれない。
ラグナは吹きながら二人が大丈夫なのだろうかと心配に思っていたが、見事についてきている為、そのまま曲を完走する。
「お前ら・・・良くついて来れたな・・・」
「一度聴いてたから・・・」
「さっき聴いたからそれを思い出しながらだったけどね・・・」
ラグナは吹き終わって早々に、二人飲み込みの速さを関心した。それに対して、ラムダ、ニューの順番で照れながら答える。
それと同時に、元の世界に帰った時、この葉笛が二人の役に立ってくれる事をラグナは願わずにはいられなかった。
「ねえねえラグナ、他に何か曲はないの?」
「いや、実は俺もこれしか知らなくてな・・・」
新しいのをやろうと思えば、ジンとサヤが「いつものがいい」と答えるので、ラグナは全く新しい曲を覚えようとしなかったのである。
その為、ニューに聞かれても申し訳なさそうに答えるしか無かった。
「そっか・・・それなら自分で見つける!ニューにはその時間があるからね」
「お前・・・。そうだな。今のお前ならそうするべきなんだろうな・・・」
ニューのその姿勢を目の当たりにしたラグナは、ニューの変化を確かに感じ取った。
それは非常に良い変化であり、ノエルもこれならニューが元の世界で元気に走り回ったりすることも可能だろうと信じられた。
「あっ、ラグナさん。この事皆に伝えないと・・・」
「そうだったな・・・。けどその前に・・・」
ラグナが前置きを作ると同時に、誰かの腹の虫が鳴る。
「まずは飯にするか。金は俺が出すからよ」
その腹の虫はラグナが鳴らした物で、ラグナは腹に手を当てながらそう言うのだった。
* * *
流石に空腹のまま皆に合わせるのは酷だと言う判断を下し、ラグナは三人とターターを連れ、プラネテューヌの中華料理店で昼食をとることにした。
「ああ。俺たちは飯食ってからそっち行くから、そっちも飯済ませといてくれ」
『わかりました。みんなに連絡回しておきますね』
「頼むよ。そんじゃまたな」
『はい。それでは・・・』
『ちょ、ちょっと待ってぴーこ・・・!力強すぎるって・・・!ぐほぉっ・・・!』
その間、ラグナはネプギアにラムダを見つけた事を伝えておいた。
勿論今すぐ合わせるのは他の全員に空腹を強要するので、流石に気が引けるので、やらなかった。
そんな話をしている最中だが、何やらネプテューヌの女子が上げてはいけないような気が聞こえてきた。
「・・・またいつものか?」
『はい・・・そうみたいです・・・本当に元気ですよね、ピーシェちゃん・・・』
「いや、あれはいくらなんでも元気で納められないだろ・・・」
実際のところ、ピーシェの元気さはただ元気の一言では抑えられない。
力の方も幼児とは思えない程のものであり、現にネプテューヌはこの前アッパーカットを綺麗に入れられて倒れ伏してしまっている。恐らくは今回もそうなのだろう。
『やたーっ!ねぷてぬっ!もっかいやろっ!』
『うえぇ!?ちょっともう無理・・・!・・・わぁっ!ね、ネプギアーっ!ぴーこを止めてーっ!』
『ちょっとまずそうなのでお姉ちゃんを助けて来ますね。それじゃあまた』
「あ、ああ・・・頑張れよ」
自分があんな目に合わなくて良かった・・・。ラグナはそう思いながら連絡を終えた。
ちなみに、ラグナが自分で全負担すると宣言したのには三つほど理由がある。
一つはノエルやニューは自分で使える資金が少ないから無理をさせてはいけない。二つ目はラグナはゲイムギョウ界でクエストを数多くこなしている為、資金の蓄え自体かなり余裕があること。
「(タオじゃねえから、金はそこまで掛かんねえしな・・・)」
三つ目のこの理由は最大の理由であり、タオは食事の量が多すぎてただでさえ少ない資金が無くなってしまうのに対し、彼女たちは人並みの量だから被害が少ないのである。
「ありがとうございます。わざわざこうして貰って・・・」
「いいんだよ。俺はこっちで結構金に余裕ができてるからな・・・お前はそれで良かったか?」
「◎#=%×~・・・♪」
ターターの為にサイドメニューを一つ頼んだのだが、どうやら満足しているようだ。
「(つか、ターター入れて平気とかプラネテューヌのバイタリティすげえな・・・)」
他の国であれば間違いなく追い出されるか、アイテムパックの中にしまえと言われてしまうのだが、プラネテューヌではそんなことが起きない。
寧ろ入れたら入れたで「珍しいペットですね」と言われて終わってしまった。この回答を聞いた時、大丈夫かプラネテューヌと思ったラグナは悪くないだろう。
ノエルもノエルで、自分がターターだったらプラネテューヌ住まいを選びそうだとか言うあたり、プラネテューヌにいる人たちの心は極めて広い。
・・・否、広いというよりは色んな意味で斜め上を行っているというのが正しいだろう。それだけプラネテューヌの人たちは変わっている。
「他の奴らはそれなりに時間かかるし、俺たちはゆっくり食っても問題無いぞ」
「うん・・・分かった」
「う~ん・・・!これ美味しいっ!」
「◎#=%×~・・・♪」
「あはは・・・。全然気にしてなさそうですね・・・」
ラグナがそういう頃には三者三様に料理を楽しんでいた為、ノエルが苦笑交じりにそう言う。
「でも・・・誰かが来たって本当だったんですね・・・。最初は半信半疑でしたけど」
「まあ、最初はそうだろうよ・・・。俺だって信じられなかったんだしな」
事実、ラグナは最初『蒼炎の書』を使用することが許されたのかと思っていた。
しかし、それは違っており、まさかのテルミが来た合図になっていた辺り驚くしかなかった。
「そろそろイストワールやナインに話して対策立てねえとな・・・」
一人で常時警戒したり行動したりするのには限界がある。ラグナはそう感じていた。
レリウスは位置を特定出来なかったので例外だが、今までは自分のいる場所から然程離れていない場所に現れてくれている。
しかし、仮にラグナがリーンボックスにいないのにリーンボックスに来てしまったり、その逆が起きてしまったら最悪見つけられない可能性まで出てくる。
その為、ラグナの持つ『蒼炎の書』の状態に関して解析を頼んでおきたかった。
「今まで対策は立てて無かったんですか?」
「ああ・・・出た時は出たで対処するしか無かったからな・・・」
実質無対策と言っていい状態にも程があるだろう。
来たら来たらで急いで向かわねばならず、しかも情報位置を正確に特定できるのはラグナただ一人である為、レリウスのようなケースがあった場合見つけられない可能性が極めて高いのである。
毎日想定していたら気が気ではなくなるが、かと言って無対策のままでいいかと言えば違った。
「この後ラムダを皆に合わせるし、そん時伝えねえとな・・・」
「何かいい案が見つかるといいですね」
「ああ・・・そうだといいな・・・」
もし良案が見つかったのなら、ラグナの負担を大きく軽くすることができる。
その為、ラグナはそれが見つかる事を祈るしかなかった。
「・・・アレ?ラグナが食べないならニューが貰っちゃうよ?」
「いやいや、ちゃんと食うから・・・。・・・って、もしかしてまだ食い足りないか?」
「アハハ・・・美味しいから何か軽い物を追加で欲しくなっちゃって・・・」
どうやらニューは相当この店の料理が気にいったらしい。
これがタオであった場合、ラグナは真っ先に反対していた。彼女の適量は普通の人からすれば規格外過ぎるからだ。
しかし、ニューはというと人並みの量を食べ、それで少し足りなかったくらいである為、ここで追加で何か食べさせてやっても問題無かった。
「ならいいか・・・軽い物っつうんだし、この辺がいいぞ」
「分かった。じゃあ、どれにしようかなぁ・・・?」
ニューの珍しい姿を見ながら、ラグナは止まっていた箸を進め出す。
こうして、彼らはゆっくりと昼を取ってからプラネテューヌの教会に向かうのだった。
* * *
「んで、今日来たのはこいつだ」
「
プラネテューヌの教会に人が集まってすぐ、ラグナはラムダのことを指差して紹介する。
ラムダはというと、簡単に自己紹介をしてから頭を下げる。
「ま、まさか全員揃ってしまうなんてね・・・」
「・・・此れもまた、定めとでも謂うのか・・・?」
ナインとハクメンは軽く頭を抱えていた。
ノエルとニューが来たのでまさかとは思っていたが、そのまさかが起こってしまった。
勿論、サヤのクローンであることも、ノエルの口から伝えられ、ゲイムギョウ界組の全員が啞然としてしまうのだった。
異世界組の方は元々知っていたことが幸いして特に驚いたりしていない。ナオトとラケルはこの事実を知らなかったのだが、キイロのことで大方察しをつけていた為、何も問題は無かった。
「えっと・・・一番気になった事を聞いてもいいかしら?」
「・・・・・・?」
ノワールは余りにも気になってしょうがなかったので、ラムダに訊いてみることにした。
否・・・ラムダだけというより、この場にいる全員に訊いてみるというのが正しいだろう。
「ラムダの肩に乗ってるそいつ・・・新種の生き物?」
「◎#=%×~・・・?」
「わかんない・・・ターターはいつの間にかいた・・・」
ターターの存在は余りにも目を引いてしまう。話を聞きながらの最中もノワールはずっと気になっていた。
名前はラムダが付けたのかと思ったが、ラグナから正式名称がやたら長いけど、元々ターターが持っている名で、しかもオスであることが伝えられた。
「ど、どう扱えばいいのかしら?処分は無いとして・・・普通に育てればいいの?」
「お、お姉ちゃん・・・アタシに訊かれても困るよ・・・」
ノワールが真剣に悩みながらユニに意見を求めるが、ユニも答えを出せていなかった為、答えようが無かった。
「・・・飼うくらいの気持ちでいいんじゃねえの?危害を加えたところなんて一度も見てねえしな」
ラグナの発言に全員がなるほどと言いそうな顔になる。別に飼うこと自体は問題ないのだが、問題は別のところにあった。
「環境適応能力が大事ね・・・プラネテューヌの近くにいたのだから、ルウィーはターターの体に悪いかもしれないわ・・・」
「リーンボックスに来るにしても、場所次第では潮風と戦うことになってしまいますわね・・・」
ブランとベールは自分の国のことを上げ、ターターのことを配慮して他の国を進める。
ラムダとしても、また別れるのは嫌である為、ルウィーとリーンボックスは一度考えから除外する。
そうなると、残りはプラネテューヌかラステイションの二つになるのだが、ここでセリカが一つの案を出した。
「ラステイションなら、ノエルちゃんたちも三人でいられるし、いいんじゃないかな?」
セリカの出した案は確かに名案であり、全員が賛成し、ラムダもそれに頷いた。
ノワールはこの時、資金のやりくりでラグナに頼るべきか考えたが女神の矜持が勝り、どうにかしてやりくりしようと言う考えになった。腹を括ったとも言えるだろう。
「じゃあそういうわけだから、これからよろしくね。ラムダ、ターター」
「うん。よろしく・・・」
「◎#=%×~・・・♪」
ノワールに言われたので、ラムダはもう一度頭を下げ、ターターは嬉しそうに体を左右に揺らす。
どうやら自分も呼ばれた事が嬉しかったようだ。
ラムダがラステイションに住むことが決まったので、これで今回全員で話すことは終わった。
「・・・皆、驚かない?」
「まぁ・・・みんな慣れちゃったからねぇ・・・。ラグナの時はみんなビックリしてたけど・・・」
ラムダが皆の反応を見て呟いた言葉を、ネプテューヌが拾いながら過去を振り返ってみる。
慣れというものは恐ろしいものなのかもしれない。実際のところ、ナオトやノエルと出会った時も「この人と似ているのは何で?」という疑問の方が勝っていた。
まだ来たばかりであるノエルやニューは仕方ないのかも知れないが、異世界組の中では日が長いセリカやハクメンになるともう驚かないようになってしまっている。
ラグナもゲイムギョウ界組も、それだけラグナが来てから時間が経っていると言う事を改めて実感するのだった。
「そういえば、さっきの『ラムダ姉』と言うのは・・・?」
「ああ・・・あれは私たちの方が先にいるからだよ・・・。って、アレ?そうなるとラムダが一番上じゃない?」
ラムダの疑問に答えながら、ノエルはそのことに気がつく。
「ええ~っ!?どうしよう!?私もそうやって呼ぶべきなのかな!?」
「(・・・怪盗三姉妹・・・カード食らって居眠りする刑事・・・毎回略奪されるホットパンツ・・・。・・・何だこりゃ?)」
自分はどう呼ぶべきかと慌てるノエルに対し、ラグナは突然浮かんできたイメージに混乱するのだった。
これを口にしたら間違いなく「お前は何を言っている」と言われる案件である為、ラグナは口に出なくて良かったとただ安堵するのだった。
そして、それからしばらくして、ラムダとノエルは互いにそのままの呼び方で行くことにした。どうやらラムダが「自分よりノエルの方がしっかりしてるから、姉呼びされるのに抵抗感がある」と言って断ったそうだ。
そんなことでラムダ(ターターも込み)で参戦となります。
最後のラグナが思い起こしてしまったものはCPにあるギャグシナリオのものです。
個人的には結構好きな話でしたね。
さて、BBTAGのオープンβテストが近づいて来ましたね。
私はパッケージ版での購入を選んだため12日~14日までの三日間になりますが、全力で楽しみたいと思っています。
次回もう一回オリ回を挟んだらアニメ6話分に突入になります。