超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER-   作:ブリガンディ

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少し遅くなりました。
今回でアニメ9話分が終わります。


50話 その名はエディン

ネプテューヌが野犬の群れへ突撃していった事によって起きた戦いの場にラグナとプルルートが向かっている最中、ネプテューヌは物凄い勢いで野犬たちを倒していた。

彼女の焦りを誤魔化すように発している気迫に圧され、ネプギアは自分に向かって来る野犬をどうにか追い払うことに徹していた。

そして、ラグナとプルルートがその場にやって来た頃には、野犬は殆ど倒されてしまっていた。

 

「おいおい・・・これはやりすぎじゃねぇか?」

 

「この調子だとぉ・・・これから逃げ出す野犬にも手を出しちゃいそうねぇ・・・」

 

目の前の状況を見た二人は、ネプテューヌの様子を見て危惧した。

自分のせいだと自責の念が強すぎるあまり、彼女は周りを見る余裕を無くしてしまっていたのだ。

更に悪いことに、ラグナとプルルートの危惧が当たってしまうことになった。

 

「逃げ始めた・・・これならもう戦わないで・・・」

 

「いえ、被害の芽を摘み取る為にも逃がさないわっ!」

 

野犬が怯えて逃げ始める様子を見ても、ネプテューヌは追撃を選択する。

その判断にはネプギアすら絶句してしまった。普段ならそのまま見逃すはずのネプテューヌが容赦ない選択をしたからだ。

 

「待て待て。それ以上やる必要はねえだろ・・・」

 

「・・・!」

 

ネプテューヌが飛び込んで行くよりも早く、ラグナは彼女の左肩に手を置いて制止の言葉を掛ける。

ラグナに声をかけられたので、これで制止する・・・と言いたかったが、それでもネプテューヌは止まりそうになかった。

 

「離して!あのまま逃げた先に・・・」

 

「ピーシェちゃんがいたらぁ・・・って言いたいんでしょぉ?」

 

「っ!?」

 

ネプテューヌがラグナを振り払ってそのまま行こうとしたところに、彼女の言葉を遮りながら問いかけたプルルートが逃げ惑う野犬とネプテューヌの間に入る。

痛いところを突かれた上に、目の前には自分と同等の力を持った女神が立ち塞がるのだから、流石にネプテューヌも立ち止まらざるを得ない。

 

「流石にあんな状態じゃ、人を襲ったりなんてできる状態じゃないわよぉ?」

 

「た、確かにそうだけど・・・でも、あいつらがいつもの状態に戻ったら・・・!」

 

「いや、戻ってもそこは完全に人のいない場所だ・・・。それに、これ以上は撃退や退治じゃねえ・・・お前だって虐殺をしに来た訳じゃないだろ?」

 

ラグナに言われて野犬の様子を思い出したネプテューヌはそこで思いとどまる。

確かにあの野犬たちは完全に怯えていた。それをはっきりと思い出した事によって、ネプテューヌは冷や水を掛けられたように動きが止まった。

 

「ネプちゃん・・・。いくら自分が許せなくても、八つ当たりはダメよ?」

 

「そうね・・・。ごめんなさいぷるるん。私が間違ってたわ・・・」

 

プルルートに言われたネプテューヌが謝ったので、これなら止められたなと二人は判断することができた。

しかし、止めたにしろ訊いておかなければならないことはあるので、ラグナは問いかける事にした。

 

「ネプテューヌ・・・一応聞いておくが、ピーシェのこと、諦めた訳じゃねえんだろ?」

 

「・・・え?それはそうだけど・・・どうしてそんなことを?」

 

「ブランの時もそうなんだけどよ・・・。俺とは違って長い時間も経ってねぇし、お前には力もあって頼れる人だっているんだ・・・。だから、少しは手伝ってもらうように言っても良かったんじゃねえの?」

 

「・・・!」

 

実はこの三日間、ネプテューヌは国外の人に一度も協力を頼んでいなかった。自責の念が強すぎる余りそれすら忘れてしまっていたのである。

その為、ラグナたちはネプテューヌが一人先に飛び出していった後、代わりに協力を頼んでいたのだ。

その結果、女神三人は難しくとも、異世界組と候補生たちは時間を作って捜索に協力していた。これらも、『友好条約を結んだからもう敵では無く仲間』と言う精神を持っていたネプテューヌの功績によるものだった。

 

「『友好条約を結んだから敵じゃ無くて仲間』だって・・・お前から言い出したことだろ?何も反逆とかしてる訳じゃねえんだし、一人で抱え込む必要はねえんだ・・・」

 

「っ・・・。そっか・・・私から言い出したことだったわね・・・」

 

もしネプテューヌがラグナと同じ立場であるのなら、一人でピーシェの行方を探し続けると言うのは間違っていないし、それ以上を望めないから仕方ないことだ。

しかし、反逆者として追われながらサヤを助ける為の戦いをしたラグナとは違い、ネプテューヌは国民たちの象徴と呼べる女神であり、友好条約を結んだ以上他の国の女神と横の繋がりだって存在する。

それ故に、今回の一人で自棄になりながらピーシェを探すというネプテューヌの行為は非常に悪手だったのだ。

それに気づかされたネプテューヌは、手に持っていた刀を地面に落とし、膝を付いて崩れ落ちた。

更には変身を維持する余裕が無くなったのか、元の姿に戻った。

 

「でも、ずっと迷ってたんだ・・・私、他のみんなと違ってそんなに仕事やってないから・・・」

 

ネプテューヌは正直に吐露した。

確かに仲間だと言い出したのは自分ではあるが、他の女神たちがしっかり仕事をしている中、自分はピーシェの面倒を見ていたことが殆どであり、まともに仕事をしているとは言い難かった。

それ故にネプテューヌは他の女神たちには伝えるだけで、協力を頼みはしなかった。

 

「(性格とかは似ても付かねぇけど、そういう根本的な所は皆同じなんだな。全くよ・・・)」

 

ラグナはそんな彼女たちの似た部分を見つけて心の中で苦笑する。

困った身内は放っておけないが、いざ自分が大変な事に直面すると抱え込む。そんな彼女たちだからこそ、いざという時の団結力の付き方も早かったのだろう。

特にネプテューヌの場合、自分が前までおちゃらけてばかりだったせいもあり、なおの事抱え込んでしまっていたのだ。

 

「それでも、お前は他のやつが抱え込んでた時、真っ先に助けようとしてただろ?」

 

「そうだけど・・・でも、普段こんなにおちゃらけててる私だよ?みんなが女神の仕事やってるのに、一人だけ遊んでた私なんだよ・・・?そんな私が頼んだって・・・」

 

「いや、こう言った時は真っ先に手を差し伸べたお前だ・・・手伝わないはずがねぇ。それにな・・・」

 

ラグナは言い掛けながら連絡ように貰っていた端末の履歴を見せる。

その画面は、ここ三日間における各国の女神たちや、異世界組との連絡履歴がずらりと並んでいた。

 

「現にこうやって、皆手伝ってくれてるんだよ・・・お前が今まで助けてくれた礼だってのもあるけど、それ以上に『仲間』だから皆助けるんだ・・・だから、一人で抱え込むな。ブランなんて、前の時の自分と同じだからってすげぇ心配してたぞ?」

 

「・・・みんなぁ・・・」

 

ラグナが頼み込んだ時、今回最も協力的な姿勢を見せてくれたのがルウィーのメンバーだった。

ブランは特に、妹を連れていかれてしまった自分と重なったこともあり、ロムとラムが協力したいと言った時は即座に許しを出し、自分もネプテューヌの事を気にしながら捜索を手伝っていた。

また、その他のメンバーもネプテューヌの思想を取り込んだことも重なり、合間を縫って協力していた。

それを知ったネプテューヌは嗚咽した声を出しながら涙する。

 

「今まで何もしてなかったのに・・・っ!ずっとだらけてばっかりだったのに・・・っ!なのに・・・なのに・・・!」

 

「それだけお前に礼をしたいやつがいたんだよ・・・。俺だってその一人だ」

 

―あの時お前が気づいてくれなかったら、俺はこうしていることはできなかったからな。ラグナは面と向かってそういう。

ラグナは今でも覚えていた。自分が立っていることすらままならなかった時、他の誰よりも早く国民の不安に気づいて自分に手を差し伸べてくれていたことを・・・。

そして、そんな彼女が一人で潰れそうになっているからこそ、再び自分のような後悔を抱える人が現れそうだからこそ、ラグナは力を貸そうとするのだ。

ネプテューヌは全員の協力的な姿勢を知り、涙の勢いが増した。

 

「ごめんね・・・?普段は笑って協力しようとするのに、自分が協力してもらえたら笑えないや・・・」

 

「泣くなら今のうちに泣いておけ。その代わり、ピーシェを迎える時はちゃんと笑って迎えてやれよ?」

 

「・・・うん・・・そうする・・・!」

 

―ピーシェを迎える為に。これをせめてものの甘えとして、ネプテューヌは思いっきり声を上げながら泣きじゃくる。

そして、ネプテューヌが泣き止んだ後、事情を説明してプラネテューヌへと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「さて・・・後もう少しで終わるけど、その研究ってどんな感じなのかしら?」

 

「纏めた後にどれ程のデータが揃うかにもよるが、今までとは比べ物にならない成果が挙げられるだろう」

 

ピーシェの調整を行いながら、アノネデスとレリウスが簡潔に話し合う。

マジェコンヌが追加報酬で働くと言っていたのはアノネデスのことであり、彼はエディンの女神を紹介するまでこちら側の人間となった。

一応、自分たちの居場所の口外などをしなければ、後は好きにしていいと言う好待遇を敷いている為、アノネデスもノリノリで参加したのだ。

 

「しかし、まだ残されている課題は多い・・・今回の研究で、其処の洗い出しを済ませたい所だな」

 

「なるほどねぇ・・・」

 

―巻き添えになるのだけは勘弁ね。アノネデスは心の中でそう思った。

実際レリウスが完成を目指しているものの力は相当なものであり、最悪は単独で女神に打ち勝つ可能性すら持ちうるものである。

それ故に超えるべき課題は多く残されており、未だに完成へこぎつけることはできないでいた。

 

「研究の成果が気になるのか?」

 

「興味が無いって言えば嘘になるわね・・・。でもまぁ、実際に動くところとかを見れるならそれで十分かしらね?」

 

「そうか・・・ならば、今回の計画が失敗した時に期待すると良い。動くとしたらその時だ」

 

「あらやだ。後ろ向きな考えねぇ・・・」

 

レリウスの発言を聞いて、アノネデスは少しだけ驚いてしまう。

これから大きな戦いを仕掛けると言うのに、負けを前提で話すのは些か戦意が低いのでは無いだろうか?そう思ったのである。

 

「まあ、そう言うことだ。時間が惜しい・・・完成を急ぐとしよう」

 

「そうね・・・間に合わなかったら元も子もないからね・・・」

 

一度会話を切り上げて、二人は最後の仕上げを始める。

ここ数週間レリウスが女神に関する資料を集めて読み解いた結果が、功を奏しようとしていた。

 

「・・・ごめんなさい」

 

そして、レリウスたちが仕上げを行っている中、意識を失わされて記憶操作を受けているピーシェは、謝らなければならないと感じて無意識にそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

プラネテューヌに戻ってピーシェのことで話し合いをした翌日。ラグナたちは前に調査へ赴いた時と同じメンバーにナインを加えた九人でR-18アイランドに乗り込んでいた。

女神たちは今回、最初から全員が変身した状態でいる。ピーシェを連れ去った相手がここにいるのが分かっているからだ。

 

「なるほど・・・なら、そいつはただそうだとしか伝えられてなさそうね・・・」

 

「其れで間違いなかろう。騙しているのなら、余りにも浅はかな行動が目立ちすぎるからな・・・」

 

すぐに大砲と思わしき位置まで案内したり、その写真を見ても大した動揺を見せなかったり等・・・リンダの行動に疑いを持つ必要は無かったのだ。

その為、再度精密に確認した時に大砲だと解った時は流石に焦ったものだった。恐らくは、自分たちやリンダがここに居ない間にカモフラージュを解いたのだろう。

 

「さて・・・ここだな」

 

暫く歩くと、一行は再び大砲の前にたどり着いた。

以前と違ってシャボン玉が一切出ていないのは、その機能を捨てたからである。

恐らく何らかの地下施設があるだろう。ならばそこに乗り込むべきだと考えた全員がいざ乗り込もうとした時、その施設の中から人が現れた。

 

「あら?初めましてですね。今回は新国家エディンに、どんなご用件でいらしたんですか?」

 

「っ!?あなた、キセイジョウ・レイ!?どうしてこんなところに・・・?」

 

現れた女性を見てノワールが驚きを示す。

メガネを掛けている薄い水色の髪をした女性・・・キセイジョウ・レイは以前、女神反対運動を行って以来、今まで消息を掴めないでいたのだ。

その為、一時期出していた指名手配書も撤廃されており、彼女はもう何処かへ消えたものだと思われていたが、何とこのR-18アイランドにいたのである。

 

「・・・?アンタ、以前に何かしていたのか?」

 

「ラグナがそうだってことは・・・私たちは会ったこと無い人よね?」

 

「私も初対面だ」

 

ノワールがなぜ驚いたかを知らなかったラグナが首を傾げながら問いかけたことでナインが察しを付け、ハクメンもそれに同意する。

実は異世界組のメンバーで、レイと会った者は誰一人としていなかった。ゲイムギョウ界組から話題が上がらなかったこともあり、彼らはその名前を聞くことが無かったのである。

 

「あなた方とは初対面でしたね。エディンで執政官をさせて頂いている、キセイジョウ・レイと申します」

 

「あ、ああ・・・」

 

「以前は・・・こんなに芯の強い人じゃなかったはずだけど・・・」

 

彼女から挨拶をされたラグナは、思ったよりも気がしっかりしている人だと思った。また、以前の様子を知っているネプギアからはその様子にかなり戸惑う事になった。

ちなみに、こうなるまでにテルミらの関与があったと知った時、彼らはどう思うだろう?レイは少し気になっていたが、それで彼らの調子が狂ったり、今回のサプライズに失敗するのは良くないので抑えることにする。

 

「ところで、国を作ったのはいいけれど・・・女神はどうしたの?肝心な女神がいなければ、国は成立しないわ」

 

ネプテューヌは最も大切な事をレイに聞いた。

ゲイムギョウの場合、いくら国民や土地があったとしても、女神がいないのであれば国として成立させることができないのだ。

ゲイムギョウ界で過ごすことを前提に行動していたラグナたちは、資料でそのことを知っていたのでそこまで混乱することは無かった。

また、女神たちはそうだそうだと言わんばかりに頷き、レイを厳しい目で見据えるが、彼女は然程動じていなかった。

 

「ああ・・・。そのことですね。実は・・・」

 

「うわぁ~っ!?」

 

『・・・・・・?』

 

レイが説明している最中に、少女が驚いている声と風を切る音が聞こえたので、全員が困惑する。

そして、レイの背後から、黄色い髪をして白いレオタードを身につけている少女がこちらに突っ込んでくるような勢いでこっちに来ていた。

 

「・・・ちょっと!?」

 

そして、このままでは自分と激突することを悟ったが、同時に今から避けようにも間に合わない事に気がついてしまったノワールはその少女に制止を求めようとするも、少女ももう止まるには遅かった。

その為、勢い良く二人は激突して、激しい土煙を上げる事となった。

また、余りにも激突の勢いが凄かったので、ハクメン以外は思わず顔を腕で覆うことになった。

 

「いたたた・・・失敗しちゃったぁ・・・」

 

「な、なあ・・・もしかしてだが、こいつが・・・?」

 

「あはは。予定とは違う形になってしまいましたね・・・。あなたの予想通りです。彼女が、エディンの女神、イエローハート様です」

 

「イエローハートだよ!よろしくっ!」

 

ラグナはレオタードを身につけていることから大方察し、それに気づいたレイが肯定した。

そして、イエローハートは挨拶しながら笑顔でピースサインを作るが、異世界組の三人は共通の違和感を感じた。

 

「って・・・。挨拶するのはいいけど、取りあえず降りなさい」

 

「・・・あれ?お尻から人が生えた!?」

 

「あなたが私に乗っかったのよ!」

 

ノワールが促した事によってようやく彼女の存在に気が付いたイエローハートが素の反応を見せたので、ノワールは少しやりづらい空気を感じた。

しかしながら、素直に降りてくれたのでそこはそこでこれ以上気にしない事にした。あまり気にしていると精神衛生上よろしくないからだ。

 

「なあ、こいつなんだけどさ・・・」

 

「ええ。性格の変化とかそう言う問題じゃない・・・。根本的な意味で『幼い(・・)』わね・・・」

 

「何者かに強制させらた・・・そうとしか思えん程だな」

 

ナインの言う幼いとは、ネプテューヌやブランのように『体格的な意味』での幼さでは無く、『精神が未熟』と言う意味での幼いだった。

当のイエローハートは何を言っているかが分からないと言いたげに首を傾げるものの、それの理由がわからない以上は答えようが無かった。

 

「・・・女神がいるなら、国としては成立するわね」

 

「元犯罪者とは言え、これじゃあ無理矢理退去させるって手段は通じないわね・・・」

 

ネプテューヌは女神がいるならこれ以上は問い詰められないと判断し、ノワールは少しだけ苦い顔になる。

実際のところ、レイとレリウスがピーシェを連れて行ったのを知っているものの、ここはエディン国内でレイはエディンの一員。

そうなると国内の法が優先されるので、強引に連れて行くことは不可能となってしまった。

 

「・・・まあ、まだ焦るじかんじゃねぇし、中に入ってからでもいいんじゃねぇのか?」

 

「そうですわね・・・余りにも危険だと解った時は止めさせて頂くことにしましょう」

 

流石に問答無用で行ける空気では無くなっていたので、ブランとベールも一度落ち着いた選択肢を選んだ。

それでも、攻撃を仕掛けられたりしてしまえば、迎撃の為に刃を交える準備だけはいつでもしておいた。

 

「ああ・・・。こっちに来てたか・・・やれやれ、すげえ暴走っぷりじゃねえか」

 

「アハハ・・・失敗しちゃったよぉ・・・。でも、体は全然平気!」

 

「そりゃそうだ。元々頑丈だったからな・・・」

 

少しの硬直が終わったら後、レイが来た方と同じ方角からテルミがやって来た。

その呆れぶりからイエローハートを探していたらしく、その元気さを見て少しニヤリとしていた。

レイは何も驚かないが、ネプテューヌたちはそう言うわけにもいかない。

 

「・・・テルミ!?どうしてアンタがここにいるの!?」

 

「んぁ?実はあの後こいつも俺らの同盟に入ってな・・・国を作るって言ったの、こいつの提案なんだぜ?」

 

テルミはナインの問いに答えながらレイを指さす。

当のレイは柔らかく笑っているだけで、嫌々入っていると言うような空気は感じさせなかった。

 

「ねぇラグナ、テルミってこないだ言ってた人よね?」

 

「ああ・・・。ところで、女神倒そうとしてんのに女神と国を準備するって・・・何か矛盾してねえか?」

 

プルルートの問いに答えながら、ラグナはテルミにそう問いかけた。

彼らの目的は自分と女神の排除である為、自分たちで女神を増やしてしまったら本末転倒ではないか?そう思ったのだ。

 

「いやいや・・・レリウスの目的をよく考えてみろよ?あいつがこのゲイムギョウ界で欲しいデータっつったら何かをさ・・・」

 

「・・・!そう謂う事か・・・。其れならば貴様たちの選択も道理だな・・・」

 

「女神のデータ・・・確かにレリウスなら、喉から手が出る程に欲しがるでしょうね・・・」

 

テルミに投げかけられたことで気づいた。

レリウスが己の研究に女神のデータを欲するなど、言うまでもない上に、間近で女神に観察できるならば、その方が圧倒的に良いだろう。

しかし、ハクメンたちはまさかレリウスらが無理矢理女神に仕立て上げ、確実なデータ採取を行っているとまでは予想を立てられなかった。

 

「あらあら?何か騒がしいと思ったら、女神ちゃんたちが来ていたのね?」

 

「・・・!?な、何であなたがここにいるの!?プラネテューヌで投獄されていたはずでしょ!?」

 

更に背後からアノネデスが現れたので、ノワールが驚きながら問いただす。

その事にはノワールのみならず、ネプテューヌとラグナも驚いていた。彼らは数度顔を合わせに行っていたので、その驚きはより大きいものになる。

 

「ああ、あの牢屋ね・・・。セキュリティコード解ったから、ハッキングして解いちゃったわよ?プラネテューヌはそこが甘いから、抜け出すのも簡単だったし」

 

「ラステイションの金融機関のセキュリティを突破できるのだから、プラネテューヌのセキュリティでは限界があったわね・・・」

 

アノネデスに説明されて一瞬で理解できてしまったネプテューヌは、自国のセキュリティの悪さに何処か寂しいものを感じた。

しかし、彼女たちが真に驚く瞬間は、アノネデスを見たイエローハートが変身を解いた姿にあった。

 

『・・・・・・!?』

 

「ぱぱーっ!」

 

何と、イエローハートの正体はピーシェであった。

その事態を知った一行、特にネプテューヌは大きく動揺することになった。

更に彼女の動揺を加速させる要因として、アノネデスを父と呼びながら彼の元へ駆け寄り、思いっきり抱きついたのだ。

 

「このお方が、我らエディンの女神であるピーシェ様よ」

 

「そんな・・・ぴーこが女神・・・?」

 

「いや、そんなことは無かったはずだ。だがそれ以上に問題なのは・・・」

 

ネプテューヌは一瞬その可能性を疑ってしまったが、それはないとブランは否定する。

しかし、それ以上に重大な事態にも直面することとなった。

 

「ネプテューヌを見ても、殆ど何も反応を見せませんでしたわね・・・」

 

ベールの言う通り、ピーシェがネプテューヌを見ても無反応なのであった。あれほどネプテューヌと仲の良かったピーシェがである。

ネプテューヌの身の回りを知る人たちからすれば、これは明らかに異常なことであり、明らかに何かされた跡が感じ取れるものだった。

 

「魔法の痕跡は無い・・・別の手段で何かされたわね・・・」

 

ナインから魔法での影響は否定されたので、そちらは除外して考えることとなり、おのずと考えられるものは絞られていった。

 

「・・・てぇことは、まさかだが・・・」

 

「御前の予想通りだよ・・・。その子供を御前たちを打倒する女神に仕立て上げる以上、親しい頃の記憶は障害になるので撤廃させて貰った」

 

ラグナが察しを付けた瞬間、レリウスがやってきながら答える。

その余りにも躊躇いなく非人道的行為を行ったと答えられる精神に、女神たちは一瞬背筋が凍りつく。そこまでレリウスと言う男は狂っていたのだ。

彼と同じ世界からきている人たちはもう周知の事実だからそこまで動じることはないが、それでも何も感じないという訳でも無かった。

 

「ったく・・・よくもまあそんな躊躇いなく言えるもんだなテメェは・・・!」

 

流石にラグナは嫌気を感じた。今までの素体のことなども考えれば、ラグナがそう感じるのも無理は無いだろう。

 

「あなたたち・・・もうこの段階で人道を踏み外した事を明かしたわね」

 

「ええ。これならこちらが強制捜索する理由にもなるわ」

 

ネプテューヌとノワールは付け入る隙ができたので、少々安心するが、それを遮る声が出てきた。

 

「だが、問答無用で即座に強制捜索を行うなら、我々も自衛させてもらうぞ?」

 

「マジェコンヌ・・・?あなた、女神を排除したいってあれ程行っていたのに、どうして・・・!?」

 

「同盟者への協力・・・この一言で事足りるだろう?」

 

ネプテューヌの問いへ示したマジェコンヌの回答を聞けば、納得せざるを得ないものだった。

最も、エディンのメンバーはピーシェが敗北すればその時はまた然りと考えているので、開戦をしても別段と問題無かった。

 

「さて・・・お互いの主張的にも戦いの場を用意した方が良さそうな気もするが・・・どうする?」

 

「そうですね・・・なら、ここは互いの主張の内どちらが正しいか、戦いによって決めましょう・・・」

 

マジェコンヌに提案されたレイはあっさりとそれに頷く。

彼女たちからすれば、女神やラグナを打倒するチャンスが生まれ、更には女神同士の戦闘データを得ることも可能なので、戦いになっても願ったりなのである。

 

「この場を持ちまして、我々エディンは・・・四ヶ国に宣戦布告をさせていただきますっ!」

 

『な・・・!?』

 

しかし、ネプテューヌたちからすれば余りにも時期早々すぎるので、その宣言には絶句することになった。

友好条約を結んで以来、女神同士で争うことは一度も無かったのだが、その平穏と言う名の拮抗が再び崩されようとしていた。

 

「ちょ、ちょっと・・・!そっちはまだ新しくできたばかりの国なのよ?いくら何でも自殺行為としか言いようがないわ!」

 

「だが、私たちの目的としては、それくらいの苦難が無ければ釣り合わんのでな・・・」

 

流石にその無謀すぎる選択にノワールが危惧するように言ったものの、マジェコンヌの言葉の通りにテルミやレリウスは笑っていて、レイも柔らかな笑みを崩していなかった。

仕掛けた本人たちが引き返さないのなら仕方ないと判断を下すのだが、その前に一つ大きな問題があった。

 

「(これって・・・ピーシェちゃんと私たちで戦争をする・・・ってことだよね?)」

 

「(私がぴーこと戦う・・・?そんなこと・・・)」

 

―できるはずがない。ネプテューヌはこの後起こる事を受け入れ切れていなかった。




無事にアニメ9話分を終わらせることができました。
宣戦布告の流れが少し強引な気がするのは恐らく私の技量不足ですね・・・(泣)。
もう少しでこの章も終わりが近づいて来ているので、頑張りたいと思います。

次回からアニメ10話分に入ります。
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