超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER-   作:ブリガンディ

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今回からアニメ10話分が始まります


51話 戦いの幕開け

エディンの宣戦布告を受けた翌日。開戦まで一週間の猶予を与えられたが故に、ラグナはナインの元を訪れていた。

その理由は『イデア機関』の強引な再修復にあり、ズーネ地区での戦いの時と同じく、魔法を使って直して貰っていたのだ。

 

「そういや、お前らの方は配置決まったのか?」

 

「セリカは治療の応援として、一時的にプラネテューヌへ向かう事は決まってる・・・。けど、他はまだ何とも言えないわね・・・リーンボックスは人手が足りないから、最悪全員が国の守りに当たるかも知れないわ」

 

ナインの言うことは最もで、リーンボックスは女神候補生が存在しないことと、滞在している異世界組で戦闘能力を持つのがナイン一人だけと、戦力が欠け気味であった。

ルウィーの異世界組はハクメン一人とは言え、候補生は二人。ラステイションにはノエルとラムダ・・・。そして、最も戦力の充実しているプラネテューヌは候補生含んで女神が三人にラグナとナオトの五人もいるので、二人しかいないリーンボックスは大分戦力に差が出てしまっているのだ。

 

「ところで、ネプテューヌの方は大丈夫だった?宣戦布告を受けてから浮かない顔をしていたけど・・・」

 

「まだ大丈夫じゃ無さそうだ。もしかしたら、考える前提条件を間違えてんのかもな・・・」

 

ナインの問いに対してラグナは予想を立てた。

ネプテューヌは記憶操作を受けたピーシェと戦う事を前提で考えていれば、当然ピーシェと仲の良かった彼女は行き詰るはずだ。

しかし、ラグナがニューにしてやったように、助ける事を前提として戦えばどうだろうか?そうなればネプテューヌも少しは前向きに考えられるだろうと思ったのである。

 

「なるほど・・・確かに、アンタの考え方で行けば戦い以外の道は見出せるわね・・・」

 

ナインもラグナの考えに一理あると同意を示す。

力とは必ずしも『誰かを殺す』為にあるものではない。使い方次第では『大切な人を護る』ものにも、『救いたい人を助け出す』ものにもなり得るのだ。

これは大切なものを護る為に力を使うと決めたラグナや、多くの人を『黒き獣』の脅威から救うと言う方針の元、事象兵器(アークエネミー)と言う強大な力を生み出したナインはそれの体現者とも言えるだろう。

 

「なら、そっちのことは任せて良さそうね?」

 

「ああ・・・あいつのことはこっちで何とかするさ」

 

現状、ネプテューヌを立ち直らせる為に最善策となるのはラグナであり、その後押しを含めるなら彼とプルルートの二人であるため、大人しく任せるのが一番だった。

もしかすればニューにも説得を頼むことになるかも知れないが、その時もラグナと一緒にいるのが望ましい。

そこまで状況を纏めたナインは、自分は無理にどうこうせずラグナに任せると言う判断を下すのだった。

 

「ところで、今回『イデア機関(コレ)』の修復を頼んだのは、ピーシェを助ける為かしら?」

 

「いや、アイツを助けるのはネプテューヌの役目だからそれは違うな」

 

「なら、どうして?」

 

ラグナの事だからこうだろうと思っていたが、それは違った。

しかし、それでは何の為に修復を頼んだかが解らないのでナインは問いかけた。

 

「テルミがまたあの時みたいな事をしてきたら対策が必須だってのと、今回はピーシェを助ける戦いだから、今後テルミたちの事を考えるとどうしても必要だと思ったんだ・・・」

 

「なるほど。それは確かに問題ね・・・」

 

ピーシェを助け出したとしても、テルミらとの戦いがある以上備えはしっかりしておかないといけない。それがラグナの判断だった。

もちろんナインもそれに同意して、『イデア機関』の修復を急ぐのだった。

そして、程なくしてズーネ地区での出来事があった時と同じように『ガチャン』と修復が完了した事を告げる音が左手から聞こえた。

 

「・・・待たせたわね。これで修復は完了よ」

 

「助かる。ちなみに、今回は何回まで使えるんだ?」

 

「今回は使えて二回が限界・・・流石に何度も修復できるって訳じゃないみたいね」

 

ナインはデータを確認しながら、以前より修復の結果が悪いことを伝える。

しかし、ラグナからすれば『イデア機関』を使えることの方が重要なため、そこまで気にしていない。

 

「二回使えるなら十分だ。わざわざ悪いな」

 

もしかしたら、今後は『イデア機関』の修復は望めないかも知れないから、ラグナは慎重に扱う必要が出てきたなと考える。

実際のところ、ナインもこれ以上自分の魔法で無理に『イデア機関』を修復することは叶わないと考えていた。

次また『イデア機関』が破損して修復することになろうものなら、一回使えるかどうかすら怪しい結果になってしまうだろう。

 

「さて・・・俺はそろそろ行くわ。さっきも言ったがあいつのことは任せろ」

 

「ええ。お願いするわね」

 

短いやり取りを済ませたラグナはプラネテューヌに戻るべく、ラステイション行きの船に乗るためにこの場を後にした。

 

「(さて・・・後はできるだけの事をしないとね)」

 

各国の市民に起きている突然のエディン信仰の原因解析など、自分に残されている作業はまだまだ沢山ある。

少しでもネプテューヌがピーシェを助ける為の手伝いができればと、ナインは再び己を多忙の中に放り込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

『実は、こちらのゲイムギョウ界では一部の地域が女神の不在によって荒廃に陥っている場所がありまして・・・』

 

時間は進んで開戦前日の夜。プラネテューヌのシェアクリスタルが置かれてある一室で、イストワールとプルルート、ネプギアとラグナの四人は向こう側のイストワールから重要な話を聞いていた。

ネプテューヌは余りにも調子が悪い状態だったので、ネプギアの配慮によって一度部屋で休ませる事になった。エディンとの戦いを明日に控えているからこそ思い悩んでいるネプテューヌに、今この情報を伝えるのは非常に悪手だと判断したからだ。

 

『その一部の地域の中心にある国を治めていたのが、ピーシェさんだったみたいなんです・・・(・.・;)』

 

「・・・・・・は?ちょっと待て・・・だったら、なんだって急にあいつが・・・」

 

「もしかして・・・今まで女神の姿になっていないのは、ピーシェちゃんの収めている国が無かったからですか?」

 

ラグナが困惑する中、ネプギアの問いに向こう側のイストワールが頷いて肯定したので、それによってラグナの中にあった疑問は氷解する。

シェアが一つもない状態であれば、変身などできる筈もない。それは今まで読み漁った資料の内容を思い返せば当たり前のことだった。

そうなると、レリウスたちは女神の事を資料などを通して解析し、ピーシェを傀儡として仕立て上げる方法を築き上げたのだと、容易に想像できた。

 

「ねぇいーすん~。大女神様は何か言ってた~?」

 

『プラネテューヌの維持はまだできていますが、そろそろ危ないから一度戻ってきて欲しいとのお話がありました。ただ、そちらの問題を片付けてから戻って来るようにと言っていましたよ?もし今すぐなんて言ったところでプルルートさんが止まらないでしょうからって・・・(*_*;』

 

どうやらプルルートのいたゲイムギョウ界の方でも、プラネテューヌがそろそろ危なくなってきているらしい。

いくら信仰心にブレが少ないプラネテューヌの女神でも、長期間不在にしていれば不信感は募ると言うものだった。

しかし、それでも今すぐ戻って来いと言わなかったのはプルルートを送り出した理由もそうだが、プルルートの事を考慮してのものだった。

 

「分かったぁ~。大女神様にぃ、ありがとうって伝えておいてぇ~♪」

 

これが幸いし、プルルートはその力を持った人物・・・すなわちピーシェを連れて帰ってくることが目的なので、戦力低下を避けることはできた。

これによって、戦力不足からすぐに押し切られると言う不安は減らされた。

 

「ただ・・・プルルートさんが戻るにしても、ピーシェちゃんを助けないとどうにもなりませんね・・・」

 

「なら、ネプテューヌにそろそろ覚悟を決めてもらわねえとな・・・」

 

ネプギアの一言にラグナが反応して言うと、この場にいた全員が頷く。

この戦いからピーシェを救い出す為には、彼女と最も親しかった人物であるネプテューヌの頑張りが必要不可欠である。

そして、その彼女がどうすればいいのか分からず路頭に迷っているなら、何か助言を与えて奮い立たせる。それがラグナの下した選択だった。

 

「一人で大丈夫~?」

 

「そうだな・・・俺一人だと難しいかもしれないし、手伝ってもらえるか?」

 

プルルートに問われて考えたラグナは、素直に協力を頼んだ。

最近になってだが、何故かプルルートには気軽に物事を頼めるようになったなとラグナは感じていた。

恐らくは、自分の『蒼炎の書』の姿を知っていて、上下のある会話になりがちなネプギアと違い、彼女とは平行の視点で話せるからだろう。

 

「は~い♪お任せあれぇ~♪」

 

また、プルルートも頼られるのが嬉しくて満面の笑みになる。

この二人は短時間で、本人たちでは気がつかない内に信頼関係を築いていたのだ。

 

「・・・・・・」

 

また、その一方でネプギアは少しだけ不安げにラグナを見つめていた。

テルミやレリウスに狙われていると言うこともそうだが、彼がいつしかまた遠くへ行ってしまうのではないか・・・そんなことを考えていた。

しかし、それが自分が持っている不安と、『少女』としての不安が混ざりあっているものではあるが、それでもラグナと離れ離れになるのは嫌だと思っているのは確かであった。

 

『それでは、今回はここまでにしましょう。プルルートさん、気をつけてくださいね(・・?』

 

「分かったぁ~。いーすんもぉ、みんなによろしくねぇ~♪」

 

そして、こちらのことを配慮した向こう側のイストワールが切り上げる事を伝えると、プルルートが頼み込みながら返した。

向こう側のイストワールは、それを聞いてしっかりと頷いてから通信を切ったのだった。

 

「さて、行くか」

 

「うん~」

 

ラグナとプルルートはそれを一瞥してから、ネプテューヌを説得すべく部屋に移動するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「さて・・・退避の準備はもう終わったな?」

 

「はい。万が一のことがあればすぐにここから離れられます」

 

ラグナ達に『自分たちはエディンにいる』と言う情報を与えることに成功したが故に、レリウスたちはこの戦いが終わった後も反抗できるように、各資料や食材等を再び元々使っていたラステイションの廃工場に移し終えていた。

無論、レリウスが制作途中の『スサノオユニット』も移動させており、最後に必要なデータはレリウスが回収することで全てが揃う手立てとなっている。

 

「さて・・・この戦いで何人の女神が倒れるかだが、あまり期待はできないか・・・」

 

マジェコンヌの言葉通り、女神が倒れるのは余り期待できない。

女神たちが戦い出すと基本的に恐ろしいまでの長期戦と化すので、この戦いの行方次第ではピーシェすら倒れず終わる可能性が高い。

何しろエディンは数で劣っており、それを無理矢理補う為のシェア収集装置を用意してあるのだが、それが破壊されてしまえば一瞬でこちらの敗北へ直結する諸刃の剣である。

しかし、そんな付け焼刃な準備でも戦闘データを取るだけの時間は稼げるものなので、使わない理由など無かった。

 

「まあ、最悪あのガキがダメになっても後埋めは俺がするから大丈夫だろ」

 

今現在、ピーシェの下に集まっているシェアは、テルミやレリウスが一部の人達に洗脳用の特殊弾を当てた人達がその影響でピーシェを信仰している状態である為、収集装置を破壊されればその効力も切れる。

そうなると、ピーシェは変身こそできなくなるが、それでも地の力が強いため、テルミが『強制拘束(マインドイーター)』で無理矢理戦わせるように仕向けるだけでも十分に効果は発揮するのである。

 

「なら、心配はいらなそうっちゅから、おいらはこっちに来た奴が見えたら知らせるだけで良さそうっちゅね」

 

ワレチューは体格と戦闘力からやれる事は少なく、今回できることと言えば身軽さを活かした連絡役になるくらいだった。

無論、ワレチューが戦ったところでどうすることもできないのは全員が招致しているので、特に文句を言うことはない。己らの役割を果たすだけである。

 

「ネズミの連絡を受け次第、私はレイとネズミを連れて離脱する。これで構わないな?」

 

「ああ、私は何処か一つの国に奇襲を図ってみる」

 

「なら、俺はこっちに近づいてきた奴の一部を足止めかね」

 

アノネデスはやることを終えたので今はもういない。その為、いつも通り五人で話し合ってトントン拍子で話が進んでいく。

そして、この場にはいないアノネデスが、自分たちの計画で被害を被らないように祈ることは忘れない。それが一時期協力して貰った身としての、足りないながらも恩義の形である。

 

「では、明日も早いのでここで解散としましょう」

 

珍しくレイが締める形となるが、別段誰も反論することなく頷き、今回は解散となった。

 

「(もし、女神を嫌う理由がわかったら何か変わるかな・・・?今度手伝ってもらおうかな?)」

 

敗北する可能性があるから次のことを考えてみたレイは、自分の記憶に関して手伝ってもらおうか一人悩むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

レリウスたちが会議している時とほぼ同刻、ネプテューヌは部屋で悩み込んでいた。

それは当然のこと、ピーシェと戦わなければならない時間が近い。そう考えているせいである。

ピーシェは何の迷いも無くこちらにこちらを攻撃できるが、ネプテューヌは彼女を傷つけたくない為、そうもいかない。

 

「(どうすればいいんだろう・・・?)」

 

ネプテューヌはピーシェと戦いたくない。しかしピーシェは容赦なくこちらを攻撃する。

そんな状況になるのが明らかなのもあって、ネプテューヌを更に悩ませる要因となっていた。

―なら、このまま戦うしか無いのかな・・・?そんな不安に駆られた瞬間にドアをノックする音が聞こえ、思考が現実に引き戻される。

 

「・・・誰?」

 

「俺だ。ちょっと入るぞ」

 

「う、うん・・・」

 

ノックした主はラグナであり、ネプテューヌは少し覚束ない口調で許すと、ラグナとプルルートの二人が入って来た。

 

「・・・アレ?ぷるるんもいたの?」

 

「あたしはちょっとしたお手伝いだよぉ~」

 

プルルートの言った『お手伝い』の意味を一瞬理解できず首をかしげるが、ラグナがいる以上はこの間と同じような形だろうかと予想することはできた。

そして、彼女に伝えるべきことがあるのは紛れもなくラグナだった。

 

「明日のことなんだけどな・・・ピーシェと遊んで(・・・)やれ」

 

「・・・えっ!?」

 

ラグナの切り出した言葉の意味が解らず、ネプテューヌは面喰ってしまった。

―戦いだと言うのにどうやって遊べばいいの?ネプテューヌの思考は固まってしまった。

 

「ち、ちょっと待って?それってどういう意味?」

 

「だってぇ~、ネプちゃんはぁ~、ピーシェちゃんを助けたいんでしょ~?」

 

確かに助けられるなら助けたいが、それが遊んでやるにどう繋がったんだろうか?彼らの意図を理解し切れていないネプテューヌの困惑は更に増してしまった。

何せこの間記憶操作を受けた状態のピーシェを目の当たりにしていたネプテューヌは、そんな彼女とどうやって遊んでやればいいのかがわからないのだ。

 

「向こうは戦う気満々なんだよ?その状況でどうやって遊べって言うのさ・・・?ぴーこを止めなきゃ・・・倒さなきゃ(・・・・・)

 

「つか、お前はどうして『倒す(・・)』こと前提で止めようとしてるんだ?」

 

「・・・!」

 

ラグナに投げかけられた言葉に、ネプテューヌは面食らった。

そもそもラグナにとってはネプテューヌの前提条件が間違えているので、彼はネプテューヌ考えを理解はしつつも否定的だった。

ラグナは大切な人が相手ならどんな手段を使ってでも『助ける』べきだと考えていたし、その方法も複数知っている。

 

「で、でもさ・・・どうやって変身した状態でくるだろうぴーこと遊ぶの?」

 

「そうだな・・・お前は今までピーシェと遊ぶ時はどうしてたよ?それと、ピーシェが好んでいる遊びはなんだ?それを照らし合わせれば答えは出てくるはずだ」

 

ラグナに投げかけられたネプテューヌがもう一度しっかり考えると、一つの答えが浮かび上がった。

 

「そっか・・・そうすれば私もぴーこと遊んであげられるね。でも・・・一番大事な時なのにコレって大丈夫なの?」

 

一番の問題は女神が戦線を常時離れてしまうことにある。その為ネプテューヌも直接ピーシェの元に向かって行くのに迷っていた。

 

「おいおい・・・『困った時は助け合い』なんだろ?心配せずとも、俺たちの誰かで止めておくから、お前は気にせず行って来い。俺がお前だったら、皆にそうしてもらうように頼むしな」

 

「あたしもそうすると思うなぁ~。ピーシェちゃんはぁ、大事な友達でしょぉ~?」

 

「そっか・・・。もう私ってばバカだなぁ~、どうして自分で言ってるのにこうなっちゃうんだろうね」

 

二人の後押しもあり、ネプテューヌは調子を取り戻してきたので、その様子を見たラグナとプルルートは安心する。

 

「大丈夫そうだな?」

 

「うん。それじゃあ明日はよろしくね?」

 

「は~い♪それじゃあ、明日は頑張ろうねぇ~♪」

 

一先ずやることは決まったので、後は実行するのみだ。

何も戦う必要は無いなら、自分のやり方でピーシェを取り返そう。そう決めたネプテューヌの心持ちは、荷が撮れた分先程よりも軽くなった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

そして遂に迎えた開戦当日。各国に住んでいた国民たちは二日前の夜から避難誘導を受けていて、有事の際に使うシェルターへ退避しているので巻き込まれる心配がないのは唯一の救いである。

エディンは日が登るや否やすぐに兵力を、モンスターと共に各国へと送り出した。

モンスターが共に送り出されている理由として、エディンは元々四ヶ国全てを相手にするつもりでいたので戦力不足は免れない。

その為、それを懸念したマジェコンヌがモンスターで補うことを思いつき、テルミとレリウスの共同作業の元、ワレチューが使えそうだと絞り込んだモンスターを捕獲していたのだ。

これによって、当初はエディンに乗り込んで速攻をかけようとした各国の作戦は、自国より少し離れた場所でエディンの軍勢を迎撃する形にシフトすることとなった。

また、それによって戦力的にも致命的な部分が出てくるようになった。

 

「ああ・・・こんな中どう寄れってんだぁ?」

 

まず、遠距離攻撃をできず、女神たちと違って長時間飛行のできないナオトが物陰に隠れて往生する羽目になってしまった。

当初の予定では異世界組を一度に全員でエディンに送り込む予定でいたのだが、作戦をシフトした事によって、最初からエディンに向かうのはラグナとプルルートの二人のみに変更となっていた。

その為、ナオトはエディン進行を阻止する側に参加が決まったのだが、いくらラケルとの契約による恩恵があったとしても、無数の銃火の中を掻い潜るまでに生命力を使い過ぎる危険があるので迂闊に飛び込もうにも飛び込めないでいた。

そんなこともあって、今ナオトにできることと言えばモンスターが兵士たちを超えて先に進んだら、それを食い止めることにあった。

 

「・・・!一体に抜けられた!済まないが頼む!」

 

「分かった!」

 

しかしながら、モンスターで確保した分の戦力差は思ったより大きいもので、ナオトの出番はかなり多い。

抜けていったモンスターの一体を右足で蹴りぬいて倒し、すぐに自分たちの後ろに控えている人達が無事か確認すれば、被害が及んでいないのでナオトは一安心する。

ただし、こうして安心できるのも束の間。振り返ってみれば、モンスターが兵士たちを邪魔だと感じて倒そうとしていた。

 

「っ!ヤベェ・・・!」

 

それに気づいたナオトは急いでそちらへ向けて走り出す。

しかし、先程倒したモンスターを追ったせいで兵士たちとは離れてしまっており、このままではモンスターがその腕を振り下ろすのが先なのは明らかだった。

 

「・・・させないわよっ!」

 

ナオトが焦りに焦っていた時、モンスターの横側から青い風が吹き付け、モンスターはそれに煽られて体制を崩した。

それによって兵士たちは体制を立て直す時間が、ナオトはモンスターに近づいて倒す為の時間が得られた。

 

「オラァッ!」

 

モンスターが体制を整えるよりも早く、右手に血を集めて剣を作ったナオトがそれを振るって切り裂く。

それによってモンスターは光となって消滅し、近くにいた兵士たちの安全が確保された。

 

「ナオト、大丈夫ね?」

 

「ああ、助かったよ」

 

アイエフはドライブの精度が更に跳ね上がっており、ラケルと代わらずとも安定した精度と威力を発揮できるようになっていた。

今回の大型モンスターを追い返せたのもその賜物であり、これによって国を守る大きな助けとなっていた。

しかし、そうして安心していられる時間も長くない。エディン側の兵士がこちらに銃口を向けて機関銃を撃つ準備ができていた。

 

《皆伏せてっ!》

 

ラケルに言われるが早いか、二人と近くにいた兵士たちは用意されている塀に隠れて銃弾の雨をやり過ごす。

 

「全く・・・マジで戦争に関わるなんて思っても無かったぜ畜生ッ!」

 

「慌てちゃダメ。兵士相手は無理に戦わなくていいから、とにかくモンスターを追い払いましょう」

 

「そうするしかねぇみてぇだな・・・」

 

やり過ごしている間にどうするべきかを纏めた二人は、銃弾が止んだ瞬間にモンスターの足止めとモンスターに兵士をやらせないように動き出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「(どこかなどこかな~?遊び相手どこかな~?)」

 

プラネテューヌの方へ向かいながら、ピーシェは全く戦場に似つかわしくない気分で遊び相手を探していた。

下では兵士たちとモンスターたちで戦っているが、ピーシェは全く気にしていない。

 

「(張り合いないと飽きちゃうもんね・・・長く付き合ってくれる人がいいなぁ~)」

 

長く付き合ってくれる相手とは当然女神であり、ピーシェは彼女らと戦い(遊び)たいので、下にいるものは完全に無視していた。

暫く辺りを見回していると、ラグナを牽引しているプルルートの姿があった。

 

「じゃあ、これから行くけど・・・大丈夫ね?」

 

「ああ、俺にやれることをやるだけだ」

 

R-18アイランドにある大砲を使われるのを避けることと、どうして信仰者がああまで集まったのかを調べる為に、ラグナとプルルートの二人は一足先に調査へ向かうところだった。

ちなみに、状況さえ落ち着けばノワールも合流することが決まっており、最終的に三人掛かりで捜査することになっていた。

 

「(うんっ!あの人たちがいいね!)」

 

しかし、出てきたタイミングが悪く、プルルートたちはその状況を知らないピーシェにマークされてしまった。

もちろんピーシェが待つはずもなく、彼女はそのまま凄い勢いでラグナたちの所へ飛んでいった。

 

「なっ・・・!?」

 

「このタイミングで・・・!?」

 

「遊んでもらうよっ!」

 

これは流石にプルルートも驚いて一瞬固まってしまう。

そして、ピーシェが両手に持ったクローで攻撃をしてくるが、それは彼らには当たらずに終わった。

 

「・・・アレ?」

 

「この二人は今遊んであげられないから、私が遊んであげるわっ!」

 

ピーシェの攻撃はネプテューヌによって遮られていて、ピーシェが戸惑っている内にネプテューヌは刀で軽く押し返した。

一緒に来ていたネプギアもネプテューヌの隣に立ち、ピーシェがラグナたちの元へ行けないようにした。

 

「二人共、私が引き受けるから先に進んでっ!」

 

「ネプちゃん・・・もう大丈夫ね?」

 

「ええ。私のやり方でぴーこを取り戻して見せるわ」

 

プルルートの問いに答えるネプテューヌの瞳に、もう迷いは無かった。

それを見た瞬間、プルルートのみならず、ラグナも安心して任せられると判断した。

 

「悪いな。それじゃあ頼むぞ」

 

「ええ。そっちも気をつけて」

 

「二人共、頑張って下さい!」

 

ラグナを連れたプルルートが去っていくのを見送り、二人はピーシェの方へ向き直る。

そしてすぐに戦う・・・と思えばそれは少し違った。

 

「ネプギア、モンスターとエディンの兵士たちの方を任せてもいい?」

 

「うん。お姉ちゃんも諦めないでね」

 

「・・・ありがとう。勿論最後までやりきってみせるわ」

 

ピーシェがこちらに来てくれたのは好都合なので、ネプテューヌはネプギアに頼んだ。

そして、あっさりと承認してくれたので二人のやることは決まり、ネプギアは兵士たちを助けるべく下に降りていった。

 

「さて・・・場所を変える為にも、こっちに来てもらうわよっ!」

 

「っ!追いかけっこなら負けないもんねっ!」

 

「(さて・・・ここからどうなるか、見物だな)」

 

他人を巻き込むまいと飛び去るネプテューヌをピーシェが追いかけた事によって女神同士の戦いが始まった。

そして、戦場から少し離れた場所にいたレリウスは、彼女たちの戦いをしっかりと見るために転移魔法で場所を移すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「もう少しで大砲の所に着くけどぉ、準備はいい?」

 

「問題無ぇ・・・いつも通りやるだけだ」

 

R-18アイランドの大砲がある施設まで近くなり、プルルートとラグナは自分たちが問題ないことを確認する。

自分たちに与えられた役割は大砲があった施設に潜入し、ピーシェがシェアを得ている源があったらそれをどうにかして止めると言うことになっている。

障害は色々予想されるかもしれないが、可能な限りは避けて通りたいところだ。何か抜け道があるならば、当然ながらそこを通りたいところだ。

 

「(えっと・・・誰かに伝えられればいいんだけどなぁ・・・)」

 

一方その頃、R-18アイランドの敷地内をリンダは歩いていた。

こんな戦時の最中、何故リンダがここを歩き回っているかと言えば、全ては大砲への施設まで行くためにある専用の抜け道を知っていたので、来るであろうラグナたちに伝えようとしていたのだ。

しかし、先程兵士に追われ始めていたので、あまり時間は残されていなかった。

 

「(せめて、空中に女神さん方がいてくれれば・・・)」

 

リンダが期待を込めて上を見上げれば、そこにはラグナを牽引しているプルルートの姿があった。

つまり、リンダが伝えるべき相手が来た証拠だった。

 

「(幸いこの先を進めば森の中に隠れられるし、行くっきゃない・・・!)」

 

ラグナたちの方角を読んで、その方向にある森をみたリンダは覚悟を決めてそこに飛び込んだ。

また、リンダが走り出した時を同じくして、R-18アイランドの敷地内でテルミとマジェコンヌは周囲を監視していた。

 

「誰が来ると思う?」

 

「まあ、俺らの世界にいた誰かが来るだろうな。まあ、突入とかその辺ならラグナちゃんかね」

 

マジェコンヌの問いに、テルミは自分の回答を示す。

ラグナが来ると考えた最大の理由は、反逆の旅をしていた際に『統制機構』の支部を破壊して回っていたことがあるからだ。

その経験を持っているラグナなら、今回のような突入ごとには最適だろう。

そして、案の定空を見てみれば案の定、ラグナとプルルートの二人がいた。

それをみたテルミとマジェコンヌはニヤリと唇を歪めた。

 

「・・・マジェコンヌ。ラグナちゃんを地上に降ろせるか?」

 

「フッ・・・良いだろう。少し待っていろ」

 

話が決まってすぐ、マジェコンヌは変身をし、槍を手に持ってプルルートに向かっていった。

 

「っ!ごめん、一度降ろすわね?」

 

「ああ、お前も気を付けろよ」

 

マジェコンヌに気づいた二人も即座にどうするかを決め、お互いに繋いでいた手を離してラグナは垂直落下をする。

もちろん、これは相手がそうしても大丈夫だからこそ行動であり、普通の人が相手であればこんなことはしない。

そのままプルルートは蛇腹剣を手にとって、マジェコンヌの迎撃に当たった。

マジェコンヌはプルルートがラグナを手放して武器を手に取るのを確認し、槍を振り下ろし、対するプルルートは蛇腹剣を左からの水平に振って受け止める。

 

「さて・・・何時ぞやの再戦と行こうじゃないか?」

 

「あぁ、あの時の・・・。フフ、良いわよぉ~?それじゃあ、一時の戦いに洒落込みましょうかっ!」

 

プルルートが蛇腹剣で押し返して仕切り直しした事によって、二人の戦いは始まった。

 

「ッ!テルミか・・・!」

 

「よう、ラグナちゃん・・・久しぶりだなぁ」

 

ラグナが落ちる先を確認してみると、そこにはテルミがニヤリとした顔で待っていた。

恐らくはこちらが攻撃しなければ攻撃しない。そう踏んだラグナは術式の要領で空中制御して安全に着地する。

そして、テルミは案の定攻撃して来なかったので、ラグナの読みは正しかった事になる。

 

「やっぱりテメェが来るよなぁ・・・」

 

「こういう事に慣れてるってのもあるが、俺らしか行けるのがいなくなったからな・・・」

 

しかし、それでもテルミにとっては再び戦えるチャンスであった。

更には最近は大きく反抗ができていなかったこともあり、普段以上に高ぶっていたのだ。

 

「それじゃあ始めようぜぇ?今度こそブッ殺してやるよ、『ラグナ=ザ=ブラッドエッジ』ッ!」

 

「悪いがこの後もやることはあるんだ・・・手短に終わらせてやるよ、テルミィッ!」

 

そして、ラグナとテルミも互いの武器を手にとって、同時に距離を詰めていくことで戦いの火蓋を切って落とした。

こうして、エディンと四ヶ国の戦いの幕が上がるのだった。




一先ず出だしの部分が終わりました。
このエディンと四ヶ国による戦いが終わった後、最後に少しだけオリ回を挟んでこの章は終わる形になると思います。

次回は再びアニメ10話の続きとなります。
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