超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER-   作:ブリガンディ

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これでアニメ10話分が終結します。


54話 探し求めていた真実

「大変だったね・・・他に痛む所はあるかな?」

 

「意外と他のところはそうでもないんだ・・・。取り敢えず、顔を優先して欲しいかな。結構痣が酷くて・・・」

 

「うん。それじゃあもうちょっとだけ我慢しててね?」

 

「分かった・・・」

 

戦争が終わった夜。プラネタワーに戻ったネプテューヌはセリカとコンパについてもらって治療を受けていた。

まず初めにセリカが可能な限り治癒魔法で痣や傷を減らしていき、その後コンパが治療用具で手当をすることになっている。

何しろ女の子の顔が傷や痣にまみれている姿は目によろしくないので、全員が『時間になるまで可能な限り直してもらえ』と口を揃えて彼女に言ったのだ。

久しぶりに治癒魔法を使う事になったセリカだが、その腕前が衰えている事など一切なく、ネプテューヌの顔にある傷は少しずつ、確実に治っていく。

しかし、セリカの治癒魔法を持ってしても、この短時間でネプテューヌの傷を全て治しきることは叶わなかったのである。

 

「ああ・・・これでもこんなに残っちゃうかぁ・・・。ごめんね?本当はもうちょっとだけ治療してあげたかったんだけど・・・」

 

「ううん。そんなことないよ・・・私が喰らい過ぎちゃったからさ・・・」

 

治癒魔法に使える魔力自体は暗黒大戦時代の時と同じくらいの量を使えるセリカだが、それでもネプテューヌの受けたダメージが大きすぎた。

それを見て申し訳ない気持ちになるセリカだが、そもそも自殺行為に近いことをしていたネプテューヌは彼女を責める事無く、治療してくれた事に感謝する。

 

「じゃあ、後はこっちでお手当するですから、セリカちゃんも今のうちに休んでおくです」

 

「うん。それじゃあ、準備が終わったら知らせにくるね」

 

セリカにできることはここまでなので、残りはコンパに任せてセリカは部屋を後にした。

それを見送ったコンパは救急箱を開き、傷に効く薬と痣を隠せる大きさをしている湿布を用意し、ネプテューヌへの手当を始める。

 

「ねぷねぷ・・・今日はお疲れ様ですぅ」

 

「ありがとうコンパ。そう言って貰えるだけで気分が楽になった気がするよ・・・」

 

実際ネプテューヌの返答は本音だった。

今回の戦いは相手の宣戦布告に乗じてピーシェを取り戻す為のものであり、それの主導となるネプテューヌにある役割の重要性と危険性の大きさは他人の比では無かった。

故に精神的な疲労と肉体的な疲労が共に大きく、他の誰よりも疲労をしていたのである。

ちなみに、今夜はプルルートが探していた人物がピーシェであることが判明したので、どうやって連れ帰るかを話すことになっている。

今回ばかりはネプテューヌは寝て休んでいても良いと言いたかったのだが、ラグナとネプギアの二人が戻る手立てに心当たりを持っており、しかも『少女』のことが関係しているかも知れないと言われたので、流石にそれはおちおち寝ている訳にはいかなかった。

それ以外にも、ネプテューヌには少しだけ悲しいことがあった。

 

「ピーシェちゃん・・・記憶戻らなかったですね・・・」

 

悲しいこととは、ピーシェの記憶が戻ってないことにある。

ピーシェが今持っている記憶は、レリウスらに操作を受けた後のものになっており、今の彼女に自分たちの記憶はないのである。

一応、望みある情報としては、ネプテューヌを見ると自身の頭を痛めるようで、恐らくは記憶の奥底にネプテューヌのことは残っているようだ。

 

「後は何かいいものがあればいいんだけどなぁ~・・・」

 

「ねぷねぷならきっと見つけられるはずですぅ♪」

 

そうなればピーシェの記憶に訴えられるものを探すだけであり、それならば何も心配ないだろうとコンパは満面の笑みを見せた。

信頼してくれるのはいいのだが、それはそれで大きなプレッシャーを与えられたとネプテューヌは一瞬だけ苦い顔になった。

 

「さて、これでお手当は終わりですぅ。後はお身体を大事にするですよ?」

 

「ありがとうコンパ。今日はゆっくり休むよ・・・って言いたいけど、まだ大事なお話があるんだったね・・・」

 

コンパの言ったことには応えたかったネプテューヌだが、今日は今後のことについて話さなければならないので、仕方ない面はある。

その為、疲労を回復するための安眠は暫しお預けとなった。そんな事を知って少しだけ悲しくなったところで、ドアのノック音が聞こえた。

 

「二人共~、準備終わったみたいだよ~」

 

「はーいっ!それじゃあ行こっか。手当てありがとね」

 

「怪我したときはいつでも言ってほしいですぅ♪」

 

声の主はセリカで、準備が終わったことを教えてくれた。

その為、二人は部屋を後にして移動することになったが、この時コンパの言葉を聞いたネプテューヌは、怪我のし過ぎは良くないが、気持ちはありがたいと感じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

『・・・『蒼の門』があった!?』

 

食事を取りながら今後のことを話すという手筈になったが故に、ラグナとネプギアから最初に来た重大告知を聞いた全員が驚くことになった。

何よりも重要な話として、この世界に『蒼の門』が存在するのが判明したのと同時に、プルルートとピーシェを元の世界に送り返す手段が確立されたことにある。

今回最も重要なこととしてはプルルートとピーシェを送り返す事にあったので、こちらが解決できたのは大きいが、もう一つ驚かされることがあった。

 

「良かったぁ~。こっちにも(・・・・・)『門』があったんだねぇ~♪」

 

『・・・えぇっ!?』

 

プルルートのまさかの発言にピーシェとネプギアを省くゲイムギョウ界組全員が声に出して驚いた。

異世界組の人たちも、実物を見ていないので驚く事には驚いているものの、声に出して驚く程でも無かった。

 

「実際、俺もこっちへ来るときは『門』を使って来た訳だし、そこまで不思議にはならねぇな・・・」

 

「そうですね・・・私も、あってもおかしくないと思える・・・いえ、あって当然(・・・・・)とすら思えてしまうんです」

 

ただし、ラグナとネプギアだけは全く持って驚く様子を見せず、それどころか納得している様子だった。

それもそのはずで、ラグナからすれば『蒼の門』を渡ってきた以上この世界にあってもおかしくないと考えるし、ネプギアは自身の中にいる『少女』との密接さがそう感じさせているのだ。

それ故に、この二人は他の人たち以上に、『蒼の門』については至極あっさりと受け入れることができたのだ。

 

「プルルートが『門』を使ってこっち来たってことは・・・こないだ話してた『大女神様』ってやつか?」

 

「あったり~♪特別に使わせて貰ったのぉ~♪」

 

ラグナの問いにプルルートは笑顔で答える。

この時、プルルートの様子を見たラグナは、向こう側のゲイムギョウ界で『蒼』を持っているのはその『大女神様』とやらで間違いない事を確信した。

自分も『蒼の守護者』としている建て前もあり、その人も同じ立場であることも自然と理解できていた。

 

「取り敢えず、これで帰る手段は見つかった・・・ってことで良いんだよな?」

 

「後は、皆が選ぶだけ・・・」

 

帰る手段が一先ず確率されたので、ナオトは一安心した。

更にはラムダが言った通り、今すぐに帰らなければならないと言うわけでもないので、心残りがあるなら忘れないようにすることもできるのだった。

 

「ま、まあこの際『門』のことは納得するしかないとして・・・残りはあの同盟が無事なのと、前々言っていた『女の子』の事よね・・・」

 

『門』のことに関しては不明瞭な事が多いので、ノワールもこれ以上の追及は避けるように他の内容を振ってみた。

実際、マジェコンヌらは無事である為、今後何かしてくる確率は非常に高いし、ネプギアの中にいる『少女』のことも、いい加減納得させたかった。

 

「あいつらがまたすぐに動くとは思えないけど・・・妙に怪しいのよね」

 

「確か、引き上げるのがらしくないくらいに早すぎたんだっけ?」

 

《彼らにしては潔すぎるのかしら・・・?前回は本当にダメになるまで戦っていたけれど・・・》

 

ブランが現状を言い出して、ナオトとラケルが同意に近い反応を示す。

前回のズーネ地区は途中まで自分たちが有利を取り続けていたので最後まで戦ったのかと思うが、果たして全員と協力しあえて、一人一人が冷静な判断を下せるあの同盟にそれはないだろうと思った。

ズーネ地区の場合はシェアエナジーの共鳴やセリカの力等、突然自分たちが恐ろしく不利になる状況に追いやられたが故に引けなかったのだろう。そうでなければ、彼らは危険になるよりも早く後退を済ませるはずだった。

 

「今回はレリウスが現れたと言う報告を一度も聞いてないから、もう既に準備を始めている可能性が高いわね・・・」

 

「私は二つの国を見たが、どちらにも奴の姿は無かった」

 

「そう言えば、プラネテューヌでも確認はできなかったわね・・・」

 

ナインの危惧は正しく、ハクメンとアイエフの報告を聞き、自分の見た情報と照らし合わせてもレリウスは姿を現していなかった。

 

「そうなると、どこかで『観察』していた可能性が極めて高いですね・・・」

 

「か、『観察』する場所ってまさか・・・」

 

ノエルの言葉にネプテューヌは心当たりがあって顔が青くなる。

レリウスが見たことがないものとして、女神同士の戦いが挙げられる。そうなれば、今回女神同士で戦っていたのは自分たちしかいない為、場所は自然と絞られたのだ。

 

「あぁ・・・見つけていれば止められたかも知れなかったのにぃ~・・・」

 

「ま、まあ・・・今回は状況が状況ですから・・・」

 

ネプテューヌは落ち込むものの、ピーシェの救出に手いっぱいだった彼女をイストワールも責めることはしない。

ここでネプテューヌを責めようものなら彼女は鬼か何かだろう。無論、イストワール自身にそんなつもりは一切無いのだが。

 

「取り敢えず、何か怪しいことがあったら調べる。それしか無さそうだね・・・」

 

ケイの言ったことは本当で、こればっかりは各自で調べる以外道は無さそうであった。

そして、これ以上は話すにもどうすることもできないので、残りは『少女』のことに回る。

 

「その事なんだが、『門』のあった場所に一個棺が置かれててな・・・間違いなくそこにいる」

 

「・・・一応聞いておくけど、その理由は?」

 

「そうだな。話すとちょっと長くなるが・・・」

 

ナインに理由を問われたので、ラグナは今までの洞窟やネプギアと『少女』の関連性などを話していった。

極めつけだったのが、ラグナが以前一人で洞窟に向かった時の出来事であり、それによって彼女がそこにいることを端的に示していたのである。

 

「そうなると、明日辺りにでも行ったほうが良さそうですね・・・」

 

「でも、人が多すぎると大変では無くて?」

 

ミナとチカが言うことも最もで、プルルートがこれ以上元の世界を離れていると、彼女の持つ国が危険なのでそろそろ戻らなければならない。

その為、なるべくすぐに行くのが望ましいのだが、全員で行くと元々の狭さもあってダメなのではないかと考えられていた。

 

「一応、一番奥の扉の中に入っちまえばその先は広いから平気だ。ただ、それまでの道中が面倒なことになるってのは覚えといてくれ」

 

ラグナの言葉にはネプギアも頷く。

こうして、実際に一番奥まで見てきた二人の証言のおかげで、全員の選択肢は決まったも同然になる。

 

「それなら、明日全員で行こう。やっぱり、こういうことは全員で知っておかないと・・・」

 

ネプテューヌがそう提案すると、全員が頷いて肯定の意を見せてくれた。

これによって、明日がどうするかはすぐに決まり、今後のことに関しては話すことが終わったので、残りは食事を取りながら談笑などをし、明日に備えてしっかりと休息を取るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「(とうとうこの時が来たか・・・)」

 

翌日、『ムラクモユニット(彼女)』たちに全員がこの場を荒らす存在でないことを告げて洞窟の最奥部まで進んできた。

この門の存在により、異世界組の人たちも帰るかどうするかを選ぶことができるようになったので、この発見は何よりも大きいものとなる。

 

「色々あったけど・・・これでネプギアのことにひと段落付きますね・・・」

 

「じゃあ、これからはずーっといつも通りでいるのかな?」

 

「・・・もう変わったりしない?」

 

「多分ね・・・」

 

候補生たちからすれば、友人の身に異変が起きてからずっと気がかりにしていたことなので、その安心感は多いだろう。

もちろん、姉であるネプテューヌも彼女たちと同じくらいに心配していたのに変わりないが、当時は変身ができないが故に姉の手伝いができない劣等感などもあり、精神的に未熟さの目立つ彼女らはそれが顕著だったのもあるだろう。

三人の声を聞いたネプギアもなるべく彼女たちに応えようと返したが、正直言って自信は無かった。

ズーネ地区での騒動が終わって以来、自由に交代できるようになってはいるのだが、『少女』と完全に魂が一体となった時、果たして自分の人格が残っているかどうかが分かったものでは無かったからだ。

 

「ラグナよ・・・悠久の旅路を終えた私に続き、御前の答えを求める旅路に決着を付ける時だな」

 

「ああ・・・。これで、俺の求めていた真実が全て分かる・・・」

 

ハクメンはこの世界で、本来とは全く違う形で己の宿命に決着を付けている。

今まで戦いの中でしか決着を付けられないと考えていたのに、『救済』と『和解』と言う真反対に等しい二つの方法で終わらせることになるとは誰が想像しただろうか?ラグナですら、ハクメンと和解で決着を付ける日が来るとは思って無かったのである。

そして、ネプギアの変化が大きくなってきた時からどうにかして知りたいと思っていた『少女』のことにも、これで決着が付くのだった。

 

「さて、入らなきゃ話になんねえから取り敢えず開けるとするか」

 

「はい。それじゃあ・・・」

 

ラグナとネプギアは二人して扉の前に立ち、以前と同じように扉を開けて見せた。

扉が開いた先には、以前と同じように広い空間が広がっており、中に入る度に多くの人が驚きの表情を見せた。

例外的に驚いていないのは、自分のいた世界で裏事情に詳しかったハクメン、ナイン、ラケルの三人と、始めて来たのに自然と納得できてしまうノエル、ラムダ、ニューの三人。そして、実際に門を目の当たりにしているラグナとネプギア、別のゲイムギョウ界で実物を見たプルルートの三人で、合計九人であった。

 

「アレが『門』だ・・・お前ら、帰るんだったら後で俺に言ってくれ。その時に俺が開けてやる」

 

「ああ。分かった」

 

ラグナに言われて真っ先に答えるナオトだが、正直なところ迷っていた。

何しろ、マジェコンヌやテルミらの同盟が残っているので、それをほったらかしにして良い気がしなかったのだ。

 

「あっ、繋がりました・・・。そちらは準備できていますか?」

 

『はい。後は皆さんのお話が済んだならこちらで移動のアシストを行います(^^♪』

 

イストワールが向こう側のイストワールに確認を取ると、もう既に準備はできているようだ。

こうなればいよいよ後は棺を開けて、その中の正体を知るだけである。

ラグナが一度振り返ってみれば、全員がもう覚悟を決めている様子なのが伺えたので、すぐに開けることを決めた。

 

「(今まで、『あいつ』のことは全く他人のような気がしなかったけど・・・これで全部が分かるんだな・・・)」

 

思ったよりも短かったような、長かったようなそんな時間に思い出しながら、ラグナは棺に右手を添えて一泊置いた。

この一泊は自身に決意を決める為の一泊で、これを入れた事によって、ラグナは嫌でも自分が迷っていたことを自覚する。

元の世界ではサヤを助ける為に必死だったからこそ、そのことに関しては迷わなかったので、尚更それを実感することになった。

 

「よし。開けるぞ・・・」

 

開け方自体は一度も聞いたことの無かったラグナだが、扉の時と同じ開け方をすれば良いと言うのを感じ、そのまま右手に意識を集中させた。

すると、棺の蓋になっている部分が蒼い光で覆われて、時間が経つに連れて光となりながら少しずつ霧散していき、中身が姿を現した。

そしてその中身の正体に、ラグナとセリカが他の誰よりも息を吞む結果となった。

 

「ら、ラグナ・・・これって・・・」

 

「ああ。間違いねぇ・・・サヤだ」

 

『・・・!?』

 

棺の中には金色の髪をしたノエルと瓜二つな少女が眠るような表情でそこにいた。

流石にこればっかりは、向こうの世界で裏事情を知っているナインやハクメンですら驚くこととなった。

 

「(あん時は悪いことしちまったな・・・)」

 

ナオトは一人、『エンブリオ』で互いに妹の名前が被っていることに気が付かず騒ぎを起こしてしまったことに申し訳なく感じた。

確かに、互いに事情を把握しないままであれば、たまたま互いの妹が同じ名前であるなど気がつかないだろう。

そして、そんなことを考えている内に、少女は棺が開けられたことで周りの変化を感じたのか、ゆっくりと目を開け、エメラルドグリーンをした綺麗な瞳を覗かせた。

 

「あっ、兄さま・・・やっと会えた・・・」

 

「・・・!本当に、サヤなんだな・・・?」

 

少女の声と言葉を聞き、ラグナは思わず問い返した。

本当に、自分の妹と全く変わらない声、変わらない姿形であるのだ。彼女の姿は、『あの日』の惨劇が起こる直前の容姿をしている。

 

「・・・はい。サヤはここにいますよ。兄さま・・・」

 

少女が満面の笑みで答えたのを見て、ラグナは目の前にいるのはサヤで間違いないと確信する。

また、サヤだと分かったのは良いが、一つだけ気掛かりなことはあった。

 

「(そういや、あの時『ずっと一緒だって』言ったけど・・・アレはどういう意味だったんだ?)」

 

ラグナはそれだけが非常に気がかりであった。

第一接触体(サヤ)』を助ける時にそう言ったのだが、ゲイムギョウ界に来てからは彼女と一緒にいた事など一度も無かったからだ。

しかし、それは今聞かなくとも落ち着ける場所で聞けば良いだろう。ずっとここで身体を動かさないでいたのだから、そもそもまともに動けるかどうかが心配ではあるが・・・。

 

「悪かったな。ずっと待たせちまって・・・動けるか?」

 

「・・・・・・」

 

ラグナがサヤに手を差し伸べるものの、彼女はその手を目で追うだけで、そこから先をしようとしなかった。

 

「・・・サヤ?」

 

「・・・ごめんなさい兄さま。私、この体だとここから出られないの・・・」

 

「え・・・?」

 

サヤから返ってきた言葉にラグナは思わず動揺してしまった。

理由はどうであれ、サヤは今の体のままでは自由に行き来ができないのだという。

 

「私は、どうすればいいかな?」

 

彼女の様子から大方察しが付いたネプギアがサヤのすぐ傍まで歩み寄って問いかける。

恐らくは、ズーネ地区で共に戦うことを選んでからと言うものの、自分の殆どを『ネプギア(もう一人の自身)』に回してしまったので、動くことすらままならないのだろう。

その為、自分が手助けをすれば解決できるための手段があるはず・・・ネプギアはそう踏んでいたのである。

 

「それなら・・・私の手を握ってくれる?」

 

「分かった。手を握れば良いんだね?」

 

「・・・ネプギアっ!」

 

サヤに頼まれて彼女の力なく伸ばされた右手を掴もうとしたネプギアだが、ネプテューヌが直前の所で呼び止めたので、ネプギアはそちらを振り向く。

振り返ってみれば、ネプテューヌのみならず多くの人が心配そうにこちらを見ていたのである。

特にネプテューヌと女神候補生の三人、そしてイストワールの五人は彼女の身近にいることが多かったので、尚更ネプギアの事が心配だった。

 

「その・・・大丈夫なんでしょ?今のネプギアが消えちゃったりするわけじゃ無いんだよね?」

 

「・・・うん。そんなことは無いと思う」

 

ネプテューヌに聞かれて答えるネプギアだが、正直なところどうなるか解らないので、自分が一番不安だった。

どちらの人格が表立つのか?ネプギアとしての人格は消えてしまうのか?それは実際にサヤの手を握らなければ解らないのである。

しかしながら、ネプテューヌのみならず、全員を少しでも安心させるならそういうほかなかったのである。

 

「じゃあ、手を握るね・・・」

 

「うん。その後は私を受け入れるように強く思うの・・・。自分が残るように意識すれば、消えることはないから・・・」

 

「(自分が、残るように・・・)」

 

ネプギアは彼女の右手を、自分の右手でしっかりと握りしめてから、彼女に促された通りに意識しながら目を閉じる。

今思い返されるのは、始めてゲイムギョウ界で生を受けた日のことや、ネプテューヌにアイエフとコンパを紹介されて一緒に手伝いをしたこと。そして、ラグナがゲイムギョウ界に来て以来の出来事・・・。これらが自分の中に次々と思い起こされていた。

そして、一通り思い出して覚悟を決めたと捉えられたのか、サヤも動き出した。

 

「・・・!?」

 

「さ、サヤ!?」

 

サヤの体と残っていた棺の部分が蒼い光に包まれたのを見て、ラグナは目を見開き、セリカは思わず声を出す。

その光は一つの球体として集まってネプギアの中に収まっていく。自分たちにとって最大の問題だった事に決着が付くのは良いが、ネプギアの行く末が不安の余り、全員が祈るようにその光景を見守る。

また、ネプギアは光が収まっていくと同時に、サヤの記憶が自分の中に詰め込まれていくような感覚がした。

そして、光の全てが収まりきると、『ネプギア』はゆっくりと目を開いた。

 

「ネプ・・・ギア・・・?」

 

「だ、大丈夫なの?」

 

ネプテューヌとユニの問いかけは届いているらしく、『ネプギア』はゆっくりとそちらに顔を向ける。

 

「うん。私は大丈夫だよ。ユニちゃん、お姉ちゃん」

 

他人行儀では無く、自分のことをしっかりと姉として認識してくれているように返って来たので、ネプテューヌは少し安心感を覚える。

一応返答が聞けたのはいいのだが、聞いておかなければならないことは色々と残っている。

 

「なあネプギア。一つ聞きたいことがあるんだが・・・」

 

「はい。ええっと・・・」

 

ラグナに問われてい返事をした『ネプギア』だが、何かに迷っている様子だった。

普段から呼び方の全く変わらない他の人たちであれば問題無かったのだが、ラグナだけは自身が交代する都度に呼び方が変わっていたので、戸惑いが生じてしまったのである。

 

「まあ、呼び方は後で決めれば良い。それよりも、俺があの時、『これからはずっと一緒だ』って言ったのは覚えてるな?俺は・・・それをちゃんと守れてたかちょっと不安で聞きたかったんだ」

 

ラグナからすれば、『第一接触体(サヤ)』とそう約束したにもかかわらず、長い時間彼女と離れていたからこそ、それが不安でならなかった。

それは約束したくせにそれを守れなかった情けなさと、彼女に寂しい思いをさせていないかという不安があった。

 

「大丈夫だよ。こっちに来た時の時間にズレがあったからそう思うだけで、『ネプギア()』と兄さまはちゃんと一緒にいたよ」

 

「そっか・・・それが聞けて良かった」

 

まだ色々と至らないと感じている部分はあるのだが、大丈夫というならそれでいいのだろう。ラグナはそれ以上は追及しないことにする。

大事なのは、サヤが大丈夫と思うかどうかである。彼女が大丈夫ならこれ以上言うことはないのだ。

 

「私からも一つ質問ですが、『ネプギアさん(その体)』の中にはいつ頃から入っていたんですか?」

 

ネプギア()がこの世界に生を受ける時があったんですけど、その時に魂の一部を送り込んだんです・・・これを使って」

 

『・・・!?』

 

イストワールの質問に答えながら、『ネプギア』が自身の右手に出したモノを見て、全員が驚愕する。

 

「それは・・・『蒼』!?でも、あなたがあの子であるなら、持っていてもおかしくはないわね・・・」

 

ナインは最初こそ驚きはしたものの、意外と納得できてしまった。そして、それはハクメンも同様だった。

 

「ところで、君は何時からここにいたんだい?」

 

「ここには何時から居たかは覚えてないけど、少なくとも『ネプギア()』やお姉ちゃんが生まれるよりは前にここにいたかな・・・」

 

ケイの問いへの回答に全員が呆然とする。

詰まるところ、彼女は相当長い時間ここで眠っていたことになる。これだけ長い時間眠っていれば、待ち遠しくなるだろう。

 

「ごめんね・・・『あの日』、私にもっと力が残ってればこんなことにはならないで良かったのに・・・!」

 

「そんなことないよ・・・シスターのお陰で、私たち楽しかったから・・・」

 

セリカが『あの日』の時に、力が及ばなかったことを思い出して彼女に謝る。

しかし、『ネプギア』はセリカを責めることはせず、寧ろ感謝を口にした。それに安心したセリカは声を上げて泣き、ナインが背中をさすって慰めに入った。

 

「そういや、今はどっちなんだ?」

 

「それが・・・どっちって言えばいいか解らないの。二つの記憶と人格を完全に共有した私は『ネプギア』でも、『サヤ』でもあるの・・・」

 

ラグナに問いかけられたものの、『ネプギア』は困った様子だった。

二つの記憶と人格を完全に共有した彼女は、どちらが表なのかが解らない状態であった。

 

「なら、お前はどっちとして生きたいか確かめて、それで決めれば良いと思う。・・・ああ、無理に気を遣う必要はねえぞ?大事なのは、お前がどうしたいかだ」

 

「私は・・・」

 

ラグナにそう言われ、『ネプギア』はしっかりと考える。

確かに、『サヤ』としてもう一度穏やかな日々を過ごすのもいいかも知れない。でも、多くの友人ができて、大切な家族もいて・・・何よりも助けて貰ってばかりだった自分が、誰かの助けになることもできる『ネプギア』の日々もとても大切なものだった。

考えが纏まらないので一度全員の方を見て見れば、ゲイムギョウ界組の全員と、多くの異世界組は不安そうに見ていた。

例外に、全てを受け入れる覚悟をして見守っているのはラグナだった。

 

「(この人たちを悲しませたくないのもある・・・。それでも、私はこの世界で生きている日々が好き。それなら・・・)」

 

一度目を閉じてから思考を纏めて、ネプギアは目を開いてラグナを見据える。

その瞳から全てを決めたと言うのが見て取れたのか、ラグナは改めて問いかけることを決めた。

 

「決まったか?」

 

「はい。ラグナさん(・・・・・)、お姉ちゃん・・・。皆さんも、大変心配を掛けました・・・」

 

『・・・!』

 

彼女の答えは、引き続き『ネプギア』として生きることだった。

やはりゲイムギョウ界で確率していた存在であるということもあり、混乱を招くのはいただけないと言う考えも確かにあった。

しかしそれでも、今の自分にとっては、『ネプギア(こちら側)』の記憶が、生きていた道が自分らしいと感じたのだ。

それによって、感極まったネプテューヌと候補生たちが勢い良く抱きついたので、ネプギアは思わず尻餅を付くことになる。その状況で奥を見てみると、ゲイムギョウ界組の全員が涙ぐんでいるのがよく見えた。

いきなりのことなので驚きはしたものの、それでも心配させたことには変わりないので、少しの間は甘んじて受けることにした。

 

「本当に良かったのぉ?」

 

「良いんだ。こればっかりは、俺がとやかく言う事じゃねえしな」

 

プルルートに問われたラグナは、迷うことなくそう答えた。

確かに少しだけ『サヤ』として生きてもらってもいいかと思いもしたが、こうやって答えなければ、その考えを振り払うのができなさそうな気がしたのだ。

彼女はこれからも『ネプギア』として生き続ける。そう決めたのだから受け入れよう。それは全員が同じ考えをしていた。

 

「さて・・・話も終わりましたし、そろそろ元の世界に送り返しましょう。ところで、ナオトさんたちはどうしますか?」

 

「・・・俺は残ろうかな。まだゴタゴタ残ってるんだし、それを放っておくのも性に合わねえんだ」

 

イストワールに聞かれてナオトは残ることを選択した。

もちろん、ラケルには苦労をかけさせてしまうために詫びを入れるが、当のラケルはナオトのことだからそうすることが読めていたのか、「残るからにはしっかりと一段落付けさせなさい」とだけ言われた。

 

「私も、助けてもらってそのままと言うのは気が引けるので、残らせてもらいます」

 

「ニューも、もう少しだけみんなといたい・・・」

 

「それならラムダも残る・・・。帰る時は、三人一緒に・・・」

 

ノエルたちも残ることを選択した。

また、元々帰るつもりは無いと明言していたハクメンやラグナ、元の世界では死んでしまった身なので、帰るわけにはいかないセリカやナインは当然の如く残ることを選択しているので、異世界組は全員が残ることになった。

 

「分かりました。それでは・・・聞こえますか?これからプルルートさんたちが移動するので、サポートをお願いします」

 

『わかりました。ただ、余り時間を使えないので、速やかな移動をお願いしますね(・・?』

 

「よし。開けるぞ・・・」

 

二人のイストワールの会話を聞いたラグナは、『門』に手を触れてそれを開ける。

そして、開けた先から蒼い光がこちらにやってきて、周囲を照らした。

 

「じゃあ、これでお別れだね・・・」

 

「うん~・・・ちょっと寂しいけどぉ~、また会えるといいねぇ~」

 

やはり別れというのは寂しいものである。それを理解しているからこそ、プルルートも少しだけ表情が暗くなる。

しかし、何も別れるからと言って、自分の記憶が全て消し去られると言うわけではない。

 

「そうだぁ。つい昨日作り終えたんだけどぉ~・・・。コレ、どうぞ~♪」

 

自分がいたことの証として、残せるものはある。

プルルートが今回残すのは、最初に作って見せたぬいぐるみであり、今回はネプギアをデフォルメしたものを贈った。

それを受け取ったネプテューヌは、「大事にしてねぇ~?」とプルルートに問われたので、強く頷いた。

 

「私からは、ぴーこに贈る物なんだけど・・・」

 

「・・・?」

 

縫いぐるみを持ちながら、ネプテューヌはアイテムパックからプリンを取り出し、ピーシェに渡した。

そのプリンの蓋には、ピンク色のマーカーペンで『ネプの』と書かれていた。

 

「覚えてないかも知れないけど、私たちで食べた世界で一番美味しいものだよ♪」

 

「なら、あとでたべる!」

 

美味しいと聞いて悪い気分になる人はおらず、ピーシェも嬉しそうになりながらそう宣言するのだった。

そうしている間にも、時間が来てしまったので、プルルートに手を引かれながら、ピーシェも『門』の中に入っていく。

 

「みんなぁ~、またねぇ~♪」

 

「ああ。またな・・・」

 

せめて『門』がしまって見えなくなるまではみんなの顔を見ていたい。そう思ったプルルートはピーシェと一緒に皆がいる方に身体を向けた。

手を振る振らないは個人差があるが、それでも全員はプルルートをしっかりと見送ろうとしてくれていた。

また、ピーシェはプリンに引っかかるものがあったのでそれを見つめていると、少しずつ自分の中にあった大切なものを思い出せるように感じた。

 

「・・・ねぷてぬ?」

 

「・・・・・・っ!」

 

そして、『門』が閉まり始めた時までプリンの蓋を見つめていたピーシェは確かに、この世界で最も親しかった人の名を思い出すことができた。

それを聞いたネプテューヌは一瞬だけ呼び戻そうかと考えたが、既に『門』が閉まった後だった。

 

「(ぴーこ。今度はそっちに行くから・・・その時は、また一緒に『ネプの』プリン食べようね)」

 

閉ざされた『門』を見ながら、ネプテューヌは心の中でピーシェに投げかけるのだった。

この後、全員でプラネタワーに戻り、結果的にネプギアが『蒼』を保有する形となったので、ズーネ地区で決めた当初の予定通り厳重管理を行う為の準備が始まることになった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

自分たちのゲイムギョウ界に戻ってから三日後、プルルートは自身のいたプラネテューヌの教会に戻って無事に日々を過ごしていた。

長い時間の遠出だったので、普段は仕事しろと言ってくるイストワールもそういうことは無く、戻ってきて早々ゆっくりと身体を休めてくれと言ってきたので、今回は甘んじて受け入れることにした。

その為、自分のいた世界に戻って来て早々、新しい縫いぐるみ作りをしていた。

 

「よぉ~し、できた~♪」

 

そして、しっかりと縫い合わせを終えたプルルートは、それを自分の眼前に持って来て笑みを浮かべる。

そうやって達成感に浸っていると、ノックとその直後にドアが開けられる音がした。

入ってきた主は自分の友人である為、変に気を使わなくていいとプルルートが言ったことから、その友人はノックだけはして後はそのまま入るようになっていた。

 

「お邪魔するわよ。って、また新しい縫いぐるみ?誰を元にしたの?」

 

「えへへ~♪向こうの世界でぇ、あたしに始めて変身しても良いって言ってくれた人だよぉ~♪」

 

友人の少女に聞かれたので、プルルートは満面の笑みでそう答える。心なしか、少々頬が朱色に染まっているような気もした。

 

「へえ・・・変身を良いって言ってくれる変った人が・・・。って、ええっ!?プルルートの変身を良いって言った!?それ本当なの!?」

 

「ホントだよ~。信じてよぉ~」

 

―プルルートの変身を良いって言うなんて・・・どんな変わり者なの!?プルルートの友人は驚きを隠せなかった。

当然の如く、その元とした人の人なりを理解していたプルルートは、彼のことをそう言われた事が不服で反論する。

何を隠そう、プルルートが今回作った縫いぐるみは、デフォルメされたラグナだったのだ。




少し遅くなって申し訳ありません。
これにて、この章も一段落になります。

前章から前々話していた『少女』のことは知ってたとなる人が多いかもしれませんが、その辺は私の安直な思考だったということでお一つ・・・(汗)。

先週の分を投稿した時に触れるのを忘れていましたが、BBTAGに新キャラが追加されましたね。40キャラ中、CV早見沙織さんが3人いるのは普通に凄いと思いました・・・(笑)。
そんなこともあって友人と対戦したところ、友人がまさかのメルカヴァにドハマりするという事態になりました(笑)。

次回は前章と同じように次回予告のNGシーンと+αをやってこの章を完結となります。
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