超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER- 作:ブリガンディ
「さて・・・これで用意は整ったな」
転移魔法でプラネテューヌを離れた後、レリウスは廃工場で『スサノオユニット』の再調整を行い、たった今それを完了させた。
後は使い心地だけ確認すればこれにて完成となる。その為、レリウスは『スサノオユニット』を持ち込んで全員が集まっている遺跡へと転移魔法で移動した。
「待たせたな。此れの調整が終わった」
「おおっ!?待ってたぜレリウス!ようやくこの時が来たか・・・」
転移魔法でやって来たレリウスが声を出して全員を振り向かせ、完成した『スサノオユニット』を見せる。
それを見たテルミが驚き、歓喜する。何しろこれはテルミが使用する為に作られたので、彼自身が誰よりも待ちわびているのは道理だろう。
「ほう?それが完成したモノか・・・ただ、見た目はまるでハクメンだな」
「あっ、言われてみれば見た目がそのままですね・・・」
「確か、ハクメンは『スサノオユニット』に中身が入ってるっちゅよね?」
「・・・そう言えばそうか。テルミが前に、『返せ』と言っていたからな」
最初は困惑するマジェコンヌとレイだったが、ワレチューが思い出したように言った事でマジェコンヌも思い出した。
それにより、レイも「そうだったんですね・・・」と納得できた。
「俺が憑鎧すれば見た目が変わるぜ・・・その辺も完全に再現できていればな」
「其の点については問題無いと自負しているが、確認の為に一度憑鎧を行って貰いたい」
「おうよ。それじゃあ、そいつ借りるぜ」
レリウスの頼みを承諾したテルミは『スサノオユニット』を受け取る。
「さぁてやってみるかね・・・『スサノオユニット』、憑鎧」
テルミの掛け声と共に、彼の足元に碧い紋章が現れ、紋章の直径と同じ大きさの、碧黒い竜巻が発生してテルミを飲み込んだ。
その竜巻が霧散して消えると、そこには先程までいた『スサノオユニット』とテルミの代わりに黒を基調とし、両肩と顔に口のようなものが付き、白く真っ直ぐに伸びていた髪も黒く広がるように伸びている、『スサノオユニット』のような禍々しい存在がいた。
そして、その『スサノオユニット』のような存在がその姿を確認して声を発した。
「おお・・・!これだこれ!大成功じゃねぇかッ!随分と久しぶりだなぁ・・・妙に縛り付けられるような感覚はよぉ・・・!」
その声はテルミのものであり、まるでハクメンが喋る時のようにくぐもった声が聞こえたのでレリウス以外の三人が驚いた。
唯一レリウスはそれが成功であることを知っていたので、ニヤリと口元を緩めた。
しかし驚くのはまだこれだけでは無く、次に聞こえてきた声で三人はまた更に驚くことになる。
「ふぅ・・・見苦しいところを見せたな。『スサノオユニット』と
「あ、ああ・・・。確認するが、テルミで間違いないな?余りにも声が違い過ぎてな・・・」
「其の事か。如何にも我はユウキ=テルミだ。此の姿では『
テルミにしては余りにも低すぎる声に三人は思わず驚いてしまい、どうにか反応できたマジェコンヌがたじろぎながら問いかけた。
マジェコンヌに問われたテルミは、普段のぶっきらぼうな口調が何処へ言ったんだと言いたいくらい尊大な口調で回答した。
「しかしながら、此の口調が引っ張られることすら完全に再現されるとは思ってもみなかったがな・・・」
「その方が雰囲気が出ると思ってな・・・。故に残させてもらった」
「そうか。ならば良い」
レリウスは後々『スサノオユニット』によるテルミの威圧感を引き出す為に、口調が変わるという部分をそのまま残した。
確かにそれならば人々に恐怖心を植え付け、情勢を荒れさせることなど容易いと考えたテルミはそれを良しとした。
「ところで、此れは後何度使用することができるのだ?」
「後二回・・・其れが限度になる。性能維持を最優先にした結果、寿命を犠牲にすることになったのでな」
「・・・後二回か。性能保持を優先したのならそれだけあれば十分だ」
たった二回という厳しい使用制限が課せられてしまっているが、元々使用制限がついてしまうと言っていたことを考えれば納得できる。
回数を優先したところで肝心な性能が酷いはシャレにならないので、寧ろありがたかったとも言える。
それが分かったテルミは、自身の体を碧黒い竜巻で覆い、少しするとそれを霧散させて元の姿に戻った。
「ふぅ・・・。とは言え、殆ど変わらない性能を使えるのはありがたいことだな・・・」
テルミにとっては何よりも嬉しいことがそれであった。
オリジナルと殆ど変わらない性能ならば、ハクメン相手には本来の持ち主という意味で有利を取れる。
これで本来のものより圧倒的に性能が劣っていた場合、ハクメンやラグナ相手には使うわけには行かなくなってくるので、それを避けられただけでも大きかった。
「さて・・・これで全ての用意は整ったな。後は襲撃を掛ける時間と、その段取りだな」
マジェコンヌの言う通り、今回の用意すべきものは全て整った。
その為、残りは襲撃を掛ける時間と段取りさえ打ち合わせれば準備完了であった。
「実はこの遺跡なんですけど、浮遊大陸として使えるんです。なので、移動する際はこれを使って注目を集めましょう。そうすれば、今回用意できた『スサノオユニット』で与えらえる効果をより期待できると思います」
「いいねぇ・・・そいつは乗ったぜ」
テルミ達が潜り込んでいる間に、タリの遺跡は浮遊大陸として使えることが判明していたので、それを余す事無く利用するつもりでいた。
今回用意できた『スサノオユニット』で恐怖心を煽ることができるのならと、テルミは真っ先に乗ることを決めた。
「後、プラネタワーをブッ叩けると効果が上がりそうだが・・・そっちは何かあるか?」
「一度きりですけど、浮遊大陸の状態ならプラネタワーを吹き飛ばせる威力を持つ大砲が使えるので、それを使いましょう」
「操作の仕方は聞いておいたから、操作はおいらにお任せっちゅよ」
テルミが思いついた事には既に方法があり、レイが丁寧に答えてくれた。
また、ワレチューが操作を行うことも決まっていたので、これでこちらが心配することは何も無かった。
「より恐怖感を出すのなら、誰か一人でも奇襲で倒せると良いな」
「ああ・・・それなら女神狙った方が良いか?ラグナちゃんやそれとよく似た奴狙う以上に効果出そうだし」
「それが良いだろう。候補生でも、女神でも、狙うのはどちらでも構わんだろう」
レリウスの言ったことは最もなので、同意したテルミが提案を出すとマジェコンヌが肯定してくれた。
候補生でも女神でも、どちらにしろ大きな効果を発揮するであろう。そうだとしても、テルミには一つ考えがあった。
「そうだな・・・できることなら候補生・・・。特に例のアイツを狙いてぇな」
「ほう?何か思いついたのか?」
テルミが考えたのはネプギアへの急襲だった。その選択に何か考えがあると気が付いたマジェコンヌがはテルミに問いかけた。
「実はこないだ洞窟行った時に気になることがあってな・・・。それを確かめるにはアイツが必要になる」
テルミとしては、己の中に燻っているものを確かめたかった。
実際のところマジェコンヌたちでプラネテューヌのみに絞った襲撃の際、テルミが洞窟に向かっていたのだが、最奥部の扉だけは開けられなかったのである。
これがもし『蒼』に関わるものとして仮定すると、テルミが前に持つ資格を得ていた以上、それと同じか、或いは既に『蒼』を所有している人が条件に当てはまると考えていた。
既に持っているならラグナは確定だが、今までのネプギアの様子からしてみて、彼女が持っていても何ら違和感が無いとも考えていた。
ネプギアを狙う事にした理由としては、『スサノオユニット』で女神を倒すことで恐怖心を煽ることが纏めてできるので、持っていたら最高だという希望的観測がある。
例え持っていなかったとしても、『二つの人格で自身が潰れるかもしれない』という状況を、何らかの方法で乗り越えている以上、『可能性』を示していることになるので、持つ資格は既にあると見て間違い無いだろう。
「なら、テルミさんはそちらを任せてしまって良さそうですね。そうすると私たちは残りを担当することになりそうですね・・・」
「私かレイは基本的に空を飛べる女神どもの相手をすべきだろう」
「それは是非とも頼む。そうなれば私は下側を受け負おう。モンスターを引き連れて行けば、嫌でもそちらに気が回るだろう」
空は当然ながらレイとマジェコンヌが引き受け、地上はレリウスが請け負うことになる。
この時モンスターを引き連れて行けば数の少なさを補えるので、それは名案だと賛成した。
「そしたら、誘導の段取りはどうするっちゅか?やれそうならおいらが引き受けるっちゅけど・・・」
「なら、操作は今の内に教えておきますね。時間になったら実行をお願いします」
「了解っちゅ。後はシェア収集装置の防衛がおいらの役目っちゅね」
役割分担はとんとん拍子で決まり、操作も教えられるものである為実行できる。
元々戦闘能力が皆無に等しいワレチューができることと言えばこういったことになるので、裏方仕事は抜かりなくやろうと心掛けるのだった。
「確か、この感謝祭夜にはイベントがあるらしいっちゅよ」
「夜か・・・ならば丁度良いな。そこに合わせることで良いか?」
ワレチューの情報が目安に出来ると判断したマジェコンヌが問えば、全員が頷いてくれた。
それによって、今回の方針は決定した。
「では、夜まで待機時間としよう。やり残しは無いようにな」
マジェコンヌの一言によって一時解散とし、レイとワレチューはモンスター誘導の為の準備に取り掛かり、残りのメンバーは休息に入った。
「(これだけ準備したなら、何としても勝ちたいところだな・・・)」
マジェコンヌは会議していた部屋にある椅子に座ってくつろぎながら、天を仰ぐのだった。
* * *
『なるほど・・・そんなことがあったのね』
同盟たちが会議をしている最中、四女神は今朝起きたことを全員で共有していた。
できれば通話で直接・・・と行きたかったのだが、生憎ネプテューヌが感謝祭で顔を出さなければいけない時間がある為それは無しになり、代わりに術式通信を使用していた。
「うん。あと、これは私の予想なんだけどさ・・・あいつらが襲撃してくるの、今日の夜じゃないかなって思うんだ・・・」
『それは・・・どうして?』
「あいつらがプラネテューヌに紛れてたってことは、この感謝祭のことも知ってると思うんだ。だから、今日は人が集まっているプラネテューヌに襲撃を掛ければ混乱間違い無しになるはず・・・。ちなみに、夜だと思ったのは準備に時間があるはずだから」
ネプテューヌが予想した理由をノワールが聞いてみると、一昔前の彼女とは思えない程冷静な分析に基づいた回答が帰ってきた。
その考えは納得できるものである為、ノワールは文句無し。他の二人も思わず声を上げながら納得していた。
『そうなると・・・私も仕事の日程をずらしてもらう必要がありますわね』
『こっちはハクメンとトリニティをプラネテューヌに向かわせて、周辺警戒の協力をさせるわね』
『私の方は何か情報を掴めないか調べてみるわ。だからネプテューヌ、こういった雑務はこっちに任せて、あなたはプラネテューヌに来ている人たちをお願いね?』
同盟の襲撃が来るかもしれないと言う知らせがあれば、仕事だと言って無視するわけには行かない。
そう言った考えを言葉にせずとも全員が持っていた故に、即座に対応できるような選択を選ぶのだった。
それが有り難く思い、ネプテューヌ「みんな・・・」と嬉しそうに呟く。
「分かった。そういうことなら
『ええ。時間も無いですから、早速行動しましょう』
『そうね。こっちもみんなで共有しておくわ』
『私たちも遠いから、出かけられる準備をしておくわね。後、それから・・・』
ネプテューヌの宣言と頼みは即座に承諾され、行動に入る雰囲気が出来上がっていた。
すぐに行動するのは良いが、ブランは先に言っておかなければならないことがあったので前置きを作る。
『ネプテューヌ、さっきは無茶振りをさせてしまったわね・・・。武器を持ったまま行くアレ、完全にアドリブでやったから・・・』
「ああ~っ!やっぱりぃ~!?まあでも、それで騙せたんだったら結果オーライだから別にいいよ」
『・・・ふふっ。実行する相手が貴女で本当に良かったわ』
あの後よくよく考えてみた結果、ブランのアレがアドリブであることに気が付けたネプテューヌだったが、元々ああやって仲違いをしているフリをしている時に、自身の心境を気にする余裕が無くなったのは帰って気が楽になったのでネプテューヌとしては寧ろ助かった気分だった。
アレがもしノワールやベールだったらすぐに気づいてしまい、それが内面に出てレリウスにバレる・・・。となっていたかもしれないので、ネプテューヌ自身は寧ろ自分で良かったかもしれないと考えを持っていたので、殆ど気にしていなかった。
それが分かったブランは、安心した笑みを見せていた。
「じゃあ、話すこと話したし、ここで解散だね」
『ええ。あなたも気をつけなさいよ』
『できるだけ早く来れるようにするから、それまでは持ちこたえて』
『運が良ければ、私は夜になるより早く来れるかもしれませんので、待っていてくださいな』
解散という言葉を合図に、全員が一言残してから通信を終了する。
「(ネプギアとラグナのお時間を奪うわけには行かないし、こういう時こそ頑張らないとね!)」
ネプテューヌは頬を両手で叩いて自分に喝を入れるのだった。
* * *
「さて、どっから回るかな・・・」
「人が多いから、大変そうですね・・・」
ラグナとネプギアは国内に同盟の人たちが残っていないかどうかの確認も含めて、感謝祭の様子を見て回ることになった。
ちなみにネプテューヌからはハクメンやトリニティが協力してくれるので、二人組を組めるならなるべくそうして欲しいと言う頼みもあった。
「こっちから回ってみるか?大体反時計回りで回れそうだしな」
「人通りの流れにも逆いにくいから、私もそれが良いと思います」
回るルートがすんなりと決まったので、ラグナとネプギアは早速移動を始める。
確かに流れに逆らわないとは言え、その人の数が少ないとは言っていない。人が密集している場所に入れば、鍛えていない体だと簡単に進めないだろう。
「う・・・うぅ・・・」
その密集した場所でもラグナ自身は問題無いからこのまま進めるが、平時の姿であるネプギアでは力が足りない。
その為、彼女は人の波に飲まれそうになっていたのだ。
「悪いな」
「・・・へ?」
自身が声を出していたことで気づいたのか、ラグナは自分の左手でネプギアの右手を掴んで引っ張った。
あまりにもいきなりの事であったため、ネプギアは思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。
混乱しながらも掴まれた右腕を見てみれば、こんな状況とは言えラグナと手を繋いでいると言う事態を理解したネプギアは顔が少しずつ赤くなる。
「ら、ラグナさん・・・そんなことしなくても大丈夫ですから・・・!」
「人の波に飲まれそうになったのに、無理に大丈夫とか言わねえ方が良いぞ。とりあえず、この波抜けるまでは我慢してくれ」
「は、はい・・・」
抗議してみるネプギアだが、ラグナの言っていることは正論な為反論できず、手を繋いだまま人の波を抜けるのだった。
「(でも・・・こうしていられるのはちょっと嬉しいかも)」
助けられたことは申し訳ないと思う傍ら、ラグナと手を繋ぐことができたネプギアは自然と笑みがこぼれるのだった。
「どうにか波を抜けたな・・・」
「はい。助けてくれてありがとうございます」
「お前が無事で何よりだよ」
礼を言えば言われて嬉しくなるようなことを言われ、ネプギアは再び顔を赤くする。
その様子を見たラグナは、ただ本音を言っただけなのにどうしてだろうと首を傾げることになった。
とは言え、これは考えたところでそう簡単に答えは出ないだろうとだけは予想できた。
「アイツらの影は見当たらなかったし、そろそろ行くか」
「え・・・?あ、ちょっとラグナさん・・・!」
ラグナは自分がネプギアの手を引いたままである事を忘れたまま歩き出したので、ネプギアは引っ張られる形になってしまった。
もう大丈夫だからと言おうと思ったが、このままだと「何が?」と言われそうな気もして言うに言えなくなってしまった。
仕方ないので、ネプギアは暫くの間ラグナに手を引かれたまま調査すると言うことになった。
「それにしても、見当たりませんね・・・」
「もしかしたら、もう準備を始めてるのかもな」
結局手を繋いだまま調査をしているが、今のところ誰も見つけていない。
ラグナが口にした事の可能性も捨てきれはしないが、見逃してしまってはいけないのでこのままだと調査を続行することになった。
「それにしても大分賑わってるな」
「久しぶりに国民のみんなが楽しめるイベントなので、その反動もありそうですね」
回ってみて気が付いたことと言えば、国民の様子だった。
売店で商売をしている人も、ゆっくり回っている人もみんなが楽しんでいる様子が表情に出ていたのだ。
同盟のメンバーが見つからないのはさておき、国民たちが楽しめるイベントとしては確かに効果があったと言える。
「はい、お待たせ。こぼさないように気をつけてね~」
またしばらく見回りを続けていると、売店の一つでリンダが手伝いをしている姿を目撃した。
持ち運びが楽なものを取り扱っていたので、休憩がてら立ち寄ることを選んだ。
「よう、頑張ってるみたいだな」
「いらっしゃ~い・・・。って、ああどうも。来てくれてありがとうございます」
軽く声をかけて見れば、リンダは業務上の挨拶をしながら自分たちに気が付き、礼で返してくれた。
開店からずっといたのだろうか、彼女の額には光る汗が見えていた。
「とりあえず二つもらえるか?」
「二つですね。ちょっと待っててくださいね~」
要件を伝えれば、リンダは一度奥に引っ込んで品物の準備を始める。
もう既に作り終えてあるのか、一分もせずにこちらへと戻ってきた。
「お待たせしました~。それにしても、今日はお二人でデートか何かですか?」
「ん?デート?」
「いやほら、こっちに来る頃には手を繋いでたもんですから・・・」
「「・・・・・・」」
リンダに言われて二人は、繋いでる感触のある方の手をネプギアの肘の高さまで持ち上げる。
そして、今までどういう状態で回っていたかを悟った二人は顔を赤くし、慌てて手を離した。
「ああ、これか・・・さっき人の波に飲まれそうなったから、はぐれないようにってな・・・」
「そ、そうなんです・・・!難を逃れる為にこうしてただけで、私たちはそういう関係じゃ・・・!」
「ああ、そういうことだったんですね・・・。さて、他のお客さん待たせちゃうといけないんで、二つ分渡しちゃいますね」
「あ、ああ・・・」
ラグナは慌てながら、ネプギアは顔を赤くしながら理由を話すと、リンダはこの二人・・・特にラグナならそうだろうと納得した。
リンダが少し促すように品物を渡してきたので、二人はそれを受け取る。
「それじゃあ、俺たちはそろそろ行くよ」
「お店の手伝い、頑張ってくさいね」
「お任せください。それじゃあ毎度あり~♪」
リンダに笑顔で送られながら、二人はこの場を後にし、近くにあるベンチに腰を掛けて一息つくことにした。
「この感謝祭・・・上手く行って良かったですね」
「ああ。皆に楽しんでもらおうと思って考えたんだもんな」
休息を挟みながら周りの人の様子を見て、互いに安心する。
これで国民たちが楽しめていなかったら、今回の企画の狙いが外れたことになるので、それが避けられたと分かっただけでも良かったのである。
「俺・・・この世界に来た時は、平穏に過ごせるならそれだけでも十分だって思ってたんだ」
「・・・ラグナさん?」
ラグナは一度自分を落ち着かせてから、自分の内にあるものを告げ始める。
自分の事は話すことの少ないラグナだったので、珍しいと感じたネプギアはラグナの方へ顔を向けた。
「だけどさ・・・。ここにいるやつらと話したりしている内に、この世界での生活が楽しくなって、いつの間にか好きになってたんだ」
「・・・・・・」
ラグナの話を聞きながら、ネプギアは柔らかい笑みを浮かべる。
ネプギアがそう言う表情になってくれるなら良かったと思ったラグナも、また穏やかな笑みになる。
「まだ、色々問題とかは残ってるけど・・・それでもこの世界が好きだって気持ちは本当だ。だからこそ、俺は
「・・・そうですね。ゲイムギョウ界とみんなを護りたい気持ちは、私も同じです」
ラグナは柔らかい表情でこう言うものの、心の中では一つだけ気掛かりなことがあったので、それだけは言わなかった。
今回もそれがバレるようなことは無く、ネプギアはラグナの言葉に同意した。
「さて、そろそろ見回りを再開するか」
「そうしましょう。休み過ぎて見つけられなかったら大変ですから」
ひとしきり休憩を終えた二人はベンチから立ち、再び見回りを再開するのだった。
* * *
「さて、頃合いだな」
「じゃあ、起動のスイッチを押すっちゅよ」
時間は夕方となり、浮遊大陸の移動速度を考えれば行動を起こすのに丁度良い時間となっていた。
マジェコンヌの呟きを聞いたワレチューが、レイに教えてもらった通りに操作をして浮遊大陸を浮かび上がらせる。
この時、元々地面に埋まる形で隠れていたので周辺に地震を起こし、被っていた土を落としながら上空へ移動した。
「テルミさん、私たちは・・・」
「おう。すぐ外に出られるように移動すっか」
「では、この場はネズミに任せよう」
「ああ。後は頼んだぞ」
テルミたちはプラネテューヌに着いたら真っ先に行動を起こすので、スタンバイすべく移動を始めた。
それには手を振ることで答えたワレチューは、すぐに次の行動へと移る。
「連れて行けそうなモンスターは・・・こいつらっちゅね」
ワレチューはプラネテューヌに誘導できそうなモンスターを見つけ次第、それらをプラネテューヌに向かわせるように仕向ける操作を行う。
それによってモンスターたちは我先にとプラネテューヌを目指して走り出した。
「(今の女神たちは・・・どうやって乗り越えようとするのかな?)」
プラネテューヌを目指して飛んでいく浮遊大陸の中で、レイは内心期待しながら時を待つのだった。
* * *
夜になっても、プラネテューヌの感謝祭は相変わらず盛況だった。
アイエフがマジックを披露したり、コンパが怪我してしまった人に即時手当を行って感謝されるなど、平常運転と少し趣向を入れたものが混ざれど、多くの人たちが楽しんでいることは本当だった。
《ナオト、日本でのお祭りはこれくらい盛り上がっていたかしら?》
「いや、流石に国一つ丸ごとなんて規模は無かったよ・・・。それにしても、この様子なら上手く行ってるみてぇだな」
ラケルはナオトに尋ねてみるが、流石に規模が違い過ぎて否定される。
しかしそれでも盛り上がっている事には間違い無いので、後は何事もなく終わることを祈るのみである。
「ああ・・・ちょっとそこのアナタ」
「ん?俺がどうかした・・・って、お前は前に会った・・・。悪い、誰だっけ?」
「アブネスよっ!自分から名乗って無いとは言え、女神候補生から名前出てたでしょ?」
声をかけられたナオトは振り向くが、アブネスのことを言われるまで本当に思い出せなかった。
その為、ナオトは「悪かった」と平謝りするしかなかった。とは言え、アブネスも自分に非があることは自覚しているのでそこまで責めはしなかった。
《それで?貴女は何をしに来たの?》
「ああ、忘れるところだった・・・。えっと、プラネテューヌが何らかの手段でここまでのシェアを取ったから、何があったのかを聞きたくてね・・・」
「それか・・・ネプテューヌもこの時期になってから一気に集まるのはどうも怪しいって言ってたからなぁ・・・」
ラケルに問われてアブネスが目的を伝えると、ナオトはネプテューヌが怪しんでるなら勘のいい人はそうなるだろうと納得した。
「・・・アレ?じゃあ、プラネテューヌの不正手段じゃないのね・・・」
「そうだったら今頃、何事も無かったかのようにはしゃいだフリしてそうだが・・・」
《まあ彼女の性格からして、そもそもそんなこと自体しないでしょうね》
アブネスがガッカリしたような、安心したような表情を見せるとナオトも苦笑交じりに言い、ラケルはネプテューヌの性格を信じている旨を言う。
これによってまた、誤解による混乱を避けることに成功したのである。
「お、お前らここにいたのか」
「ん?今四人で行動してたのか・・・」
また違う方から声をかけられたのでナオトが振り向くと、そこにはラグナとネプギア、ハクメンとトリニティの四人がいた。
どうやらあの後合流していたらしく、周囲の確認を切り上げ、万が一のことが起こった時の為に人が多い場所に紛れ込むことを選んだようだ。
「な、なんか関わりづらい人が増えたような・・・。ロリコンまでいるし」
「お前はまだそれを言うか・・・」
アブネスが震えながら言うのを見ながら、ラグナは呆れ半分に溜め息をついた。
そうやって平穏に動いていた時間だったが、突如自分たちを巨大な影が覆ったので、上を向いてみると巨大な大陸らしきものが浮かんでおり、周囲の人たちがざわつきした。
* * *
「・・・えっ?それ本当なの?」
『あいつの言っていた事が正しければね・・・。正直、本当であってほしく無いわ』
いきなり巨大な大陸を目の当たりにしたネプテューヌは現場に走りながら移動している最中に、ノワールから嫌な知らせを受け取った。
どうやらアノネデス曰く、レリウスがハクメンの使っている『スサノオユニット』をまんま創り上げていたとの話で、時期的に丁度完成している筈だということだった。
それが本当だったとしたら、色々と辛いことになるのでそうであってほしく無いのはネプテューヌも同じだった。
「なんかデッカイ大陸の下にヤバいの見えてるから、本当にあいつら来ちゃったみたい・・・」
『まさか本当に来るなんてね・・・分かった。私はみんなに連絡してすぐに行くから、それまでは持ちこたえて』
「うん。それじゃあ時間ないから切っちゃうね・・・!」
短く通信を終えたネプテューヌは変身して大陸の近くまで移動した。
大陸まである程度近づいて見ると、そこには変身した状態であろうレイの姿があった。
「・・・!?あなた、まさかだけどキセイジョウ・レイ!?」
「あっ、解りましたか?それは少し安心しました・・・」
驚くネプテューヌに対して、レイは胸をなでおろした。
自身の姿に変化が少ないからか、気づくのは楽だったのだろうと思うと変化の少なさに助けられたと感じるのだった。
「まさか・・・あなたが女神だったなんて・・・」
「驚くのも仕方ないでしょうね・・・。実は、大昔にタリという私の身勝手で滅亡してしまった国がありましてね・・・そこの女神だったんです」
同盟のメンバーに女神がいたということで動揺が隠せなかったネプテューヌに対し、レイはその様子に同意しながら自身が何をしていたかを答える。
その説明にも、ネプテューヌはまた驚くことになってしまった。
「でも、そんな昔の女神が今更何をするつもりなの・・・?まさか、国を返せとかそんなことは言い出さないでしょうね?」
「そんなことは言いませんので安心してください。ただ、確かめに来たんです。あなたたちが女神の力に溺れる事無くやっていけるかどうかを・・・。私のように、気に入らなければすぐに力を振るう愚か者にならないからを・・・」
レイから告げられた宣言に、ネプテューヌは身構える。
また、次の言葉を告げながらレイは杖を手元にだしたので、ネプテューヌも太刀を手元に出して身構える。
「それと、その力で、国民を護りきれるかどうか。それを確かめたいんです。私たちから彼らを護れないのなら、そこまでだったという話ですからね・・・」
「・・・・・!」
ネプテューヌは太刀で牙突の構えを取るが、レイは杖を持ったまま動きはしなかった。
代わりに、左手を耳元に当てて通信を始めた。
「それでは皆さん、始めましょう」
『了解、大砲のスイッチオンっちゅ!』
レイの合図が皮切りとなり、ワレチューがスイッチを押す。
それによって、浮遊大陸の下部にあった大砲が紫色の光を集めながら光を大きくしていき、臨界になったと同時にそれをプラネタワーに向けて撃ちだした。
その弾は寸分の狂いも無くプラネタワーに突き刺さり、柱状のプラネタワーを覆う爆風がそれを飲み込んだ。
そして、その爆風が消えると、プラネタワーは見る影もない程壊れており、周囲の地面や建物にも被害が及んでいた。
また、それと同時に国民たちがパニックを起こして避難場所へ向けてバラバラに走り出すのだった。
「そ、そんな・・・。プラネタワーが、ああも簡単に・・・」
「まだ終わりませんよ?ここからが本番ですから・・・。テルミさん、いつでもどうぞ」
『おうよ!つーことなら早速行かせてもらうぜェッ!』
レイから連絡を受けたテルミは、浮遊大陸から何の補助器具も無しに飛び降りていった。
「嘘っ!?何の補助も無しに飛び降りたの!?」
「彼の手に持っているモノ・・・それをよく見て下さい」
レイに促されたネプテューヌが落ちていくテルミを目で追ってみると、テルミが右手に『スサノオユニット』を持っている事が分かった。
ノワールの言っていた事が本当だったというのが証明され、最悪な状況であることが嫌でも伝えられた。
「ノワールが言っていた事は本当だったみたいね・・・」
それを見て危機感を持ったネプテューヌは、歯嚙みしながらそれを目で追うしかなかった。
そして、ある程度以上の高度まで降りたことで、テルミも行動に移る。
「行くぜ・・・『スサノオユニット』憑鎧・・・!」
自身の体を碧い竜巻に飲み込ませ、『スサノオユニット』を纏った状態に姿を変えながら地面に着地する。
その地鳴りと威圧感によって、騒ぎ立てていた人たちの動きと声が一気に止まり、姿の変わったテルミを目の当たりにする。
「・・・莫迦な!?『スサノオユニット』だと・・・!?」
「まさか
「人の手で、神を創造するなんて・・・」
その姿を見た三人は動揺を隠せなかった。まさかレリウスがそこまでやって来るとは予想できなかったからだ。
「下郎共よ・・・見るが良いッ!これが我、ユウキ=テルミの新たなる姿と力である!」
テルミは引っ張られる口調をそのままに、呆然としている国民たちに告げながら手元に碧い炎のようなもので生成した剣を手に取り、自身の最も近くにあった建物を右から斜めに振り下ろすことで切り裂いた。
切り裂かれて崩れ落ちた部分はテルミに直撃するが、全くダメージを受ける事無く、建物の破片だけが彼の近くに落ちるだけだった。
「さあ、怯えろ!走り回れッ!我を恐怖し逃げ惑えッ!死にたくなくば、安全な場所まで死に物狂いで逃げるのだなッ!」
「クソッ!こっちでどうにかするしかねぇな!」
テルミが焚きつけたことで、国民たちは再び悲鳴や絶叫を上げながら再び走り出した。
それによってラグナたちは、人の波に飲まれそうになりながらもテルミの元へ急がねばならないと言う事態に陥ってしまうのだった。
「くっ・・・!これ程だなんて・・・。でも、この国を護ると決めた以上、引くわけには行かないわっ!」
「ええ。それで構いません。では、こちらも始めましょうか・・・この国を護りたいのならば、他人の力を借りてでも良い・・・私たちを前に、己の国を護りきって見せなさい!」
ネプテューヌが太刀を持ったままレイに向かって行き、それを見たレイは杖を左から斜めに振り下ろすことでいつでも技を打てると思わせるように身構える。
こうして、同盟との最大規模の戦いは幕を開けるのだった。
最後はちょっと駆け足になった感じがあります・・・(汗)。
勇者ネプテューヌが等々発売しましたね。
私はプレイする時間が暫く確保でき無さそうなので、確保でき次第遊んでいきたいと思います。
次回からはアニメ12話分に入り、同時に最終決戦に入ることになります。
残すところ後わずかになりましたが、最後までお付き合い頂けたら幸いです。