超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER-   作:ブリガンディ

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前回の続きになります。


61話 God of War(後半)

「紅蓮ッ!」

 

「薙ギ裂ク狂爪ッ!」

 

ハクメンが『斬魔・鳴神』の鍔本を押し当てるのに対し、テルミは己の右肩を使ってタックルを放つ。

テルミのタックルは『スサノオユニット』を纏ったことによって、肥大した質量で威力が上がっていた為、ハクメンの放った攻撃をあっさりと押し返して見せた。

 

「・・・何!?」

 

「もう一撃だ・・・」

 

自身の攻撃を押し返された反動と、ここまであっさりと押し返された驚きが重なり、ハクメンは一瞬硬直してしまう。

その隙を逃さんとばかりにテルミは舞うように回転しながら左腕を下から振り上げ、ハクメンの顎下にぶつける。

 

「ぬぅ・・・!」

 

「次はこれを受けよ」

 

ハクメンはそれによって軽く宙を舞う事になり、それによって無防備になったところにテルミは追撃を選択する。

テルミが放つは右腕の拳辺りから碧い炎のようなものを撃ちだす攻撃で、それは無防備となっていたハクメンの背中に直撃を許した。

 

「ッ・・・!」

 

「なっ・・・ハクメンッ!」

 

どうにか剣を使いながら起き上がったラグナの目には丁度、ハクメンが吹き飛ばされてビルのガラスを突き破って行ったのが見えた。

それと同時に、今ここでテルミを止めなければ危険だと考えたラグナは、右腕を自身の肩の高さまで持っていく。

 

「第666拘束機関開放・・・次元干渉虚数方陣展開!『蒼炎の書(ブレイブルー)』・・・起動!」

 

ラグナは『蒼炎の書』を速やかに起動させ、剣を手に持ち直してからテルミへと再び向かって行く。

ここで『イデア機関』を使わなかった理由として、あと一回しか使えないが故に迂闊な使用を避けたかったのだ。

 

「貴様を滅するのは最後にすると言ったのだがな・・・。まぁ、良かろう」

 

その姿を確認したテルミは一瞬ウンザリとした声を出したのだが、思いついたことがあるので引きずらないことにした。

 

「ならば貴様を動けぬ状態にして、いつでもトドメをさせるようにすれば良いのだからな・・・」

 

テルミはラグナの方に向き直りながら体をその場でうずくまるような動作を取り、力を溜めていく。

それによって碧い炎のようなものがテルミの体から吹き出て来ていた。

 

「覚悟するが良い・・・哭キ穿ツ崩落ノ怨嗟ッ!」

 

テルミは両腕を外に広げ、顔を上に向けながら雄叫びを上げる。

それによって自身の体から碧い炎のようなものがより大きくなり、地面が震えた。

それらが終わると同時に、テルミは自身の体に力が更に満ち溢れてくるのを感じた。

 

「さあ、どこからでもかかって来るが良い・・・。貴様の攻撃、此の我が全て潰してくれようぞ」

 

「クソがぁ・・・。こっちだってタダじゃ終わらねえぞ!」

 

向かってくるラグナを見たテルミが余裕そうに左手を使って挑発する。

対するラグナは、それが挑発だと分っていてもやるしかない考え、自身が持っていた剣を強く握りしめる。

 

「インフェルノディバイダーッ!」

 

「・・・見えるぞ」

 

ラグナは剣に黒い炎のようなものを纏わせながら振り上げるが、テルミは一歩後ろに下がる事でいとも簡単に避けて見せた。

 

「なっ・・・!?」

 

「残念だったな・・・」

 

受け止めてくるならまだ対応できた可能性はあったが、まさかの冷静に回避したのを目の当たりにしたラグナはその事実に気を取られ、次のアクションへ繋げられなくなってしまった。

ラグナが技を放った影響で一通り登り切ったのを見て、テルミは右足に碧い炎のようなものを纏わせ、自身の攻撃を準備しておく。

 

「散リ殺グ礫巌ッ!」

 

「うお・・・!?」

 

テルミは地面を削りながら右足を思いっきり振り上げ、碧い炎のようなもので形成した波をラグナに浴びせる。

着地のタイミングに合わせられた事によってラグナには防御しか選択が残されず、剣を使って守りに入るのだった。

 

「この野郎・・・!こんなに力が増えてるのかよ・・・!」

 

「・・・隙を見せたな」

 

「・・・!?」

 

ラグナが衝撃に負けぬように踏みとどまっている内に、テルミはラグナの目の前まで近づく。

衝撃に耐えきった頃に声を出したので、驚いたラグナは顔を上げる。

するとそこには両腕を頭上に掲げて、何らかの行動を起こそうとしているテルミの姿があった。

 

「特別だ・・・。貴様には神の剣を味わう権利をやろう・・・」

 

「ヤベェ・・・!」

 

テルミが碧い炎のようなもので剣を作り上げていくのを見たラグナは、慌てて剣に黒い炎のようなものを纏わせた。

 

「断チ斬ル閃刃を受けるが良いわァッ!」

 

「ふざっ・・・けんなァッ!」

 

テルミが作り上げた剣を左から水平に、ラグナが自身の持っている剣を上から縦に振るう事で、互いの攻撃がぶつかり合う。

しかしながら、両者の威力には余りにも差が大きすぎた。

 

「っ・・・・・・!」

 

「耐えるのは見事だが、呆気無いな・・・」

 

その反動で飛ばされそうになるのを耐えながら歯を食いしばるラグナを見て、テルミは抑揚がない様子で呟く。

そして、ラグナが体制を立て直すよりも早く右足でラグナの腹辺りを、自身の体感で軽く蹴り飛ばす。

 

「グアァ・・・!」

 

「ふん。『エンブリオ』の影響無しに此の力があれば・・・貴様など其の程度のものだ」

 

それでもハクメンが全力で蹴り飛ばして来る時と同じくらい威力があり、ラグナは吹っ飛ばされ、再び地面に背中を擦らせる形になった。

前回は『エンブリオ』の影響を一切受けていないラグナと、その影響をまともに受けているテルミと言う事もあって、十分にチャンスを与えてしまっていたが、今回はそれが無い故に余程の奇策でも無い限り一対一での敗北は殆ど無いだろう。それ程までにテルミの優位は大きかったのだ。

 

「クソ・・・このままやっても埒が明かねぇな」

 

「理解したか?ならば、貴様は最後の一人となるまでゆっくりと我が力の前に・・・」

 

「・・・っつっても、それは俺一人だけとか、ハクメン一人だけだった場合の話だ」

 

起き上がりながら吐き捨てるラグナの愚痴を拾ったテルミは満足そうに頷き、そのまま跪いていろと言おうとしたが、それはラグナが遮った。

また、愚痴をこぼしていた時こそ歯嚙みしているような表情ではあったが、今はそんなことも無く僅かに笑みを見せていた。

 

「・・・何?・・・!」

 

それが一瞬よく分からなかったテルミだが、その疑問は背後に感じる熱気によって解決した。

己の勘に従ったテルミは回れ右をしながら自身の右腕を眼前に構える事で、飛来してきた巨大な火球を防いだ。

一瞬だけ防御方陣を展開して防いだのでダメージこそ無いものの、爆風の影響で一時的に前が見えなくなる。

 

「大魔導士ナインか・・・予想よりも来るのが早いな・・・」

 

煙が晴れていく中で、攻撃した主を看過していたテルミは火球が飛んできた方向を見ながら呟く。

攻撃してきたナインは、火球が飛んできた方向の先に浮遊しており、次の攻撃ができるように準備をしていた。

それ自体は防げば良いので特に問題としてはいないが、テルミは一つの疑問が思い浮かんだ。

 

「一つ訊こう・・・。貴様らは仲を違えていた筈だが・・・何故此処まで早く合流して来れた?」

 

「理由としては幾つかあるわよ。まず一つ目として、私の近くにいた人なら転移魔法で移動することができた。プラネテューヌ国内に何も妨害が無かったから、楽に辿り着かせてもらったわ」

 

ナインの一つ目の回答を聞いたテルミは、成程それはそうだったなと納得する。

確かにナインは現在リーンボックスに所属している為、そこにいる人たちが転移魔法を使えば短時間でここまで来れるのは自然だろう。

 

「二つ目は、女神たちの会話を聞いていたのなら仲違いしたように見えるでしょうけど、私たちはそうでは無かった・・・ナオトやノエルが彼女たちの喧嘩を止めようとしていたでしょう?」

 

「・・・・・・」

 

二つ目の回答でテルミはハッとした。確かにラグナたち異世界組は言い争いに参加すると言うよりは、止めに行っていたのだ。

つまるところ、自分は女神たちの様子を気にしていた余りラグナたちの事を見落としていたのである。完全に足元を掬われた結果であった。

 

「そして三つ目・・・ここがあなたたちの最大の過ちね。マジェコンヌたちの方を見て見なさい」

 

「・・・何?」

 

ナインが指差して促すので、テルミは疑問に思いながらそちらを見やる。

 

「くっ・・・強い・・・!」

 

「まだ終わりませんよ・・・これに耐えられますか!?」

 

ネプテューヌがマジェコンヌに押し返されて体制を崩したところを、レイが容赦なく杖からビームを撃ちだそうとしていた。

 

「・・・!?」

 

「お姉ちゃん・・・!」

 

体制が崩れた事によってネプテューヌは回避が間に合わなくなり、ネプギアも救援に入りたいが今からビームを撃つのは間に合わない。

かと言って自身の身を投げ出してネプテューヌを庇おうにも、レイの攻撃を前には防御方陣込みでも怪しい状態であった。

これだけ見るとどこが過ちなのだろうかとテルミは首を傾げるが、それは即座に解決する事になった。

 

「っ・・・!?」

 

レイは急に嫌なものを感じて身を引いた。

すると先程までレイがいた場所を緑色の刃が物凄い勢いで通り過ぎていき、正面に向き直って見れば予想外の人物がそこにいた。

 

「お待たせしました。お二人共大丈夫ですか?」

 

「ベール!来てくれたのね・・・」

 

「ありがとうございます。おかげで助かりました」

 

何とプラネテューヌの女神二人より一歩前の位置に、仲違いしていた筈のベールがそこにいたのだ。

それによってレイとマジェコンヌ、そしてテルミはいよいよどういう事だと慌てる事になる。

―何故仲違いしていた女神どもがこうもあっさりと手を取り合うのだ?それが理解できなかったのである。

 

「残念だったわね・・・。そもそも彼女たちは仲違いなんてしていないッ!」

 

「何・・・だと・・・!?」

 

告げられた事実に、テルミは啞然とするしかなかった。何しろ彼女たちが詐欺めいた事に走るとは思わなかったのである。

 

「だが、奴らは現に・・・!」

 

「ああ・・・アレはアンタたちにそう思わせる為の振りよ。とは言え、こっちも『スサノオユニット(それ)』を造っているとは思わなかったけどね・・・」

 

ナインとしても、まさか『スサノオユニット』を創り上げているとは思っても見なかったのである。

しかしそれ以上に、まさか自分たちが策で負けたとは思っても見なかったので、彼らとしてはそちらのショックの方が大きかった。

 

「まさか、策士策に溺れるということが・・・実際に起ころうとはな・・・」

 

「とは言え、これくらいならばまだ十分に対応可能です」

 

「そうだな。二人増えたくらいならばどうにでもなる」

 

最初こそ自嘲気味に呟いたマジェコンヌだが、レイの言う通りまだ余裕があるのでそこまで気負う必要も無かった。

気を取り直したマジェコンヌとレイが武器を構え直すのを見て、三人の女神も武器を構え直した。

 

「ベール、分かっているとは思うけど・・・」

 

「ええ。キセイジョウ・レイ、マジェコンヌに劣らず強いようですわね・・・」

 

ネプテューヌの言いかけた言葉にベールは頷く。

何しろズーネ地区の時はアンチクリスタルの恩恵があったとは言え、女神候補生四人相手でも圧倒出来ていたマジェコンヌと、先程まで彼女と良い連携を見せており、それでいて一対一でもネプテューヌ相手に有利を確保していたレイ。

これらを相手にする以上、当然油断するわけには行かないのである。

 

「ところで、お二人共体の方は大丈夫ですの?」

 

「はい。私はまだ大丈夫です」

 

「私も平気・・・と言うより、後ろには国民がいるから逃げるわけには行かないわ」

 

「ふふっ。そうでしたわね・・・」

 

何せここはプラネテューヌの国内。ベールが救援に来たとは言え、ネプテューヌたちが先に後退してしまっては申し訳が立たないだろう。

それと同時に、苦しい状況に追いやられながらも諦めない二人を見て、ベールは安心感を覚えるのだった。

 

「では、行きましょう・・・あまり長時間不安にさせるのはよろしく無いですわ」

 

「来るか・・・。レイ、まだ行けるな?」

 

「ええ。そちらも無理はしないで下さいね?」

 

ベールが促したことで二人は頷き、三人で同時にマジェコンヌらへ向かって行く。

それをみたマジェコンヌは短く確認し、レイも注意を促す。しかしながら、それを聞いてもなお、マジェコンヌは余裕そうな笑みを見せる。

 

「何を言う。まだ序の口だ・・・これくらい余裕を残して切り抜けて見せねば・・・」

 

「そうでしたね・・・。では・・・!」

 

マジェコンヌの言う事は最もであり、レイもまだまだ余裕がある。

それと同時に、その心意気は自分も同じであった為に自然と笑みが零れる。とは言えそれはそれとして気を取り直し、二人も彼女らへ向かって行って距離を詰める。

 

「御前が来てくれたか・・・此れならば、もう幾分か持ちこたえられるだろう」

 

「ええ。逃げ遅れた人たちに被害が行かないようにする為にも、ここで食い止めましょう・・・ラグナ、『イデア機関』はまだ使っていないわね?」

 

「ああ。まだ残ってる」

 

ハクメンは突っ込んで行ってしまったビルから戻ってきてナインがいる事を確認し、ナインはハクメンに促しながらラグナに問いかける。

幸いにも残り僅か一回しかない『イデア機関』は未使用である為、そこだけは救いであった。

もしここで「使っちまった」などと言われれば、突発的な逆転性が一気に落ちぶれるので、それが避けられただけでも相当に大きい。

 

「大魔導士ナインも増えるか・・・良かろう。相手に取って不足は無い・・・」

 

元の世界では『六英雄』と呼ばれたナインが相手に増えてもなお、『スサノオユニット』を身に纏ったテルミは余裕そうな声色を出して構えを取った。

それもそのはずで、ナインやハクメンと同じくテルミも『六英雄』の一人であるからだ。故にテルミはこれくらいのことで怯みはしない。

 

「ったく・・・アレでも余裕だと気が遠くなるぜ・・・」

 

「これくらいで音を上げていたら持たないし、やるしかないわね・・・」

 

「無論其の心算だ。御前たちも、諦める事など無いのだろう?」

 

愚痴をこぼしたりはするものの、ハクメンの問いかけには素直に頷く二人。

例え『スサノオユニット(強大な敵)』が目の前にいたとしても、やることは変わらない。

ラグナであれば『タケミカヅチ』を、ナインとハクメンであれば『黒き獣』を前にした時のように、諦めの悪さは全く変わらないのである。

ハクメンの場合当時は執念もあったかもしれないが、それでも『黒き獣』を打つまで意志が折れなかったのは間違いないだろう。

 

「と謂う訳だ・・・テルミ、今度こそ貴様を滅してくれよう」

 

「ほう・・・良くもまあそんな事が言えたものだ・・・。貴様は誰にものを言っている?誰がッ!誰をッ!滅すると謂った!?」

 

ハクメンは真面目に言い切ったのだが、テルミには余りにも癇に障る言葉だったようで、語気を強めながら問い返した。

しかし、ハクメンはおろか、ラグナとナインも全く怯む様子が無かった。今テルミと対面している三人は心持ちの強さが常人を上回っているのである。

故に、その気迫に圧されて戦意を失うことは無く、まるで何事も無かったかのように立っているのである。

 

「無礼を働いた報いだ。貴様らは楽には殺さん・・・一撃一撃、念入りに入れてなぶり殺しにしてやろう・・・!」

 

「上等だァ・・・テメェこそ、その『スサノオユニット(化けた皮)』剝がしてやるから、覚悟しろよッ!」

 

テルミとラグナの言葉を皮切りに、こちらも再び戦いが始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、これで何体倒した・・・?」

 

「50からはもう数えていないわ・・・。一体どれだけ誘導してきたのよ・・・しかも大型のモンスターだって混ざっているし・・・」

 

現場に向かってからすぐ、ナオトたちはモンスター相手に必死で戦っていたが、数が多すぎて半分呆れかえっていた。

ドライブの性質上アイエフが小型のモンスターを倒しやすく、ナオトは大型のモンスターに対抗しやすさがあるので、小型のモンスターが集まればアイエフが一掃、取りこぼしと大型のモンスターが一定の場所まで進行して来たらナオトが倒すと言う形を取ることで善戦出来ていた。

また、この他にもトリニティが一般市民の前に立って流れて行ったモンスターたちの攻撃を防いでくれていたお陰で、怪我人こそいるが死亡者は出ないで済んでいた。

とまあ、ナオトたちが出している結果を見れば大丈夫だと思いたいが、前途の通り問題なのはモンスターの多さである。

いくらモンスターが一体一体はそこまで強くないにしろ、まだまだいるぞと言わんばかりのモンスターの数にはげんなりさせられるのである。

この他にも、ナオトたちが並の人たちより強いとは言え、人間である為、全てを完全に対処しようにも難しいものがあった。

 

「っ!?二体抜けられた・・・!」

 

「俺が行く!ちょっとの間頼むッ!」

 

アイエフが再びドライブで引き起こした風でモンスターの群れを吹き飛ばすものの、それから逃れた二体のモンスターが自身達の上を通り越していった。

流石に長時間を二人で捌くのは厳しいものがあり、少しずつではあれど精度が悪くなっていたのである。

抜けられたモンスターはすぐに倒さねばならないので、攻撃にそこまで時間のかからないナオトが即座に走って追いかける。

自身に近い、左側にいたモンスターを血で作った刃で切り裂いて倒す。背中から容赦なく切る形にはなったが、逃げ遅れた人たちの事を考えるとそうも言ってはいられない。

もう一体とは距離があったので、そのモンスターが進む方へ目を向けてみると、嫌なものを見ることになってしまった。

 

「ッ!?おいおいマジかよ・・・!」

 

モンスターが走る先、そこには何らかが原因で逃げ遅れた少女がいたのだ。

さらに運が悪いことにモンスターは彼女に目を付けてそちらへ走りだしてしまったので、ナオトも急いでそちらへ走るが、間に合う気がしなかった。

 

「あっ・・・」

 

その少女が気づく頃には、モンスターは既に自身の右手側の強靭な爪を振り上げていた。

それをみた彼女はどうにかして逃げようと試みるものの、足が動かないのではどうにもならなかった。

 

「クソぉッ!」

 

ナオトは自分の体に鞭を打つように走るが、まだ距離があるせいでモンスターを止める手段が効果を発揮できない。

 

「・・・危ないッ!」

 

誰も止められない状況で振り下ろされたその爪は、少女には当たらなかった。

その理由は、寸前のところで少女の視界外から走ってきたニューが、彼女を抱きかかえてその場から少しでも動いたことと、少女とモンスターの間に入ったトリニティが『無兆鈴』を使って強化した防御方陣によって、その爪による攻撃を止めてくれたのである。

これによっていきなりの事態にモンスターは困惑し、動きを止めてしまう。

 

「おおッ!」

 

それによってナオトがモンスターに手を出す時間が与えられ、その時間でナオトはモンスターの首根っこを掴み、思いっきり地面に叩きつけてやった。

投げつけられた時の衝撃が余りにも大きかった事で、致命傷となったモンスターは光となって消滅した。

 

「大丈夫?」

 

「う、うん・・・」

 

ニューに問いかけられた少女は、モンスターに襲われた恐怖が残りながらも答える。

答えてもらえるだけまだ大丈夫だが、いつまでもこの少女をこの場に残してはいけないのは確かだ。

 

「歩けますか?」

 

「それが・・・足に力が入らないの・・・」

 

トリニティの問いには弱々しい表情で答えた。

怪我などは見受けられない為、恐らくはテルミや砲台によって起こされた恐怖感に気圧されてしまったのだろう。

 

「えっと、シェルターってどっちにある?」

 

「すぐあっちに一個あるぞ。急げばまだ入れてもらえるはずだ」

 

「分かった。後はニューが連れていくから、モンスターをお願い」

 

ナオトが駆け寄って来るのが音で理解できたので、そちらを振り向きながらニューが聞いてみると、ナオトは即座に答えてくれた。

その距離であればモンスターに攻撃される心配も極めて少ないので、ナオトにはモンスターの対処に戻ってもらうよう頼んだ。

 

「さ、行こう・・・ここにいたら危ないから」

 

「うん・・・。お母さん、向こうにいるかな?」

 

「きっといるはずだよ・・・。だから行こう?お母さんも心配している筈だから・・・」

 

ニューに促されながら、手を引いてもらう形で少女はシェルターへ避難する。

 

「ちょっとヤバイかも・・・。・・・!」

 

ナオトが抜けた穴を埋めるようにドライブを酷使した結果消耗が早くなってしまい、アイエフには一気に疲労が押し寄せてきた。

ドライブを発動するインターバルが長くなって来て、とうとうモンスターの突破を完全に許してしまいそうになった時、近くまで来ていたモンスターが無数の剣とレーザーによって打ち払われた。

 

「お待たせしました!大丈夫ですか?」

 

「暫くラムダたちが引き受ける・・・貴女は後退を」

 

自身の傍まで駆けつけて来たのは『クサナギ』を装着したノエルとラムダだった。

更に有り難い事に、この二人は手数の多さから、小型のモンスターを多数相手にするのが比較的苦では無い点だった。

これなら自身にも少しだけ休める時間が与えられるのである。

 

「ありがとう。なら少しだけ・・・」

 

「揃ったのなら、私が手を出しても問題無いな?」

 

アイエフの言葉を遮るように声が聞こえ、彼女は周囲を見回す。

すると背後からイグニスが迫っていたのが見えたが、それはナオトが攻撃を仕掛ける事によって注意を逸らさせる。

 

「おっと・・・テメェにいつまでもやられてばっかりじゃねぇぞ?」

 

「ほう?此の世界ではどうやら御前と縁があるようだな・・・」

 

レリウスは何かの因果を感じた。

何しろナオトが本来いた世界、ラグナたちがいた世界、そしてこのゲイムギョウ界と、何かとこのナオトと言う少年と関わったことが多かったからだ。

 

「良いだろう。御前の力・・・改めて観測()せて貰うとしよう」

 

「良いぜ・・・そうまで言うならいくらでも見せてやるよッ!」

 

レリウスが一度自身の傍までイグニスを呼び寄せてから向かってくるのに対し、ナオトはドライブを全開の状態にしてからレリウスへと向かって行く。

 

《変わるわ。大丈夫になったら私に呼びかけてちょうだい》

 

「ええ。それまではお願いね」

 

流石にもう限界であったので、アイエフはラケルに代わってもらう。

 

「ナオト!向こうは私たちでどうにかするから、何としてもレリウスを食い止めなさい!」

 

レリウスと戦い始めているナオトには届かないかもしれないが、そう投げかけて、ラケルもノエルたちに加勢するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「あの時の恩恵が無いとは言え、ここまで強いだなんて・・・!」

 

「フッ・・・まだこの程度では終わらんぞ」

 

今日初めてマジェコンヌと実際に刃を交えたベールだが、その強さに改めて驚く事になった。

対するマジェコンヌはまだまだ余裕そうな笑みを見せる。一人増えたくらいで負ける気などさらさらないのである。

 

「だいぶ長い時間、女神になっていなかった人とは思えないくらいね・・・」

 

「シェアが急速に落ちたというのに、大分対応できていますね・・・」

 

いきなり力を削ぎ落とされて大変な戦いを強いられているが、それでも耐えているプラネテューヌの姉妹を見たレイは「それでこそです」と称賛の言葉を送った。

思った以上に救援が早いということもあるが、それでもここまで戦えているのは彼女たちの諦めぬ意志や根気の強さだろう。

 

「さて、次はこれを・・・。・・・!」

 

レイは杖を頭上にかざして何かしようとしたが、その前に左側から何かを感じ取って後ろに下がる。

すると、先程までレイがいた場所を大きなビームの火線が通り過ぎていった。そちらを見てみれば、そこには大型のランチャーを構えたユニの姿があった。

 

「お待たせ、ちょっと遅くなったわね」

 

「大丈夫。ユニちゃん、来てくれてありがとう!」

 

ユニとネプギアは互いに笑みを見せる。

これでも大分厳しい状況で戦っていたので、味方の救援が来るのはありがたいことだった。

 

「予想より早すぎる・・・。ということは・・・!」

 

「ええ。その通りよっ!」

 

ユニの後ろにはノワールが控えており、レイの言葉に続けるように高速で近づくノワールが答えながら、レイへ向けて剣を右から斜めに振り下ろす。

対するレイは杖を左から水平に振ることで受け止める。

 

「レリウスさんも動いてるようですし、そちら側の協力者は集合したようですね・・・」

 

「ええ。それから、こっちのメンバーも揃ったわよ」

 

ノワールが言ったことが分からず、問いかけようとしたが、強い敵意を感じたことで答えを得た。

ラステイションの女神たちより更に後ろには、こちらに超高速でマジェコンヌへと肉薄するブランと、彼女に置いていかれないようにと付いてきているロムとラムの姿があった。

 

「おりゃぁッ!」

 

「チィッ!」

 

ブランが戦斧を上から叩きつけるように振り下ろすのに対し、マジェコンヌは武器をハクメン『斬魔・鳴神』に似た形に変えながら上から下に振り下ろすことで受け止める。

 

「あん時アドリブやっといて良かったぜ・・・。お陰でレリウスにすら効果あったもんな・・・!」

 

「一番頭の硬かった貴様が、よりにもよってそんな手段に出るとはな・・・!」

 

流石にブランがそんなおっかない行為に走るとは、マジェコンヌも予想出来ていなかった。

それだけ、ネプテューヌの下に武器を持ったまま向かったのには効果があったのである。

冷や汗かきながらニヤリとするブランに妙な苛立ちを覚えながら、マジェコンヌは彼女を引き離し、レイもノワールを引き離して体制を立て直す。

 

「みんな、大丈夫?」

 

「・・・まだ戦える?」

 

「ええ。まだまだこれからよ」

 

「みんながいるから、この戦いだって乗り越えられます!」

 

ロムとラムの問いにはプラネテューヌの姉妹が答えるのに合わせ、それは自分たちも同じだと言うかのように残りの女神たちも頷く。

ならば大丈夫と判断した女神たちは、マジェコンヌたちを見据える。

しかしながら、女神が勢揃いしても、マジェコンヌとレイはこれからが本番だと言うかのように気を引き締める様子を見せた。

 

「さて、ここからが本番だな・・・」

 

「ええ。彼女たちの意思に、こちらも全力で答えましょう」

 

「みんな、向こうはここからが本番だと考えているから気をつけて!」

 

「当然!こっちも全力で行くけど、市民のことは気をつけて行きましょう」

 

全員が準備できたと言わんばかりに距離を詰め始めた事で、女神八人と、マジェコンヌとレイの二人による空中戦が始まった。

 

「よし・・・こっちもどうにか揃ったな」

 

「ならば向こうは気にせず、我らはテルミを滅するのみ・・・!」

 

「今度こそ、決着をつけさせて貰うわよ!」

 

「(面倒なことになったな・・・。だが、そろそろ狙い時だろう)」

 

朗報を受けたラグナたちがそのまま自分を倒さんと向かってくる中、テルミは一瞬だけネプギアへと目を向けてからラグナたちの方へ向き直る。

 

「さて、その根気が何時迄続くであろうな・・・?」

 

自身の狙いが成功した時のことを想像して、テルミは小さく嗤いながら構えを取った。




ちょっとだけ集合のテンポが早すぎる気もしますが、原作と違って仲違いはあくまでもフリであり、今回の襲撃はある程度予測できていたという二つの理由があるのでここは一つ・・・(笑)。

次回は戦況に変化が起こります。
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