超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER-   作:ブリガンディ

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前書きで話せる事が無くなって来ました・・・(汗)。

前回の予告通り、戦況に変化が訪れます。


62話 囚われる蒼

「マジェコンヌ、レイ・・・『生まれ変わり』を此方へ誘導できるか?」

 

ラグナたち三人の攻撃を凌いですぐ、テルミは術式通信で確認を取る。

もちろん、この間に来る攻撃をいなしていくことも忘れない。

 

『不可能ではないが、完全にはできんぞ?』

 

『途中まで誘導したら、一気にそちらへ突き飛ばす形になりますが、構いませんか?』

 

「ならばそれでも良い。どれくらいでできそうだ?」

 

流石に八対二という圧倒的人数差では完全にできるとは思えない。

その為、二人から出された妥協案でもテルミは簡単に受け入れることができた。

 

『そうですね・・・最低でも一分、長くても三分あればどうにかなります』

 

「そうか。ならば孤立させる時に一声貰うぞ。其の後は我の役割だ・・・」

 

『了解した。レイ、こちらから場所をずらして行くぞッ!』

 

『はい!それではまたっ!』

 

短く話しを纏めた一行は素早く己の役割に戻る。

テルミが前を向いた頃には、剣を自身へ振り下ろそうとするラグナの姿があった。

 

「おおッ!」

 

「・・・見えているぞ」

 

しかし、その攻撃はテルミが左手で掴む事によって止められてしまった。

 

「クソ・・・!これじゃ足りねえってのか・・・!」

 

「ふむ。縛られないと謂うのは良いものだなッ!」

 

歯嚙みするラグナをよそに、テルミは満足そうに言いながら剣ごとラグナを投げ飛ばした。

しかし、それ自体は大したダメージでない為、ラグナはすぐに体制を立て直せた。

とは言え、テルミが投げた事によってそれなりに距離が離れた以上、すぐには攻撃できる範囲まで来ないので、ラグナは一旦視野から外す。

 

「脈動のモルガナイトッ!」

 

『スサノオユニット』の恩恵もあり一番渋といのがハクメン。『蒼炎の書』を持つが故に何をしてくるかわからない、一番厄介なのがラグナ。そして無数の魔法を扱うことで幾らでも攻撃手段を変えられる、一番面倒な相手がナインであった。

ナインが地面に落とした巨大な種は、地面を這うように迫り、こちらを数回に渡って攻撃する植物の種であり、今から飛ぶにしても遅いと感じたテルミは右手を前に出し、防御方陣を展開することで防ぐことを選んだ。

迫っていた植物はテルミに届く手前で弾き返され、そのまま極めて短時間の寿命の終わりを迎えて消滅するのだった。

 

「・・・嘘!?碌な足止めすらできないなんて・・・」

 

「どうした?より強大な技で来ても構わんのだぞ?最も、貴様のは範囲が広すぎて被害を拡大させてしまうだろうがな・・・」

 

「くっ・・・!」

 

ナインの最大の魔法なら、確かに『スサノオユニット』を纏ったテルミにも少なくないダメージを与えられるだろう。

しかし、ダメージを与える以上の問題として、テルミが言った通り攻撃範囲が広すぎて周辺の被害が甚大なことになってしまうのだ。

自分一人で戦い、周辺の被害を一切気にしないのなら別に構わないのだが、今回は周囲に女神八人、ラグナとハクメンの十人と離れた場所でモンスターを止めてくれているナオト、アイエフたちの四人、更にはシェルターで手当をするセリカや逃げ遅れたを助けるトリニティら四人に国内の被害、他にもシェルターに避難した人たちの事も考慮しなければならないので、迂闊に撃とうものならテルミを止める以前に味方や一般市民に被害を及ぼす本末転倒な状況に陥ってしまう。

それ故に、ナインは苦虫を嚙み潰したような顔をするのであった。

 

「ならば、この一撃を受けて見よッ!斬鉄ッ!」

 

「来るか・・・。ならば、這イ舞ウ双脚ッ!」

 

ハクメンが『斬魔・鳴神』を縦に振り下ろすのに合わせ、テルミは己の躰に碧い炎のようなものを纏わせながら、地面を這うように突進する。

それらがぶつかり合うものの、テルミは纏っていた碧い炎のようなもので防ぐ事で、ダメージは無かった。

 

「終わらぬぞ・・・!」

 

「其れは此方もだ!」

 

ハクメンは足元を薙ぎ払うように、『斬魔・鳴神』を右から水平に振るうが、それが届くよりも早くテルミは躰を跳ね起こしながら左脚でハクメンの胴を蹴り飛ばして見せた。

 

「うおお・・・ッ!?」

 

「こちらが一手速かったようだな・・・」

 

先程のように少し離れているビルのガラスにぶつかるということは無かったものの、それでもハクメンは僅かに体を飛ばされた。

とは言え何も抵抗できない状態から吹き飛ばされるという訳では無かったので、そこまで吹き飛ばされる事は無かった。

現にハクメンはすぐさま術式で姿勢制御をして、安全に着地している。

 

「ぬぅ・・・!やはり一筋縄では行かぬようだな・・・!」

 

「知れたこと。此の程度で我を打つことなど出来ぬぞ」

 

苦悶の声を出しながらも、ハクメンは一度突撃を控える。ナインが攻撃の準備を終えていたからだ。

ハクメンが立ち止まった事と、ラグナがまだこちらに来る途中でもハクメンと同じくらいの距離があった事から、違和感を感じたテルミは反射的にナインの方へ体を向ける。

するとナインが両手を頭上に掲げ、巨大な火球を生み出していたので、案の定かとテルミは納得する事になった。

 

「これを受けてみなさいッ!」

 

「見くびるでないわッ!圧シ焼ク惨禍ッ!」

 

ナインが飛ばしてきた火球がぶつかる寸前にテルミは己の右腕を突き出し、その拳の辺りから碧い衝撃波を発生させる。

その衝撃波を火球にぶつける事によって、火球は止められた先から進まなくなり、やがて爆発だけを残して消えていった。

 

「・・・ふんッ!」

 

「ッ・・・!?」

 

更に間髪入れず、その爆発によってできた煙の中を突き抜けさせるように、テルミは右手の拳辺りから碧黒い炎のようなものを撃ち出す。

何かしてきた事に気づいたナインは瞬時に体を捻る事で、それをどうにか避けきった。

この時、テルミの攻撃がナインの前髪をほんの僅かに掠めた為、ナインは冷や汗を流す事になった。

 

「全く・・・何かの冗談に思えてくる強さをしているわね」

 

「貴様は目の当たりにした事が無いからな・・・存分に味わうが良い」

 

呆れる程の頑丈さや能力に舌打ちの一つでもしたくなるナインに対し、テルミはまだ余裕を残していた。

ナインとハクメンという、『六英雄』の内二人がいて、更に『蒼炎の書』を抱え込んでいる為、突発性では間違い無く自分たちを上回るラグナの三人で掛かってもこれだというのは、十分すぎる程悩ませてくれる要素であった。

 

「流石にこれだけ相手が多いと、遠距離攻撃をする暇は無いですね・・・」

 

「だが、攻撃を凌ぐだけならばもう少しは耐えられる・・・!後僅かだ、持ちこたえるぞッ!」

 

一方で、空中戦は女神たちが人数差で有利を取っているが、同盟の思惑通りに進んできていると言った状況であった。

役割分担をして戦おうにも、相手が圧倒的に多人数であるが故にその戦い方をするよりは、お互いが近い距離で戦った方が安全という結論に達したのだ。

第一に、遠距離攻撃をしようにも常時遠距離攻撃を行う女神がネプギアを省く候補生の三人、状況に応じて攻撃を切り替えられるネプギアと四人もいる為、レイの強力な一撃で援護しようにも簡単に妨害されるのが目に見えていた。

マジェコンヌがフォローしようにも、今度は近接攻撃を主軸に置いた四女神の攻撃と、レイの妨害とマジェコンヌに牽制しようとする候補生の攻撃までも捌かなければならないので、負担が大き過ぎる。

しかし、互いに近い距離で誘導しながら防御に徹してしまえばフォローもしやすくなり、固まって動けば彼女らもこちらの包囲を維持しようとするので、さっきまでの戦い方と比べれば思惑通りの誘導をしやすいのもある。こうなればこの手段を選ぶしかないだろう。

 

「・・・?あいつら、攻撃してこないわよ?」

 

「数の差がありすぎて、迂闊に攻撃できないと判断したのでしょうか・・・?」

 

「でも、あの集まりのことだし・・・何か策を練られているかもしれないわね」

 

「そうだとしたら、実行する前に終わらせる方がいいな・・・」

 

女神たちもその行動に違和感を感じて一瞬攻撃の手を止めるものの、厄介な事をされる前に倒すと言うブランの考えに乗り、全員でそのまま攻め続ける事を選んだ。

この時マジェコンヌたちは少々苦しそうな様子を見せて移動を始めたので、女神たちも包囲を崩さないように並行に移動して距離と包囲網を維持する。

包囲を続けられてしまっては仕方ないので、マジェコンヌとレイはお互いがすぐにフォローしあえるように近くに固まり、防御の姿勢を維持し続けた。

 

「それそれっ!」

 

「まだまだ・・・!」

 

「反撃の時間なんて与えないんだから!」

 

「(・・・何でだろう?あの二人が攻撃を控えてから、ずっと嫌な予感がしてる・・・)」

 

ロムとラムが杖から氷の塊を飛ばし、ユニがランチャーで射撃をし、女神四人が接近戦を仕掛ける最中、M.P.B.Lで援護射撃をしながらネプギアは考えていた。

こちら側が上手く囲んでいるのに、何か誘われているような気がしてならないのである。

しかしながら、このまま攻撃を続ければ彼女たちに反撃の時間を一切与えないで済むのは確かであった。

 

「(それなら、あまり時間は掛けない方が良いのは確か・・・。ブランさんの言う通り、一気に行くべきだね!)」

 

「・・・フッ。耐え続けた甲斐があったな」

 

「ようやく・・・ですね」

 

ネプギアが自分も接近戦に参加するべく距離を詰めだしたのを見た二人は、ようやくこの時が来たと言わんばかりに安堵の表情を見せる。

 

「テルミ、聞こえるか!?準備は整ったッ!今から奴をそちらに突き飛ばすぞッ!」

 

『承知した。何時でも構わん』

 

『・・・!?』

 

マジェコンヌの発言に全員が固まる。特にネプギアに至ってはここで自身の疑問が晴れたのが災いし、中途半端な位置で固まる事となってしまった。

自分たちは追い込んでいると思ったら誘い込まれていたのである。

 

「では・・・マジェコンヌさん・・・!」

 

「ああ・・・行くぞッ!」

 

二人は頷き、女神たちが体制を立て直すよりも早くネプギアに向けて一気に距離を詰める。

 

「・・・!?」

 

「ハァッ!」

 

マジェコンヌが槍を突き立てるのが見え、対応に遅れたネプギアは慌ててM.P.B.Lで防ごうとするもあっさりと弾き飛ばされてしまった。

それを確認したマジェコンヌは追撃をせず、すぐにレイが攻撃できるように場所をずれる。

 

「悪いが貴様は・・・」

 

「テルミさんの方へ送らせて貰いますッ!」

 

マジェコンヌの言葉の先を言うかのようにレイが言葉を繋げながらネプギアの前にたち、杖で殴りつけてテルミの方へ飛ばした。

 

「きゃあっ!?」

 

「・・・何!?」

 

「ネプギアを狙った・・・!?」

 

ネプギアがこちら側に飛ばされたのが見え、ラグナたちも足を止めてそちらを見てしまう。

 

「・・・!?いけない、あいつらの狙いは・・・!」

 

「もう遅いぞ・・・」

 

ナインが気づいた頃にはテルミは動き出しており、落ちながら体制を立て直したネプギアが振り返ると同時に、その首を左手で掴んで近くのビルまで移動して叩きつけてやった。

 

「あぅ・・・っ!?」

 

「「ネプギア!?」」

 

有利だと思われていた空中戦は、同盟の思い通りの展開になって一瞬で危機的な状況に陥った。

テルミによって痛手を与えられたネプギアを見て、ラグナとネプテューヌが声を掛けるもネプギアは反応する余裕が無い。

それ程までに、自分の首を掴んでいるテルミの握力が強いのである。

 

「う・・・っ・・・うぅ・・・!」

 

「どうした?もう少し足掻いても良いのだぞ?其れは其れで僅かな退屈凌ぎにはなる」

 

ネプギアは両手でテルミの左腕を掴み、どうにかその手を引き剝がそうとするも、全く動く様子を見せない。

この後すぐに利用するので殺す程の強さで締め上げはしないが、それでも他に意識が回らないくらいの強さは維持した。

 

「クソッ!あの野郎・・・!」

 

「其の魂胆は読めている」

 

ラグナは助けに行くために走るが、テルミが空いてる右手で碧い炎のようなものを、ラグナの移動する先へ撃つ。

その攻撃の意図を理解したラグナは飛びのく事で進むのを止める。また、テルミの攻撃はそのまま走っていたら直撃していたであろう起動を進んで地面を抉った。

 

「っ!それ以上は・・・!」

 

「行かせはせんッ!」

 

ネプテューヌも救援へ向かおうとするが、動き出すよりも早くマジェコンヌに進路を妨害され、救援に行けなくなってしまった。

彼女がダメなら自分たちがと、他の女神も救出を試みるもそれはレイの牽制攻撃によって妨げられてしまった。

これによって女神たちは二人へ意識を向ける事を余儀なくされた。

 

「・・・もう限界だな」

 

「ぅ・・・っ・・・」

 

テルミの締め上げを止めることが出来ず、ネプギアは意識が薄れ出していた。

もうすぐ意識を手放す事になるその状況で、ネプギアは自身が想いを寄せるラグナの姿を探し出して視界に納める。

見つけた事で安堵してしまったのか、変身は解けて平時の姿に戻ってしまい、意識が薄れるにつれて視界も狭くなってきていた。

 

「ラグナ・・・さん・・・わ・・・たし・・・っ・・・」

 

「・・・!ネプギアッ!」

 

もう会えない気がしたネプギアは何かを伝えようとしたが、その言葉は伝えきれずに気を失ってしまった。

焦ったラグナは大きな声で呼びかけるも、全く反応を示さなかった。

テルミもネプギアの抵抗が無くなって気を失った事を確認し、締め上げるのを止めた。

 

「ふむ。其れなりには耐えた方だろう」

 

「ね・・・ネプギア!返事をして!・・・くっ・・・!」

 

「まだ行かせる訳には行かんのでな・・・」

 

テルミは前回ノエルにやった時よりは耐えていたので、そこそこ愉しめていた。

ネプギアが意識を失った事で気が気では無くなったネプテューヌはすぐに飛んでいこうとするものの、マジェコンヌがそれを攻撃することで阻んだ。

マジェコンヌに攻撃されてしまったネプテューヌは、止む得ず攻撃を受け止める事を選んだので、ネプギアの方へ行くことが出来なくなってしまった。

 

「さて・・・この『生まれ変わり』を連れ、我は行くべき場所に行くとしよう・・・。追うのならば好きにするが良い」

 

「なっ・・・待てッ!」

 

ラグナの制止など知ってか知らずか、テルミはネプギアを連れたままどこかへ飛び去ってしまった。

それを見たマジェコンヌとレイは間に合ってくれた事に安堵し、女神たちは啞然とする。

 

「そんな・・・」

 

「クソ・・・!」

 

「「ネプギアァァァァッ!」」

 

そして、ネプテューヌとラグナは、テルミが飛んでいった虚空へ向けて絶叫を上げる。

それぞれ大切な妹と、自身が意中にしている人を連れていかれたからである。

また、これだけではなく、女神たちの心境にはネプギアが連れていかれたと言う悪影響が出ていた。

 

「まだ、ここからなら追いつける・・・!」

 

ネプテューヌは考えるよりも早くテルミの飛び去った方向へ飛んで追いかけようとしたが、その出花はレイが放ったビームによってくじかれてしまった。

 

「すみませんが、行かせる訳には行きません・・・。それに、この国は貴女の国です。他の女神が戦っていると言うのに、貴女が逃げ出したらどうなるか・・・分からない訳では無いでしょう?」

 

「・・・!」

 

レイの詫びながら告げられた事によって、ネプテューヌは苦虫を嚙み潰したような表情になる。

今ここで抜け出してしまったら、プラネテューヌで戦いが起きているのに、プラネテューヌの女神が不在という異常事態であり緊急事態である状況に陥る。

姉としては助けに行きたいネプテューヌだが、プラネテューヌの女神としては国を放っておく訳には行かないと言うジレンマに陥ってしまったのだ。

 

「けど、こんな所でへたり込んでる場合じゃねぇな・・・!」

 

僅かな間顔を地面に向けていたラグナだが、やるべきことは決まりきっていたので、すぐに立ち上がる。

奇しくも『エンブリオ』でノエル(サヤ)が連れていかれた時と同じなのである。それならば、ラグナがどうするかは決まりきっていた。

 

「ラグナよ、行くのか?」

 

「ああ。俺は何としてもテルミを止めて、ネプギアを絶対に助け出す」

 

ハクメンの問いには迷うことなく、間を置かずに答える。

迷う理由などどこにも無い。ただテルミの行く場所まで行き、ネプギアを取り戻すだけである。

 

「それなら私も手伝うわ。運が良ければ転移魔法で先回りできる・・・と言うより、向こうにモンスターがいるから転移魔法を使わないと先に行けないもの」

 

ナインも二人の傍まで合流しながらそちらを指し示す。

彼女の言う通り国の出入り口方面には大型のモンスターがかなり残っており、馬鹿正直に突破しようものなら時間が掛かり過ぎてしまう。

 

「そうだな・・・それと、トリニティも呼ぼう。『無兆鈴』の力があれば成功しやすくなる」

 

ラグナの提案は二人が頷くことですぐさま可決され、話がまとまったので移動を始めようとするのだが、その前に一つだけ確認することがあった。

 

「私は残るわ!だから・・・ネプギアの事をお願い!」

 

「・・・本当に大丈夫なんだな?」

 

ネプテューヌがラグナに聞かれるよりも早く答え、しかも任せるというのだから、ラグナは思わず聞き返してしまった。

 

「私が抜けてしまったらそれこそ本末転倒よ・・・。それに、あなたになら任せられるから・・・私は大丈夫なの」

 

最初こそどうしようもない思いをしていたネプテューヌだったが、ラグナが行くというなら大丈夫だと考えを纏めることができた。

そうであるなら、ラグナは迷う事など無かった。それに、そう言われてしまったのだから、もうその期待に応えるしかなかった。

 

「分かった・・・。絶対に連れて戻ってくるから、待ってろよ!」

 

「では、行くぞ・・・!」

 

ラグナが一言いえば女神たちが頷いたり、サムズアップしたりとそれぞれの形で返した。

それを確認したハクメンが促し、ラグナとハクメン、ナインの三人はこの場を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「まだ痛む所はあるかな?」

 

「ううん。もう大丈夫」

 

プラネテューヌにあったシェルターにて、セリカは医療班と協力して怪我人の治療を行っていた。

魔力の都合がある為、セリカはなるべく比較的軽傷の人を担当するように頼まれていた。

 

「それにしてもビックリしたよ・・・5pb.ちゃんがプラネテューヌに来ているなんて思わなかった」

 

「あ、あはは・・・今日はスペシャルゲストとして呼ばれてたから・・・」

 

5pb.は今回、プラネテューヌの感謝祭があるので、同時に新曲の発表をやってしまうのはどうだろうかと言う提案がネプテューヌからあり、それを了承したのだ。

何事も無く感謝祭の時間は過ぎていき、イベントの時間になったのでいざ発表・・・と思っていた矢先に同盟の襲撃があり、避難している最中に戦いの余波で怪我を負ってしまったのである。

そしてシェルターに避難した後、セリカが5pb.の治療を担当する事になったのである。

 

「残念だったね・・・今日がせっかくの発表日だったのに・・・」

 

「また次の機会があるから、今回は仕方ないよ・・・」

 

5pb.は仕事以外は極度の人見知りではあるが、セリカと話しても平気なのはナインの妹であることから来ている。

会ってすぐにナインとどこか似たようなものを感じていたのだが、訊いてみれば案の定だったのである。

少し話しをしているとドアを開く音が聞こえたので、そちらを振り向いてみれば一人の少女と一緒にニュー、そしてその二人に一歩遅れてトリニティがやってきていた。

 

「どう?お母さんはいる?」

 

「えーっと・・・」

 

ニューに問われて少女が辺りをきょろきょろと見渡す。

少しの間見渡していると、少女たちの方へ少しずつ近づいている女性が一人いるのがわかり、その女性を見た少女と、少女を見た女性が目を見開いた。

 

「良かったね」

 

「うん!お姉ちゃんたちありがとう!」

 

「・・・!」

 

少女と目を合わせた女性は彼女の母親であった。どうやら自分だけ先にシェルターに辿り着いてしまい、自身の子供の安否が不安でならなかったようだ。

そして、自身の母親を見つけた少女はニューに礼を言ってから、繋いでいた手を離し、そちらへ走っていく。

お姉ちゃんと言う呼ばれ方に一瞬驚くニューではあったが、彼女からすれば自分の方が少し大きいので、そう呼ばれてもおかしくは無いかと納得した。

 

「・・・はぁ。よかったぁ・・・」

 

「お疲れ様です。今はゆっくり、休んでいて下さいね?」

 

「うん・・・お疲れ様」

 

残りは女神たちが戦っている場所なのだが、戦闘力の無いニューがあそこへ行くのは余りにも危険なのことと、既にノワールから言伝えられていた時間を超えてしまっていたので、救出活動はこれで終了となった。

少女を母親の場所まで送り届けられた安心感からか、ここに来るまでの疲労感が押し寄せてきて、ニューはその場にへたり込んだ。

トリニティに労いの言葉をかけてもらったニューは、そのまま体を休めながら今回の事が無事に終わる事を祈るだけだった。

 

「(それにしても、お姉ちゃんか・・・。実際に言われるとちょっとくすぐったいなぁ・・・)」

 

互いに無事であることと、再会できたことを喜び合う母娘の姿をみたニューはそんな思いを抱きながら、一つだけ分かったことがあった。

それは、例え戦う力が無くとも、それ以外のやり方で人を助けることは可能だと言うことだった。

一方でトリニティは、セリカがこちらのシェルターで怪我人の治療をしていることを聞いていたので、確認すべく彼女の元に足を運んだ。

 

「セリカさん。魔力の方は大丈夫ですか?」

 

「あっ、トリニティさん。まだ大丈夫だけど・・・何かあったの?」

 

大丈夫だと言うことが分かったので、後は要件を伝えるだけになった。

 

「実は、セリカさんの中にある力が必要になるかもしれませんので、心の準備だけはしておいて欲しいんです・・・」

 

「・・・・・・分かった。トリニティさんはまだ行くんだよね?」

 

「はい。まだ、やるべきことがありますから・・・」

 

トリニティの伝言を受けたセリカは確かに頷いた。

この時セリカが問い返してきたのでトリニティは肯定したが、セリカが特に反論することは無かった。

 

「それなら気をつけてね。トリニティさん・・・」

 

「ええ。セリカさんも無理はしないで下さいね・・・」

 

互いに一言だけ言い残し、トリニティはシェルターの外に出た。

外に出ればラグナたちが待っていたので、後はこの三人と共にテルミの行った場所へ向かうだけであった。

 

「準備は良いわね?」

 

「はい。では、私は『鳴神』に・・・」

 

「承知した。確実に成功させるぞ」

 

トリニティは『無兆鈴』の力を使って、ハクメンの持つ『斬魔・鳴神』の中に入る。

彼女の存在がテルミにバレていないことから、最後までその姿を隠す為の隠れ蓑として使わせて貰うのである。

 

「よし・・・。頼むぜ、ナイン」

 

「ええ。必ずテルミを止めてネプギアを助け出すわよ」

 

ナインが準備を終えた転移魔法を使い、ラグナたちはテルミの向かった場所へ飛んでいった。

ネプギアを伴って向かう場所がどこかと言われたら、この四人は既に分りきっていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「さぁて・・・やってみるか」

 

テルミが向かった先は洞窟最奥部であり、今回『ムラクモユニット』たちはネプギアに危害を加えられない事から、一切攻撃ができなかった。

その為、テルミは誰にも阻まれる事無く扉の前に辿り着き、扉に手を触れてみる。

 

「・・・おお!案の定当たりだったなァ・・・」

 

ネプギアを伴って触れてみた事によって扉は開かれたので、テルミは中に入ってみる。

するとそこには、自身の探し求めていた『蒼の門』があった。

 

「あ、『蒼の門』だァ!?ヒャハッ!ヒャァハハハッ!オイオイマジかよ!この世界にもあるとか最高じゃねぇかッ!」

 

テルミは驚き、盛大に笑う。今自分の手元にはネプギアという『蒼』を所有する者がいるので、後は彼女から奪えばそれで万事解決であった。

勿論、自由な世界へ行く前にラグナを倒すと言う目的が残っているので、それだけは忘れはしないが、それでも先にやっておくべき事があった。

 

「さて、じゃあコイツから『蒼』を・・・」

 

「残念だけどそこまでよ」

 

「・・・あぁ?」

 

テルミが早速行動に出ようとしたのも束の間、人の声が聞こえたのでそちらを振り返ってみれば、ナインとハクメン、そしてラグナの三人がこちらまで追ってきていた。

 

「その子を返して貰うわよ。帰りを待っている人がいるからね・・・」

 

「テルミよ・・・我らの因縁をここで終わらせる時だ」

 

「俺とのケリは付けなくて良いのか?テメェはこっち来てからそれを望んでただろ?」

 

「あ~・・・そうだった。ナインちゃんの転移魔法か・・・それがあればこんなにも早く追って来れるよな」

 

三者三様に言われた所で、テルミは何故ここまで早く追って来れたかを理解する。

これでラグナがいないなら、乗らずにそのまま目的ここでの用事を済ませるところだったが、今回はそれに乗ることにした。

 

「・・・良いぜ。そうまで言うならお望み通り戦ってやるよ・・・憑鎧・・・!」

 

決めるが早いか、テルミはレリウス製の『スサノオユニット』を纏う。

それによって、あの感謝祭にいた市民たちを恐れさせた姿になった。

 

「またあの時と似たような感じになったな・・・」

 

ラグナは『エンブリオ』で似たような状況に陥ったことを思い出す。

その時はジンと彼を支えているトリニティと共にであったが、今回はハクメンと彼の奥に隠れているトリニティ、そしてナインと共に行くのが違いである。

また、助け出す相手がノエル(サヤ)からネプギアに変わっているものの、大方やることは変わらない。

 

「だが、今回は私たちがいる。御前から気をそらすのであれば、以前よりも楽であろう」

 

「こっちが引き付けるから、タイミングはしくじらないでよ?」

 

「ああ。お前らのこと、頼りにさせてもらうからな!」

 

自分たちがどう動くかを決めたので、ラグナは右腕を肩の高さまで持っていく。

 

「第666拘束機関開放・・・次元虚数方陣展開!『蒼炎の書(ブレイブルー)』・・・起動!」

 

「準備はできたのだな?では、宴を始めよう」

 

ラグナが『蒼炎の書』の起動を完了させ、彼とハクメンが武器を手にとって構えたのを見たテルミが、淡々と宣言したことで戦いは再び幕を開けた。




どうもCFに近い展開を辿っていますね・・・(汗)。

細かな変更点としては、5pb.は救援に来る女神たちに連れて来てもらうのではなく、もうプラネテューヌにいたけど、怪我を負ったのでセリカに治療を受けいると言う点ですね。

次回は門の前での戦いになると思います。

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