超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER-   作:ブリガンディ

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残すところが僅かになって来ました・・・。


65話 残された者たち、近づく決戦の終わり

「・・・ハァッ!そらッ!」

 

「っ・・・!急に動きが変わった・・・!」

 

マジェコンヌはバタフライナイフを用いてネプテューヌに連続で斬りかかり、攻撃されたネプテューヌは刀を構える事で防いで行く。

この時自身の反応が遅れかけたのは、先程までが守りに特化した動きだったのが急に攻めに特化した動きへと変わったからである。

自分たちが攻めてこなければ向こうも攻めない動きから一転、相手がどうであろうと自ら攻め続ける動きに変えると同時に、武器の特性を活かすべく素早い動きをするようになったのである。

これによって先程までのゆっくりとした動きに目が慣れてしまい、攻撃されたネプテューヌは急な速度の変化に対応が遅れてしまったのである。

しかし防いだのも束の間、マジェコンヌはネプテューヌの刀に強めの打撃を与えて押し出し、そのままネプギアの方へ肉薄する。

 

「・・・!?」

 

「そぉらッ!」

 

マジェコンヌは両手のバタフライナイフで、外側から内側に交差させるように振り下ろし、対するネプギアはM.P.B.Lを横に寝かせる形で受け止める。

武器自体は小物だというのに、マジェコンヌが出し惜しみしていないのが分るくらい力を入れている為、かなり押され気味になっていた。

 

「貴様が五体満足で即時復帰できるとはな・・・!」

 

「くっ・・・!あなたたちがテルミの事を気にかけていたのは分かるけど・・・私にも、帰りを待っている人がいるから!」

 

テルミが亡き者になったことで恨み節の一つや二つを言いたくなるマジェコンヌではあるが、ギリギリのところで残っている冷静さがそれを食い止める。

しかしながら、ネプギアもそれを理解できない訳では無く、理解を示しながらも自分の答えを告げる。

 

「ッ・・・!ええい、クソォッ!」

 

「きゃ・・・!」

 

マジェコンヌのまた、それを理解できるが故にやり場のない怒りを振り回すことになり、力に任せてネプギアを突き飛ばした。

戻ってきたばかりで少々動きづらい状態なのもあり、ネプギアは体制を立て直すのが後れてしまう。

 

「ネプギアっ!・・・!?」

 

「簡単にはやらせません!私たちにも、意地はありますからね・・・!」

 

それを見たユニはランチャーでマジェコンヌに狙いをつけ、彼女の援護をしようとしたが、それはレイが強襲をかけて来たことによって止められた。

レイが杖を斜めに振るって叩きつけようとしてきたので、ユニはランチャーを斜めに構え、止む得ず防御を選択するのであった。

マジェコンヌが怒り狂っているので忘れがちになるが、レイもかなり感情を激しており、テルミが同盟のメンバー間でそれなり以上の友好関係を築いていたことが伺える。

 

「それ以上はやらせないわっ!」

 

「テメェらは絶対にここで止めてやるッ!」

 

「甘く見積もるなよ・・・!残影牙ッ!」

 

バックアップを担っていた候補生たちに攻撃を回されてしまった事により、乱戦覚悟で救援に行くノワールとブランだが、マジェコンヌは振り向きざますぐに碧い炎のようなものを纏わせながらバタフライナイフを右から左に振るった。

 

「うっ・・・!?シェアを取り戻せてないのは厳しいわね・・・!」

 

「それにテルミの技までコピーしてる・・・。後何個真似されりゃ良いんだ?」

 

「いくらでもあるさ・・・。一部とは言え、貴様らの技をコピーできたこの私が・・・今更テルミの技を再現出来んとは言えんのでなッ!」

 

予想以上に早いタイミングで反撃された事により、出鼻を挫かれたノワールとブランは武器を前に出して防御を選択する。

幸いにも前に進んでいた時の勢いがあるおかげで、後ろに吹き飛ばされる勢いは緩和された。

しかし、それだけでマジェコンヌの攻撃が終わることは無く、更なる追撃が二人に襲い掛かることになる。

 

「轟牙双天刃ッ!」

 

「きゃあ・・・!?」

 

「うわぁッ!」

 

両足に碧い炎のようなものを纏わせながら片方ずつの蹴りを彼女らにぶつけ、それを受けたノワールとブランは上空へと吹き飛ばされる。

テルミと共にいる時間が長かった事もあって、コピーした技の完成度はラグナの技やハクメンの技の比では無く、マジェコンヌが放つ技の威力は想像を遥かに上回るものとなっていた。

更にここまでのあっさりさを出してしまった理由として、シェアを取り戻せていないことがあり、マジェコンヌと相対的に力の差ができてしまっている事も起因していた。

 

「ノワール、ブラン!」

 

「余所見をしている暇は無かろうッ!?」

 

吹き飛ばされて言った二人の姿を目で追いながらその身を案じるベールだったが、その一瞬の隙をついてマジェコンヌが目の前には来ていた。

 

「相手が速いなら避けれない速度で攻撃するまで・・・レイニーナトラピュラ!」

 

「連続攻撃にはこれをくれてやろう・・・!滅閃牙ァ!」

 

ベールは槍の連続攻撃でマジェコンヌの進撃に対する抑制を試みるが、マジェコンヌは体を素早く動かしながら即座に行動を決定して実行する。

自身の体を碧い炎のようなもので覆ったマジェコンヌは、そのまま槍による連撃を無視しながらベールにぶつかって見せる。

 

「っ!?あああっ!?」

 

「この程度で倒れることは無いだろう!?どうした、もっとかかって来ないかッ!?」

 

防御の姿勢を取れないまま攻撃を受けてしまったことで成す術も無く吹き飛ばされ、建物の一つに激突していくベールには目もくれずに周囲を見ながらマジェコンヌが吠える。

このやり場の無い怒りを、せめてお前たち相手に吐き出してやろうと言う八つ当たりに近いものだというものを自覚してはいるが、そうでもしなければやっていられない程今のマジェコンヌは荒れていたのである。

 

「マジェコンヌさんだけに目を向けられても困りますね・・・私も、このやり場の無い怒りをぶつけたいものですからね・・・!」

 

また、それはレイも同じだったようで、杖からビームを放って候補生たちに牽制をかけて動きを止めてすぐにネプテューヌへ肉薄し、彼女へ向けて杖を上から下に振り下ろした。

対するネプテューヌは一度後ろに下がって避けてから、刀を左から水平に振って反撃をするものの、レイはそのまま杖を左から斜めに振り下ろし直したことで、ネプテューヌの刀にぶつける形での防御を取った。

 

「その為にも今・・・せっかく調整させてもらったシェアを有効に使わせて貰いましょうか・・・!」

 

「そんな使われ方、こっちとしては勘弁願いたいけどね・・・!」

 

シェアの量に差がありすぎて、押し合いはレイが圧倒的な優位を持ち、ネプテューヌは苦し紛れに言い返すことで精一杯だった。

とは言えそのままやりたい放題やられるのも癪であり、ネプテューヌは敢えて自分から体を横に逸らすことで押し込む事に力を入れていたレイの体制が前のめりに崩れるのを見て、すぐに距離を取りながら刀を構え直した。

 

「あなたたちは確かに仲間を失ったのだから、それで許せない気持ちは分かる・・・。私も自分の妹を失いかけたからね・・・」

 

テルミが帰らぬ人となって彼女らが怒りに駆られる理由は、妹との永遠の別れを経験しそうになったネプテューヌはそれを理解できる。

しかし、だからといって自分たちも同じ経験をしてはいそうですかと頷くか・・・そう言われるとまた違う話しである。

 

「でも私には・・・いえ、私たちには帰りを待っている人だけじゃない、私たちを信じて恐怖に耐えてくれている人たちがいる・・・だから、思い通りになるつもりは無いわよ!」

 

「・・・いいでしょう。ならば、私は正面からそれを打ち砕くまでですッ!」

 

ネプテューヌが言い切ってから近づいてくるのを見たレイは、自身も杖を構え直してから向かって行く。

女神たちとマジェコンヌらによる空中戦は、まだ終わる気配を見せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「此処が・・・奴らの一時的な根城か」

 

ネプギアが女神たちと合流する少し前に遡る。

ハクメンはネプギアの『蒼』によって出来上がった渦の中に入り、浮遊大陸の入り口前に辿り着くことへ成功していた。

中に入らなければ存在しないのか、迎撃システム等は見られなかったので、ハクメンは乗り込む前に一度周囲を確認するだけの余裕があった。

 

「あの一撃で此れ程迄の被害を出そうとは・・・見過ごせぬな」

 

ハクメンはちらりと浮遊大陸が放った砲撃による被害を見て呟いた。

今現在二射目が撃たれることは全く見受けられないが、それでもプラネタワーは崩壊。その周囲にも甚大な被害を与えている以上は無視するわけにもいかない。

また、まだ一度も顔を見せていない以上浮遊大陸に残っているのはワレチューしかいないことは消去法で割り出せており、それならば防衛システムがあった場合はそれを全力で突破することに集中できるのが救いだった。

 

「しかし時間も掛けるわけには行かぬ・・・手早く終わらせるとしよう」

 

再び入り口に目線を送ったハクメンは『斬魔・鳴神』を引き抜いて自身の眼前に構え、一呼吸置いてから中に飛び込んでいく。

中に入れば案の定防衛の為に準備されたシステムが存在していたが、放ってくるのは全て飛び道具である為、進路方向にあるのは『斬魔・鳴神』を振るうことで破壊し、それ以外のものは『斬魔・鳴神』を押し当てて『封魔陣』を作る事で無効化していく。

そして、こうして防衛システムを突破しながら突き進んでいくハクメンは、一つの結論を出した。

 

「(此の浮遊大陸への侵入・・・躰と言い、武器と言い・・・私で無ければ却って危険だったな)」

 

問題は数の多さと距離の長さにあった。

更にその二つに加えて元々の狭さがあるせいで、あのメンバー内ではハクメン以外適任がいないことを改めて実感することになった。

強いて他の案を言えば女神が己の速度と防御力に任せて突破することにあるが、そもそもマジェコンヌとレイに対応できる貴重な戦力を割けるかと言われれば厳しいものがある。

そうなるとやはり自分が行くことが正解である。そのハクメンの判断が正しかった事を決定づけられる。

とは言え、例えそれが正解だったとしても、長時間掛けて行っていいかと言われれば違うのでハクメンはなるべく急ぐ。

 

「まだ距離はあるな・・・済まぬが、暫しの間耐えて貰うぞ、女神たちよ・・・ッ!」

 

シェアを奪われたまま消耗戦になってしまうと危険なのは分かっているので、ハクメンは届かぬ詫びを入れながら走るのだった。

 

「・・・いきなり入り口前に現れて侵入?あの魔女みたいなやつっちゅか?」

 

その一方で、ワレチューはモニターに映った反応に目をやって思考に入る。

いきなり入り口前に現れて突入できるのは、普通に考えればナインであると言う考え方は間違ってはいない。向こう側で転移魔法を使えるのはナインただ一人で、迅速な対応をするなら彼女一人で移動した方が速くここまで辿り着つけるからだ。

しかしながら、この『普通に考えるなら』と言う部分が問題であり、今回はその考え方が通用しないのである。

 

「それにしては随分と効率のいい突破方法っちゅね・・・あの魔女の場合、自身の事も考えて徹底的にやりそうっちゅが・・・」

 

ワレチューの感じていた違和感はコレにあり、実際正解でもある。

仮に侵入者がナインだとしても、確実に最短の方法で突破するのは防御との兼ね合いを考えると厳しいものがある。

では女神かと考えるとそれも違う。理由としては、マジェコンヌとレイ二人に貴重な空中戦力を割くのは厳しいからである。

ではナインはどうなのか?そう言われた場合はネプギア奪還の為に迅速な移動手段と、『スサノオユニット』を纏ったテルミに対抗できる戦力として行動したと考えられるので、この限りではない。

 

「じゃあ誰がいるっちゅかね・・・?」

 

ワレチューはテルミらと同じ異世界組の人たちを上げていく。この時力を失ったニューは予め除外して考える。

まず初めにネプギアの奪還に向かっていない中で、空を飛べないナオトの確率は最も低い。入った後はそれなりに行けるかもしれないが、それまでの過程が厳しすぎるのである。

次に空を飛べるノエルとラムダだが、この二人は可能性を考えれば十分にあり得たが、手数の多いタイプである為、モンスターの撃退に活用する可能性の方が高かった。

こうなると残りはラグナかハクメンが有力となるのだが、テルミ絡みが多くなるラグナが帰ってきた場合、それはテルミの死を意味するので考えられても考えたく無かった。

 

「そうなると・・・」

 

来るならハクメンしかない―。そう考えた瞬間、轟音が聞こえて思わずそちらを振り向いた。

するとそこには、念の為に閉鎖していたドアを簡単に蹴飛ばして見せたハクメンが、『斬魔・鳴神』を構えた状態で堂々と立っていた。

 

「やはり、此処に残っているのは貴様だったか・・・。収集装置の場所を言え。であれば無意味に斬ることはせぬ」

 

「・・・まあ、オイラに勝ち目は無いからそうさせてもらうっちゅよ・・・」

 

ハクメンの要求には、ため息混じりではあるが素直に従う。力量差がありすぎて勝てるはずも無いのである。

とは言え、一度だけ確認しておかなければならない事があるので、それだけは聞いておきたいと思ったワレチューは聞いておくことにした。

 

「一つ聞くっちゅが、テルミは・・・どうなったちゅか?」

 

「・・・・・・」

 

その問いを聞いたハクメンは、数瞬の間言うかどうかを迷ったが、これは答えてやるのが情けか。そう考えて一度『斬魔・鳴神』を降ろした。

 

「奴は逝った・・・。何を思うて去ったのかは、ラグナから訊くしか術は無いのでまだ聞けていないがな・・・」

 

「・・・そうっちゅか。せめて帰って来てくれても良かったっちゅのに・・・」

 

俯くワレチューを見て、奴の事を気に掛ける存在もいるものだなとハクメンは感じた。

 

「ああ、収集装置はそっちの部屋っちゅ。オイラには勝ち目ゼロっちゅから、これで失礼するっちゅよ・・・」

 

「そうか・・・ならば私は行かせて貰うぞ」

 

これ以上は互いに時間が無い。そう判断したワレチューは場所だけ教えてレリウスに用意してもらった簡易型転移装置でこの場を離れる。

もう既に誰もいないその場に向けて一言残したハクメンは、シェア収集装置の方まで足を運ぶのであった。

 

「此れで・・・少しは戦いやすくなれば良いが・・・」

 

シェア収集装置を見ながら、ハクメンはそう言わずにはいられなかった。

何しろこれが使われているせいで、女神たちは数の有利をあっさりと覆されてしまっているからだ。

そんな厳しい条件で戦っている彼女らの為にも、速やかに目的を遂行しよう。そう考えたハクメンは『斬魔・鳴神』を振り被る。

 

「・・・ズェイッ!」

 

そして、一呼吸の後、『斬魔・鳴神』は勢いよく振り下ろされた。

それによって斬り裂かれたシェア収集装置は光となって爆発を起こし、やがて縮小しながら消えていく。

シェア収集装置の破壊を確認したハクメンは『斬魔・鳴神』を鞘に納め、入ってきた方へ体を向け直した。

 

「我が役目は果たした・・・。助太刀の為に戻りはするが、間に合わぬ時は頼むぞ・・・」

 

浮遊大陸を真下に突き抜けて脱出する手段も考えたが、それはプラネテューヌに更なる被害を生んでしまうので即時却下とした。

しかしそうなると、今度は残していた防衛システムを避けながら戻ることになる為、時間が掛かる。

そんなこともあり、走ったところで間に合わない確率が非常に高いハクメンは、全員の健闘を祈りながらも間に合わせるように急いでこの場を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「テルミと『蒼の男』による戦いの決着・・・此れが全ての流れを変えたか」

 

ナオトと対峙し続けているレリウスは、状況の変化を感じ取って限界が来ていると悟った。

体力やイグニスの状況等、個人だけでものを考えればまだ動けると言えるが、全体的な戦況を考えるとそろそろ切り上げて撤退の準備をしなければ不味いと言う結論が出ていた。

 

「此の情報の流れ・・・ネズミが即時退避するのも仕方あるまい」

 

レリウスは既に情報を『観測』て、このまま居続けるとマジェコンヌとレイが危ういことを察し、脱出には自分の力がいる事も把握した。

であるならば、これ以上自分が足止めするのは得策ではなく、彼女らのが動けなくなった場合のフォローをいつでもできるように準備する必要があった。

 

「これで決めるッ!」

 

「来るか・・・」

 

国内に迫ろうとしていたモンスターの全滅までは後少し。レリウスにこれ以上邪魔されないようここで決めようと考えたナオトは一気に距離を詰める。

それを見たレリウスはイグニスに指示を出して防御の準備をさせる。

割って入ってきたイグニスを見ても大して怯むことなどなく、ナオトはそのまま右脚の膝蹴りをイグニスにぶつけてから飛び上がる。

 

G(グリム)O(オブ)P(ファントム)ッ!」

 

「・・・!?」

 

ナオトは落下しながら血で斧を作り上げ、地面に片膝をつけるように着地すると同時に、それを両手で地面に叩きつける。

それによって発生した血の波は、イグニスにぶつかるどころか、一部がイグニスを通り越してレリウスに届いていた。

予想以上の奔流を見たレリウスは咄嗟に防御方陣で防ぐものの、不十分な状態だったせいでそれはすぐに割れてしまい、抑えきれなかった波がレリウスに浴びせられた。

この世界に来てから始めてダメージらしいダメージを受けたレリウスは、軽く吹き飛ばされながらもどうにか姿勢制御を行い、地面に足を引きずりながら着地した後片膝をついて座り込む。

 

「私としたことが情けない結果となったな・・・。だが、同時にもう潮時でもある」

 

「・・・?潮時だって?」

 

「テルミは『蒼の男』によって打たれ、シェア収集装置も破壊された・・・。となれば、私はこの場で御前の足止めすらしている余裕が無くなるのだよ」

 

疑問に思ったナオトはレリウスに問いかけ、それによって帰って来た回答で気付くことになる。

今現在、レイのシェアはシェア収集装置で無理矢理稼いでる状態であり、それが失われるとなれば優勢だった戦況は一瞬で死の危機に早変わりになってしまうのである。

そうなるとこれ以上はここで戦っているともう立て直しができない程の戦力減少を喰らってしまい、二度と再起することができないと言う事態に陥るが故に、レリウスはこれ以上の戦闘ができないのだった。

 

「そういう事だ。私は行かせて貰おう」

 

「あっ・・・おい待てッ!」

 

ナオトの制止を聞くことは無く、レリウスはそのまま転移魔法を使ってこの場を離れた。

しかしながら、ナオトもナオトでドライブを長時間全開にして動いていたので、これ以上の疲労蓄積を避ける為に全開状態を解除した。

 

「ハァ・・・ッ!ハァ・・・。どうにかなった・・・ノエルさんたちは?」

 

疲労の溜まり具合から、肩で息をしながらノエルたちがいる方を見やるが、残りは大型モンスター二体と、その周囲に残っている小型のモンスターだけだった。

 

「・・・カラミティソード」

 

「オモヒカネ・・・この力、今度は護る為にっ!」

 

大型モンスターの内一体を、ラムダは狙っているモンスターの頭上から巨大な剣を突き落として串刺しにし、ノエルはもう一体の大型モンスターを捕縛してから、無数の剣で斬りつけた。

それらの攻撃に耐えきれなくなったモンスターたちが光となって消滅し、残った小型のモンスターたちはそれぞれの行動に移る。

一つはもう勝てるわけがない。幸い浮遊大陸は向こうなのだから自分たちは生きるために逃げると言うモンスターたち。もう一つはやけくそになりながらまだ攻撃をしようとするモンスターたちであった。

 

「残念だけど・・・これで終わりよ」

 

しかし、向かって来たモンスターたちは何かするより前に、アイエフの体を借りているラケルが発生させた二つの竜巻によって飲み込まれ、彼方へと吹き飛ばされながら消滅していった。

 

「終わったか・・・」

 

「レリウス=クローバーを止めてくれてありがとうございました。・・・ところで、彼はどちらに?」

 

脱力して地面に座り込むナオトの下に、ノエルが近くまでやって来てから問いかける。

何事も無いなら『クサナギ』を解いても平気なのだが、まだ油断ができない為に装着したままでいる。

 

「残った奴らのところに行ったはずだ・・・。もう限界だとか聞いたけど」

 

「そうなると・・・誰かがシェア収集装置の破壊に成功したと見て良さそうね」

 

ナオトの回答に対して自身の考えを伝えたのはラケルに体を返して貰ったアイエフだった。

どうやらラケルが負担の掛からない動きをしてくれたお陰で、回復が遅くならないで済んだようだ。

 

「残りは、あの二人だけ・・・」

 

《と言っても、今からあの戦いに入るのは難しいでしょうね・・・》

 

ラケルの言う通り、女神たちとマジェコンヌとレイの二人・・・計十人で戦うあの空間に入るのは難しいものがある。

ラグナが戻ってきた・・・。つまりはテルミが打たれたのを知った上でまだ戦っている為、恐らくは逆上しているマジェコンヌとレイがいる筈であり、不用意に入ろうものなら狙いを変えられて足を引っ張る可能性が高まる。

そう言った面では今から加勢するのはかなり悪手になってしまうのである。

 

「そういや、逃げ遅れはもう大丈夫なのか?ニューも時間ギリギリまでは探してたけど・・・」

 

「・・・私たち、モンスターの相手をしてるのが精一杯で、全くそっちを見る余裕はなかったわね」

 

ラグナに問われたアイエフが自分たちのしていた事を思い出す。そうなると、まだ逃げ遅れがいるかもしれない事を悟ったのである。

 

「それなら、急いで探しましょう!」

 

「飛べるから、ラムダたちは遠くの方を見てくる」

 

「取り敢えず、近場を見てみるよ!」

 

「何かあったらすぐに連絡でね!」

 

「頼んだぜ。バイクは探したところで時間の掛かるし・・・仕方ねぇ、このまま探すか」

 

ノエルとラムダは空を飛んで今いる場所から離れた場所へ移動を始める。

ナオトとアイエフも、近くなら探せるのですぐに走り出した。

ラグナは一度バイクを探そうとしたのだが、実際のところ悪路のせいで走りづらいのと、プラネタワーの近くに停めていたので見つけたところで御釈迦になっている可能性が極めて高い状態にあった。その為、止む得ず走って探す事を選択した。

 

「(後はあの二人を止めるだけ・・・頼んだぞお前ら!)」

 

ラグナは今戦っている女神たちの勝利を祈りながら、逃げ遅れの人を探すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?力が抜けていく・・・?」

 

ハクメンがシェア収集装置を破壊した直後、レイが急速な力の減少を感じで動揺した。

レイの力が減少すると同じタイミングで、女神たちは自身の力が沸いてくるのを実感した。

 

「力が沸いて・・・。誰かがやってくれたのね」

 

「・・・チィッ!ここまで来ておきながら・・・!後ろに下がれ!そのままでは危険だッ!」

 

「すみません・・・一度下がります」

 

ここに来て力の逆転は致命的なものであり、ここまで来ると逃げる為のチャンスを作り、それを逃さず全力で退避することしか残されていなかった。

また、マジェコンヌは自身の使っている武器を、普段使う槍に切り替えて構え直した。

 

「どうにか付け入る隙さえ作れれば良いのだが・・・」

 

女神たち全員が武器を構え直すのを、マジェコンヌは目だけで確認しながらどう動くべきかを考える。

しかし、更に苦しい追い討ちが、彼女らに与えられようとしていた。

 

「ここで大丈夫ね・・・。セリカ、危ないと思ったらすぐに中止してくれて構わないからね?」

 

「うん。お姉ちゃんも、わざわざ連れてきてくれてありがとう」

 

ナインの転移魔法によって、まだ無事であったビルの上にセリカは連れてきてもらっていた。

ここに来た理由は当然、ミネルヴァの能力を用いて自身の持つ力を増幅させ、女神たちを有利にさせる為である。

 

「5pb.も、無理はしないでね?」

 

「大丈夫。ボクはボクにできることをするから・・・」

 

5pb.もまた、ナインの転移魔法でセリカと一緒に移動させてもらっていた。

彼女の歌はラグナや女神たちのように『善』に属される者には力を与え、マジェコンヌやテルミのような『悪』に属される者は力を弱めると言う効果もあり、それによる女神たちの支援を狙ったものである。

 

「よし・・・ミネルヴァ、お願いね」

 

「・・・・・・」

 

セリカの一声に、ミネルヴァは「任せろ」と念を送って彼女の力を増幅させる為のアシストを始める。

それは瞬く間に女神たちの戦場まで届き、影響を与え始めた。

 

「何ィ・・!?ええいクソォッ!ここへ来てそれまで使って来るか!?」

 

「マジェコンヌさん・・・!?一体何が・・・うっ!?私も体が・・・」

 

マジェコンヌは突如として襲いかかった体の重みに苦しみながらも、必死に周囲を捜索する。

レイはマジェコンヌに何が起きたかを聞こうとしたものの、自身に襲いかかった体の重みに苦悶の表情を浮かべることになった。

少しの間探して見ると、まだ無事なビルの一つの屋上でセリカがズーネ地区の時と同じように力の増幅を行っているのが見えた。

 

「見つけたッ!これ以上の好き勝手にさせてなるものかよッ!」

 

「・・・!セリカちゃん!」

 

マジェコンヌは武器をテルミが使っていた『ウロボロス』と同じ形に変え、それをセリカへと伸ばした。

恐ろしい速度で伸びていくそれは、見てからでは追いつけるものではなく、思わずベールが声を上げるものの、最悪の事態は回避されることになる。

 

「誰がいつ・・・セリカに危害を加えて良いと言ったの!?蹂躙する蒼碧の重圧(ネイビープレッシャー)ッ!」

 

それはナインが『ウロボロス』が来るタイミングに合わせて放った巨大な腕の突き落としにより、地面に叩き伏せられる事になった。

止める為の手段を封じられたマジェコンヌは、またしてもかと歯嚙みする。

しかし、マジェコンヌとレイへのバッドニュースはこれだけでは終わらない。まだ5pb.が残っているのである。

 

「みんな・・・聞こえてる?ボクの声が聞こえるなら、一つだけお願いがあるんだ」

 

5pb.がマイクを使って投げかける。その声が届いたシェルターの人たちは、彼女が見えないところで反応を示して周囲を見回したり、耳を澄ませる者が現れた。

 

「今、女神たちやその協力者が戦っている中で、大した力を持たないボクたちにも出来ることが・・・確かにあるんだ」

 

5pb.の告げた『出来ること』というのが気になった人たちが次々と増えて、近くにいる人たちと「お前も気になったの?」と言いたげに顔を見合わせる。

まだかまだかと言う思いが次第に強くなっていく中で、丁度頃合いの時間だと感じた5pb.はその出来ることを伝える。

 

「ボクたちにも出来ることは、その女神たちと協力者が戦いに勝つことを祈ることと、その人たちが勝てるように応援することなんだ。ボクもその人たちが勝てるように新曲で応援するから、みんなも協力をお願い!」

 

5pb.が言い切った直後、様々なところで歓声が聞こえた。そこにいた人たちが全員、やってやろうと言う気持ちで一致したのである。

 

「それじゃあ行くよーっ!『Hard beat×Break beat』!」

 

5pb.が新曲である『Hard beat×Break beat』を歌いだすと同時に、彼女の周囲からセリカの持つ力と似たものが広がっていき、それも女神たちの戦場に届く事になる。

また、それは5pb.の促しによって影響された一般の人たちの想いも乗っており、彼女らに大きな影響を与えた。

 

「な・・・ぬあぁッ!?ま、まともに動けんだとぉ・・・ッ!?」

 

「す、凄い・・・力がこんなにも溢れ出て来るだなんて・・・」

 

マジェコンヌは変身して飛んでいるのがやっとな状態にまでなってしまい、対するネプテューヌは先程までのダメージなどが徐々に回復していった。

 

「(くっ・・・!こうなったら、最後の手段に出るしか無さそうですね・・・)」

 

レイは自身の動きづらくなっていく体の状況を感じながら、思いついた事の実行を考えるのであった。




次回でこの戦いも終わりとなり、その後にまたネプらじ回をやってから最終回で本小説は完結になります。
アニメ13話の部分は週一どころか月一になる可能性も大きくなりますが、やっていきたいと思います。

完結まであと一歩の段階になりましたが、それでも楽しんで頂ければ幸いです。
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