超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER-   作:ブリガンディ

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最終回です


最終話 それぞれの未来へ

「うおぉぉッ!?」

 

ゲイムギョウ界にある『蒼の門』を使わせてもらったナオトはそれを渡るや否、早速上空から落下していた。

―どうして俺だけ毎回こうなんだよ!?そう問いただしたいところであったが、それに答えられる人など一人もいない。ラケルも日付のずれは少な目に抑えてくれると言ってはいたものの、流石に落下をどうこうできるとまでは言ってなかったので仕方ないだろう。

そんな風に考えている間にも、視界には次々と建物が入って来て、自身の真下には廃工場であろう建物を証明するように脆そうな建物が見えていた。

 

「ま・・・」

 

もうじきぶつかる。身体強化の恩恵で死ぬことは無いだろうが、それでもぶつかることは確かなので、ナオトはそれ以上無駄な抵抗をしない代わりに自分の胸の内を叫ぶことにした。

 

「またこうなるのかよおぉぉぉおおおおぉぉおおッ!?」

 

ラグナがいた世界に飛ばされた時も、ゲイムギョウ界に落ちていった時も、そしてこの世界に来る時も。全て上空から落ちていたナオトの心からの叫びだった。

ただ残念なことに叫んだところで自身がその屋根を突き破って地面に落ちるのは、どう足掻いても避けようのない事態になっていた。

 

「うおぁぁぁぁあああぁぁああ!?」

 

抵抗の意味もなく屋根を突き破り、その下にあった鉄パイプの山に突っ込みながらナオトは地面に背中から激突した。

その影響で鉄パイプは宙を舞ってから転がり、地面からは盛大な土煙が巻き起こった。

 

「痛ててて・・・ったく。今度はどこだ?本当に戻って来れたのか?」

 

「その疑い・・・私を見れば晴れるかしら?」

 

「んあ?晴れるってなん・・・」

 

―なんでだよ?と続くはずのナオトの言葉は、聞きなれた声を掛けて来た主の姿を見て止まることになった。

腰まで伸びている金色の髪を高い位置でまとめ、その根本をぴんと立ち上がった黒いリボンで飾っている髪型と、その髪よりも豪奢な金色の瞳。

その少女が身に纏っているのは新川浜第一高校(しんかわはまだいいちこうこう)の冬用制服だった。

自分の知っている中で、どこか高貴的で落ち着きあるような声とそれにそぐわない顔たちをしていて、その高校の制服を着て、自身のことを知る女性の人物など一人しかいなかった。

 

「・・・ラケル・・・なんだよな?」

 

「あら?暫く違う場所にいたせいで忘れてしまったのかしら?疑うのなら、私の『数値』をその眼で見て見なさい」

 

半信半疑で問いかけたナオトだが、彼女から自身満々に問い返されてしまったので、確信することができた。

ナオトの目の前にいる人物こそ、ゲイムギョウ界では光の球体の姿となりながらも自身やアイエフの補助をしてくれた、ラケル=アルカードその人だった。

そして、そのラケルが自分に向けて右手を差し伸べたので、ナオトは予想外の行動に硬直する。

 

「お帰りなさい。ナオト・・・間髪無しで二回も異世界で行動したのは疲れたでしょう?特別に手を貸してあげるわ」

 

「・・・・・・」

 

手を差し伸べた理由を告げるラケルが優しく微笑んだのを見て、ナオトは改めて自身が元の世界に帰って来れたことを実感する。

それと同時に、普段はそっけ無かったり、何かとご注文の多いご主人様(ラケル)がこうして労ってくれたのを目の当たりにして、ラケルがこうしてくれるのを見れたなら、頑張った甲斐があったなと感じた。

 

「ああ・・・ありがたく借りさせてもらうよ。それとただいま、ラケル」

 

ナオトも笑みを返しながら右手で差し伸べてくれた手を掴み、そのまま引き上げて貰った。

ラケルに任せっぱなしで大丈夫だった理由として、彼女が吸血鬼として持っている恩恵のお陰であった。

 

「さあ、帰りましょう。事情は上手く誤魔化せたけど、ハルカが心配していたわよ?」

 

「ああ・・・そういや完全には同じ時間に戻れて無いんだったもんな・・・」

 

ラケルに言われて、ナオトは帰ってきて早々、自身の幼馴染みが涙目になりながら迫ってきそうな絵面を簡単に想像できた。

 

「(まあ、今日くらいは甘えさせてやってもいいかな・・・。俺が寝ちまったら明日とかにでもだな)」

 

心配してくれたり、自分の帰りを待ってくれる人がいるだけ全然大きいよな。そう感じながら、ナオトはラケルと共に改めて帰路に着くのだった。

そして帰った後、案の定ナオトの予想通りの展開となり、その日一日の間好きなだけハルカに甘えさせてやるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「さて・・・これで全部かな」

 

元の世界に戻ってから数日後。ノエルはいつものように教会での生活に戻っていた。

 

「(長かったようであっという間だったなぁ・・・もう全く覚えて無いのがちょっと寂しいかな?)」

 

こちらに戻ってくる間、様々な出来事に直面したのだが、その内ノエルが覚えている事は殆ど無い。

友人にも「本当に覚えてないの?」と聞かれた事はあるが、覚えていないのだから仕方ない。また、ノエルたちがこちらに戻って来てからは蒼い球体は一切見当たらなかった。

というのも、これはラグナが『門』を渡る前にこっそりと『自分の事と悪夢に関する事を記憶等から消し去る』と言う施しを三人に行ったのが影響しており、ラグナたちと関わる時間が長かったが故に殆どの出来事を思い出せないようになっていたのだ。

しかしそれでも、確かに残っているものはあり、現に教会の近くで元気に走り回っているニューがそれを証明していた。

 

「(本当にありがとうございます・・・。貴方のおかげで、ニューは未来に向かって歩き出せました・・・)」

 

―身近な人たちも喜んでいましたよ?ノエルは今やどこか遠くに行ってしまった恩人に、心の中で語りかける。

例え本人に届かなくても、これだけは伝えておきたかったのである。

 

「ノエル・・・食事の準備できた」

 

「ありがとう。ニュー!ご飯にしよーう!」

 

「はーい!」

 

ラムダが外に来て伝えてくれたので、ノエルがニューを呼ぶと、彼女は駆け足でこちらまで戻って来た。

ラムダもニューも、ラグナたちのことはもう覚えていないが、それでもニューを助けて貰ったことだけはしっかりと覚えていた。

 

「今日のご飯って何?」

 

「それは・・・見てからのお楽しみ・・・」

 

「ええ~っ!?そんなのアリぃ!?」

 

「慌てない慌てない。ちゃんと手を洗ってからだからね?」

 

彼女たち三姉妹の会話は、幸せな日常の一つとなっており、三人ともこうして皆と暮らせる日がいつまでも続けばいいなと願ってやまない。

そして教会の中に戻って、彼女たちはまたいつもの平穏な日常を謳歌するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

ラグナとネプギアが正式に付き合いを始めた翌日。遂にプラネテューヌ復興の式典が行われる日となった今日この日、女神たちは全員変身した状態で、ドレス姿で集合していた。

ここまでであればプラネテューヌで結んだ友好条約の時と同じなのだが、プラネタワーは以前以上に立派なものに再建されており、今回は異世界から来て以来このゲイムギョウ界に滞在しているラグナたちも参加するのである。

また、一時的なシェアの減少も復興を行っている最中に各国それぞれのやり方で取り戻しており、今現在は全員が同じくらいのシェアを有していた。

 

「あれからどう?と言っても、ルウィーとリーンボックスはあまり変わらなそうね・・・」

 

「ええ。あれからはそこまで変わっていませんわ」

 

「こっちも、ロムとラムが簡単な仕事を手伝い始めたくらいで余り変わんねぇな」

 

ノワールの問いを聞けば、ベールとブランが肯定する。

ルウィーの方はハクメンやトリニティが一通り重大な局面を終えた事で手が空き、ロムとラムもそろそろ手伝わせても大丈夫だろうと言う判断から外回りを中心に手伝わせている。

無論、分からないところがあればすぐに連絡してくれれば答えるし、自分が手を離せない時はハクメンが代行してくれるので心配は無用だった。

一方でリーンボックスはナインとセリカが来て、教会での過ごし方が安定してからは殆ど変化していない。

強いて言うのであれば、ナインとプラネテューヌの技術者を中心として、各国でラグナの持っていた『イデア機関』の修復プランを全員で考案中の影響で、ナインがまたある程度多忙な生活をしているくらいである。

と言っても、セリカと話したりするだけでも彼女からすれば十分休めるので、少しの多忙さはそこまで問題にはならないらしい。

 

「一週間経ったとは言え、これは少しばかり時間がかかりそうね・・・。プラネテューヌも、ナオトたちが帰ってしまったわけだけど、どうなの?」

 

「・・・私?そうね・・・確かに寂しく感じるけど・・・それ以上に、昨日からラグナとネプギアが付き合い始めた方が驚きで・・・どうしてもそっちに気が回らないの」

 

「そうなのね・・・それなら気が回らなくても・・・」

 

―不思議じゃないわね。と続けようとしたノワールだったが、ネプテューヌが言った事を整理するためにその言葉を止める。

確かにナオトたちが帰ってしまった事は寂しいと言った。これは良い。問題はその次である。

―ネプテューヌは今、ラグナとネプギアが付き合い始めたと言ったのよね?もう一度ネプテューヌに聞こうと思ったが、彼女が「何かおかしい事でも言ったかしら?」と言いたそうに首を傾げたのが見えたので、殆ど全員が数瞬固まる。

 

「ええっと・・・ネプテューヌ?今の本気で言ったのよね?」

 

「もう、ノワールは私がそう言うことで嘘を言うとでも思っていたの?」

 

『えええええええええっ!?』

 

もう一度聞きなおしたら肯定と同義の回答が飛んできたので、流石に殆どの人が驚きの声を上げた。

 

「ほう・・・昨日であったか。それは良い話しを聞いたな」

 

「・・・あら?ハクメンはどっちかを知っていたの?」

 

「ラグナの方をね。それは私もだけど」

 

数少ない例外はハクメンとナインで、この二人はラグナの意中を知っていたが故に動じなかった。

これについてはネプテューヌも少し意外に思っていた。この事情を知っているのは自分だけだと思っていたが違ったようだ。

 

「ラグナ・・・いつからネプギアちゃんのこと好きだったの?」

 

「・・・R-18アイランドへの調査に行った時辺りからだな」

 

「・・・その時からなの?」

 

ラグナから回答を聞いたセリカは「知らなかった・・・」と言う呟きを加える。本当に予想外だったらしい。

聞きたい事を聞けたセリカは、一度自分を落ち着けてからラグナと向かいあう。

 

「おめでとうラグナ。これからネプギアちゃんを幸せにするのもそうだけど、ちゃんと自分も幸せになるんだよ?」

 

「ああ・・・分かった」

 

セリカから賛辞と念押しを受け取ったラグナは素直に頷く。

それと同時に、自分はネプテューヌらゲイムギョウ界組の人たちに聞かなければならない事があったので、それを聞いておく事にした。

 

「これは・・・こっちに来て暫くしてからずっと疑問に思っていた事なんだけどよ・・・」

 

ラグナが少しだけ表情を暗くしたことから、大事な話しだと分かった全員は耳を傾ける。

これだけすぐに反応されると少々聞きづらくなってしまうが、ここで引いてしまっては元も子もないので、ラグナは逃げずに問いかけることを選んだ。

 

「俺がこっちに来てから、大分面倒なこと増やしちまってたからな・・・本当にこの世界に来ちまって良かったのが分んねぇんだ・・・」

 

ラグナはずっと不安に思っていた事を吐露した。

こう思い始めたのはハクメンとこちらで再会してからであり、元の世界での事情をゲイムギョウ界にまでも持ち込んでしまった事が発端だった。

それ以来ラグナは自分が来た影響で面倒事を増やしてしまい、その疑念はテルミらとも再会したことでより大きくなった。

そんなこともあって、ラグナは自身がゲイムギョウ界に新しい災いをもたらしてしまったのではないかと言う考えまで持ってしまったのである。

 

「大丈夫よ。私は・・・いえ、私たちはラグナが来て良かったと思っているわ」

 

「・・・マジか?」

 

ラグナが持っていた不安は確かに否定できないものではあったが、彼女たちはそれをあっさりと否定できる答えを持っていた。

そんなあっさりと否定されたので、流石にラグナも面食らって思わず聞き返してしまった。

 

「私も、あなたのおかげで早めに考え方を改められたし・・・」

 

「私は妹たちを助けて貰った恩義があるしな・・・」

 

「私も、平時の時に手伝ってもらえましたから」

 

「もちろん、ただ助けて貰っただけじゃないわよ?あなたのおかげで、私たちは変わっていく事ができたし、ゲイムギョウ界全体でもいい傾向があったのよ?」

 

女神三人が言っていた事も、ネプテューヌが言っていた事も本当で、ラグナが来たことで良い意味での影響は多かった。

まず初めに女神たちの団結力が早い段階で高まりだし、女神以外では対処が困難な大型モンスターに対処可能な人が増えた事もあって各種交易の巡りも良くなったのである。

そして、何よりもいざという時に女神たちと共に戦うことができ、本人も積極的であることから国民への安心感をより与えることができたのであった。

更に、ラグナが呼び水となってその手合いの人が増えたので、安心感はより大きくなったのである。

ここまで来れば、最も良い影響を受けたのは誰かを分からないラグナでは無かった。

 

「ラグナさん。私は、ラグナさんと出会えてとても幸せです。誰かを幸せにできる人が来ちゃいけなかったなんて・・・そんなこと言いませんよ」

 

「そっか・・・そうだよな」

 

それを聞けたラグナは心底安心できた。一つ気掛かりなのは、ネプギアと結ばれた時も今回もそうで、泣けるかも知れないくらい嬉しい事なのに涙が流れないことである。

恐らく『あの日』の惨劇の時、流す分の涙を使い切ってしまったのだろう。最も、自分が涙を流すなど似合わないと言われるだろうし、そもそもそんな小恥ずかしい姿を見せたいとも思わないので大して気にしていなかった。

そんなことを考えるくらいなら、未来に希望を持って生きていこう。ラグナはそう考えるのであった。

 

「俺も・・・こっちに来て、俺なりの幸福を見つけられたから満足だ」

 

ラグナの回答には、全員がそれでいいんだよと言う表情を見せてくれる。つまりはその胸の内肯定していた。

それによってラグナが納得したことでこの話しは終わったのか、セリカが「ところで・・・」と新しく話しを切り出したので、全員がそちらに顔を向けた。

 

「私たちって普段着で大丈夫なの?女神のみんなは正装だし・・・浮いちゃわないかな?」

 

セリカの疑問は異世界組の服装であり、今回参加する中では自分たちだけが正装を身に纏わないので気になっていたのである。

女神たちはドレス姿だし、その他の人たちも今回の式典に合わせて正装をしてくるようだ。教祖たちは元々が正装として機能しているのでその心配は要らないらしい。

ちなみに今この場にいないナオトたちのことは、「復興後彼ら五人で予定していた旅に出ていった」と伝えられてある。

苦し紛れな言い訳な感じはあるが、流石に元の世界に帰ったとそのまま伝えるのは無理があった。

 

「そのことは心配しないでくださいな。皆さんはご用意が大変でしょうから・・・」

 

「今回の戦いを切り抜けた人たちが緊急参加だから、用意が間に合わなかったで通せるわ」

 

「というか、そもそも正装自体を着ることすらできなさそうなのが一人いるしな・・・」

 

セリカの問いにはベール、ノワール、ブランが順番に答えてくれた。

ブランの回答を聞いた瞬間、全員の目がハクメンに向いたのは仕方が無いだろう。無論理由を理解していたハクメンは頭を抱えることになったが・・・。

 

「実のところを言うと、各国の人たちの要望であなたたちにはそのままの格好で出て欲しいとも言われていたの。用意が大変だと言う事も重なって、それがすぐに決まったの」

 

最後にネプテューヌが種明かしのような答え方をして、そう言うことかと納得できた。

基本的に、女神たちは国民たちからの要望が出ればなるべく答えようとする節があるので、それならばそうなるだろう。

 

「さて、時間だからそろそろ行きましょうか」

 

ネプテューヌの促しに全員が頷き、それぞれの場所に移動を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

晴れ渡る青空へと仕込まれていた白い鳥が飛び去っていくのを合図に、旗が順番に上がっていき、式典が始まった事を告げてくれた。

 

「皆さんの信じる心のお陰で、こうして新しいプラネタワーも完成しました。プラネテューヌの街も、日々復興しつつあります」

 

階段を上りながら、ネプテューヌはプラネタワーの完成と、現在プラネテューヌの状況を伝える。

暫くの間は国民たちが紛失した物の保証だったり、その他諸々で慌ただしかったのも収まり、もう間もなくで何事もなかったかのような状況に戻れるところだった。

ちなみに、ラグナの場合は自身の購入したバイクが浮遊大陸の砲撃を受け、跡形も無く消し飛んでいたので泣く泣く買い直す羽目になっていた。

そして、プラネテューヌの現状を告げ終わると同時に階段を上りきる。階段を上り終えた彼女の前には三人の女神が待っていた。これも予行演習通りである。

この復興は本来ならばもう数ヶ月掛かっていたところを、全ての国で協力して行ったことでここまで速く復興を終えることができていた。

 

「本当にありがとう」

 

だからこそ、ネプテューヌは全員に感謝の言葉を告げる。

当然、この感謝の言葉は目の前にいる三人にだけではなく、この式典を見ている人や今日もどこかで働いている人など、協力してくれた全ての人たちに向けた言葉であった。

 

「それともう一つ、この場を借りて宣言したことがあります」

 

その言葉を聞いた瞬間、全員が頭にクエスチョンマークが浮かぶような反応を示した。

―何か言うことあったっけ?他の三人の女神たちですら記憶を探り返しているのをよそに、ネプテューヌは式典真っ只中なのにいきなり変身を解いて元の姿に戻った。

全員が驚いている中、ネプテューヌは「真面目にやるのも大事だけど、これはこっちの姿で言った方がいいもんね!」と、何も気にすることなく堂々と言って見せた。

 

「えっと・・・私、プラネテューヌの女神ネプテューヌは・・・本日を持って、友好条約を破棄します!」

 

突然の宣言に、事情を知らない人たちは大きく混乱する。ようやくひと段落着いたと言うのに、また問題が増えるのかと。

ところが、ネプテューヌがそう宣言した理由を推察できた、女神たちとラグナたちは違った。

 

「なるほど・・・そう言うことね」

 

「確かに、これからはもうそんなもの必要ねえもんな」

 

「そうでしたら、私たちも宣言してしまいましょうか」

 

ネプテューヌの意図を理解できた彼女たちも互いを見合ってから頷き、順番に口を動かす。

 

「私、ラステイションの女神ノワールは・・・」

 

「私、ルウィーの女神ブランは・・・」

 

「私、リーンボックスの女神ベールは・・・」

 

ここまでは順番に名乗り上げたが、最後に言う事は同じなので、ここで一度口を揃えた。

 

「「「本日を持って、友好条約を破棄します」」」

 

「うんっ!こんなもの無くたって、私たちは本当の仲間だもんね!」

 

彼女らの宣言を聞いたネプテューヌは満足し、満面の笑みでうなずいて見せる。

再び大きく動揺が起こるものの、暫くした後誰かが拍手をしたのを皮切りに、それに連れて次々と拍手が起こる。

つまりは、全員がその宣言に意義が無いことを示したことになる。

 

「さぁて・・・宣言も済ませたことだし、ここは一つ、エキシビションマッチでもどう!?」

 

伝えることは終わったので、ノワールは身に纏っていたドレス姿から普段通りの変身した際の格好になって剣を構え、予定変更だと言う意思を伝える。

これにはこれからも同盟たちと戦う可能性があることと、表向き公開されていないものの、誰かが狙っているかもしれない『蒼』を守護できるようにする為の第一段階として、全員の現在の腕前を確認しておく意図があった。

 

「良いぜ・・・いっちょやろうかっ!」

 

「胸が・・・高まりますわね・・・!」

 

ブランとベールも普段通りの格好となって武器を構え、それを合図に三人が上空に飛び立ってエキシビションマッチを始める。

 

「あぁ~!?待ってよぉ~!変身解いてたから完全に出遅れじゃないかぁ~っ!」

 

完全に出遅れたネプテューヌは、慌てて変身し直し、武器を手に取ってから飛び立った。

四女神だけで行うのかと言えばそうでも無かった。

 

「行ってきますね」

 

「おう。行ってきな」

 

一度目を合わせてからネプギアが短く告げ、ラグナも短く答えた。

ラグナとネプギアの二人が交際を始めたと言う話しはまだ広がっていないものの、近い内に広がるのは目に見えていた。

と言っても、プラネテューヌの女神であることもあり、「妹の方が先だったか・・・」等の反応で終わりそうでもあるが。

 

「ユニちゃん、ロムちゃん、ラムちゃん!」

 

ネプギアは変身しながら他の候補生たちにも呼びかける。

彼女が変身して飛び立って少しした頃に、ユニが追いついて自分の隣に寄ってきた。

 

「負けないからね!」

 

「私たちが最強なんだからっ!」

 

「うん・・・最強!」

 

候補生の四人も彼女らの空戦領域に合流し、エキシビションマッチに参加した。

それによって、プラネタワーから少し離れた上空で、彼女らが飛び回っていることを証明するかの如く、複数の光の尾が見えたり、武器がぶつかり合った証明として、度々閃光が見えていた。

―俺はネプギアを応援しようかな。そう思ったのも束の間、ハクメンが壇上に上ってラグナの方へ歩み寄ってきた。

 

「ラグナよ。我らも一つて合わせと行かぬか?」

 

「ん?そうだな・・・」

 

ハクメンがエキシビションマッチを兼ねて誘って来たのである。

ラグナは少し迷って周囲を見回して見るが、アイエフたちは「いいんじゃない?」と言いたげな表情で返し、他の人たちも期待したような顔を見せていたので、ラグナは覚悟を決めた。

 

「良いぜ。そう言うことならやろうか」

 

「感謝する」

 

ラグナの回答を聞いたハクメンは礼を述べてから飛びのいて、丁度壇上の十字道になる場所の端に陣取る。

ハクメンに場所を開けて貰ったラグナも、一飛びでハクメンとは反対側の場所に陣取る。

 

「ちょっと待ちなさい!そう言うことなら私も参加させて貰うわよ!」

 

二人が武器を構えて準備したのが見えたが、ナインが一度待ったを掛けてそちらへ飛んでいく。

これによって、異世界組は三人でエキシビションマッチを行う事になった。

 

「あらあら・・・それでは私は、余計な被害が起きないようにしておきますね」

 

「み、みんなー!やり過ぎちゃダメだからねーっ!?」

 

半ば諦め気味に笑みを浮かべたトリニティは『無兆鈴』の力を使って、式典に参加した人たちに被害が及ばないように施しをしておき、セリカはこれから戦い始める三人に注意喚起をした。

 

「始めるとしよう」

 

「ええ、いつでもいいわ」

 

「よし。それじゃあ・・・」

 

三人は戦う準備ができるや否、姿勢を低くして構える。

 

「「「行くぞ!(行くわよ!)」」」

 

「(また・・・騒がしい日々が始まりそうですね)」

 

そして、三人は同時に飛び出して戦いを始めた。この先の未来が一瞬だけ不安になったイストワールだが、それでも暗い日々よりはずっと良いと前向きに受け入れ、女神たちが戦っている方を見やると、先程より光の尾は激しく動き、閃光の数も増えていた。

こうして多くの民衆に見守られる中、これから『蒼』を守護する為の第一歩が始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

プラネテューヌでの式典が終わってから一週間後、ラグナは新しくなったプラネタワーに用意された自室でパソコンを開いていた。

つい二日前にラグナとネプギアの交際が始まっている事がバレ、ニュースの内容はそれで持ち切りになっていた。

最初は大丈夫かどうかで不安になったラグナではあったが、ネプテューヌらの予想通り「妹の方が先か・・・」とか「ラグナが誰かとお付き合い始めた方に驚き」と言った声ばかりで、大して気にすることでもなかった。

 

「ラグナさーん。準備できましたよー」

 

「おう。んじゃあ行くか」

 

ネプギアに声をかけられたラグナはパソコンをスリープモードにしてから席を離れた。

今回は付き合うに至った経緯を話す予定ができていたのである。

当然ながらサヤのことは離せないので、そこは上手くぼかして行くことになった。

 

「しっかし、話す内容って事前に決めておいた方が良いんかな?」

 

「少しは楽になるかなと思います。ただ・・・全部決めるといざという時に・・・」

 

乗ったエレベーターのドアが閉められる時にその話し声はかき消されてしまった。

これからラグナたちは自分たちの事を話すが、恐らくは恥ずかしげながらも嬉しそうに話すだろう。

ちなみに、珍しくラグナがパソコンをスリープモードにして出ていったが、その待機画面はノエルたちが帰る前に全員で取った集合写真に設定されていた。

そして、その写真に写るラグナは白い歯を見せた満面の笑みをしていた。

 

 

 

 

 

超次元ゲイムネプテューヌ-DIMENSION TRIGGER-  ―完―




ここまで読んでいただきありがとうございました。
投稿を開始してから1年と3ヶ月。無事に本編を走り切る事ができました。

前回の時も宣言しましたが、今後は遅まきながらもアニメ13話の話しを書いていき、年明けから新作の方を書いていく所存ですので、よろしければそちらでもよろしくお願いします。
新作を書く都合上、こちらが今までとは比べ物にならない程スローペースになってしまいますが、それでも楽しんで頂けたら幸いです。

また、今回大変申し訳ないのですが、この最終話を投稿した後はインターンシップで講師を任されている建て前、感想の返信が普段と比べて大幅に遅れてしまいますので、返事が来ないと思ったらこちらを思い出して頂ければ幸いです。

長くなりましたが、これにて本編を完結とさせて頂きます。
改めて、最後まで読んでいただきありがとうございました。
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