502基地、九月の欧州はそれなりの寒さがある。
扶桑ならもう少しで紅葉が見れる時期だろう。
「はぁ……出撃がないと暇だな」
窓から外を見てぼやくのはブレイクウィッチーズの一員である菅野直枝。
彼女は意外にも文学少女なのだが、今あるものは読み切ってしまった。
出撃もなく、ずっと空を見る時間。
忙しい時には求めるが、いざあるとありがたみが薄い。
(……基地内でも散歩するか)
このまま眺めていても仕方ないので、基地内をぐるっと回ることにしよう。
◇ ◇
(しっかし、誰もいねぇ……妙だな)
そこらを見たが、自分以外のウィッチがいない。
一部のウィッチが外出中なのは知っているが、四、五人は残ってたはずだ。
(いつも少し騒がしいくらいなのに……調子狂うな)
適当に歩いているといつのまにやらハンガーに到着していたようだ。
ハンガーもすっからかん、というわけではなかった。
整備兵が数人いるが、その中でも見慣れたのが一人。
「よっ! なにやってんだ?」
後ろから声をかけるとそいつの肩がビクッと上がる。
素早く後ろを振り向く。
「み、見回りお疲れ様です! 菅野少尉!」
「そんな大層なことじゃねーよ。で、何してたんだ?」
「あ、いえ、別に……」
そいつはモジモジしながら答えるのを渋っている。
「なんだ、他人に言えねーことか?」
「そう……ですね、はい」
「そっか、ならいいか。それよか、二パやひかりはどこにいるか知れねーか?」
話題が変わるとそいつの顔はお仕事モードに変わる。
メリハリがはっきりしててうらやましい。
「カタヤイネン曹長、雁淵軍曹のお二人なら先ほど街へ行かれたかと」
「そっか……」
「もしかして、おひとりですか?」
「まあな。予定も考えないで過ごす休日は暇だ」
だからといって外に出たいとも思わないが。
「なら……少しお付き合いしてくれますか?」
「何にだ?」
「僕の趣味です」
◇ ◇
言われるがままついていくと射撃練習場に着いた。
少し前に誰か使ったのか、的に穴が開いている。
「ここでなにすんだ?」
「なにって、射撃に決まってるじゃないですか」
「お前って射撃好きなのか?」
「ハンティングが好きなんですよ。父から教えてらいまして」
そう話しながら彼はケースに入れていた猟銃を取り出す。
少し年季が入っており、使い込まれているのがわかる。
「菅野少尉は賭けがお好きですか?」
「……できれば勘弁してほしいな」
伯爵に散々むしり取られた過去があるからな。
「お金とかなしでも?」
「それなら……まあ」
金が絡んでこなければそれは純粋な勝負だ。
勝ち負けが決まるならやらないほかない。
「僕と射撃で対決してくれませんか?」
「おいおい、オレはウィッチだぞ? 趣味でやってる奴に負けるとでも?」
「雁淵軍曹が言ってました。やってみなくちゃわからない、と」
最早決まり文句のようになりつつある言葉。
ひかりはそう何度も言っては成し遂げてきた。
言霊でも宿ってるんじゃないだろうか。
「そこまで言うならいいぜ。何を賭けるんだ?」
「そうですね……もし少尉が勝ったら僕が少尉専属の整備士になりましょう」
「言うじゃねぇか! ならオレもそれ相応のもん用意しないとな……」
「なら、僕のお願い聞いてもらえますか?」
「無理なもんじゃなきゃいいぜ! 三発勝負だ!」
「はい! ありがとうございます!」
整備士と直枝は位置に付き、自分のタイミングで勝負を始めた。
◇ ◇
「僅差で負けるとはな……甘く見てたぜ」
直枝が一発のみ中心から外れてしまい、それが勝敗の決め手となった。
前線で戦ってきていながらも負けてしまったことに情けなさを感じる。
「意外とやるもんでしょう? 約束通り、僕のお願い聞いてください」
「仕方ねぇ……なんだ?」
物なら整備道具、時計、酒、こういうので済めばよいのだが、果たして。
「言うとなると……恥ずかしいですね」
「恥ずかしがらずに言えよ」
「その……これを受け取ってもらえますか?」
そう言って差し出してきたのは一見普通の箱。
受け取り、少し振ってみるが音はしない。
「なんだこれ?」
「今日は少尉の誕生日だと聞いたので、プレゼントをと思いまして」
「知ってたのか? なんか悪いな。今開けていいか?」
「他の方からも貰うと思うので、一緒にに開けてくださると幸いです」
「そっか、ありがとな」
「いえいえ、では、私はこれで」
そう言って彼は立ち去った。
直枝は箱を隅々まで見るが、箱ということ以外わからない。
少し面倒だが、夜まで待つことにした。
◇ ◇
そして、夜になるとウィッチのみんなからも祝われた。
わざわざケーキまで用意され、流されるままにいろいろやった。
テンションについていけず、かえって疲れがたまった。
(嬉しいんだが、流石に疲れたな……)
部屋に戻り、ベットで倒れこむように横になる。
そして、昼間に貰った箱のことを思い出す。
だるくなった体を動かし、机に置いていた箱を取る。
もう開けて大丈夫だろうと思い、ベットに座ってから開けてみる。
すると、中にはおそらく手編みのであろうマフラーが入っていた。
(これ、オレが普段身に着けてるやつと似てるな)
マフラーを手に取ると紙が一枚ひらりと落ちる。
拾い上げ、読んでみる。
『最近、マフラーがボロボロになってきたと言っておられたので、これをプレゼントします』
いつかは忘れたが、なにかの拍子に言ったのを覚えていたのだろう。
整備兵の中では親しい方だ、とてもありがたい。
(ありがたく使わせてもらうか)
直枝はマフラーをクローゼットにしまい、着替えて眠りについた。
◇ ◇
翌日、警報の音で目が覚める。
『中型ネウロイが出現、出れるものは直ちにハンガーへ!』
直枝はすぐさま着替え、部屋を出る。
もちろん、昨日貰ったマフラーを身に着けて、だ。
ハンガーまで走り、到着するとすぐにベテラン整備兵が寄ってくる。
「出撃ですね?」
「もちろんだ! 銃、ストライカーの準備を頼む!」
「はい! 菅野少尉の出撃だ! 今すぐ扉を開けろ!」
ベテランの整備兵が指示を出すと他の整備兵すぐさま動きにかかる。
すぐに銃、ストライカーの準備が済む。
銃を渡してきたのは昨日の整備兵だ。
「今日は一段とカッコいいですよ、少尉」
「ありがとな、汚さないように気をつけるぜ」
「ネウロイを負かしてきてください!」
「ああ!」
ストライカーを装着し、使い魔のブルドッグの耳としっぽが生え、魔法陣が描かれる。
そして、寒い空気に触れながら離陸する。
(さて、今日も一仕事といくか!)
直枝はいつもより気合を入れ、空を飛んだ。
ほんとはもっとイチャコラさせたかったが、私の語彙力では難しかった。
そして、自然と友情エンドに向かっちゃうんだよなぁ。
期待してたのと違ったらすんません。