長門は北に向かって航行する
しかし、移動するだけでも燃料は減るし
戦闘をすれば弾薬は減る
なので時折手頃な島や岩場を見つけて補給しなければならない
不思議なことに陸地にいれば帰投したことになるらしく、集中すれば補給画面が出る
画面から物資や資源の具現化が出来る
普段鎮守府などでしかできないことが可能となっている
「もしかしたら、ゲームだった頃に当たり前に出来なかったことが容易に出来るのかもしれないな」
長門はふと球磨を思い浮かべる
「できないはずの改二実装とかな」
まあ、それは自ずと分かることだろうなどと考えつつ長門は再度、静海に足を浮かべる
長門はこれでも中堅提督だった、なので資源はそれなりにある
だが
「この海がどれだけ続いてどこに繋がっているのか分からない恐怖感はゲームでは到底味わえなかったなながもん」
まさか1人の海がこんなにも暗く寂しいとは思いもよらなかった
おちょけた語尾で空の元気をだす長門の前に
水面から1匹のイ級が顔を出す
「...深海棲艦との和平か」
長門はイ級に歩み寄る
「なあ、私たち仲良くしないか? お前となら出来そうな気がするんだ!」
『キュッ!!』
イ級が長門に向かって発砲する
長門はそれを反射神経で避けつつ砲撃を与える
『ギュッ!!』
イ級が海の底、果ての見えない深淵に沈む
「だよな...艦娘と深海棲艦は敵同士、仲良くなんて出来るわけが無いか」
もうじき夜がくる、沈みかけのお天道様が水面でキラキラとその光を乱反射されている
「まださっきの岩場に近い、今日はそこで休むか」
長門は岩場の影にもたれかけ、残っていた菱餅をかじり床についた
________
案外この、深海棲艦によって支配された海でも魚は釣れるもんだ
長門は移動しながら手作りの釣り糸を垂らしている
今日も北に航行中
実は秋イベの秋刀魚や菱餅は残っていて食料には困ってないが
なんて事無い、ただの気晴らしだ
今日はなんだかいつもより海が騒がしい、少し波が高く風もざわついている
「おっ、またかかったながもん」
長門お手製の釣り糸だか結構かかるもんだ、これで3匹目である
「ん?これは大物の予感がするな」
腕にずっしりとした重みを感じながら釣り糸を引いていく
長門型戦艦の推進馬力はおよそ8万2000馬力である
8万2000馬力をすべて腕に寄せる
長門が全力で釣り糸を引っ張っていると遂にその姿が見えてきた
ここぞとばかりに糸を引く
遂につり上がった『それ』は、長く綺麗な黒髪をなびかせながら空を舞う
「っ゜え?」
長門はすってんちょうな声をあげる
「艦娘!?」
釣り上げられた艦娘と思わしき物体は5秒ほど宙を舞ったのち水面に叩きつけられる
釣り上げられたのは、初春型四番艦 初霜であった
「まさか艦娘、それも駆逐艦を釣り上げるとは流石の私もびっくりだながもん...」
「とりあえず起こすか」
「おーい、生きてるか?」
長門は初霜のほっぺをぺちぺちと叩く
「う?うーん」
「お!生きてるか、良かった」
「うーん、貴方は?」
「私は長門、ブイン基地の艦娘会で補佐(雑用係)をやってるものだ
PNは...まあ、いいだろう」
「長門さんですね?私は... あれ?どうしてこんなところに?
私は天龍さんの所で訓練してて...それで...
あれ?なんでそもそも私が初霜の姿に? 私は家で、家で? 家?」
「おおっ、 落ち着け 落ち着け!どうした?何があったのか1つずつ教えてくれないか?」
「はっ、はい! えーと私はいつの間にか艦これの世界に入っててですね、自分の名前が思い出せないんです...PNは分かるんですけど...
それで、わたし 遠くの記憶のなか、すごく朧気な 今にでも払われてしまうような記憶の中で
いつものように仕事に行って、友人と話してて...
その、、、築いたら艦これの世界にいました...、その友人の名前も、顔も思い出せないんです」
この子は記憶喪失になっているのか?
「それで、天龍とは?」
初霜は少し顔を落とし思い出すように話し出した
「たしか、私はブイン基地で途方に暮れていたんです、たしか周りの人も皆そうやって混乱していました
私は突然ゲームの中に入った時の対処法なんて知りませんしネットも使えませんし...」
「そんな人が大勢いる中に一人の艦娘がやってきたんです
それが天龍さんでした、彼女は真っ直ぐな目をしていて私たちの先の見えない生活に光をもたらしてくれました」
「彼女は私たちに情報の提供をしてくれました、ここでの暮らしや資源の用途、海での護身術などです、しばらくして生活が落ち着いてきた時に天龍さんは言いました『せっかく艦これの世界に来れたんだ、このゲームで思いっきり遊ぼうじゃ無いか』と」
「艦これというゲームは端的にいえば戦争をするゲームです、戦うためには強くなるしかありません、ということでみんなで訓練をすることになりました
天龍さんは超高速海上戦闘という技術を持っていました
彼女曰く、先生がいたそうですが私はそれをする天龍さんをとても尊敬していました」
「...しかし、ある日を境に彼女は変わってしまいました
彼女は打倒艦娘会を掲げて 艦娘会と戦争をしようとしていたのです
何故かは分かりません...何が彼女をそこまで変えてしまったのか
艦娘会のいう『リアル』という言葉が彼女の逆鱗に触れてしまったのか...」
「それからは彼女は今まで苦楽を共にしてきた仲間に厳しい訓練を強要しました、ほとんどの艦娘は耐えられず 亡くなって行きました」
「私が最後に覚えてるのは冷たい床と倦怠感でした
それから気づいたら海の上で長門さんに釣られたんです」
初霜は先程の神妙な面持ちとは打って変わって笑みを浮かべている
「そうか、大体把握した
あの天龍にそんな裏話があったとは思わなかったがな」
「天龍さんを知っているんですか!?」
「...知ってるが、そうだな 今確かに言えることはその天龍はもうブインには居ないと言うことだながもん」
「そうですか... 長門さんが?」
「いや、私の同僚だ生け捕りが好ましかったんだが
すまない、私から謝っておく」
「いいんです、...いえ こちらこそ彼女を止めてくれてありがとうございます!」
少し間が開き長門の口が開く
「そうだ、わたしと一緒にこないか?
もちろん貴女がいいのなら」
「っ!もちろんです!よろしくお願いします!」
静かな海に日本の航跡が伸びていた
ちょっと長くなりました、以降ずっとこの調子ですがよろしく見てくれたら幸いです