~球磨の水平線~   作:餅(草)蛇

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29話 クローバー 丁

『すべて上手くいく』

初めての作戦が成功した時確かにそう思った

突然リアルなのかゲームなのか、フィクションなのかノンフィクションなのか分からない世界に閉じ込められ

基地内をただ闇雲に放浪していた時にはなかった達成感

頼れる味方と信頼出来る民衆が居る安心感

そして、私の手で新しい法を、秩序を、文化を、世界を作っていく万能感

ここに来てから気づいたことだが、私はそれらがたまらなく好きだったようだ

私はそれらを得ようとするためにどんな仕事もやった

信頼を得、実績を積み重ねた

 

インフラを整備した、新たな通貨を作った、仕事を与えた、娯楽を提供した

深海棲艦の脅威を取り除くための防衛設備を完備した

艦娘として訓練の義務を作った

 

独裁に見える?

違いない、私は完璧に独裁者だ

 

これまでも、そしてきっとこれからも

私の命が尽きるまで変わらない

どこにも負けない強力な国家を作るためなら私は何だってする

 

深海棲艦なんぞに負けてなるものか...!

 

 

________

 

 

「...?」

 

私は焦げ臭い匂いで目を覚ました

見渡すとここはタウイタウイの基地より少し外れた丘の上だ

どうしてこんな所に?

そんなに疑問が浮かんではきたがすぐに解消された

タウイタウイ泊地が燃えている

 

「そうだ...、確か深海棲艦が攻めてきて...」

 

海を見る

基地をぼうぼうと燃やす火の光によって海はそこの見えぬ闇が広がっている、深淵と言ってもいいだろう

そんなことろに、巨大な影が何体も浮かんでいた

生物と船が合わさったような化け物だ

 

その化け物達からの砲撃で基地は蹂躙されている、人影はない

もうみんな沈んだか

 

よく見れば私も偽装がボロボロで右腕がなかった

脇腹も抉られている、呼吸がしにくかったのはこのためか

 

ん?考えてみればなぜ私は出撃しているのか、私は戦の時は軍師の役目に徹していたのだが…

 

「ああ、なんにも思い出せないな」

 

結局、ダメなやつは何処へ行ったって姿がいくら変わったってダメなんだな

 

「すまんなガングート、基地のみんな

どんなに努力しても、強気でいても

結局私は弱かったみたいだ」

 

『そうか?私の知るお前は後悔なんてしない奴だけどな』

 

「ガ、ガングート!?」

 

「全くお前らくしねーな、こっち向け」

 

「?」

 

「おら、最もシャキッとしろ」ギュムー

 

「痛い!痛い痛い いきなり何するんだ!」

 

「何ってほっぺたつねっただけだけど」

 

「理由もないのか!?」

 

「ほら、お前らしくなったじゃねーか

独裁者さん?」

 

「くっ!」

 

「はいはい、大人しくしてねー

応急手当だけだがしないよりかはマシだろう」

 

 

「で、ガングート

今の状況を詳しく教えてくれないか?」

 

「ああ、突然深海棲艦が発生してな

それも通常型じゃない、実際の船の形をしたやつが現れてな

私たちはそれに応戦したが私たちの攻撃は一切効かなかったんだ」

 

「?それはどうしてだ」

 

「恐らくだが、単純な装甲の厚さだろうと思う

我々艦娘はいわば通常の軍艦のスケールダウン、砲弾も小さくなってるし、もちろん砲撃の威力も弱くなっているだろう

通常の深海棲艦と戦うには十分だが深海棲艦の特性を持った軍艦となればそもそも規格が違う、我々の砲撃が効かないのは必然だ」

 

「そうか、分かった話を続けてくれ」

 

「現状勝算がなくなった我々はお前の判断で基地を捨て

全艦娘をこの丘の隠し倉庫に避難させたんだ

海に逃げようとしても島を完全に取り囲まれていたからな」

 

「そして避難の途中でお前も含め結構な人が流れ弾に当たってな

お前は自力でここまで這ってきたが他の奴らは分からねえ

まあ、ほとんど沈んだだろうな」

 

「そうか、だいたい思い出した」

 

「あと、お前がいねぇあいだにほかの艦娘からの通信が入ってたぞ」

 

「今聴けるか?」

 

「大丈夫だ、じゃあ流すぞ」

 

『こちら球磨、ブイン基地の球磨だ 現在タウイタウイ方向に20ノットで航行中 タウイタウイ泊地に対して避難民受け入れを要請したい

数はおよそ5000

夜明け頃には到着する予定だ 繰り返し通信をお願いする』

 

「だ、そうだが?」

 

「球磨...もしかしてあの球磨か?」

 

「可能性はあるな何せタウイタウイからの艦娘だ

で、どうする?独裁者さん?」

 

「...もちろん要請に応えよう、少し条件を付けることになるが

この状況での実質援軍はありがたい、あの球磨が噂の球磨だとしたら運がいい

こんなチャンスもう無いな、しっかり利用させてもらう」

 

「了解、では通信をするぞ」ピっ

 

 

『こちらタウイタウイ代表「若葉」だそちらからの要件は聞いている私は歓迎するがやむを得ない事情で条件があるのだがいいか?』

 

『返信感謝するクマ、こちらブイン避難艦隊 旗艦「球磨」即答とはありがたいが条件とは何だ?』

 

『現在タウイタウイ泊地は軍艦型の深海棲艦による猛攻を受けている、我々だけの力では手に余る相手でな、少し助力頂きたい』

 

『つまり』

 

『そう深海棲艦との全面衝突だ、それでもいいかね?』

 

『受けて立つクマ』




遅くなりましたすみません
リアルが色々ありまして

久しぶりに球磨が出てきたのですが ここから多摩、木曾編になるためまたしばらく出ないかもですね
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