亡霊ヒーローの悪者退治   作:悪魔さん

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平均評価7.00以上のキープを目指してますが…難しいですね。(笑)
一生懸命頑張ります。


№7:剣崎の正体

 ここは警視庁。

 塚内と加藤は、雄英高校卒業生にして警視庁幹部である浦村文太郎警視監と面会し、彼に一連の(ヴィラン)のみが殺された連続大量殺人事件の資料を渡していた。

「……君達の捜査資料を見たが、こんなマネをするのは間違いなく剣崎だ」

「「!!」」

 ペラペラとページをめくり、一通り読み終えた浦村は、一連の連続大量殺人事件を剣崎の悪者退治だと断言した。

「16年の時を経て蘇ったか……忘れた頃にやってくるとは、この事かもしれんなァ」

 実を言うと……浦村は加藤と同様、剣崎の悪者退治に深く関わっている。何故なら、生前の剣崎が行った悪者退治は全て浦村が後始末を担当していたからだ。

 「全(ヴィラン)滅亡」の信念を掲げ、(ヴィラン)だと知れば問答無用で刀を振るい根絶やしにする剣崎…その比類なき力は凄まじいの一言に尽きた。ヴィランが暴れればどこからともなく現れ、次々と白刃で粛清していく……まさしく、(ヴィラン)という獣を狩る狩人(ハンター)であった。

「まさか少年がヴィジランテとして活動するとは思わなかったな……」

「だが浦村さんよ……今更だが、あいつの悪者退治はいくらなんでも犯罪行為じゃあないのか?」

 加藤の言う事は、正論だった。

 少年法があるとしても、剣崎の悪者退治は事実上の犯罪行為だった。ヒーロー公認制度の確立した現代社会では、私的な自警行為そのものが犯罪である。剣崎の場合はいくら無個性で(ヴィラン)のみが対象とはいえ、彼の悪者退治は日本犯罪史上類を見ない大量殺人である。

本来なら逮捕されて、極刑を受けても決しておかしくない。

 「……そうだな、君の言う通り確かに犯罪行為だ。当時の警視庁上層部も剣崎の自警活動を問題視し、彼の逮捕を考えていた。しかし、彼を逮捕することはできなかった」

「……!? なぜです……!?」

「その時には、既に彼自身が完全に(ヴィラン)の抑止力となってしまったからだ」

 (ヴィラン)の抑止力とは、ざっくり言うと今のオールマイトのような立場である。

 しかし剣崎はオールマイトとは違う。オールマイトが「人々からの絶大な人気」と「圧倒的な正義の力」で(ヴィラン)を抑えたとすれば、剣崎の場合は「恐怖すら覚える〝鉄の意志〟」と「悪者退治による慈悲なき恐怖支配」で(ヴィラン)達を抑えたのだ。

「剣崎はその無慈悲さ・憎悪の強さ・執念深さから、(ヴィラン)からオールマイト以上に恐れられた。本来ならば銃刀法違反に加え殺人罪……厳罰は当然だったろう。しかし彼を逮捕すれば、今まで彼を恐れていた(ヴィラン)達が活動を活発化させるのではないかという懸念が生まれたのだ」

 剣崎の悪者退治は、良くも悪くも治安維持に大きく貢献していた。

 事実、彼が悪者退治を始めてたった数年で日本全国の(・・・・・)犯罪発生率は例年よりも遥かに低下し、世間からは〝ヴィランハンター〟と呼ばれ、一部の人間からは「伝説のヴィジランテ」と称され讃えられ始めた。挙句の果てには彼を恐れて日本から亡命しようとした(ヴィラン)を逮捕したという珍事も起きた。剣崎は良くも悪くも社会的影響を与えていたのだ。

 法律に従って逮捕すれば、彼を恐れていた(ヴィラン)達が活動を活発化させるかもしれない。しかし彼を野放しにするのは警察やヒーローの威信に関わる。剣崎の件は、当時の警視庁上層部を大いに悩ませたのだ。

(それ程までに、人々は剣崎君を必要としていたのか……)

「剣崎が支持を集めた理由は、その比類なき力で(ヴィラン)達を狩りまくって人々を守ったことだが、それに加えて見返りを求めなかったことに影響している」

 (ヴィラン)達を無慈悲に狩りまくった剣崎は、誰からも報酬やお礼を受け取らず、誰からも報酬やお礼を求めなかったという。

 その理由は一切不明だが、最も有力な説として、剣崎は(ヴィラン)達を全滅することが目標であり、その目標を達成して(ヴィラン)がのさばらない日を到来させることが自分自身への唯一の褒美だと考えていたのではないかと言われている。

(ヴィラン)が人々にどれだけの恐怖と被害を与えているか…剣崎はそんな(ヴィラン)を我々警察やヒーローよりも…誰よりも許さず、憎んでいたんだろう」

「「……」」

 法律など、どうでもいい。ただ、(ヴィラン)さえこの世界から一人残らず消え失せればそれで十分――剣崎はそう考えていたのかもしれない。

 早すぎる最期を承知の上で、一度きりの人生を全て擲って、(ヴィラン)共を滅ぼそうとしたのだろう。

「当然野放しにすることはできず、だが彼を消す訳にもいかない……そこで国は止むを得ず、ある条件付きで銃刀法違反及び殺人罪を超法的措置で免除した」

「ある条件……?」

「雄英高校での保護監察処分だ」

 国の苦渋の決断で、剣崎は雄英高校で保護観察されることとなった。

 それは、剣崎が(ヴィラン)にならないように雄英高校の監視下に置くことに加え、(ヴィラン)を狩る事しか今までやらなかった剣崎に救助活動などのヒーローに必要な知識を与えて「正式なヒーロー」として社会貢献できるように更生するという〝超苦肉の策〟を講じたという訳だ。

「そして剣崎は常に誰かに監視される事になった。剣崎を監視する役目を担ったのが……当時の彼のクラスメイトであった香山睡君だ」

「「ミッドナイト……!!」」

 現役ヒーローとして活躍する、ミッドナイトこと香山睡は「眠り香」という〝個性〟を操る。

 剣崎が(ヴィラン)に対する憎しみで暴走しそうになった時は、眠り香で眠らせるという算段だったのだ。

 眠気は本能だ。例え(ヴィラン)達を無慈悲に狩りまくる怪物でも、本能を刺激する彼女の個性には抗いきれなかったというわけだ。

「しかし……生徒間の争いとか無かったんですかね?」

「うむ……彼の行動については雄英高校側が逐一報告してたようだが、むしろ生徒と仲良くしていたそうだ。剣崎は冷酷無比な印象が強いが、元来の性格はむしろ真逆なのだから、当然と言えば当然だな」

 コーヒーを飲みながら、そう語る浦村。

「彼が死んだと聞いた時は驚いたよ……まさかあの〝ヴィランハンター〟が、憎み続けた(ヴィラン)にハメられて死ぬとは思いもしなかったからなァ。その影響か、(ヴィラン)達は勢いを取り戻して、剣崎の時の鬱憤を晴らすかのように過激な行動を増やした。もし彼が死ななかったら、本当に(ヴィラン)は滅亡していたのかもしれんな……」

 剣崎の死後、(ヴィラン)の犯行はより過激かつ凶悪化したという。

 剣崎という怨敵の死で歓喜した(ヴィラン)達は、次々と大事件を起こしたのだ。最終的にはその全てがオールマイトやエンデヴァーの尽力で抑えることはできたのだが。

 だが……16年経った現在(いま)、その剣崎が復活して悪者退治を始めた可能性が浮上した。そしてそれが真実なら、浦村は自らの脳裏に「最悪のシナリオ」が浮かび上がったという。

「私だけじゃない…我々警察とヒーローが恐れているのは、16年前(むかし)の続きをやっている彼の思想に感化される者が現れる事だ」

 もう一度言うが、ヒーロー公認制度の確立した今は、私的な自警行為そのものが犯罪である。しかし剣崎はそんな事など問答無用で悪者退治を行っている。

 かつて剣崎は、自らの人生と命を擲って(ヴィラン)と戦って死んだ。自己犠牲の精神が薄いヒーローが多い今、剣崎が現役ヒーローよりも(ヴィラン)を狩りまくっていたら〝ヒーロー殺し(ステイン)〟を始めとした懐疑的な考えを持つ者……いわゆる思想犯が彼に支持するかもしれない。

 そして一番最悪なのは、「〝ヴィランハンター〟と〝ヒーロー殺し〟の同盟」だ。これだけは絶対に避けねばならないのだ。

「警視監……剣崎君は、一体何者なんですか?」

 塚内の問いに、押し黙る浦村。

 法に縛られず、何者にも屈さず、己が信じた正義を掲げ、己が課した信念の為に悪と戦った少年――剣崎刀真。

 〝ヒーロー殺し〟のステインをも超える力を持っているかもしれない彼は、果たして何者なのか。

「剣崎の正体か…(ヴィラン)界の異端児か、はたまたダークヒーローか、ただの思想犯か…そんな事、さすがの私でもわからんさ。だが、これだけは言える」

 ――剣崎刀真は……〝ヴィランハンター〟は、ヒーロー(せいぎ)(あく)の争いが生み、この世に解き放たれた殺戮悪鬼(バケモノ)だ。

 浦村はそう断言し、塚内と加藤は戦慄した。




ざっくりまとめると、こんな感じです。

剣崎、過去の一件以来(ヴィラン)を憎み続けて暴走。悪者退治を行う。

次々と(ヴィラン)を狩りまくり、その無慈悲さ・憎悪の強さ・執念深さが(ヴィラン)にもヒーローにも知れ渡る。

警察は問題視し逮捕を考えたが、逮捕した場合(ヴィラン)が余計暴れる可能性が浮上。むしろ彼を徹底的に監視して利用した方がいいのではと考えるようになる。

止むを得ず、雄英での保護観察処分に。監査者の中には香山睡(ミッドナイト)が。これが剣崎とミッドナイトの縁の始まり。

そして剣崎が死亡、剣崎への仕返しと言わんばかりに(ヴィラン)の犯行はより過激かつ凶悪化。オールマイトやエンデヴァーの尽力で何とかした。

16年ぶりに剣崎が亡霊として復活(警察は完全には把握していない)、悪者退治再開。

ステインのような思想犯の犯行が目立つ中で、ヴィランハンターの復活はマジでヤバイんじゃね?

ってことです。
因みに彼は中学中退です。学業より悪者退治優先しましたから…。
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