亡霊ヒーローの悪者退治   作:悪魔さん

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ついに顔合わせです。
次回は本格的に戦います。


№20:剣崎VS(ヴィラン)連合~邂逅ノ時~

 黒霧のワープで移動させられ、水難ゾーンに飛ばされた出久達。

 しかし出久の作戦により、辛くも危機を乗り切った。

「あれで全員だったのは運が良かった……すごい博打をしてしまっていた……! 普通は念の為に何人かは水中に伏せておくべきだもの。冷静に努めようとしていけど、冷静じゃなかった……危ないぞ、もっと慎重に……!」

「緑谷ちゃん。やめて、怖いわ」

 ブツブツ呟く出久を梅雨が止める。

 出久は〝個性〟を使った反動で指を負傷したため、肘に付けていたサポーターで覆っている。現在は梅雨と峰田と共に水辺に沿って出口に向かっている。

 その時だった。

「ぐあっ!!」

 骨を折るような音と相澤の苦しむ声が響く。

 まさかと思ってみると、相澤は脳味噌剥き出しの大男に押さえつけられ骨を折られていた。

「対「平和の象徴」……改人〝脳無〟。〝個性〟を消せる……素敵だけどなんてことはないね。圧倒的な力の前では、つまりただの無個性だもの」

 脳無は相澤の頭を無造作に掴み、コンクリートの地面に叩きつける。

「死柄木弔」

「黒霧、13号はやったのか?」

「13号は行動不能にできましたが、散らし損ねた生徒がいて……一名逃してしまいました」

「……はあーーーー……黒霧、お前……お前がワープゲートじゃなかったら粉々にしたよ……今回はゲームオーバーだね。帰ろっか」

 この一言で水辺に隠れている出久達は安心するが、なぜかあっさりと引き下がる彼らに気味が悪く感じた。

 目的のオールマイト抹殺も果たせずに帰ってしまったら雄英の危機意識が上がるだけだ。さらには、この件であの剣崎刀真(ヴィランハンター)が黙っているはずがない。剣崎の件は知らないようだが、かつて(ヴィラン)達を恐怖のどん底に陥れた程の男が本格的に活動すれば一溜りもないだろう。

 出久には彼らが何を考えているのか、わからなかった。

「ま……その前に〝平和の象徴〟としての矜持を少しでも、へし折って帰ろう!」

 死柄木は梅雨の前まで近づいて掌で頭に触れようとしたが……。

「………本っ当かっこいいぜ、イレイザーヘッド」

 相澤の「抹消」で〝個性〟を消したため、死柄木の〝個性〟は発動しなかった。

 最後の力を振り絞って生徒を守る相澤だが、それさえも圧倒的な力の前では無意味だった。

「やれ、脳無」

 死柄木は脳無に相澤の息の根を止めるよう命じた。

 その時だった。

「剣崎さん!!」

 出久の歓喜の声が響いた。

 それと共に死柄木と黒霧、脳無は気配を感じて振り向いた。

 いつの間にか、ボロボロに傷んだ制服を着てコートを羽織って刃こぼれが生じた日本刀をステッキのように突く少年が背後に立っていたのだ。

 ゆっくりと上げた顔はひびのような傷が無数に刻まれており、風もないのに深緑の癖毛が揺らめいている。何よりもその瞳は、凄まじい怒りに満ちていた。その(ヴィラン)顔負けの不気味さに、思わず喉仏を上下させた。

 彼らだけではない。その場に居合わせた全ての(ヴィラン)が、彼の登場にざわめいた。

「…………じろじろ見るのは無礼だぞ。癒えない傷を見たことが無いのか?」

 剣崎の地獄の底から響くような声に、(ヴィラン)達は縮み上がる。

 今まで色んな悪行を重ねてきたが、これ程までに「得体の知れない恐怖」を感じたのは初めてだった。

「お前……何だ?」

「――〝ヴィランハンター〟……人は俺をそう呼ぶ」

 死柄木の言葉に、そう答える剣崎。

 剣崎の一言に、周囲の(ヴィラン)達は一斉に顔を引きつらせた。

 ヴィランハンターは、(ヴィラン)連合が発足するずっと昔に死神の如く恐れられた若者の異名だ。今でも全ての(ヴィラン)の怨敵とされ、彼の悪者退治には多くの(ヴィラン)が犠牲となった。

 全ての(ヴィラン)の怨敵……その当の本人は16年前に死んだはずだった。しかし現に彼はおぞましい姿で死柄木達の目の前に立っている。

 俄に信じがたいが、本物のヴィランハンターならば今ここで敵に回すのはマズイ――そう感じ取った黒霧は、剣崎との会話を試みた。

「っ……お初にお目にかかります。私は(ヴィラン)連合の参謀である黒霧…我々はあなたとは(・・・・・)戦闘をする意思はありません、むしろ友好的な意図をもって接しています」

「……友好的な意図だと?」

 剣崎は黒霧を見据え、怪訝そうな表情をする。

 話がわかるような雰囲気を感じ、黒霧は安堵しながら頷いた。

「――ならばその友好的な意図とやらを、俺も見せてやる」

 そう言って、剣崎は微笑みを浮かべながらコートの内ポケットから短刀を取り出し、宙へと放り投げた。

「俺がこの刀先で地面を叩く度に、お前ら(ヴィラン)共の誰かが一人死ぬ。俺に用があり、それでいて仲間を救いたいのなら早く話せ」

 死柄木達が口を開く間もなく、剣崎は刀で地面を叩いた。すると、宙に放り投げられた短刀が鞘から飛び出て、まるでブーメランのように回転しながら(ヴィラン)の喉を斬り裂いたではないか。

 その(ヴィラン)は叫び声すら上げず、屍として崩れるように倒れた。血飛沫と共に命が消える瞬間を目の当たりにした峰田は悲鳴を上げ、梅雨は顔を青ざめる。出久はそんな二人を慌てながらも落ち着かせようとする。

 一方の剣崎は嘲るように、絶句する死柄木達の顔を見た。

「もっと急いだ方がいいぞ。それからクズ共が一々悲鳴を上げさせないように言ってくれないか? 頭が痛くなる」

 剣崎はすぐに地面を二度叩いた。

 短刀はそれに応じるかのように再び(ヴィラン)達の首元に向かい、二人分の喉を斬り裂いた。

「さァ吐け! お前達の目的を!」

「っ……雄英高校に入らせて頂いたのは、オールマイトに息絶えて頂きたいと思ったがゆえです――」

「オールマイトを殺すだと? 話にならねェな………お前達がどう足掻こうと破滅の道を歩むのに変わりない!! お前達(ヴィラン)の掲げる穢れきった理想は、この〝ヴィランハンター〟が全て破壊してやるっ!!!」

 憤怒の表情と共に、魂から発せられたかのような剣崎の凄まじい怒声が訓練場に響く。

 黒霧は戦慄し、恐怖を抱いた。彼の隣にいる死柄木は、オールマイトすらもゴミ扱いする程ヒーローを強く憎しんでいる。しかし剣崎の憎しみは、そんな死柄木とは比べ物にならないレベルだった。

 自分の全てを奪った(ヴィラン)を、悪をのさばらせることを許した時代ごと殺す――黒霧は剣崎に対しそんな印象を抱いたと同時に、その危険性を瞬時に認識した。

「黒霧……やめだ、こいつを殺そう」

 死柄木はそう吐き捨てた。

 彼は剣崎との対話は成り立たないと判断した。(ヴィラン)への憎悪に狂い、ヒーローにはあるまじき破壊主義的な思考の持ち主である男に声など届かないと。そしてこの男を野放しにすれば、いずれオールマイト以上の脅威となると。

 だから、殺さねばならない。自分達の願望の成就の為に。

「戯言を……!! お前達(ヴィラン)ごときに、この俺の正義を砕くことはできない!!」

「ちっ、先に中ボスか……」

 〝ヴィランハンター(せいぎ)〟VS「敵連合(あく)」の、生死を賭けた戦いが始まろうとしていた。

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