亡霊ヒーローの悪者退治   作:悪魔さん

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№22:剣崎VS(ヴィラン)連合~退却ノ時~

 その光景に、出久達は絶句した。

 たった一撃……鉄槌打ち一発で、相澤を追い詰めた(ヴィラン)が文字通り秒殺された。

 歓声は上げられず、拍手も出来ない。只々、言葉を失うばかり。

 それと共に、剣崎のかつての言葉を思い出した。

 

 ――この学校の生徒連中は、(ヴィラン)との戦いを知らねェだろう

 

「これが、ヒーローと(ヴィラン)の戦い……!!」

 そう呟く出久。

 一方の剣崎は、短刀をコートの内ポケットに仕舞いながら死柄木を一瞥する。

「まだ生きてるのか……どこまでも憎い……!」

 怒りと憎悪に満ちた漆黒の瞳に、血塗れの死柄木が映る。

 死柄木は何とか生きているが、先程のダメージが響いたのか息はしているが意識は無いようだ。

「悪者に慈悲など無用。今楽にしてやる」

 剣崎は地面に深く差した刀を抜き、死柄木の喉に切っ先を向けて突きを放った。

 しかし刃が首に届く寸前に黒い霧が現れ、死柄木の姿が一瞬で消えた。

「……」

 死柄木はいつの間にか、黒霧に抱えられていた。

 剣崎はそんな二人を睨む。

「死柄木、しっかりしてください!!」

 黒霧は必死に声を掛ける。

 しかし死柄木の返事はない…意識を完全に失っているようだ。あの一撃をゼロ距離で食らっても顔が潰れてないのは、掌のようなマスクが彼の顔面を守ったおかげだろう。

 とはいえ、死柄木が危険な状態であるのは変わりない。

「無駄だ……〝雷轟(らいごう)〟を食らってまだ息があるのは大したもんだが、そいつは終わりだ。次に目が覚める頃は、お前達を絶望の淵に立たせるだろうよ」

 冷酷な笑みを浮かべる剣崎。

 その意味を察した黒霧は、剣崎に対する怒りと恐怖で震えた。

「っ……今回は我々の負けとして引きますが、次こそはオールマイトに息絶えて頂きますからね。そしてあなたもです〝ヴィランハンター〟」

「ハッ……お前らのその程度の腕っ節じゃあ、俺とオールマイトは殺せねェよ。それ以前に……」

 剣崎は膨大な殺気を放った。

 全身を食い荒らされる様な殺気に、黒霧だけでなく出久や梅雨、峰田すら息苦しく感じた。

 

「他人の可愛い弟分に手ェ出した上に――何で俺から逃げられるって夢を見てんだ、身の程知らずがァっ!!!」

 

 そう言った瞬間、剣崎は一気に間合いを詰めて黒霧達に斬りかかった。

 しかし彼が斬りかかるよりも早く黒霧のワープゲートは展開され、死柄木と黒霧の二人はその場から姿を消した。

「……ちっ、逃したか……!」

 剣崎は悔しそうな表情を浮かべ、怒りをぶつけるように刀で地面を何度も叩く。

 憎き(ヴィラン)共を追い詰めておきながら、肝心のリーダー格と参謀を逃した。雑兵をどれだけ狩っても、それらをまとめ上げる大将と副将の首を刎ねなければ意味が無いのだ。

「今度こそは……一人残らず皆殺しだ……!!」

 その時だった。

「1−Aクラス委員長、飯田天哉!! ただいま戻りました!!!」

 飯田の声が響いた。

 それと共に、校長の根津を含めた雄英教師がズラリとゲートから現れた。

だが、訓練場に広がる光景を見て騒然となる。

「こ、これは……!?」

 そこに広がるのは、死屍累々。

 (ヴィラン)達の屍が転がっているのだ。その多くが刃物で斬られた痕があり、下手人が誰か一目でわかるモノだった。

「……来るの遅すぎだろ」

 剣崎が声を上げ、コートと髪の毛を揺らしながら階段を上る。

 そんな剣崎に、ミッドナイトは慌てて駆け付ける。

「刀真、大丈夫?」

「俺を誰だと思ってる……天下のヴィランハンターを甘く見んな。ただ……主犯格二人を逃がした」

 剣崎は苦虫を嚙み潰したような表情をする。

 その気持ちをくみとったミッドナイトは、何も言わなかった。いや、言えなかった。

 彼女は知っているのだ。剣崎が(ヴィラン)共を滅ぼすことに、どれ程渇望しているかを。

 〝ヴィランハンター〟と呼ばれ恐れられるより、千の事件や万の犯罪を解決するより、それらの根源たる(ヴィラン)を一人残らず皆殺しにする事を何よりも欲していると。

「睡、出久君達を頼む。奴らがまだどこかに潜んでるかもしれない」

 刀をステッキのように突きながら、剣崎はその場を後にした。

 

 今回発生した「USJ襲撃事件」。

 (ヴィラン)側は逃走した主犯格二名と身柄を拘束された脳無を除いた全員が剣崎によって粛清。

 雄英側は、相澤と13号が重傷、生徒は出久の指の骨折さえ除けば全員無事である事が確認された。

 しかしこれは、後に始まる長い戦いの始まりに過ぎなかった。

 

 

           *

 

 

 とあるビルにて。

 黒霧はオール・フォー・ワンと〝ドクター〟と呼ばれる男と話していた。

 三人の前には、ベッドで安静にしている死柄木がいた。

「死柄木の容体はどうなのですか?」

「危なかったわい……運が悪けりゃあ死んどったかもしれんぞ?」

 ドクター曰く、剣崎の放った〝雷轟〟による一撃が本当に顔面に直撃していたら本当に命が危なかったという。しかも仮に生きていられたとしても脳損傷による影響で記憶や人格の障害、部分的または完全な麻痺といった後遺症で一生苦しむかもしれなかったらしい。

 あの掌を模したマスクで命拾いしたのだ。

「やはり、剣崎刀真の復活は本当だったようだね。ここへ来て一番の厄介者が立ちはだかるとは……」

 オール・フォー・ワンは、機嫌が悪かった。

 かつての怨敵……忘れられつつあった恐怖の〝ヴィランハンター〟が復活したとなれば、多くの(ヴィラン)達は彼を恐れて悪事を働こうとは思わなくなる。

 しかも黒霧の報告によれば、死柄木の個性は通用するどころかむしろ再生してゼロ距離攻撃を食らったというのだから、今の剣崎はほぼ不死身状態だ。その上16年のブランクがありながら死柄木を一撃で沈めた実力。言い過ぎかもしれないが、自分以外に倒せる輩はほぼいないも同然である。

(彼らの報告も含めて考えると……剣崎は恐らく、何らかの不死性を有した〝個性〟だろう。しかし奪えるモノか怪しいな……)

 オール・フォー・ワンの〝個性〟は、他者から〝個性〟を奪って自分のモノにし、更にそれを他者に与えることができる。

 だが剣崎は生前「〝無個性〟状態」であり、剣術一筋で強豪ヴィラン達と互角以上に渡り合っていた。しかもどういうわけか、彼は不死身で蘇った。

 宿主が死する事で蘇る〝個性〟ではないかと容易に想定出来るが、オール・フォー・ワンは今までそんな〝個性〟を奪った憶えも分け与えた憶えもない。つまり、「未知の〝個性〟」なのだ。

 強力な個性であるが、そうである以上は何らかの弱点や短所はあるはずだ。しかしそれすらわからない状態では相性的には現時点で戦うべき相手ではない。しばらく泳がせ、決定的な弱点を見つけるのが先だ。

「やはり刀真は生きていたのか?」

「! ……あァ、君か〝ヒートアイス〟」

 その声に、オール・フォー・ワンは打って変わって笑みを零す。

 何を隠そう、今まで勧誘を蹴ってきたヒートアイスが部下共々(ヴィラン)連合と同盟を結びに来たのだ。

 彼女が率いる「ヒートアイスファミリー」は、(ヴィラン)連合に匹敵する規模の武力を有している。傘下にはならずとも、同盟を組むだけでも貴重な戦力増強に繋がり、それについては彼自身も嬉しく思っている。

「君達「ヒートアイスファミリー」は、僕の為にも働いてもらいたいんだが……いいかな?」

「構わんさ、ただしオールマイトはお前に譲るが剣崎は私の獲物だ。奴の全てを私が頂く……もし剣崎を殺す気なら、私もお前を殺しに行くぞ」

「随分と気に入っているんだね…恋かな?」

「怨敵に恋心など無い……だが、奴の心を私の色に染めたいのだ」

「ハハハ、君らしいじゃないか」

 

 オール・フォー・ワンとヒートアイス、二人の巨悪が結託した。

 標的は、オールマイトと剣崎刀真。

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