亡霊ヒーローの悪者退治   作:悪魔さん

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やっとこの回を投稿できた…!!


№37:爆破VS無重力

 お茶子と爆豪の一騎打ちが始まる。

 先に攻めたのは、お茶子だ。

(相手の目線で大方の攻撃の出所を予測する……デク君は、爆豪君は右をよく使う癖があるって言ってたから……!)

 近接戦闘はほとんど隙無しで、動けば動くほど強力になっていくのが爆豪である。だが一方で、お茶子は爆豪に触れさえすれば主導権を握ることも可能だ。

 当然爆豪はそれを承知しており、接触を避けたいがために必ず迎撃するだろう。

「じゃあ死ね」

 爆豪は右を大きく振って殴りかかった。

 しかし……お茶子は剣崎によって鍛え上げられている。そう易々とやられはしなかった。

(ここだ!)

 お茶子は地面を強く踏みつけ、爆豪の攻撃が当たらないギリギリのところで後ろへ退避した。

「!」

 その瞬間、爆豪の右手から強烈な爆破の一撃が炸裂する。

 観客席から悲痛の声が上げる中、お茶子の動きを目にしていた爆豪はより一層警戒心を強めた。

(今の動き……)

 爆豪自身、右をよく使う癖を自覚している。恐らく、自分の癖については出久から聞いたのだろう。だが、瞬時に後ろへ退くことができたのには驚いた。

 ふと思えば、お茶子は〝(ヴィラン)〟の襲撃以来どこか雰囲気が変わっていた。もしかしたら、お茶子はあの日を通じて自らの弱さを痛感し、自身を強化しているかもしれない。

(面白ェ、ミリ単位でも骨太になったってか)

 内心笑みを浮かべつつも、視界が悪い煙の中からお茶子を探す。

 すると、その中で黒い影が動いているのが見えた。

「ナメんじゃ……」

 爆豪はその影を爆撃しようとしたが、その影の正体を見て動きを止めた。

 影の正体は、ただの上着だったのだ。

 爆豪が影の正体を確認した時には、お茶子は爆豪の真後ろに回り込んでいた。

 爆豪の「爆破(こせい)」は大きな爆煙も伴うゆえに、一時的に視界が悪くなる。お茶子はそれを利用し、煙に紛らわせて上着を脱いで誤認させ、背後から接触を狙ったのだ。

(ここで浮かしちゃえば……)

 しかし……。

「オラァァ!!」

 爆豪は後ろに振り向くと同時に、爆破の威力を高めた攻撃を放った。

 その衝撃で、お茶子は弾き飛ばされてしまう。

(あかん……間に合ってる……!!)

 煙幕からの突進だろうが、見てから動いての迎撃が間に合ってしまう。

 百戦錬磨の剣崎と比べるとさすがに劣るが、爆豪は才能の塊のような輩……やはり反応速度が違う。

「どうすれば……」

 そう呟いた時、ふとお茶子の脳裏に剣崎との会話がよぎった。

 

 ――お茶子ちゃん、君は技で勝負を仕掛けるべきだ

 ――技、ですか…?

 ――そう…力で劣る点を技で補うことで、絶対的な力の差を少しでも埋めるって訳だ。あらゆる技に自分流の一手間を加えればそれで十分……うまく組み合わせれば、強大な力をも捻じ伏せる。例えば……「浮かしたものの落とす時間をズラす」とかな

 

「力で劣る点を技で補う……」

「あ?」

「何でもないよ……おらあああああ!!!」

 お茶子は間髪入れず再突進し、がむしゃらに攻め始めた。

 爆豪はそれに応じるかのように強烈な爆破を浴びせる。

 彼女の戦いぶりをクラスメイトが見守っているが、その多くが引きつった表情をしており、中には顔を覆ったり泣きそうな顔をしている者も。

 何度も爆豪に突進しては激しい迎撃を食らう…それが延々と続く泥臭い試合展開となっている。

「あの変わり身が通じなくて、ヤケ起こしてるな……」

「審判も……止めなくて良いのかよ? 大分クソだぞ……」

 観てるだけで痛々しい印象しか伝わってこない試合に、プロヒーローも不満な声を上げ始める。

「ハァ……ハァ……!!」

「……」

 傷だらけの身体に鞭を打って、弱々しい目で睨むお茶子。

 爆豪もまた、お茶子の休むことない突撃への迎撃に疲れてきたのか、腕で汗を拭っている。

 そんな中、一人のヒーローが席に立ち上がった。

「おい!! それでもヒーロー志望か! そんだけ実力差があるなら早く場外にでも放り出せよ!!」

 一方的に爆豪がお茶子を嬲っているように映るのか、ついにブーイングの声が。

 それは瞬く間に会場全体を包み込み、多くの観客が親指を下に向けてブーイングし始めた。

 実況のプレゼント・マイクも同意をしかけるが……。

《今遊んでるっつったのプロか? 何年目だ? シラフで言ってんならもう観る意味ねェから帰れ》

「相澤先生……?」

 相澤の低く静かな怒声が響き渡り、会場に響き渡っていたブーイングの嵐は一瞬で止んだ。

《ここまで上がってきた相手の力を認めているから警戒してんだろうが。本気で勝とうとしているからこそ、手加減も油断もできねェんだろ。そんなこともわからねェか》

 爆豪は鋭い目つきでお茶子を睨みつける。

(まだだ……まだこいつ……)

 お茶子の目は、死んでなかった。

 誰がどう見ても敗色濃厚であるが、まだ諦めていなかった。燃え尽きていなかったのだ。

「――そろそろかな……ありがとう爆豪君……油断してくれなくて……!!」

「あ……!?」

 ふと気付けば、空には爆豪が爆破攻撃の際に飛び散った瓦礫が浮いていた。

 お茶子は両手を合わせ、〝個性〟で瓦礫にかかっていた無重力の効果を解除した。

《瓦礫の流星群!? いつの間に!?》 

「気づけよ」

 低姿勢での突進で爆豪の打点を下に集中させ続けることで、瓦礫(ぶき)を蓄える。そして絶え間ない突進と爆煙で視野を狭めて、爆豪に策を悟らせないようにしていた。お茶子は、爆豪の隙を作るために爆破攻撃をその身に受け続けていたのだ。

 直接触れなければ発動しない「無重力(こせい)」に加え、浮かすものが何も無い平坦(フラット)なフィールドで爆豪と一騎討ちで戦うのは圧倒的に不利だ。ならば、浮かすものを爆豪に作らせてもらえばいい(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)のだ。

(この策なら、爆豪君は必ず迎撃する!! そこからが(・・・・・)勝負!!)

 流星群攻撃に対し、爆豪は……。

 

 ボガァァァァァァァン!!

 

 爆豪は瓦礫の流星群を一掃する、会心の爆撃を放った。

「危ねェな……デクとあのゾンビ野郎と仲良いから何か企んでるとは思ってたけどよ……」

《爆豪勝己、会心の一撃!! 麗日の秘策を堂々と……正面突破~~!!!》

 お茶子の流星群を跡形もなく消し飛ばした。

 だが、それもお茶子の想定内であった。

「っ!?」

『!?』

《な、何ィ!? が、瓦礫はまだ残ってるーーー!?》

 煙が晴れると、何と空中からまた瓦礫が降ってきた。

 これを見た観客や出久達、プレゼント・マイクは絶句。

 しかし相澤だけは冷静に、かつ内心驚きながらもお茶子の「真の秘策」を察した。

(時間差攻撃が狙いか……!!)

 お茶子の真の狙いは、時間差攻撃。彼女は自分の技が爆豪に看破されて〝個性〟で突破されることを先読みしていたのだ。

 浮かしたものを一気に落とすのではなく、ストックを残しておく。それが、剣崎との修行で得た新たな技だった。

「ちっ!!」

 さすがの爆豪も、止むを得ず残された瓦礫を先程と同様に爆破で一掃する。

 その直後、お茶子はその巨大な爆煙の中に飛び込み突っ込んだ。

(下手に避けるよりも、一気に懐に潜り込む……麗日、お前……!)

 相澤はお茶子の急成長ぶりに、内心驚いていた。たった二週間で、彼女はクラスでもトップの実力者・爆豪とギリギリで戦えているほどに成長しているのだ。

 独学では二週間でここまでの成長は成し遂げられない。そう考えると、彼女の成長を促した人物はただ一人。

(剣崎……お前は大した奴だよ)

 彼女を鍛え上げたのは、〝ヴィランハンター〟剣崎刀真……彼以外いないだろう。

 恐らく、少ない時間でお茶子に戦闘の術を叩き込み、圧倒的な壁に対してどう立ち向かえばいいのかを人知れず指導したのだろう。

「勝ァァァァつ!!!」

 一撃で倒す為、先端を強打されると脳震盪を起こす顎に狙いを定めるお茶子。

 お茶子は左拳を握り締め、爆豪の顎に目掛けて拳を振るった。

(左アッパー!?)

 接触と思っていた爆豪は、まさか殴りかかるとは思わなかったのか目を見開く。

 しかし一気に距離を詰められて、爆破攻撃は間に合わない。

「くっ!」

 爆豪は咄嗟に後ろに避けた。

 たった一歩の、紙一重の回避。だが、それが勝負の決め手となった。

「あっ……」

 お茶子は左拳を空振りし、そのまま前のめりに倒れた。

 燃える気力は残っている。だが、すでに許容重量をとっくに超えており限界を迎えていたのだ。

「……体が……言うこと……聞かん……!」 

「……」 

 ミッドナイトはお茶子の安否を確認する。

 お茶子は全身ボロボロになっても、掠れた目で爆豪を睨みつけている。圧倒的な力の差を見せつけられて倒れてもなお闘志を燃やしている彼女に、爆豪は眉をひそめる。

「父ちゃん………剣……崎、さん……」

 ボロボロな傷を負ったお茶子はそのまま気絶し、ミッドナイトは手を挙げる。

「……麗日さん、行動不能。よって二回戦進出者は、爆豪君」

 静まる会場に響いたのは、ミッドナイトの声のみだ。

(……刀真。お茶子ちゃんはよく頑張ったわ……あの爆豪君を相手にここまで戦えたもの)

 

 麗日お茶子、一回戦敗退。




次回、ついに待望の対決が実現!

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