亡霊ヒーローの悪者退治   作:悪魔さん

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大事なお知らせをします。
近い内にまた新たな小説を始めることにしましたが、やっぱり無しにしました。
お騒がせしてすみません。


№45:(ヴィラン)から(ヴィラン)へ忠告

 翌日――

「剣崎君!! 君はもう少し自重したまえ!!」

 雄英高校の校長室に、根津校長の怒鳴り声が響く。

 怒りの矛先は、剣崎であった。

「〝ヒーロー殺し〟の件も然り、昨日の墓参りの件も然り…!! 立場を考えてくれないか……!!」

 思わず頭を抱える根津校長。

 剣崎が雄英体育祭中にいつの間にかステインとの決戦を控えている件に加え、昨日の「雄英高校(おたく)の生徒が人を殺しそうな程の殺気を放って下校している」という謎の苦情が来たせいで根津校長は胃が痛いのだ。

「……立場なんざどうだっていいんだよ、正直。俺は(ヴィラン)共と戦うのが本業――その為に中坊辺りで人間やめたってのに、そりゃあねェだろ」

「君のことが周囲に万が一にも知れ渡ったら、多くの混乱を招くのだよ……!!」

「だ~か~ら~……そんなのどうだっていいっつってるだろ。むしろ知れ渡った方が俺としては有益だと思うのだが?」

 剣崎曰く、〝ヴィランハンター〟の復活が世間に知られれば多くの(ヴィラン)に対する抑止力として十分機能するとのこと。たとえその名を知らぬものでも、雄英襲撃事件のことを伝えればその強さと恐ろしさが伝わるとも考えている。

 とはいえ、剣崎の行動は今のご時世だと大問題である。ぶっちゃけた話――超自然的な能力を有する生ける亡霊と化した剣崎を敵に回せば、(ヴィラン)側は勿論のことヒーロー・警察側も甚大な被害を被りかねないという訳で彼を手元に置いているのだ。

「そもそも、あんたらはオールマイト一人に甘え過ぎじゃねェか? 時代っつーのは始まりもありゃ終わりもある…奴がいつまでも戦えるって訳じゃねェんだ。いずれ限界が来る」

「――何が言いたいんだい?」

「俺はオールマイト以上に恐れられた……だったらここいらでいい加減、俺の名が知れ渡った方がいいだろってこった。不幸中の幸い、俺は奴と違って弱ってないからな」

 剣崎はそう言うと立ち上がり、刀を杖のように突きながらコートを翻した。

「け、剣崎君! まだ話は途中だぞ!!」

「アンタがそうでも俺は終わった。俺は奴との戦いに備えなきゃいかねェんでな」

 校長室の壁をすり抜け、剣崎はその場から去っていった。

 

 

 さて、校長室を後にした剣崎はオールマイトと出久と鉢合わせした。

「職場体験? ああ、もうそんな時期か……」

 体育祭の後には、プロのヒーローの事務所にお世話になって1週間の現場実習を行う職場体験がある。当時の剣崎は保護観察処分の身であったので実際に体験はしなかったが、多くの生徒は大会での活躍も踏まえて数多くの事務所からのオファーが殺到する。

 そして今回――出久達の代は、やはり轟と爆豪にはオファーが殺到し、意外にもお茶子も多くの事務所が受け入れたいとオファーしていたという。

「お茶子ちゃんは上手にいったようだな。出久君は?」

「それが…オールマイトの担任だった方で……」

「! グラントリノか…あのジジイ、生きてたんだ」

(ジジイ呼ばわり!!?)

 あのオールマイトがガチ震いする程の人物をジジイ呼ばわりする剣崎に、顔を引きつらせる出久。やはり天下の〝ヴィランハンター〟は肝が据わってるようだ。

「……俺も一緒にいいか? 確認してェこともある」

「な、君もか!?」

「菜奈さんの件でちょっと…」

 するとオールマイトは剣崎の耳元まで顔を近づけ、出久に聞こえない程度の声で口を開いた。

「おい、生ミイラの面で近づくなよ……」

「剣崎少年…菜奈さんの件――お師匠の件はグラントリノも言わないようにしている!! 君も「ワン・フォー・オール」の内容を大方は知っているだろう? それを考えてみればわかるはずだ……!」

「……!」

 「ワン・フォー・オール」は、任意の相手に譲渡することで強化される〝個性〟。下手に知られれば脅迫などの強引な手段で狙われる恐れがあるため、この「ワン・フォー・オール」の正体についてはオールマイトの衰弱よりも重い秘密として扱われているのだ。

 今はごく一部の人間しか知られてないが、「ワン・フォー・オール」の正体に関する情報を(ヴィラン)が手に入れた場合、当然それを知る者達は命を狙われることになる訳だ。

「……ちっ、菜奈さんには何とか会いたいんだが……」

「そこをどうにか……」

「わかったよ、仕方ねェ……」

 渋々妥協する剣崎に、オールマイトは安堵する。

 万が一にも彼女の死を剣崎が知った場合、取り返しのつかない事になりかねない。

「だが、もし外でやんなら気をつけた方がいいぞ」

「「?」」

「俺は近い内に〝ヒーロー殺し〟と戦う――巻き込まれねェようにするんだな」

 

 

           *

 

 

 一方、(ヴィラン)連合のアジトには思わぬ客が訪れていた。

「お前が死柄木弔だな?」

「……誰だよアンタ」

「札付礼二……名前ぐらいは知ってるだろ」

「!」

 死柄木は目を見開き、礼二を見据える。(ヴィラン)業界においてトップクラスの実力者である男の来訪には、さすがの死柄木も想定外だったようだ。

「これはこれは……(ヴィラン)業界随一の剣客が何をしに来たのですかな?」

「俺らを殺しに来たなら、やるけど?」

 声を上げる黒霧と立ち上がって殺気を放つ死柄木だが、礼二は気にも留めず口を開く。

「バーロー、一流の無法者は殺しにかかる奴だけ(・・・・・・・・・)を相手取るモンだ。たとえ自分に殺意を向けようが、ヒーローだろうと(ヴィラン)だろうとなりふり構わず手は出さねェよ。まァもっとも、てめェら全員俺の得物の射程範囲だからすぐにでも殺せるけどな」

 その時だった。

 礼二の背後に、筋骨隆々で脳みそ剥き出しの巨体を有する(ヴィラン)が背後に立っていた。襲撃事件において剣崎とも戦った脳無である。

「――てめェらのペットか?」

「……」

「黙秘か……だが俺の「敵意」に気づくたァ躾が行き届いてるじゃねェか。だが悪いが、俺は三十路過ぎてからキレがちょっと悪くなり始めてなァ……とっくに得物収めたってのにダダ漏れなんだ。こんな風にな……」

 

 ゴトッ ドバァァッ!!

 

「「!?」」

 次の瞬間、礼二の背後に立っていた脳無の巨大な腕が床に落ち、切断された面から血を噴き出した。抜き身も見せず脳無の腕を斬り落としたのだ。

「アイツ、先生がくれた脳無を……!!」

「っ! 死柄木、ここは冷静に――」

《やあ、こんなところで会うとはね》

『!!』

「オール・フォー・ワン……」

 テレビ画面から、オール・フォー・ワンの声が響く。

《懐かしいね……君ともあろう者が僕達に何か用かな?》

「ああ……早速本題に入るとしよう。――お前らじゃあ剣崎(あいつ)は殺せねェ、今すぐにでも手を引け」

《!?》

「何……!?」

「剣崎は刀一本で正面から「あの時代」の強豪達と渡り合ってきた、ガキの姿を借りた化け物だ。お前らじゃあ役不足にも程がある」

 礼二の言葉に耳を傾ける二人。

 彼は淡々と言葉を紡ぎ、剣崎について語る。

「これでも俺は日本中の強者共を何度も退けてきた……そしてあいつと正面からやり合って、片目を失った。油断なんざしちゃいなかった――それでも俺はこの様だ」

 礼二はかつて剣崎と剣を交わせ死闘を繰り広げた。互いに命を捨てて戦ったが、結果は剣崎の勝利……片目を失ってどうにか逃げ切り、礼二は今日まで生き延びてきたのだ。

「もうじき奴は完全に復活し、怒りと憎しみを撒き散らしながら昔の続きをやる。てめェ程度の腕っ節じゃあ、あいつに殺されるだけだ――それでもあいつと一戦交えるってんなら止めはしねェがな」

「……それは激励と受け取りましょう」

 黒霧はそう告げる。

「俺はてめェら「(ヴィラン)連合」があいつと事を構えるのにはそこまで口出ししねェが……忠告はしたぞ。あいつはお前程度じゃあ話にならねェぞ」

《……礼二君、勘違いは止してほしいね……〝ヴィランハンター〟と殺し合うかどうかは、弔達が決めることだよ》

「フッ……どうだか。あいつがどういう人間か理解できてねェから言えるセリフだな。お前らがあいつをどこまで追い込めるか……見物だな」

 そう言い残し、礼二は(ヴィラン)連合のアジトを去るのだった。

「――先生……俺達じゃあ、剣崎を殺せないのか?」

《それは無いね。――だが弱点が曖昧だ、心当たりはあるが効くのかどうかを試さないと……ぶっつけ本番で倒すのは、今の弔には荷が重い。ハハハ……だからこそ、〝ヒーロー殺し〟には十分な結果をもたらしてほしいのさ。彼を確実に殺す手段を得るためにね……》

 オール・フォー・ワンは、テレビ越しで悪意を孕んだ笑い声を響かせるのだった……。

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