「そうか……〝ヒーロー殺し〟は死んだんだね」
盛大な溜め息を吐くオール・フォー・ワン。
単独犯という括りでは
そしてステイン死亡のニュースは瞬く間に広まり、
――剣崎の野郎が復活した!! 〝ヴィランハンター〟が蘇りやがった!!
――死んじゃいなかったのか!?
――しかもあのステインもぶっ殺したらしい!!
――オールマイトと手を組んだら終わりだ……!!
剣崎の恐怖はあっという間に〝伝染〟した。死柄木弔は自分達の邪魔をし続ける剣崎に対する怒りを露にしたが、往時の彼を知る者達は皆縮み上がり、ついには足を洗う者も現れ始めた。
それはまずいことだ。「〝悪〟の支配者」――オール・フォー・ワン――と「
かつて手を掛けた
「それとも……これもお前の「保険」だったのかい? 志村菜奈……」
志村菜奈は万が一を見越して、剣崎を無情かつ恐るべき処刑人にさせたのではないのか――オール・フォー・ワンはそう思ってならなかった。
傍から見れば何の根拠も無い戯言に聞こえるが、剣崎は志村菜奈の背中も見てたのも事実だ。現にあの〝平和の象徴〟オールマイトよりも憧れていたのだから、その可能性は完全には否定できない。
「……まァいい。ステインの死は大きな損失だが、その分
今回のステインの死によって剣崎復活による恐怖が蔓延したが、それと同時に剣崎に対する怒りと憎しみを露にする者も現れ始めた。〝ヒーロー殺し〟の意思を継ごうとする、ステイン信奉者である。
「不幸中の幸い、マスコミがステインの思想を広めてくれたからね…そこは良しとしようかな」
ステインの思想「英雄回帰」は、ヒーローとは見返りを求めず自己犠牲の果てに得うる称号でなければならないという主張である。救うことで得られる収益や名声を目的としてプロヒーローとして活動する人間は少なくないのは事実であるため、ヒーローの在り方に疑念を抱く者は
その思想に感化された者達が、この
(問題なのは、これも全て剣崎の思惑である場合だね……)
そう、この一連の流れが全て剣崎の思惑であるとなれば面倒だ。
あえてマスコミを通じてステインの思想を広め、それに感化された者達を
「さてと……そうなると僕も本格的に動かなきゃいけないね」
そんなオール・フォー・ワンの予想は、見事的中するということに彼自身は知らない。
*
同時刻、雄英高校では剣崎がミッドナイトと話し合ってた。
「……睡、一応奴は始末した。出久君達への被害は少しは減るだろうが、気は抜かないこった」
「ええ……一応火永達と連携して回してはいるけど、今回の一件で
「上々だな……」
ステインの死。それは、この現代社会を震撼させた。
警察発表では、ステインの活動を快く思わない何かしらの勢力によって殺されたとされているが、剣崎にとってはどうでもいい。
「――あとは「
「刀真……」
連日のテレビの報道に満足気な剣崎。そう、剣崎は効率の良い「狩り」の為にマスコミを利用したのだ。
剣崎は腕っ節と経験値、直感で悪者退治を行ってきたが〝今時の
ステインの思想を広めて彼に感化された愚か者達を一ヶ所に集中させるのもそうだが、それに加えて剣崎憎しを心に秘めた「仕留め損ない達」をも集結させて少しの手間で「16年の空白」を埋めようと画策しているのだ。
「「全
「刀真…」
「――睡。今年の夏、俺は勝負を仕掛けるぜ。答えを導き出せたからな」
――せいぜい足掻くがいいさ、オール・フォー・ワン…菜奈さんが戦えない状況下だからって図に乗るなよ。
そう呟き、狂気をも孕んだようなあくどい笑みを浮かべる剣崎。
しかし、ミッドナイトは複雑な表情をしていた。
――本当に、これでいいのかしら……?
剣崎は自分と違って、愛と夢と居場所を目の前で奪われ、辿り着きたかった未来を歪められた。
慈悲など無用、余計な禍根は根こそぎ断つ――怒りと憎しみに信念もかつての人格も支配され、一度目の死によって〝個性〟の発現と共に強大化した「負の感情」。その負の感情は、マグマのごとく煮え滾る憤怒と憎悪の源として剣崎を動かしている。
剣崎は、時代を殺し世界を破壊しようとしている。それを実現するに十分な信念と〝個性〟が、彼にはある。
全ての悪を――
恐怖は何よりも重い枷になる。……でも。
――本当に、刀真は望んでいるのかしら……?
今の剣崎は破壊主義的思想だが、全てを奪われる前の剣崎ならばどう考えていたのだろうか。
亡き彼の家族は、どう思っているのか。
――本当に、これで刀真もご家族も報われるのかしら……?
ミッドナイトは、すぐ傍にいるのに剣崎が自分達から――ヒーローから段々遠ざかっているような気がした。
悪に転ずるわけではない。でも、剣崎はこのまま暴走したら取り返しのつかない事になりそうな気がする。そう思ってならなかった。
次回から最終章になります。
最後までお付き合いください。