亡霊ヒーローの悪者退治   作:悪魔さん

72 / 83
ついに最終章だ!!
もうちょいお付き合いしてください。


最終章・神野事件~次代の為に「御役御免」~
№66:100%


 林間合宿は、剣崎の勘の鋭さによって雄英側に知られずに張られた包囲網――世間では遅くとも駆けつけたオールマイトの活躍と報じられたが――によって最小限の被害に止まった。

 報道では、プロヒーローの内一名が頭部による重傷を負い、雄英高校の生徒・爆豪勝己が誘拐され行方不明となったことを警察が公表したという。一方ではマスキュラーを討ち取ってムーンフィッシュ・マスタードの二名を捕縛、重傷を負って気絶した超大物(ヴィラン)である〝ヒートアイス〟こと熱導冷子を拘束して死刑すら生温い罪人達が送られる特殊刑務所「タルタロス」に強制収監したと報じた。

 

 

(ヴィラン)との戦闘に備える為の合宿で襲来……しかも相手が(ヴィラン)連合と来たものだ………恥を承知でのたまおう――我々は甘かった」

「だろうな。平和ボケでお花畑……呆れて物も言えねェ。俺が念の為に裏で動かなかったら、雄英側(こっち)の死人が出てもおかしくはなかったぜ」

 緊縛とした空気が流れていた会議室に、床で胡坐を掻く剣崎の声が響く。

 出久が死柄木に遭遇した時から、雄英側は最悪の事態を防ぐために合宿先を変更した。この事実は数名の教師陣と合宿先の担当であるマンダレイ達しか知らないはずだった。苦肉の策として剣崎の参加も認められ、準備万端であった。

 だが、敵連合(あいて)はまるで知ってたかのように用意周到な作戦で攻めて来た。しかも力押しではなく綿密な計画と精鋭部隊で、その上生徒や親にすら悟られてないことを知っていたときた。

「この際だから信頼云々言うが、これを通してハッキリわかった……ぜってェいるだろ、内通者」

 マイクの一言に、剣崎を除いた全員が固まる。

 内通者の存在は剣崎が合宿前から怪しんでおり、内通者(それ)が教師の可能性も捨てきれないことから教師陣にすら具体的には伝えず監視していた。合宿前まではその動きが見られなかっただけでなく、内通者以外にも情報を抜き取る手段が存在する可能性もあるとして剣崎は警戒と監視程度に止めて合宿中の襲撃で判断するという旨をミッドナイトに語っていたのだが……。

 

 ――睡……今回の林間合宿で、全てわかるぜ。もしこれで奴らが来たら、疑惑は確信に変わる。

 ――雄英高校始まって以来のドデケェ山になるはずだ。

 

 剣崎の予想は当たってしまった。内通者による情報漏洩があったと彼は判断しているだろう。100%そうではないが、可能性は高まってしまっただろう。

 しかも今のところはミッドナイトしか確認してないが、剣崎が独自に調査してまとめたあのリスト(・・・・・)に書かれていた名前は大多数が生徒だ。剣崎が内通者を粛清すべく同胞――よりにもよって生徒に手を掛けるという最悪の事態を想像し、ミッドナイトは戦慄した。

 とはいえ、自分自身が白だと100%証明できるわけも無い。証拠が無ければ内通者を探したとしても内側から崩壊していくだけ。それこそ(ヴィラン)連合の思う壺だ。

「私は腹が立つよ……あと10分……いや、あと4~5分早く駆けつけていれば少年少女達があんな悲惨な目に遭わずに済んだものを……心底腹が立つ! 今すぐ己を殴り飛ばしたい気分だ……!」

「いずれにしろ、内通者探しは後にしよう。問題なのはこれから先どうするべきかだ。いつまでもマスコミやメディアにこのままの雄英の醜態を見せるわけにはいかない」

「……」

 教師陣が今後の対応に追われる中、床で胡坐を掻いていた剣崎は目を閉じて考えていた。

 爆豪を攫ったのは、(ヴィラン)連合の戦力として迎えるためのスカウト目的であると断言していいだろう。攫って雄英側を脅したりするのならば、誰だっていいはずである。あえて爆豪を選んだのは、強力な〝個性〟や身体能力もそうだろうが、一番の理由は「粗暴でありながらプライドが高く意志も強い性格」だろう。その性格がヒーローより(ヴィラン)に向いていると考えたならば、爆豪を攫うのも納得できる。

 では、そんな敵連合(やつら)のアジトはどこか――これもまた目星が付いている。剣崎が今まで出会った(ヴィラン)達は、物流や逃走経路を優先してか交通網が整っていて隠れ場所を見つけやすい大都市を拠点としていた者が多かったため、まず大都市に潜んでいることを前提に考えていいだろう。そして脳無というゲテモノは改造人間である以上、その図体のデカさから見つかりやすいので大きな建物に隠していることも考えられる。脳無を造るための工場を所有している可能性も否定できないので、できる限り雄英に近い場所という距離的な特性も考えると海沿いに絞っていいだろう。

 この剣崎の推測が条件として見事に当てはまるのは、神奈川・東京・千葉のいずれか。ステインの一件では脳無が放たれていたという情報を睡から得たので、三つの内のどこかならいきなり脳無を放つよう命じられてもすぐに対応できる。そう考えると、まず候補として挙がるのは――

神野(かみの)からだな……)

 神野は、神奈川県横浜市にある区の一つだ。神野はかつて、崩壊前の無間軍が一時期アジトにしていた場所だ。海沿いには多くの倉庫があり、その近くには繁華街もあれば廃墟もある。戦力を整え、なおかつ身を隠しやすい場所としてアジトにはうってつけだ。

 問題は相手の戦力だ。冷子が加担していたとなれば、その部下共も(ヴィラン)連合と一緒にいるだろう。だが見方を変えれば、性根の腐った社会のゴミ共を一網打尽にできるまたとない機会だ。警察もプロヒーローも動き出すことを考えれば、剣崎がある程度戦力を削ってシメをヒーロー達に譲ればいい。

 意を決した剣崎は、立ちあがってコートを翻した。

「刀真!? どこに行くの!?」

「睡ィ、安心しな。こういう時こそ俺が動いて汚れ仕事を全うするのが筋だろ? なァに、今の俺の見た目なら「(ヴィラン)同士の抗争」で丸く収まる。俺はすでに死んだ人間……俺が生きていたなんざ世間は誰一人信じやしねェさ」

 剣崎は振り返りもせず、ただ言葉を紡ぐ。

「――てめェらは呑気に話し合ってろ、俺が片ァ付けてくる」

「ま、待て剣崎少年!!」

 オールマイトの制止を振り切り、剣崎は会議室の戸をすり抜けて去っていった。

 

 

          *

 

 

《ご苦労だったね、開闢行動隊の皆》

『……』

 (ヴィラン)連合のアジト。

 そこでは、(ヴィラン)連合の支援者にして実質的な支配者と言えるオール・フォー・ワンが帰還した開闢行動隊に労いの言葉を投げかけていた。しかし開闢行動隊の構成員達の顔色は優れてはおらず、リーダーの死柄木も複雑な表情を浮かべている。

 爆豪勝己の拉致という目的は果たした。だがその過程で〝血狂い〟マスキュラーが死亡し、〝ヒートアイス〟熱導冷子は重傷を負ってタルタロスに収監、更にムーンフィッシュとマスタードが逮捕されるという代償を払った。戦力という面で見れば、かなりの損失であるのは容易に窺える。

 それだけではない。帰還した面々もかなりの手負いの者が多く、荼毘は右肩に刀傷を、スピナーとトゥワイスは体の一部に大火傷を負った。さすがの死柄木もこれには文句は言えなかった。それ程までに凄まじい戦闘であったという証拠なのだ。

《僕は別に怒ったりしないよ、むしろ進歩だと考えている。確かにあの忌々しい小僧の妨害と援軍によってかなりの被害を受けながらも任務を全うできたのだから》

 とはいえ、オール・フォー・ワンはヒートアイスの件は想定外であった。確かに剣崎と戦える実力者ではあったが、報道の通り重傷を負った状態でタルタロスに収監されてしまえば、もうシャバで暴れるのは不可能だろう。

 それと共に、間違いなく剣崎はまだ隠していることがある。16年のブランクがありながらヒートアイスを退けたということは、彼女ですら知らなかったことがあるということでもある。油断はできない。

《……いずれにしろ、ヒーロー達は躍起になって探すだろう。そこで私の知人が助っ人に来てくれたのでね、紹介しよう》

 モニター越しでオール・フォー・ワンがそう言うと、アジトの入り口が開いて男達が入ってきた。

 その男達を見た一同は、驚愕し動揺を隠せないでいた。

「私達は「無間軍」……よろしく頼むよ、(ヴィラン)連合」

 

 伝説の〝ヴィランハンター〟剣崎刀真。

 オールマイトを筆頭としたプロヒーロー達。

 爆豪を拉致した(ヴィラン)連合と、暗躍するオール・フォー・ワン。

 事に乗じて動き出した無間軍。

 この四つの勢力が、ぶつかろうとしていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。