ありえない職業で世界最強   作:ルディア

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大分遅れましたが6話目です。世界観についての説明でミノルのいる世界とハジメのいる世界の秘密が明らかに...?


第6話 一つ目の鍵

 黒騎士との激闘の後、ミノル達は更に数階迷宮を降りていた。ミノルはこの数階を攻略するにあたり、殆ど言葉を発さずまるで魂が抜けたような顔で進んでいたので、それに耐えかねたルナがミノルを仮拠点に引っ張っていった所だ。

 

「.........何をそんなに気にしてるの...?」

「........................。」

「もしかして.........黒づくめに穢れてるって言われたこと......?」

 

 図星だったのかミノルがそっと視線をルナから外した。こんな身になってもミノルはまだ“人間”でいたかった。だが、黒騎士に会い、自分の魔力が穢れていることを再自覚し、欝になっていたのだ。結果メンタルは弱い方なのかもしれない。と、黙り込むミノルの頭に小さな手が乗せられた。言うまでもなくルナの手だ。

 

「......大丈夫。ミノルは穢れてなんかない......。だって私の事...助けてくれた。黒ずくめの言うことなんか......気にしちゃダメ...。」

「............ルナ...。」

 

 自分の頭を撫でながらそんな事を言う少女に本当に救われた気持ちになった。ルナがいなければミノルは今頃ただの怪物になっていただろう。今更人間に戻りたいとは思わない。人間でありたいという気持ちも捨てた訳では無いが、今はそんな事をずっと引き摺って止まっている場合では無いのだ。

 

「ありがとな。よし.........行くか。」

「うん......。」

 

 様々な葛藤を抱え、ミノルは立ち上がる。全てはこの迷宮を脱出しミノルをここまで追い込んだ原因であるユヒトとかいう神をぶん殴る為。ミノル達は仮拠点を後にした。

 

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 所で、ミノルにはもう一つ気になっている事があった。なにかと言うと黒騎士と戦った後のステータスプレートの値の変動である。

 

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 壠瀧ミノル 17歳 男 レベル:???

 天職:????

 筋力:9632

 体力:9253

 耐性:8895

 敏捷:9002

 魔力:9824+5000

 魔耐:9505

 技能:極全属性適性・超全耐性[+全異常状態耐性][+全属性耐性][+極物理耐性][+極魔法耐性]・神位複合魔法・全武器超適性・未来予知[+危険予知][+自動発動]・超高速魔力回復・神歩[+飛翔][+浮遊][+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・神眼[+魔力感知][+気配察知][+アイテム探知][+通路探知]・神化[+限界突破]・全種族言語理解・極魔力増加・半不老不死[+封印]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・魔力変換[+体力変換][+治癒力変換][+衝撃変換]・魔力吸収[+吸収力強化][+吸収治癒][+魔法吸収]・五感強化[+視覚強化][+夜目][+聴覚強化][+味覚強化][+食材判別][+触覚強化][+物質判別][+嗅覚強化]・威圧[+服従][+恐慌]・創造[+消費魔力減]・念話・体術・魔力残滓目視

 

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 殆どのステータスが九千を超え新たに“魔力残滓目視”が追加された。このスキルは魔力の残滓、つまり数分前にそこにあった魔力の流れの様な物が目視できるのだ。例えば、ミノルが歩いたとする。すると、ミノルが持っている魔力がミノルが歩くと同時に移動する。その魔力が通った所には魔力の残滓が発生する。それが見えるスキルという訳だ。これを使えば魔力を持った生物が通った道を辿る事が可能である。端的に言うと追跡ができるのだ。戦闘中に使用する事によって、相手の魔力の流れを見る事で行動を予測したり、魔法放つ時に集まる魔力を見て発動前に避ける事ができるのだ。ミノルの推測では、黒騎士と戦った時に大きな魔力と魔力のぶつかり合いを比喩表現無しに肌で感じた為得られたものだと思うのだが正直、戦闘中使いこなせるかは分からない。

 

 それと、レベルが表示されなくなったのだ。100を超えた辺りでどうもステータスプレートのレベルの部分にモザイクがかかったようだ。このステータスプレートの変動で、分かった事がある。どんなに魔物肉を食おうが、魔物を殺そうが、成長が微々たるものだったミノルがたった一回の戦闘で急激に上がったのだ。つまり、

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言うことである。ただ強いだけでは無く、自分と同等か又はそれ以上の実力を持った“世界最強クラス”の相手では無いとその現象は起きない。この事実を受けミノルはこの世界から帰るという最も重要な目的の他に、ある意味それとは真反対とも言えるもう一つの“目標”を立てることになるのだがそれはまた後の話。

 

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 ミノルが欝から復活し、仮拠点を旅立った頃。ミノルと理由は異なるが迷宮の奈落に落ち、迷宮を攻略しようとしている“南雲ハジメ”とハジメにルナの同じ様に封印から開放された吸血鬼姫“ユエ”は丁度、サソリモドキを美味しく頂いた頃だった。所で、ミノルとハジメが落ちた所が同じなら鉢合わせたりしなかったのだろうかという疑問が生まれる。だがそんな事はこの迷宮を出るまで起きないだろう。

 

 実は、ミノルが今いる迷宮とハジメがいる迷宮は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。どうゆう事かと言うと、この迷宮を作った“反逆者”は結構な慎重派で、もし、二人の“世界最強クラス”の人物が同じ迷宮を協力して攻略しようとしたら迷宮が破壊されるかもしれないし、もしかするとこの迷宮そのものの概念を消滅させられるかもしれないと考えたのだ。そこで“反逆者”は原点となる“零次元”の迷宮を創り、そのコピーを何個も創造し、それを無限に行う機能を追加した。だから、この迷宮は実質、ソロ攻略しか出来ないのだ。そこにつけ込んだルナとユエを封印した人物は別々の次元に二人を隔離し、三百年以上その封印が解かれることは無かったのだ。しかし、此処で、イレギュラー分子であるミノル達がこの世界に召喚された。元から強大な力を持った異世界の住人はその別次元にある迷宮の中で、“反逆者”が自ら創り出した十三の次元の他に創造された迷宮には入れない。つまり、ミノル達は十三個の迷宮のどれかに迷い込むしかないのだ。模倣された次元は元となる“零次元”を始めとする十三の次元に比べ、次元を構成する要素が薄い。だから、比較的魔物が弱いのだ。異世界から召喚された者達はどうやらその要素の薄い次元を消滅させてしまう能力を持っているらしく、残った十三の迷宮の中でどれかに入るらしい。

 

因みにハジメ達がいるのは“零次元”。ミノル達が居るのは“十二次元”である。元となる“零次元”から最も離れた場所に存在する“十二次元”は或る意味最も難易度が低い迷宮になるのだが、離れすぎていたせいか他の十三の次元と比べ模倣された次元の影響を受けやすく、数百万にもなる次元を吸収してしまったらしい。お陰で“零次元”よりも魔物が格段に強くなってしまったらしい。“零次元”ではサイクロプスは光線なんか放たないし、再生もしない。サソリモドキもミノルの魔力を全部削ってしまう程の毒は持っていないし、死んでも再生はしない。

 

ミノルがもし、“零次元”に迷い込んでいたら即刻で攻略し尽くしてしまっていただろう。偶然にもバランスは保たれたようだ。とは言え、もしハジメ達が“十二次元”に迷い込んでいたら.........後はお察しの通りである。基本的に自分が今存在する次元から他の次元への干渉は出来ない。しかし、この迷宮は元からこの世界に“神”が創った物ではなく、“反逆者”が後の時代から“魔法”で創った物なので壊そうと思えば壊せる。物が物なだけにそれは至難を極めるだろうができない事は無い。例えば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とかでも次元全てを壊す事は出来ないが一部分なら壊す事は可能であろう。そして、次元の破壊に伴い他の次元も影響を受け、端的に言うと十二次元の状況が破壊された部分だけ共用されてしまったらどうなるだろうか?

 

「何だ此所。魔物の気配が欠片もしねぇぞ?」

「......ハジメ......此処...魔物がいないみたい......。」

 

サソリモドキを食った後、ハジメ達はミノルが黒騎士と戦った階に到着していた。十二次元でミノル達がリザードマンを全滅させた為その影響で零次元のリザードマンが全滅しているのだが、そんな事知る由もないハジメ達は頭の中に『?』を浮べながら歩き出す。前述した通り、ミノル達とハジメ達が鉢合わせる事は無いだろう。だが、次元を通して影響を受けることなら全然あるのだ。

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「......?」

「...?ミノル?」

 

不意に気配を感じ、振り向いたミノル。だがそこには唯々、虚空が存在するだけであった。

 

「.......いや...結構デカい魔力を感じたんだがな......気のせいか...?」

「......私も...とっても懐かしい魔力を感じた......」

「懐かしい?確かに一つはルナに似た魔力だったが......」

 

もう一つは魔物のそのもののミノルに似た禍々しい魔力だったという言葉を呑み込むと、再び歩き出す。

 

ミノル達は更に数階迷宮を進んでおり、いよいよ攻略も大詰めに入った所だ。五十~六十階辺りの魔物とは比べ物にならない強さを持った魔物がゴロゴロ出てくる。特にミノル達が苦戦したのはスライム型のブニブニした魔物だ。“魔力感知”が無ければ、“魔力核”を目視出来ず、魔法を放てば身体を構成しているブニブニした固体に吸収され、近づこうすればその固体(液体?)を飛ばしてきて危うく骨を溶かされそうになった。そこで、氷系統の魔法で凍らせてから砕く作戦に変更した所ただの雑魚に成り下がった。その他にも、目を合わせるだけで物質を

石化させるコカトリスのような魔物と対峙し、コカトリスが目を合わせる前に、その目を潰し殲滅した。そして、ミノルは現在、中ボスっぽいキメラ型の魔物に苦戦していた。

 

ミノルがサイクロプス戦で出した巨大な光の刃を振り回しキメラを切り刻もうとするが、華麗に躱され光線による追撃を受ける。つーかこの迷宮光線出す奴多くね?と思いながら“魔力残滓目視”でキメラの中の魔力が口に集まるのを確認したミノルはその光線を必要最低限の動きで躱す。発射のタイミングと着弾位置が解れば当たる事はまず無い。まぁ、こちらの攻撃も当たらないのだから、別段有利という訳では無い。光線を放った反動で硬直しているキメラの頭に光の刃を振り下ろす。迫り来る光の刃に反応できず、一刀両断されるキメラだが、次の瞬間にはもう傷が再生していた。

 

「......チッ...どいつもこいつも不死身かよ...。」

 

光の刃を消すとそうボヤき、空中で両手に光を放つ魔力を集める。キメラが仕返しと言わんばかりの形相で魔力を帯びた爪を振りかざしてくる直前、ミノルの手から有り得ない程の眩い閃光が放たれた。目をやられたキメラは、視覚ではなく聴覚と嗅覚に頼りミノルに突進攻撃を繰り出して来る。だが、キメラが突進した場所にミノルは存在せず、未だにキョロキョロと辺りを見回しミノルを探しているキメラの背後から最上級魔法である“虚光”を放つ。ミノルの手から放たれた白き光線は、キメラを細胞ごと消し飛ばした。

 

「うっわぁ......えげつねぇな。この世界だと光線が最強っていう概念でもあるのか?」

「......ミノル......台詞と表情が合ってない...。」

 

今にも大声で笑い出しそうな顔のミノルは軽く服の埃を払うとキメラが仁王立ちしていたせいで通れなかった、階段へと歩みを進めた。

 

 

ミノル達が次に辿り着いた階は、そこまで広くないスペースに、これでもかと魔物が詰め込まれた空間だった。最後の一段を降りた直後、ウェアウルフだろうか。二本足で歩行する狼の顔を持った魔物が三体ほどこちらへ走ってくる。ミノルは慌てずに、魔法で黒い剣を創り出すと、飛び上がり襲い掛かってきたウェアウルフ達を横一文字に切り裂いた。一瞬のうちに、ウェアウルフ達の命の灯しは消え失せる。騒ぎに気づいた蝙蝠型の魔物や、槍を持ったリザードマン、同族の敵討ちとばかりにウェアウルフ等のその場にいた魔物達が一斉にミノル達に襲い掛かる。その数は五百を優に超える凄まじい数の暴力だ。ミノル達をその数の有利を活かし、包囲しようと迫ってくる。やがて、包囲網は徐々に狭くなり、ミノル達の姿は全く見えなくなった。

 

が、その直後、魔物達の中心からドッッーン!!という音と共に、漆黒の光の柱が出現しそれと同時にミノル達を取り囲んでいた魔物達の大半が吹き飛ばされ地面や壁に叩き付けられた。更に、吹き飛ばされずにすんだヘビー級のオークや巨人族もその場に硬直してしまっている。その手や足は痙攣し、その中を悠々と歩くミノル達。別に大した事はしていない。“魔力変換”で魔力を衝撃波に変えたものに“威圧”を足しただけだ。ミノルは別に戦いたい訳でも、何かを殺したい訳でもない。今の所は、だが。五百とかいう創造者の嫌がらせの他の何ものでもない魔物を見て一匹ずつ殺すのが面倒になったのと、こんな所で魔力を使いたくないという気持ちが合わさり、こんな感じになったのだ。

 

当然、全てを消去した訳では無いので残党共がワラワラと湧き出てくるが、魔物達はミノルを見て何かを悟ったのか、攻撃は加えてこなかった。所でルナはと言うと、先程の騒ぎにも全く動じず、ミノルの背中で気持ち良さそうに寝ていた。お分かりの方も多いと思うがルナには結構甘えん坊な所がある。聞けば、何でも王国で“王”の座に就いていた時、妹の方はこれでもかと言うくらい甘やかされたのだがルナは一国の主としてどちらかと言うと頼られる事が多かったんだとか。だが、自分が姉なだけに、変な意地やプライドがあったらしく一度も甘えさせてもらった事が無かったそうだ。だから、ミノルにベッタリなのだが、そういうの関係なくただ単にミノルに甘えたいだけじゃね?という意見も出ているのだが真実は不明である。

 

暫く、この階を探索しているとミノルは面白い物を発見した。形は神結晶そのものなのだが色が神結晶とは全くの別物だ。本来なら、神結晶は青白い光を放つ物なのだが、どうゆう訳かその鉱石は赤く、妖しく輝いていた。引き寄せられる様にその鉱石に近づくとそっと手で触れてみる。すると、その鉱石はより一層鮮やかに煌めき、思わず腕で目を覆うと次の瞬間、ミノルの意識は闇へ消えて行く。

 

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ミノルが目を覚ますとそこは、いつか見たあの“魔神”がいる場所であった。前回と同様に床が赤黒く染まり、目を凝らしても何も見えない真の闇。その空間に突如人間の声の様な音が響く。

 

『.........ククク......見つけたか...残りは7つ......全て.........揃う時......貴様は.........深淵に堕ちる......』

「どうゆう事だ?説明しろ。」

『無駄だ......言って理解できるようなものでは無い.........精々足掻け.........血塗られたら貴様の......運命を呪いながらな......』

「おいっ!待て。お前は一体誰.........クソっ消えやがった。」

 

後には何も無い闇が広がっているだけであった。ミノルがふと下を見た直後再びミノルは現実世界へと帰還する。

 

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次回の更新は未定です

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