IS《ISの帝王:小説版》   作:只の・A・カカシです

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MAD版を読んでくれていた読者諸君。作Aだ。そして、待たせたなぁ!IS《ISの帝王:小説版》の始まりだ!
*なお、投稿、コメ返は作Bの模様


第1話 コマンドー!

 黒板、いや無駄にハイテクなこの学園はスクリーンを採用している。その前で、副担任の山田先生は微笑みながら話す。

 「全員揃ってますねー。それではHRを始めます。」

 クラスの女子と比較しても、頭一つ分小さい小柄な先生。何なら、クラスの女子が先生に見えるくらいだ。

 「それでは皆さん、一年間よろしくお願いしますね。」

 「「「・・・・・・・・・・。」」」

 小慣れた感じで、挨拶をする山田先生。しかし誰一人として、反応を示さない。

 〈何故、黙っている。・・・俺も言えたタチではないか。〉

 最前列真ん中。筋肉モリモリマッチョマンの生徒は、心の中で呟く。

 「で、では、自己紹介をお願いします。しゅ、出席番号順で・・・。」

 小柄な先生は狼狽える。まだ若手なのか、それとも生徒(マッチョマン)の雰囲気が感じたことのないもので困惑しているのか。もっとも、本人にすら分からないかもしれないが。

 今日は、高校の入学式。しかし、クラス、いやIS学園にはこのマッチョマンを除き女子しかいない。高校としての分類は共学であるにも拘わらずだ。

 「・・・くん。織斑一夏君!」

 「何だ!」

 そんな大声で呼ばなくたって聞こえていると言わんばかりに言い返す。

 〈クソッ!高く大きな声のせいで、頭の中がドンパチしてやがる。〉

 「ご、ごめんね。大きな声で呼んじゃって。お、怒ってますか?聞こえてましたか?自己紹介して貰っても良いですか?」

 「分かってます。」

 「い、何時の間に立ち上がって!!」

 正面にいた人間にすら立ち上がった気配を感じさせない。もっとも本人は、それほどの技術であるようには感じていないようで。

 「静かに、素早くです。姉が教えたんですよ。」〈全く、あの姉は何処で何の仕事をしてるんだ。〉

 このマッチョマンどうもシスコンのようで、心では姉を馬鹿にしつつも、周囲には姉を自慢している。

 「そ、そうですか。あ、それでは自己紹介をお願いします。」

 マッチョマンこと織斑一夏は、自己紹介をするために後ろを向く。当然、女子女子女子。

 〈アイツ(・・・)だったら、カカシ揃いだと言いそうだ。〉

 だが彼は、臆する様子もなく自分の名前を言った。

 「俺の名前は織斑一夏だ。よろしく頼む。」

 

 

 

 「何て時期に、何て所で試験をしやがる。」

 二月の真ん中、織斑一夏は中学3年として受験まっただ中であった。

 この日、近所の高校を受験する為に11分先の駅まで行かなくてはならないのだが、大雪のせいで電車は止まっている。

 〈くそったれが。全く誰だ、去年のテストでカンニングした野郎は。面白い奴だ。探し出して晒し上げるのは、受験の後にしてやろう。〉

 この時、まだ自分がネタにされるなんて思っても見なかったことだろう。

 彼が受験しようとしている私立高校の受験日には振り替え日がない。つまり、何が何でも試験会場に行かなくてはならないが、鉄道が止まっているため当然道路は大渋滞。歩いていくしか手段がないが、道路沿いは雪が解けシャーベット状になって歩きにくい。なので、仕方なくカバン片手に徒歩で山越え中である。これを、筋肉の発想と呼ばずして、何と言えばいいのだろう。雪の上を歩く姿は、さながらゴリラのようである。(もっとも、ゴリラなど彼の足元にも及ばないが)

 彼の志望校は、私立藍越学園。彼曰く、

 〈一番気に入ってんのは、学費だ。(・・・ん?)姉のスネを囓ってんだから、安いところを選ぶのは当然のことだ。幸い姉の稼ぎは良いので、金に困っている訳じゃないが・・・。〉

とのことである。

 

 20分程度掛け、会場に到着する。因みにこの所要時間は、Goo*le先生もビックリな速さであるとだけ書いておく。

 〈先のことは、受かってから考えるとして・・・。この建物は一体何だ。部屋の付いた迷路じゃないか。〉

 遙か先まで伸びる廊下。無駄に鬱陶しい柄の壁紙は、高いのか安いのかは知らないが掲示物が一切無い。要は、自分の居場所が分からない迷子になっていた。

 〈まあ良い。試してみるか(物理)。次に見つけたドアを開けてやる。OK?〉

 「Wrong!And,NOooooooooo!!!!!!」と、鍵が言った気がした。

 が、気のせいと言うことにし、彼は思いっ切りノブを捻る。

 「フッ!」

 バキィィィィィィィィン!【0/4000】

 金属の破断する音が廊下に響く。

 〈この手に限(鍵)る。〉

 下らないギャグをかましながら、部屋の中へと入る。室中は妙に広く、中央には、ISが鎮座していた。

 〈何故こんな所に?〉

 疑問に感じながらも、ISへと近付く。

 「男には動かせん。・・・筈だよな?」

 『触らぬ神に祟りなし』と、古人はよく言ったものだ。

 だが、彼の予想していた結果とは裏腹に起動を始めるIS。同時に、意識に無数の情報が雪崩れ込んでくる。

 「何故だ!男には動かせん――」

 「筈か?残念だったな。3階!非常事態だ!操縦者は男性!髪は濃紺、身長170cm!学ラン姿の筋肉モリモリ、マッチョマンの変態だ!」

 何時の間にかそこにいた警備員(?)らしき人間が、仲間にある意味的確な情報を伝える。

 〈即座に通報とは、中々優秀な奴だ。最初の2言は余計だったが。〉

 

 

 

 そして今に至る。

 「それだけだ。」

 名前を言い終え、座る、と・・・。

 がたたっ!と音を立て、クラス中(一部除く。・・・中と言ったな。あれは嘘だ。)の人間が、椅子から転げ落ちた。

 〈何故転ぶ。面白い奴等だ。〉

 真顔のまま、後ろを見ることなく座り続ける。

 「あ、あのー・・・・・」

 か弱い声を掛けられる。仕方なく、その方を向こうとした瞬間。

 パァン!【9998/9999】

 強い笑げk・・・衝撃。

 「何だ!」

 しかし、この時には叩いたのが誰であるのか気付いていた。

 〈この叩き方!間違いない!〉「ターミねーちゃん!」

 バァンッ!【9996/9999】

 「誰が抹殺者か!」

 〈成る程、良いセンスだ!(・・・んん?)〉

 叩かれたにも拘わらず、ケロッとした様子で自分の姉を褒め称える。

 「あ、織斑先生!会議、お疲れ様です。」

 「あぁ、山田君(ずうとるび)。コンサート・・・クラスへの挨拶、ご苦労だった。」

 『ずうとるび』が出てきたのはわざとか、それとも素か。

 それを聞き逃すことなく、織斑一夏は切り込む。

 「山田君に何枚貰った!」

 「10枚、ポンッとく――」

 ズバァン!!【9991/9999】

 流石、元ブリュンヒルデ。乗せられても簡単にはボロを出さない。

 「・・・馬鹿者が!一夏ぁ、頭はどんなだ?」

 「近くに寄って確かめろ。」

 「いや、結構。ロクなことはない。」

 〈っち、ダメか。〉

 一通りやり合って気が済んだのか、織斑千冬はクラスの方へと向き直る。

 「さて諸君、私を覚えているかね。」

 「当然だ、誰が忘れるものか。」

 ズバァン!【9989/9999】

 ・・・前言撤回。まだ気が済んでいなかったようだ。

 「少し黙ってろ。」

 もし威圧感に物理的力を与えたなら、物体のことごとくを破壊したことだろう。しかし、十代の女子とは怖いもの知らずだ。次の瞬間。

 「キャー!千冬様!千冬様よー!」

 この声を皮切りに、次々と歓声が飛び始める。

 「ずっとファンでした!」

 「私、お姉様に憧れて、東南アジアかアフリカか越えてここまで来ました!」

 随分と遠くからいらっしゃった方がおられますね。

 「ここに入るのに、えらく苦労したのだ。」(ドヤ顔)

 「お姉様のためなら、私死ねます!」

 自分たちに向けられた言葉でないと解釈するや否や、一斉に騒ぎ出すクラスメイト達。

 〈まずいな、頭のドンパチがぶり返してきた。〉

 女子達の凄まじい声量に、一夏は意識を飛ばされまいと耳を塞ごうとする。

 「全く、これだけの馬鹿共(カカシ)を良く集めるものですな。全く笑えない。」

 しかし、騒がれている当の姉はけろっとした様子だ。流石は元ブリュンヒルデ。

 〈少しは笑ったら・・・〉

 相も変わらず辛辣な言葉を放ち続ける自分の姉に、心の中でアドバイスを送る。

 「キャー、もっと叱って罵って!」

 「でも、時には優しく!」

 「つけ上がったら「ばらばら死体にして飛ばすぞ?」はい・・・。」

 どうも世間では、織斑千冬=孤高の人間と言うのが常識なようで、優しさは求められていないらしい。それにしても、凄え威圧感だ。悪くねえぜ。

 「で?お前は、ロクに自己紹介もできんのか?」

 勢いそのままに、一夏へと口撃を再開。

 「悪いが千冬姉、俺は」

 ズバァン!【9994/9999】

 失礼、攻撃を再開する織斑千冬。

 因みに上のライフが回復しているのは、時間が空いたからであってミスではない。

 「織斑先生と呼べ!OK?」

 「OK!」

 ズバァン!!【9986/9999】

 定番の返しにも、容赦はない。

 「返事は、『はい』だ!」

 返事一つにも拘る辺り、流石は元ブリュンヒルデ。

 「はい。」〈・・・クソッタレが!〉

 「分かればいい」

 そう言い残し、織斑千冬は

 ズバァン【9985/9999】

 去っていくことなく一夏をブッ叩く。

 〈やっぱり叩きに来たか!流石だ、千冬姉!(・・・んんん?)〉

 ズバァン!【9983/9999】

 勿論、心の中だってお見通し。

 暫く後、騒ぎが収まったところでクラスメイトからの質問が飛ぶ。

 「あの、織斑君って、織斑先生の「弟ですが何か?」・・・。」

 質問は言い終わる前に答える!(ドラ○もん並感)

 「あぁ!いいなぁ!代わって欲しいなぁ!」

 「この姉が欲しいのか?んー?あーげないwww」(・・・ん×4?)

 スカッ【9984/9999】

 突然のキャラ崩壊に思わず首を捻ったお陰で、一夏は間一髪、出席簿の餌食になることを回避。

 「よく避けたな、一夏。長い付き合いだ、苦しませたかねぇ!一発で眉間に叩き込んでやる!」

 出席簿を振りかぶった。正にその時、教室に鳴り響くチャイム。

 「っち、HRは終わりだ。諸君らには、半年以内にISの基本を覚えて貰う。その後実習だが、半月で覚えろ!いいな!私の言葉には返事をしろ!良くなくとも返事をしろ!いいな!」

 機嫌が悪いのか、とんでも無いことをシレッと吐く織斑千冬。

 「いや、結構!(・・・ん×5?)」

 パァン!!【9960/9999】

 続けざまのキャラ崩壊に、うっかり意識を奪われた一夏はクリーンヒットを許す。

 〈くそったれ。〉

 パァン!!【9958/9999】

 心の中で呟いても結果は一緒であると言うことを学ばないのだろうか、この筋肉は。

 「こうなりたくなければな!」

 初日のHRは、織斑千冬の半ギレと呆れ声の元に幕を降ろした。

 〈さて、1時間目の授業は何だったかな。〉

 全くダメージの蓄積を感じさせない一夏は、カバンの中から教科書を探すのであった。




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*なお、しなくても書き溜があるので暫くは続く

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