IS《ISの帝王:小説版》 作:只の・A・カカシです
6月頭、一夏は五反田家にいた。
部屋には、ゲームコントローラーのカタカタチカタカタという音が響いていた。
「IS学園てのは、良いもんだよなぁ、一夏。」
「面白いことを言うな。」
行ったこともない癖にと皮肉な笑いかた。
「隠さなくたっていいぞ。・・・へへ、美人に囲まれるってのはどうだ?」
にやけた顔が、更にだらしなくなる。
「学園に来て確かめろ。」
「いや結構。お縄に罹るのは御免だから遠慮させて貰うぜ。」
確かに、部外者立ち入り禁止ではあるが・・・。
「守衛はポンコツだ。それも、カカシの方が動かない分マシなくらいにな。お前でも突破できる。・・・来いよ弾。」
「・・・そんなにいいのか?」
あまりに楽しそうに話す一夏に、弾は思わず引き込まれる。
「あぁ、良いぞ。毎日ドンパチ、賑やかだからな。」
「・・・お前のドンパチは、大抵ヤバイやつだからな。俺、IS学園行かなくて良かったと思う。」
が、次の言葉を聞いて、一瞬で冷めた。
随分とヒデェこと言いやがる。
「・・・隙あり!!おっしゃ、俺の勝ち!」
「ウォォ・・・。クソッ、また負けか。」
一夏は、あらゆることを難なくこなすが、どうしてもゲーム(特に格闘)が苦手だった。
曰く、『二次元の戦闘などあり得ん。そもそも、素手で行けば勝てる。』とのことである。
「つーか、お前まさかボッチ?」
それで俺を引き込もうとしたのかと訪ねると。
「いや、結構(筋肉以外で)話すぞ。それに、
「まな板!?奴は本国に帰ったはず。」
まさかあの凰がと驚く。
「あぁ、そうだ。だが、来日した。」
「ふぅん・・・。」
そして、その続きを言おうとした時だった。
「お兄ぃィィィィッ!お昼出来たってんだろ!早くこい!!」
ドコンッ!【201/300】
ドアがもの凄い速さで開き、現れたのは弾の妹、蘭。
「い、一夏さん!?IS学園にいるはずでは・・・。」
視界に一夏を捉えた途端、目を見開き、顔を真っ赤にする。
「残念だったな。トリックだよ。」
「ゲームは仕舞ってろ。・・・その口も閉じとけ。」
弾が少し調子に乗った途端、黙らせた。良い上下関係だ。・・・あれ?
「それで、一夏さん。いつ、いらっしゃったんですか?全寮制ですよね?IS学園って。」
しかし、弾に興味はねぇ!と、蘭は一夏に質問を始める。
「家を掃除しに帰ってきたんだ。ここには1.1時間前に来た。」
そうだったんですかという顔の妹を見て、弾が一言。
「なぁ、蘭。ノックの一つぐr―――」
「殺されてぇか。」
言おうとしたが、鬼の形相で睨まれては言えなかった。
「」
流石の一夏も、弾の弱さには目を疑う。
「あ、あの、一夏さん。よかったらお昼食べていきませんか?」
「いいのか?」
「はい、喜んで!!」
今度は淑やかにドアの開閉を行い出て行った。
「(昼飯食わせて貰って)すまないと思っている。」
食費が浮いて有難いがと付け加えると。
「いいって事よ。どうせ、定食の売れ残りだろ。」
「厳さんに聞かれても知らんぞ。」
「なぁに。お前と蘭がいれば余裕よ。それよか、飯食ったら街にでも行こうぜ。」
「あぁ。」
他力本願な性格は、昔のままだなと一夏は笑った。
「・・・ッゲ!」
弾が食堂に降り、最初に目に入ったのは妹の蘭だった。
「何?文句ある?馬鹿兄。嫌なら一人で食べな。そ・と・で!」
嫌な顔を向けられて喜ぶ奴はいない。仮に居るとしたら、それは只の変態だ。
「面白い提案だ。気に入った。食べるのは室内にしてやろう。」
一夏はそれが本気でないことを見抜いていた。が、弾は・・・。
「いや、うちの店、外席無いぞ?」
待つための椅子ならあるけどなと真顔で答えた。
「だったら、作ればいいだろ!」
「うるせぇ!食堂で騒ぐな!」
ビュッ!ゴン!【9998/9999】
【13/50】
お玉が飛んできて、一夏に直撃する。当然、当たったお玉はベッコベコ。
「ふざけやがってえぇ!!」
ギュンッ!ガッ!【3/50】
力の限り投げ返す。これで、ようやく五反田食堂に来たんだなと言う実感を得る一夏。
「いい返しだ。だがな、お前等の空腹を賭けるほど価値のある話か?」
「試してみr―――」
「ごめんなさい、直ぐに食べます!」
おぉ、始まると期待していた客達が、一斉に何だよという顔で食事へと戻った。
「・・・どうして謝った。」
「お前と爺ちゃんが戦ったらロクなことがない。」
「」
「早く食え。爺ちゃんの怒りが俺に向く前に。」
手前の心臓は蚤か?それともミジンコのか?え?ダニ?
「「「いただきます。」」」
3人は、揃って食べ始める。
「・・・ところで蘭。その派手な服は何だ?さっきの方がスッキリしt――」
「今度余計なことを言ったら、口を縫い合わすからね。」
お客さんが来ているんだ。服装ぐらい、大目に見てやりなよ。
「そ、それで一夏さん。私、来年IS学園を受験しようかと思っているんですけど・・・。」
「!?フォイ、ラハァン!ふぁみみって―――」
訳:おい、蘭。何言って
ゴオォン!【1/500】
中華鍋が直撃し、弾は悶絶する。
「うるせぇぞ、この馬鹿孫が。」
「兄ぃ。次、食いながら喋ったら、その椅子ごと店外追放だから。」
「汚い奴だ、気に入った。店の外に放り出すのは食後にしてやろう。」
厳と蘭、一夏による波状攻撃。
「と、トリプルは反則だろ・・・。」
味方だと思っていた一夏にまで言われ、がっくりと項垂れる。
「で、どうでしょうか?」
普段からこの光景が繰り広げられているのか、慣れて様子で一夏へと質問する。
「いんじゃないかな。」
「だけどな、蘭。お前の頭が良いのは俺も知っている。だが、実技はどうするんだ?」
「ただのチャンバラですな。」
そう言って取り出したのは・・・。
「こ、これは・・・適正試験!?何時の間に!?」
妹の顔と試験結果の紙を交互に見る弾。
「お兄が瞬き(昼寝)している間に、(適性試験に)行ってきたのよ。」
「・・・幾ら貰った。」
「A評価PON☆とくれたぜ。」
聞かずに読めよ。書いてあるだろ、デカデカと目の前の紙に!
「・・・それに、気に入ってるのは。」
「な、何だ?」
貯めずに早く言えよと、弾は胸を押さえ動悸を抑える。
「値段だ!」
「!?まさか、タダなのか!?」
ドゴオォォォンッ!!【1/500】
「少し黙ってろ・・・。」
厨房から中華鍋(大)を持って現れた厳。痛さのあまり、弾は店内を転げ回った。
「ですので一夏さん、入学できたらISの乗り方、教えて下さい。」
「いいだろう。」
「ありがとうございます!」
「痛ぇなじいちゃん!何すん――」
「「ごちそうさまでした。」」
ようやく復帰した弾であったが、その時には2人とも食べ終わっていた。
「・・・!!あ、おい!何で先に食い終わってんだよ!!」
「咀嚼の速さで、勝てると思うなよ。」
「クソッ!」
急いで弾は、昼飯を食べる・・・と言うよりは飲んだ。
「ちゃんと噛め!」
食い方が汚いと、また怒られた弾であった。
「ごちそうさまでした。・・・よし、一夏!街へ行こう!」
「いいだろう。」
弾が食事を終え、2人はそのまま街へと出かける。
「うひょー!お前と来るのは、久しぶりだなぁ!」
「ずっと学園内に閉じ込められていたからな。」
やはり、暴れる相手が女子(箒除く)では、手加減がいる。
ここでなら邪魔は入らないから、羽を伸ばしてはしゃぐぞと弾。
「よし、まずあのエアホッケーでもしようぜ!」
しかし、肝心なことを忘れていた。
「ダメだ。」
「ダメ!?何で!?負けるのが怖いのか?当然だぜクソッタレ。10連敗中の俺がもう負ける訳ねぇ!」
妹と祖父がいないと、途端に明るく元気になる。
「試してみるか?だがな、俺は敵を作りすぎた。ホッケー、ストラックアウト、パンチングマシン。全部壊してきたんだ。」
中学の頃、要は弾の10連敗の時。初めてのゲームセンターに、あまりにも白熱(一夏が)した勝負を繰り広げ、店の機械を壊したのだ。もっとも、その程度で壊れる機械が悪いのだが。
「!!・・・忘れてたぜ。」
しくじったなという顔の弾。他に遊ぶところを考えているのだろう。
「だが、もう過去の話だ。」
流石にブラックリストも解除されただろうと、一夏は店に向かっていくが・・・。
「いや、ダメだろ!」
前より強くなってんだから、余計壊すわと、弾は引き留める。
「・・・帰ってゲームの続きでもしようぜ。」
「(こんな目に遭わせて)すまないと思っている。」
結局、弾の家でゲームをしてこの日はIS学園へと戻ったのだった。
17時。1025号室前に凰の姿があった。
ズドォンッ、ズドォォォンッ!【3844/5000】
「一夏いる?」
衝撃砲でノックして、一夏いるはないでしょ!
「こっちだ!」
いるにはいた。
「・・・何で廊下にいる訳?どこに行ってたのよ。」
「弾のところだ。」
「へー。じゃあ、あの声は弾だったんだ・・・。」
意味ありげに黙り込む凰。
「ちょっと後ろ向きなさい。・・・これ、何だと思う?」
背中から何かを取り一夏に見せる。
「これは、まさか・・・髭剃り?」
何処で付いたんだと考え込む。
「違うわ!マイクよ、マ・イ・ク!これで、アンタを盗聴してたの!」
「盗聴を堂々と宣言するとは。面白い。気に入った。」
普段、法(学則)に触れることばっかりしている一夏が言っても、何の説得力もない。それどころか・・・。
「・・・よくも『まな板』って言ってくれたわね!」
弾と2人でディスったことまでばれている。
「(まな板と言って)すまないと思っている。」
急に小さくなる一夏。筋肉の主張は相変わらずだが。
「ふん。まぁいいわ。ちょっと、弾のところに行ってくる。」
「ああ、行って・・・待て鈴!弾は関係ない!許してやれ!」
乗せたのは俺だ。恨みは全部俺(の筋肉)にぶつけろと言うが・・・。
ISを展開した凰は、瞬く間に夜の空へと消えていった。
「クソッタレ!」
この時、一夏は初めてISの展開を練習しなかったことを後悔した。
しかし、まあ鈴なら弾がバラバラ死体になって飛ぶこともないだろうと、飯を食いに行くことにした。
場所は戻って、再び弾の家。
「よ、よお、鈴。久しぶりだなぁ・・・。ま、まぁまて!落ち着け!は、刃物を突きつけられてはビビッて話もできやしねぇ!・・・あ、頭は無事か鈴。」
ズイっと双天牙月を突き付ける。
「少なくとも今のところはね。この先どうなるかは弾次第よ。無事、帰って欲し蹴れば、素直に謝まんなさい。OK?」
「OK!」
ズバァン!【300/500】
昔のテンションで、許してくれるだろうと弾は踏んでいたようだが、彼女の怒りはその程度のものではなかった。
「ふざけるとはいい度胸だ。気に入った。弾、首出してみろ。一発で刎ねてやる。古い付き合いだ、苦しませたかねぇ。」
「や、止めろ鈴!しゃ、洒落になr――」
ゴォオオンッ!【0/500】
弾は、深い眠りについた。
翌朝、弾の家。
「・・・あれ?生きてる?」
殴られたとこまではしっかりと覚えている。
では、その後は?何故布団に?
「・・・これは?」
と、枕元に紙が落ちているのを見つけた。
『弾へ。安心しなさい。峰打ちだから。・・・刃の方で叩きたかったぜ!』
どうやら、凰の置き手紙のようだった。
そして、もう二度と凰に向かってまな板発言をするまいと誓った弾であった。
赤い風!そこにいるんだろう。光り物!コメントを書きに来い!只の・A・カカシですだ。