IS《ISの帝王:小説版》   作:只の・A・カカシです

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第28話 飛び散れ!汗!弾けろ!ボール!

 「おりむー!ヴァーリボゥしよー!!」

 水上散歩を終えた一夏を出迎えたのは、何故かキレの聞いた英語を話す布仏。

 「よし、今行く。」

 「おりむー来たよ~。」

 トコトコ歩く布仏の後ろに付いていくと、彼女といつもつるんでいるメンツがトスの練習をしていた。

 「ルールは?」

 「タッチは3回まで、殺人スパイクも禁止。10点先取で1セットね。」

 着いて直ぐ、ルールを聞くと試合を始める。

 「よーい、始め!」

 一夏チームのメンバーは・・・。

 「織斑君に、デュノア。それからラウラさん!相手にとって不足はないわ!!」

 などと言っているが、脳筋の中の脳筋3人衆なので・・・。

 ドンッ!←1セット

 「私は、7月の!」

 バァンッ!←2セット

 「サマーデビルで!!」

 ドォォォォンッ!←3セット

 「ビーチバレーなんだよぉぉぉぉぉぉ!!!」

 当然、殺人スパイク禁止ということも無視(彼女は分かって言ったのかも知れないが)し、完全勝利した。

 バタァンと倒れ込んだサマーデビル()。

 「織斑チームの勝ち!」

 「昼飯でも食いに行くか。」

 満足したのか、またも興味が移る。

 「「「賛成。」」」

 「おい、立ち上がれ。(日焼けで)炭になっても知らんぞ。」

 「わぁ!?待ってぇぇぇ!!」

 全員の了解が得られたので、食事を摂りに向かっていると。

 「昼食か?」

 千冬とばったり出くわした。

 「あ、織斑先生。そうです。」

 他クラスの生徒は、こんな物だろう。では、一組の生徒はと言うと・・・。

 「あぁ、もう半刻もマトモな飯食ってねえ。やってられっか!」

 ビーチで遊んでいた時間はお菓子を食べていないだけで、実際にはやっていられないわけではない。

 「織斑先生。午後、開いているな?久しぶりに勝負しないか?サシで。」

 「いいだろう織斑。掛かってこい。」

 それはそうと、午後は早速、(安全な)ドンパチが見られそうだと、1組の生徒は内心ではしゃいでいた。

 

 「さて、腹ごしらえも済んだし、ビーチバレーでもして腹ごなしでもするか。」

 昼食を終えビーチに戻ると、そこには気合い十分の織斑千冬が仁王立ちしていた。

 「来たな織斑。野郎、ブッ倒しァァァァァァァァァァァ!!!」

 二人は、それぞれのコートに入る

 「始め!」

 その合図とともに、千冬がバレーボールを高々と投げ上げ、ジャンピングスマッシュ!

 バンッ!【0/100】

 するも、あっさりと粉砕(分子レベル)されてしまった。

 「おい、何だこりゃ。紙風船か?」

 「替えを持ってこい!!」

 こんな安物のボールじゃなくて割れないやつをと付け足す。

 「コレなんかどうですか?」

 そう言って持ってきたのは、バスケットボール。

 「良さそうだな。堅さもバッチリだ。・・・行くぞ!」

 勿論、耐えきれるわけもなく、ボンッと音を立てて消え去った。

 「話にならんな。」

 これじゃあバレーボールにならないと一夏は不満を言う。

 「織斑。ここにいい球がある。コレでやるとしよう。」

 そう言って千冬が砂に埋もれていたボールを見つけ掘り出した。

 「望むところだ。」

 だが、それは本来転がして使うボール。人間が空中に打ち上げられる物では無い。

 「ねえ、アレって。」

 ガッ!

 バチィッ!

 「ボーリングの球・・・だよね・・・。」

 石の塊のような球が、普通のバレーボールと遜色ない勢いで飛び交う。

 「おおやだ、この人達人間じゃないわ!!」

 見慣れた1組の生徒も、驚きを隠せないでいた。

 ガシャァァァァァァァン!!【0/1000】

 しばらくしたときだった。ボーリングの球がスマッシュの衝撃に耐えきれず砕け散る。

 「「お前、それでもボーリングの球か!!」」

 「「「お前ら、それでも人間か!!!」」」

 「「今度余計なことを言ってみろ。ボールにして遊ぶぞ。」」

 「「「ひぃっ!!」」」

 マジでやりかねないので、それ以上煽れる猛者(箒)はこの場には居合わせなかった

 

 あの後、特にこれといった派手な遊びもないまま夕食の時間になった。

 「うまい刺身だな。ワサビも、本わさか。気に入った。」

 久方振りのご馳走に、一夏は舌鼓を打っていた。

 日頃、脳筋、脳筋言われている彼だが、味わうときはちゃんと味わう。

 「ねえ、一夏。本わさって?」

 日本に来て日の浅いシャルロットは、言葉こそ流暢に話すがそれ以外の知識については皆無・・・とまでは言わないが、大したことはない。(主にノリ)

 「刺身の所に、緑色の練り物があるだろ?ソイツだよ。抹茶アイスみたいに、甘くてクリーミーだぞ。」

 「へえ、そうなんだ。」

 言われるがままに、緑色の物体を口に放り込む。

 そして次の瞬間、お約束の――

 「か、か、辛ァァァァァァァァァァァイ!!!」

 「ほれ、水だ。」

 コントのような流れで騒ぐシャルロットに、一夏は水を手渡す。

 「一夏!!何だコレは!!この僕をこんな激辛の緑で苦しめやがって!!」

 ツーンと鼻に抜け涙目になる辛さを、鼻を摘まむことで何とか我慢しながら、一夏に怒る。

 だが、この美味しい場面を、1組の誰が黙って見過ごそうか。

 「この馬鹿!ヴァカ野郎!マヌケィ!」

 「一夏のことなんぞ信用しやがって。このマヌケ!今のは日本名物の薬味(激辛)だぞ!」

 ラウラと箒のダブル煽り。シャルロットは、別の意味でも涙目になる。

 「酷くないかな?」

 そう訴えかけると、申し訳なさそうに一夏が反応した。

 「そうだ、シャル。お詫びに良いことを教えてやろう。その、ご飯の上に乗っている赤いのは酸っぱいから食べない方が良いかもな。」

 だが、先程のことで一夏に対する信頼はゼロになっていた。

 「ふん!もう騙されないよ!」

 どうせ甘いから、騙し取ろうとしているのだと思い込んだシャルロットは、急いでそれを口に入れる。

 「しゅ、スッぱぁぁぁぁぁぁぁぁいぃぃぃぃぃ!!!」

 赤い見た目から甘いチェーリーかなんかと勘違いして、酷い目に遭う外国人の観光客が結構いるらしいです。

 「・・・シャル、お前、見た目より頭悪いな。」

 折角教えてやったのにと、笑いを堪えながら一夏は話し掛ける。

 「一夏、君もね!!!」

 そう言うと、地雷がないかちびりちびりと食べる(諺で言うと、羮に懲りて膾を吹く)シャルロットであった。

 となると、弄る相手を探さずにいられないのが1組の性。

 「おい、アレを見ろよ。セシリアが(正座に)苦しんでる。」

 直ぐに次の獲物が見つかる。

 「奴らしくもねえな。夕食前から様子が変だった。」

 いつもの余裕は表情から抜け落ち、代わりに脂汗を垂らしている。

 「こっから投げて当たるかな?」

 そう言って、一夏は何処から取り出したのか、先端を以上に尖らせた紙飛行機を構える。

 「止してくれ!(織斑先生の)味噌汁に入るのがオチだ。」

 そうなったら、気の済むまでドンパチしてやればいいと笑う。

 言うまでもないが、敢えて言う。そうなったとき、周りは関係ない。まあ、止める気は毛頭ないようだが。

 ヒュッ・・・サクッ☆【1499/1500】

 手を離れた紙飛行機は、寸分の狂いもなくセシリアの足裏に直撃。

 「イエェェェェェアァァァァァ!!!」

 天井に突き刺さりそうな勢いで飛び上がり、ひっくり返った。・・・そんなに痛いか?

 「コレで足の痺れも抜けるだろう。」

 足つぼマッサージだと、一夏は言い切った。だが、やられた方は黙って「はい、そうですか。」と納得するわけがない。

 「いぃぃぃぃぃぃぃちぃぃぃぃぃぃぃかさぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!なんですの、これは!この私を、こんな安物の紙飛行――」

 もっとも、ここにはISを相手に生身で立ち向かい、大体無傷で切り抜ける化け物が3人いることを忘れてはいけない。

 「黙って食え!!」

 ぎゅッ!【1/1500】

 「ピグゥ!」

 千冬に足踏まれたセシリアは、白目をむいて倒れ込んだ。

 「コレで静かになるだろう。」

 こんな感じで、1日目の夕食は楽しいものだった。

 

 夕食後、満面の笑みを浮かべたセシリアは、割り当てられた部屋にいた。

 「♪(怒)」

 「どうしたのセシリア。随分とご機嫌だね。」

 「あ~ら、そうですか?・・・・・野郎!ブッ殺しァァァァァァァァ!!!」

 その瞬間に怒りを我慢できなくなったのか、突然、ドドドドドドドドドッ!っと音を立ててセシリアは廊下に飛び出ると、あっという間に角へと消え去った。

 「「「!!!???」」」

 あまりにも突発的な行動に、部屋に居合わせた生徒達は驚いて身を縮こまらせた。

 

 「あそこが、一夏さんの部屋!!」

 一心不乱にセシリアが目指していた先には、既に4人の先客がいた。

 「セシリア、静かにしろ。」

 「あ、はい。」

 生身で互角以上にISと渡り合う相手に反抗しない程度の余裕が、幸運なことにセシリアにはまだ残っていた。

 で、その先客が何をしているのかというと・・・。

 『久しぶりだからって、遠慮はしないからな!』

 『掛かってこい!馬鹿者!加減など・・・うわぁぁぁぁ!!!』

 『どうした?そんなものか?』

 『クァァァァァァ!コレは!これはぁぁぁぁ!!!』

 『直ぐに楽になるって!だいぶ、貯まっているみたいだな!』

 『アァァァァァイ!』

 などと聞こえてくる、一夏の部屋の様子をドアに耳を当てて盗み聞きしていたのである。

 「「「な、何コレ・・・?」」」

 時折聞こえてくる、おおよそ人間が中に居るとは思えない音に箒と鈴を除く全員が首を傾げる。

 『じゃあ、次は・・・』

 『待て!少し間を――』

 そのとき、誰かがバランスを崩した威力でドアをブチ破り、一同は部屋に流れ込む。

 「「「グエェッ!!」」」

 「何しに来た?」

 一夏は、進入してきた者達に不敵に笑いかける。その目は、玩具を与えられた子どものよう。

 「NO☆ZO☆KI。」

 「「よし、そこに直れ。」」

 答えを聞くや否や、2人は全員にそう命令する。

 「ひ、1つお聞きしたいのですが、貯まってると言うのは?」

 その命令を実行する前に、恐る恐るラウラは手を上げ訪ねる。

 「乳酸だろ?それ以外に何かあるのか?体幹始めるから、お前らも位置に付け。」

 「今夜はシゴキまくるぞ!嫌ってほど鍛えてやるからな!お前ら覚悟はいいか?それでは始めよう、キャプテン・一夏のワークアウトだ!!」

 〈〈〈あ、コレ死んだ・・・。〉〉〉

 来てはいけないところに、最も来てはいけないタイミング出来てしまったと、4人が後悔する中。

 「ふむ、一夏とのトレーニングは久しぶりだな。剣道場以来か?」

 箒だけが異常なまでのやる気と余裕を見せていた。

 「あぁ、そうだな。・・・一週間前のな。」

 「じゃあ、始めるぞ!」

 地獄のようなトレーニングが、千冬の掛け声とともに始まるのであった。

 

- 終了後 -

 「どうした?この程度で筋肉痛にでもなったのか?」

 クールダウンと言いながら、ハイペース(常人比)で腹筋をする一夏と箒、そして千冬。

 「おかしい!絶対におかしい!大佐と教官は除くとして!篠ノ之!貴様一体!」

 ラウラは、未だに信じられないという顔で箒を見る。

 「随分と体力が有り余っているみたいだな、ラウラ。よし、もう一周するか。」

 「おかしい・・・。絶対におかしい・・・。大佐と教官は除く・・・として・・・。篠ノ之、・・・貴様一体・・・。」

 一夏にそう訪ねられた途端、それまでの地獄を思い出したのか、ラウラは畳みにへばりつくように力尽きた。

 「ふっ。ドイツ軍も大したことないようだ。」

 「「あなたが・・・、あなた方が・・・おかしいだけだよ(ですわ)・・・。」」

 ラウラと同じように、シャルと鈴、セシリアも畳みに張り付くように力尽きた。

 それが通用しないから、未だにピンピンしているのだと、分かっていてもいざ見せつけられれば信用できないのは人間の性なのかも知れない。

 「一夏、夜景でも見に行かないか?」

 珍しくロマンチックなことを言う箒。普段の脳筋振りを知っていたら、本人かと疑うレベルの発言だ。

 「いいねぇ、偶にはロマンチックな気分に浸りたいもんだ。」

 これまた不似合いな言葉が飛び出す。

 しかし、忘れてはいけない。彼らが如何に脳筋と言え、地は辛うじて人間であるということを。

 2人は部屋を出て、近くにある灯台の屋上へと向かう。

 しかし、屋上に出るドアには鍵が掛かっている。

 「クソ、鍵が掛かってる!」

 「任せろ!」

 そう言うと、一夏は軽くドアノブを捻った。

 ガシャァァァァァァァン!!っと音を立て、ドアは粉々に粉砕される。

 「・・・・・海に夜景ってあるのか?」

 外に出た2人が見たのは、真っ暗な海。

 「おかしいな。この時期はイカ釣り漁船がいるはずなんだが・・・。オマケに曇りと来た。星空も見えん。」

 「任せろ。」

 \デェェェェェェェェェェン!!!/

 そう言ってロケットランチャーを取り出し、空に向かって撃つ。

 だが、その前に気付くべきである。灯台は明るいのだから、星空をそこから見るのが間違いであると言うことに。

 当然、ロケットランチャーはない雲に向かって突っ込んでいき、やがて重力に引かれ戻ってくる。

 ガシャーンッ!!と音を立てて、旅館の方から土煙が立ち上る。

 「よし、何もなかった。いいね?」

 「よし、帰ろう!!!」

 そう言うと、2人は夜の森へ紛れつつ、旅館へと戻ると、何食わぬ顔で廊下を歩く。

 そして、IS学園の生徒も、何かが壊れると言うのは日常であったため、誰も気にも留めず、一日目の日程を消化した。


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