IS《ISの帝王:小説版》   作:只の・A・カカシです

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(最新話を読みに)出てこいクソッタレェェェェェェェ!!!


第32話 弾けろ!テンション!飛び散る!水!

 「さぁ!第1回、これぞTHE・液体派。水上障害物ペアの神髄レースの始まりだ!」

 「「「うぉぉぉぉぉ!」」」

 意味不明なアナウンスにも拘らず、観客は謎のテンションで歓声を上げる。

 「ルールを再確認するわ!この50×50の――優勝です。なお、コース――」

 「鈴、要はあの旗を取っちまえば良いんだよな?」

 目的が達成できれば手順に用はない一夏と鈴にとっては、ルールなど聞く意味がない。

 「そうみたいね。よく分からないけど。」

 そう言いながら、顔はコースを見ている。

 「コースは、ペアでなければ抜けられないように――」

 「見ろ、ショートカットの見本市だ。」

 「私達からすれば、こんなの真っ直ぐ進んで下さいと言っているようなものね。」

 いつも以上に余裕を見せる二人。

 「位置について、よーい。」

 アナウンスの声に合わせ、開始合図のピストルがドンッ!と音を鳴らす。

 その直後。もう一度、ドンッ!という音が響く

 「何の音?」

 多くの参加者が、驚いて辺りを見回す。

 しかし、前は見ていなかった。

 「み、皆さん!!早くスタートして下さい!2回目の音は、あの筋肉モリモリマッチョマンの変態とまな板が――」

 ドベキシッ「オフィッ・・・」【1/200】

 状況を伝えたかったのだろうが、アナウンサーはもう少し言葉を選ぶべきであっただろう。

 「何してだ鈴。そんなヤツに構っている場合か?」

 本来の目的を達成するには不必要な行動を取ったため、一夏は機嫌悪そうにしている。

 「そ、それは女のプライドよ。アンタには分かんないでしょうけど!」

 「勝手にしろ。お前のミスだ。(ゴールに)遅れても知らんぞ。」

 ちょっとした間に、何名かが追い越していた。2人は本気のダッシュで追走を始める。

 「「「速っ!?」」」

 「ヤツを抑えろ!!」

 後方の者達は置き去りにできるが、前を行く者達に追いついてしまうと追い越すのは至難の技だ。

 「邪魔だ!どけ!」

 「は、速い!速すぎる!」

 「構うな!ぶつけてでも止めろ!」

 2人を・・・というよりは、一夏が取り囲まれる。

 後ろから追いついてきた人も加わり、人の山ができる。

 「ヌウゥゥゥン!!」

 「「「うわぁぁぁぁぁ!?」」」

 もしここがIS学園だったなら、体当たりでかっ飛ばしていたことだろう。それをせずに、あえて取り囲まさせプールへと墜落させたのには理由があった。

 「あばよ。・・・っち、遅れたな。」

 「アンタがあんな雑魚に手間取ってるからよ。」

 「無茶言うな。相手は天下御免の女だ。俺の筋肉でどうこう出来る相手じゃない。」

 善良な市民には優しくする一夏であった。

 「珍しいわね、随分と弱気じゃない。まあ、いいわ。邪魔者も去ったことだし、追撃しましょう。」

 先程、殆どの参加者をプールに落としたため、コース上はスッキリとしている。

 遮る者がいなくなったお陰で、彼らのペースは上がった。

 コースの中盤に差し掛かったとき、2人は急に停止した。

 直後、目の前をバシューンッ!と水が通過する。

 「見て、ジェット噴水だわ。」

 「かき氷機の山に比べりゃ、どうってことないな。」

 一応、威力を確認するために止まったため、状況確認程度の会話にしかならない。

 そう思ったときだった。

 「あぁ、全くだ。あれは、思い出しただけでもこりごりだ。」

 鈴とは全く異なるオーラと声。それに、彼女が知るはずのない作戦の記憶。

 「・・・お前、鈴じゃないな?箒だろ。」

 「む、しくじったな・・・。そうだ、私だ。」

 呑気に話しているように見えるが、現在、ジェット噴水区間を絶賛通過中である。

 「鈴はどうした。」

 「急用ができたらしい。何でも、中国から代表候補生の総まとめが来たんだと。」

 「なるほど。」

 それは分かった。しかし、疑問はまだある。

 「何で鈴の皮を被っているんだ?」

 「思いっきり暴れまわっても、私のせいにはならんだろ?」

 その手があったと、一夏は大きく頷く。

 「そりゃいい案だ。」

 一夏が取り出し被ったのは・・・。

 「これで完璧ですわ!」

 『おぉ!マッチョマンは、実は女性だったようです!』

 何と驚け、セシリアの皮だ。

 「どっから持って来たのよ・・・。」

 これには流石の箒も呆れを隠せない。

 「お互い様でしてよ!」

 勝ち誇ったような振る舞い。まさしくセシリアそのもの。

 「・・・かなりセシリアだけど、中身が一夏って思うとキモイわね。」

 「今の箒さんに言われたくはないですわ!」

 「今は鈴だ!」

 「戻ってますわよ!」

 「うっさい、うっさい、うっさい!」

 ややボケをかましながら、調子を整えていく。

 「良い感じですわね。では、行きましょう!」

 2人は、一夏が皮を被る間立ち止まっていた遅れを取り戻すべく、再びダッシュする。

 ちと、止まりすぎじゃないか?

 「あら?先行している方がいらっしゃいますわね。」

 かなり本気で巻き返しを行なっていると、先行しているペアに追いついた。

 「ささっと沈めちゃうわよ!」

 2人はそのペア目掛けてまっすぐ突っ込んで行く。

 『さあ、高校生二人組がトップに追いついた!どうする、木崎・岸本ペア。・・・おぉ?高校生を迎撃するようです!』

 解説のテンションが一段と上がる。

 「あいつら、良い体格してんな。」

 「あぁ、倒し甲斐がある。」

 相手のレベルを見定めようとしたとき、彼らは本能が出て来ていた。

 〈〈・・・あぶねえ、声が戻ってた。〉〉

 心の中でそれを反省しつつ、でも接近速度は落とさない。

 「おい、岸本。追ってくるぞ、あの馬鹿。」

 「ありゃ、マジの目だ。私達とやる気だ!」

 考えて欲しい。一夏と箒が所々で立ち止まっていたとはいえ、逸般人のペア。その前を走っているとなると、この2人も相当な化け物である。

 「行ったかと思ったわよ!!」

 「とんでもねえ、待ってたんだ!」

 両者とも、既にファイティングポーズを取っている。

 「!!お喰らいなさい!」

 「あたし達のショットをね!」

 テンションが上がったため口調がやや怪しくなっているが、そこは勢いにものを言わせて誤魔化す。

 『おお、高校生二人、果敢にもメダリストに格闘戦で挑むようです!』

 バキッ!【4999/5000】←木崎*防御

     【4999/5000】←岸本*防御

 「「グオッ!?」」

 『おぉっとぉ!?高校生が先手を取ったぁ!』

 見事に一夏と箒の攻撃が決まる。

 だが、木崎と岸本はよろめいただけで、直ぐに立ち直った。

 「怖いかクソッたれ。当然だぜ、現レスリング金メダリストの――」

 「現柔道銀メダリストの――」

 「私達に勝てるもんか!」

 流石はメダリスト。構えに隙がなくなった。

 「試してみる?」

 「私達だって、IS学園の生徒ですわ!」

 確かに生徒だが、その他大勢とは別物なのであまり当てにならない。

 「「「うぉぉぉぉぉ!!」」」

 最強の人間が、激突する。これはただの小競り合いなどではない。ISに素手で立ち向かえる人間VS五輪最強クラスの人間の戦い。

 『わーっ、何を!わぁ、待って!そこで格闘しちゃ駄目ですよ、待って!止まれ!うわーっ!!』

そんじょそこいらの施設が耐えられる戦いで済むはずがなかった。

 「「「もうやだ、夢なら醒めて!!」」」

 参加者が悲鳴を上げる。

 チュドォォォォォォォォォォォォン!!!【0/5000】←プール

 施設のいたる箇所に亀裂が入り、崩壊が始まった

 

 「と、とにかく!この様なことは金輪際――」

 「参加させたお前が悪い!」

 「木崎さん。お待ち下さいませ。」

 「そもそも、この程度で壊れるプールを作るのが間違ってんのよ!」

 あの後、プール崩壊の原因となった4人は事務室にいた。

 「てか、実況が煽ってたわよね。私らが戦うように。」

 「「「申し訳ございませんでした!!!」」」

 説教を喰らっているのではない。従業員一同に対してブチ切れていた。

 「「「分かってくれたのなら良いんだ。」」」

 此奴らに限度を考えろというのは、恐らく宇宙が滅ぶぐらいのことをしてようやくといったところだろう。

 「あ、あの・・・、IS学園の生徒さん。お迎えがいらっしゃいました。あ、木崎さん。それから岸本さん。タクシーの方呼びましたので、間もなく到着するかとおもいます。」

 とにかく早く帰って欲しいプールの運営。やや息切れしていることから、走ってきたのだと分かる。

 「「あぁ、ありがとう。」」

 一足先に帰ったのはオリンピックペア。

 「迎え?誰が来たのかしら?」

 「行ってみれば分かりますわ。では、ごきげんよう。」

 一夏と箒も直ぐにその場を後にする。

 「待ってたぞ。遅かったな。」

 ウォーターワールドの入口まで歩いて行くと、そこにいたのは。

 「い、一夏!?」

 「い、一夏さん!?何故ここに?」

 「それだと疲れるだろ。一、二の三で戻ろう。」

 とか言いながら、何も声かけ無しで綺麗にタイミングを揃え、皮を脱ぎ捨てる3人。

 「おい鈴。俺の皮を何処で手に入れた。」

 一夏はそれが気になって仕方がない。

 「前に写真集くれたでしょ?あれを見ながら作ったのよ。」

 そう言えばそんな物もあげたなと、「なるほど。」と納得した一夏。

 「っていうかモッ・・・篠ノ之さん。アンタ、何処で私の皮作ったのよ。」

 鈴が渡したものだと思われただろうが、よく考えてみれば鈴が自分の皮をわざわざ作って渡すはずがない。

 「知りたいか?私もそう思う。」

 忘れてはいけない。此奴らは、便利に使えれば出所がどこなのかなど気にならないのだ。

 流石に自分の皮は無視できないようだが。

 「どういうことだ?」

 「知らん、気が付いたら持っていた。」

 3人は揃って頭を傾げ考える。

 「・・・そう言えば。」

 そう切り出したのは一夏。

 「つい先日ラウラが何か持ってたな。確か、睡眠剤と、シリコン。」

 普段からロケットランチャーだのクレイモアだのが転がっているIS学園。ちょっとやそっとのものでは不審に思われなくなっていた。

 「言われてみたら、こないだ異様に眠くて昼寝したわね。そのときか・・・。」

 どうやら鈴にも心当たりは有るようだ。

 「あいつも、シュ○ルツェネッガー級のでっかい肝っ玉があるんだな。」

 一夏が感心したように呟いた。

 「それよりも、一夏。アンタ、セシリアの皮なんか何処で手に入れたのよ?あいつ地味に鋭いでしょ?」

 「あぁ、だからアイツの専属メイドに頼んだ。三日で来たぞ。」

 「その手があったか・・・。」

 何も、自分だけでやる必要はなかったと、鈴は再認識する。

 「でも、セシリアの皮なんか何に使うつもりだったのよ。」

 確かに、セシリアの外見ではハエも逃げないだろう。けれど、狙いはそこではない。

 「アイツの生家は有名企業の総本山だからな。有名人にも顔が利く。ちょっとした情報収集には持って来いだ。」

 「なるほど、私も一枚欲しいな。」

 即座に箒が反応する。

 アイコンタクトで一夏は箒の言わんとしたことをマッス・・・察する。

 シレッと紙を取り出し、何かを書き込んだ。

 「メイドの電話番号だ。」

 「・・・オッケイ。これで作戦の幅が広がる。」

 1mm先の人間でも聞こえないほどのやり取りに、いぶかしげな表情を鈴は取った。

 「今、何受け渡したのよ。」

 「@クルーズのパフェ驕ってやるから、何もなかった。いいね?」

 「よし、許す。」

 こういうときは、餌で釣ると大人しくなると、長い付き合いで一夏は知っていた。

 「じゃ、行くか。」

 善は急げと、昔からの言葉を実行する一夏であった。




(腹筋の)化け物めエェェェェェぃ!チキショォオオオォォォーー!!!

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