IS《ISの帝王:小説版》   作:只の・A・カカシです

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A どうした!?腹筋を片付けろ!
B いい考えあるか?
A 何か思いついたか?
B 俺も聞きたい!


第33話 偶にはショッピングでもするか

 ラウラは、暗い穴蔵の中に閉じ込められていた。

 「ここがどこだかわかるかね?ラウラ・ボーデヴィッヒ少尉。」

 「・・・。」

 現れた女性の質問には答えない。何故なら、これは尋問だから。

〈精神的に・・・いや、筋トレができない分、筋肉にくるな。〉

 まあ、この程度なら他のことを考える余裕が有り余っている。

 「気分はどうだ、少尉。顔色が良くないわよ?」

 「・・・。」

 まさか、その原因が筋トレのできないストレスとは思いつかないだろう。

 「3日間の不眠と断食はいかがだったな?典型的な尋問だが実に効果的な方法でね、大昔から使われてるのだよ。不眠と断食をさせ、永遠と水滴の音だけを聞かせる。」

 「・・・。」

 残念ながら、セラピー用に用意されているのだと思われていた。

 「さて、尋問を開始しよう。君は、愛国心を持ち合わせているのか?」

 「誰がなくすものか、このクソッタレ。」

 ようやく会話をしてやる気になる。

 「どうかな?愛国心は欠片も持っていないんじゃないのかい?」

 「さっさと失せな、ベイビー。」

 その言葉に、相手の顔が引き攣る。

 「・・・仲間はどこにいる。規模と装備のレベル、バックアップを洗いざらい話してもらおうか。」

 急に高圧的な態度になる尋問官。

 その変化にラウラは。

 「ここから南方へ50km。規模は私の部下が3人。装備はテントとバーベキューコンロ。後は、ナイフとライフルだ。バックアップは日本に2人いる。」

 全く戸惑わなかった。

 そして、躊躇わずに話す。

 それは、仲間を裏切るからではない。ここに仲間を連れていてくれた方が、脱出と作戦の両方が上手くいくと考えたからだ。

 「・・・何、キャンプでもしてんの?」

 「そうだ。」

 本当は散歩と言いたかったのだが、いちいち訂正するのも失礼だと思ったため触らないでおく。

 「・・・だったらこう聞くべきね。筋肉はあるの?」

突然、話の筋道が立たなくなった。

 「ある・・・じき手前をぶっ殺してやる・・・」

 それを気にするようなら、暗い穴蔵のストレスでとっくにメンタルが崩壊していただろう。

 「あらそう・・・どうやって殺す気?」

 途端に余裕が戻る。その顔には、笑みさえあった。

 「まず手前をとっ捕まえて盾にして、あそこにいる見張りの男を殺る・・・腕に乗っかってる軍事用の筋肉で。それから手前の首をへし折るってのはどうだ?」

 極めて真面目な顔でそう答えるラウラ。

 「どうしてそんな事があなたに出来ると思うの?」

 その余裕が命取りに・・・。

 「手錠を掛けられてるのに?・・・外したよ!イ゛ェアアア!!!」

 

 「ア、アノ・・・、ラウラサン?」

 「む、夢だったか・・・。」

 ならなかった。いや、ある意味シャルロットがその代わりを受けかけたというべきか。

 『チュン、チュン』

 「待てやタンパク質!!」

 ズドドドドドドドドドドドッ!←0Hit

 外から聞こえたスズメのさえずりに、ラウラはシャルロットに押し付けていたナイフを仕舞うと、ベッドの下に置いていたマシンガンを引っ掴み窓を開けスズメを撃つ。

 「ら、ラウラ。そんなんで撃ったら、木っ端微塵になると思うよ?」

 流石にこのノリにも慣れて来たシャルロットは、冷静にツッコミを入れる。

 「そうか。では、次回は別のを使おう。」

 ちなみに、別のとはチェーンガンのことである。

 「ところで、随分とうなされてたけど、どうしたの?」

 「シャルロットは知らないほうがいい・・・。私だって、出来ることなら忘れたい。」

 「そ、そう。」

 シャルロットは、あのラウラがうなされていたことから拷問の夢でも見ていたのだろうと推測した。一応間違いではないが、まあ、聞いてもガックリするだけだろう。

 「ところでラウラ。」

 「なんだ。」

 「服買いに行かない?」

 雰囲気を変えようと、シャルロットは話題を変える。

 「普段着の話か?それとも寝間着か?」

 「寝間着。・・・幾ら体が強くても、風邪引くよ?」

 服を着ないで寝ているラウラを心配してのことだった。しかし。

 「安心しろ、寝袋さえあれば冬の北極でも寝られるように鍛えてある。」

 その心配をある意味払拭するように、正確には無下にして言い切った。

 「さて、シャワーでも浴びてくるか。」

 そう言ったラウラの右手にはタオルが、左手には制服がいつの間にか握られていた。

 「あ、僕も浴びようかな。冷や汗かいちゃったし。」

 ここで「もう○○もマトモな〜」を使わないでいられるあたり、シャルロットもかなりでっかい肝っ玉があることがわかる。

 「一緒に入るか?」

 半笑いのラウラは、そう問う。

 「それ脅してるの?」

 「冗談だ。」

 もとよりその気はなかったため、特に煽ることもなく脱衣所へと消えて行った。

 「あー、スッキリした。」

 「早っ!?」

 1秒後には出て来たが。

 

 「朝からステーキなんか、よく食べられるね。」

 朝食を摂りに来ていた2人。

 シャルロットは、ラウラの朝食の内容に呆れていた。

 「何を言う、朝だろうが昼だろうが、食いたいと思ったらそのときにそれを食べる。夕食の取り過ぎが太る原因とか言ってる奴らもいるがクソ喰らえだ。消費しきれなかったエネルギーは翌日使う。それだけだ。それに、戦場ではいつ次の飯が食えるとも分からんしな。」

 いつも以上に自信満々に答えたラウラ。

 「最後の食事になったらとか思ったりしないの?」

 「やられる前にブチのめせばいいだけだ。違うか?」

 「・・・誰から聞いたの。予想は付くけど。」

 確認したい訳ではなかったが、最早、聞くところまでがワンセットになっていたので、惰力で言っただけ。

 「教官と大佐からだ。」

 「だろうね。軍隊にあるまじき脳筋思考だもん。」

 ため息混じりにそう呟き、フォークでマカロニを突く。

 「・・・何だ?それは。」

 「マカロニ。」

 「見りゃ分かる。シャルロット、君は私をおちょくっているのか?私は、何故フォークにそれを通したのかを聞いている。」

 「何となく。」

 思いがけないことに食いついたラウラに、目を丸くする。

 「面白い食べ方だな。気に入った。私は、フォークに全部通してから食べるとしよう。」

 〈やるんかい!〉

 シャルロット心のツッコミを無視して、ラウラはそれを続ける

 「ところでシャルロット。買い物はいつ頃出かける予定だ?」

 ひとしきり通し終わったので、ご機嫌に問いかけるラウラ。

 「うーん、10時くらいかな。1~2時間お店を見て回って、それからランチしようよ。」

 「よし分かった。そう言えば、大佐がこの間『服の通気性が抜群になった』と言ってたな。誘うとするか。」

 通気性抜群。つまり穴だらけになったということだ。

 「え、・・・んーまぁ、そうだね。」

 渋い反応のシャルロットを気にかけることもなく、ラウラは携帯電話を取り出した。

 

 『おかけになった電話番号は――』

 もう何度目かもわからないほどに聞いたマシンボイス。

 「くそ、この無能携帯電話が!!大佐の行くところぐらい、電波を飛ばしておけ!」

 単調な口調と一字一句同じ応答に、ラウラは苛立ちが募る。電話会社にしてみれば、とばっちりもいいところだ。

 「そっち!?一夏にじゃなくて電話会社に怒る!?」

 「当たり前だ。何のための通信手段だ。えぇい!まどろっこしい!プライベート・チャンネルで繋いでやる。」

 「あ、待って!よしなよ!」

 シャルロットは慌ててラウラを取り押さえる。

 「ISの機能は一部使用でも勝手に使ったらまずいよ!」

 「クソッタレ共のルールなんか守って嫌気がしないか?」

 「いや、だとしても・・・。」

 実際にそうなので、反論できない。そうこうしている間に、ラウラは連絡を試みるが。

 「・・・あぁ、大佐!ISは携行して下さいとあれほど言ったのに!」

 突如、大声を出したため、シャルロットは驚く。

 「どうしたの?」

 「大佐のヤツ、部屋にIS置いたまま出かけたようだ。あれ程便利な携帯電話は他にはないというのに。」

 「一応聞くけど、それを言ったのって・・・。」

 ラウラが考えたことではないと確認するため、律儀に聞くシャルロット。

 「教官だ。」

 「ですよねー。」

 ここまでくると、諦めの境地・・・というより、反論できないほどにあの2人は強過ぎるだけだ。

 「仕方ない。二人で出かけるとしよう。」

 「う、うん。行こうか。」

 突然、シャルロットの歯切れが悪くなった。

 「・・・ところでラウラ、それって軍服じゃないの?」

 彼女が心配しているのは、服装のことだ。いくらラウラとはいえ、限度がある。

 「これは公用の服だ。動きやすいから私服代わりに使っている。」

 「それって、勝手に着て本国の人に怒られない?」

 軍服は、普段着に使っていいものではない。

 「・・・ドイツの連中は睨めば黙るが、テロリストに目を付けられたら厄介だな。大人しく制服にしておくか。」

 そういうことを指摘したかった訳ではなかったのだが、ラウラが着替える気になったのでよしとするシャルロットであった。

 

 〈ISは比類なき世界最強の携帯電話だ。しかし、連絡網を築くほどの数はない。一般に普及している携帯電話や固定電話との連絡をとるには、かける側も同じ種の電話が必要となる。〉

 〈あ、なんか変なこと考えてる。・・・あ、駅前だ。〉

 バスで移動中、ふと隣に座るラウラを見ると、外を見ながら何やら考えごとをしていた。

 〈折角ISは電波が整備されてないところでも使えるのだから、電話へと繋げる通信装置を開発するのは当然とみる。それだけでなく――〉

 「ラウラ、もうじき着くよ。考え事は帰りにしてね。」

 「分かった。」

 流石に考えごとで声が聞こえなくなるラウラではなかった。

 意識が戻ったことを見ると、シャルロットはカバンを漁り、地図と予定が書かれたメモ用紙を取り出した。

 「よし、この順路で行くのが効率的だね。」

 「随分と下調べが良いな。どれくらい掛かったんだ?」

 横からそれを覗いたラウラは、その予定の綿密さに驚く。

 「この為に5日も無駄にした・・・。」

 「ふむ。その努力をフイにするわけにはいかんな。今日は任せるぞ。」

 最近、どこか眠そうにしていると思っていたらそんなことだったとは思ってもみなかった。

 

 「ラウラ、スカートとズボ――」

 「スカートで。」

 レゾナンスに到着。最初の店に入る前に、シャルロットはどんな服が買いたいかを訪ねた。

 「そういうところ、一夏と似てるね。」

 「教官と部下が似るのは当然だろ?」

 「うーん、そうなのかなぁ・・・。」

 そうなのかなと言ったのは、彼女らの場合、似るというより染まると言った方が正しく感じられるからだ。

 「ところで、何で階を上がっているんだ?下から見ればスッキリするのに。」

 シャルロットに付いて動いていたラウラだったが、なぜ入ってすぐの店から見ないのか疑問に思う。

 「逆だよ。上からの方がスッキリするの。」

 「どうして。」

 「上の階は夏の売れ残りをセールしているから、売り切れになる前に攻めるの。下の秋物は在庫があるから後回し。」

 「秋物?」

 その単語に、ラウラは反応した。

 「服なんか羽織れて暑くなければ年中どれでも良いだろ。」

 間違ってはいない。凌げるなら、それで全く構わない。

 けれど、それならここに来る意味はない。

 「季節感は大事に。それに、女子は季節を先取りするものなの。」

 優しく、諭すように語りかけるシャルロット。

 「そうか?教官や大佐は戦闘になってから武器や装備の調達に行っていたが?」

 だが、伝わらない。

 あと、彼らのそれは、正確には素手でぶっ倒した敵の武器を失敬したというのだが。

 「兵士は準備がいるでしょ?」

 「単機で突っ込めば良い、違うか?」

 一夏や箒、千冬のせいでラウラが弱く見えるが、そんじょそこらの兵士では束になってかかっても勝てない相手。

 「・・・普通の部隊視点で話してもいい?」

 前提条件を最初から付けておくべきであった。

 「あぁ、そう言う考え方か。納得した。ところで、男物も安売りがあるのか?」

 「?多分あるけど?男装でもするの?」

 突然の話題変わりに、シャルロットはついていけない。

 「いや、大佐への土産だ。」

 出る前にそんなことも言っていたなと思い出し、呆れるシャルロットであった。




B おお、こりゃ(お気に入り増減)酷いな・・・。そっち(評価)はどうだ?
A 読者がいりゃ文句はねえ。始まりのこと考えな?言いたいのはそれだけ。

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