IS《ISの帝王:小説版》   作:只の・A・カカシです

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ABだったらしごけばいいだろ!!
友 !?


第37話 ああ駄目こんなの生徒会長じゃないわ!肩書きの付いた変態よ!

 「でぃやあああああああああああああああ!!!」

 ガキンッ!!!【50000/50000】←雪片弐型(OFF)*No damage!

        【35000/35000】←双天牙月*No damage!

 その日、一夏と鈴は珍しくISを操縦していた。

 「逃がすもんかぃ!」

 ズドドンッ!【98999/99999】

 甲龍の衝撃砲が、一夏の体を揺らす。

 「ウオォッ・・・。」

 「二次移行したISはどんなだ一夏ァ!」

 「試してみるか?R20Bエンジンに負けず劣らずクソ燃費だ!!!」

 

 この2人がじゃれあっているのは、数分前の出来事だ。

 「ねえねえ、偶にはISで訓練しない?」

 シャルロットが、このところISの出番がまったく無いからと、そろそろ使わないかと提案する。

 「お断りだね。」

 「エ゛ェェェェェェェェェ!?!?!?」

 にべも無く断られ、おかしな声を出す。

 「シャルロット、さっきから何を吠えてるんだ。おい!うるさいぞ!黙らないかこのぉ!」

 ラウラにまでそういわれては、どうしたら良いのかわからなくなる。

 「いや、みんなここIS学園だよ!?ISを使わないなんて―」

 「ISは心の中で生き続ければいいんだ。」

 「」

 箒にもそういわれ、流石に黙るしかなくなる。そこへ、助け舟を出すものがいた。

 「まあ、良いじゃない偶には。もう半月もマトモにIS起動してねえ!(国からの圧力が)やってられっかい!」

 鈴である。

 ちなみに7月頭から展開してないので、半月どころの騒ぎでないということだけは補足しておく。

 すぐさまアリーナへと移動した一行は、ISを展開する。

 「お?何だこれは?前と恰好が違うぞ!」

 前回展開したとき、要は銀の福音とやりあったときとはまったく違う見た目になっていることに、一夏は驚く。

 「凄いよ一夏!第二――」

 「差し詰め第一形態で万策尽きたクソ機体ってことか。」

 シャルロットの言葉を遮り、箒が鼻で笑いながらそう言う。

 「いや、篠ノ之さん。第二形態になったんだよ?」

 「メールもできるようになったか?」

 そこへ追い討ちを掛けるように、ラウラからも疑問が飛ぶ。

 「いや、電話じゃないから。まあ、ちょっとぐらい乗ってみたら?」

 流石はIS開発会社の娘といったところか。そこはぶれずに貫こうとする。

 「よーし、派手に行くとするか。」

 珍しく乗り気な一夏。

 「私が相手をしてやろう。」

 「待ちなさいよ。相手は私がやるわ。」

 IS如きの攻撃なら余裕で絶えられるからと手をあげた箒を制止して、鈴が一夏の前へと行く。

 「(煽られてもいないのに率先してやるなんて)らしくないじゃないか。」

 「アンタの悪い癖が移ったのよ。いいから行くわよ!」

 気恥ずかしいのか、いつもの2割り増しの声の大きさだった。

 

 そして今に至る。

 「お前はまだ余裕か?」

 「この甲龍は燃費と安定性だけが取り柄の機体よ!かったるくてケツ蹴っ飛ばしてやりたいくらいなのに、燃費まで悪かったら今頃焼却炉に放り込んでるわよ!」

 乗っている人間のスペックが高すぎると、ISが足手纏いになるというのはよくあることだ。

 「悪いな鈴。(装備のエネルギーをカットして)飛んでるだけなのにもうエネルギーがねえや。」

 「そりゃ、そんだけ装備ゴデ盛りにしてたらPICだけじゃ浮けないわよ。」

 やはりこういうのは手持ちに限ると、2人は揃ってため息をつく。

 「何でこんなに装備があるんだ?両肩にロケットランチャーが付いてりゃスッキリするのに。」

 『もーう、一夏ったら古いんだ!ISは自己進化するから――』

 その呟きを拾ったシャルロットが開放回線で話しかけてくる。

 その話を途中まで聞き流したところで、一夏ははたと気がついた。

 「だったらもげばいいのか!」

 『!!』

 そんなことをさせてはならないと、シャルロットは大慌てでISを展開。イグニッションブーストを使って上昇し、一夏を止めるべく思いっきりぶん殴ったら。

 バキィッ!【15000/18000】

 「重いから止めとけ。」

 「そういうのは先に言って・・・。」

 シャルロットはその質量差の前にあっさりと殴り負けてしまったのであった。

 

 白式のエネルギー切れにより終了したお遊戯のあと、一向は食堂へと向かっていた。

 「ああも早くエネルギーが底を尽きちゃ、ドイツと日本の間も行き来できやしねえ。」

 これでは本当に携帯電話としてしか使い道が無いぞと、一夏は大気状態になっている白式を脅す。

 「そう言えば大佐、週7でドイツにいましたが学校はどうしてたんです?」

 「ちゃんと行ってたぞ?なあ鈴。」

 一夏は、信用できる証言人として鈴に尋ねる。一応言っておくが、一夏が言うことを疑うものはこの中にはいない。・・・あ、失礼。シャルロットがいました。

 「あぁ、いたわね。」

 「え?じゃあ、どうやって行き来してたの?」

 一般人(シャルロット)の視点からでなければ、この疑問は生まれなかったことだろう。

 「そりゃ、空飛んで行き来してたさ。」

 「自力で?」

 「馬鹿言え。あの天災(アホ)が寄越したISで――」

 そういったところで。一夏の口の動きが止まった。

 「「「・・・え?」」」

 もちろん、周りの方々がそれを聞き逃すミスを犯すわけなどない。

 「(前から)ISに乗ってたの忘れてたぁ!!」

 棒軽自動車のCMのアンちゃんよろしく叫ぶ一夏。

 「・・・前に使ってたヤツを白式にしたの?」

 恐る恐る尋ねるシャルロット。

 「とんでもねえ、持ってるんだ。」

 申し訳のなさを微塵も感じさせず、一夏は首に掛けていたそれを見せる。

 「「「・・・。」」」

 この展開には、流石の脳筋ズも言葉を失わざるを得ない。

 「乗り心地はどんなだ大佐?」

 いち早く再起動を果たすラウラ。

 「足だけは速い。試してみるか?」

 「いいや結構。遠慮させてもらうぜ。」

 いつもであれば、ここから尋ねたやつを煽り上げて乗せるまでがセットであるのだが。

 「怖いのか?当然だ。俺だってそうだったからな。」

 柄にもなくそれをさせなかった。つまり、それほど危険な乗り物であるということ。

 「どのくらい早いんだ?」

 「ドイツと日本なら1時間で往復できる。」

 箒の問いかけに、至極まっとうに答えたが冷静に考えなくてもその速さが恐ろしいことが分かる。

 「マッハ10は超えてるわね。」

 「あぁ、銀の福音なんて目じゃない。」

 それを週7で乗っていたのかと、鈴は何年ぶりとも分からない驚愕を覚える。

 「大気との摩擦で燃えないの?」

 「燃えなかったからここにいるんだ。燃えてたら今ここで話している俺は誰だ?」

 「」

 それはそうなのだが、それ以上聞いたところで理解できない逸話が出てきそうだったので深堀はしないと、シャルロットはあっさりと手を引く。

 「昔の話だ。とにかく今は白式だ。」

 「諦めな。ありゃ手遅れだ。」

 箒が投げやりにそう言い放つ。そのとき。

 「そっこで束さん特製の赤椿の登場――」

 大声を出しながら現れた、箒いわくガラクタ製造人の愛称で親しまれ(?)ている篠ノ之束。それをぶった切って有り余る声で、ラウラがこう叫んだ。

 「!!(ドイツ料理の)仔牛のカツレツが死ぬほど食いたかったんだ!(このメニューを)もう半年も待ってたんだ!」

 「いや、赤椿――」

 臨海学校で喪失した自信を、ISを研究している各国の機関を回ってちやほやされることで取り戻してきた。だから、今日はいつまででもしつこく付きまとう予定にしているのだが・・・。

 「ラウラ!そんなに食べたら、午後ガス攻撃する羽目になるぞ!」

 「さあ、その食券を半分渡せ!」

 「次(食べられるときに)は命がないぞ!こんなのは一度きりだ!」

 皆、ラウラが大量に購入した食券のことで手一杯になっており、相手にしてもらえない。

 もちろん、皆ラウラにたかろうとしているのではない。一夏をもってしても食べきれないであろう量を買い込んでいるため、そう言う風になっている。

 「だから赤椿――」

 「少し黙ってろ、このウサ耳野郎!ベラベラ喋りやがって。」

 流石に腹減って殺気立ってっきたので、口調がきつくなってきた。

 「」

 「さて、飯にしよう。腹減りすぎて背中とお腹が入れ替わっちまった。」

 そう言いながらも、しれっと束の分の食券を購入している一夏であった。

 

 「フンッ!フッ!」

 翌日。一夏は、授業前のダンベルを更衣室で行っていた。

 そのとき、磨き上げられ鏡面になった300kgのダンベルに、何者かが背後から近付いてきていることが映る。

 「・・・。」

 ギリギリまで引き付ける。当然、気づいていることを悟られぬようトレーニングの手は止めない。

 「だーれだ!」

 「お前が誰だ!」

 そんな暢気なことを言っている襲撃者に、後ろから声を掛ける一夏。

 「!?アレ?丸太!?」

 驚きすぎて取り乱す襲撃者。そいつの髪は水色だった。

 「静かに素早くだ。お前は誰だ。」

 「え?え?」

 確かに今まで背後を取っていたはずなのにと、いまだに理解が追いつかない様子だ。

 「時間切れだ。出てってもらおう。」

 「ちょっと、お姉さんとお話――」

 ドベキシ!「オフウイ・・・」【1/5000】

 道を空けてくれないので、やむなしと強制おねんねしてもらうのであった。

 

 「織斑。授業開始を邪魔したくはないが、20秒遅れてる。」

 遅れてグラウンドに着いた一夏を、全員がらしくないじゃないかと見つめる。

 「これでも窓が割れないギリギリで走ってきたんだ。」

 「訳を聞こうか。」

 千冬も、一夏が遅刻するような玉じゃないことはよく理解している。だが、職務上聞く必要があるため、そう言った。

 「お前のサボり仲間に捕まってたんだ。」

 「・・・よし分かった。始めるぞ。」

 これ以上しゃべられたらいろいろまずいと、目を逸らす千冬であった。

 

 更にその翌日。IS学園では全校集会が行われていた。

 「やあ、みんなおはよう。一年生は初めましてね。生徒会長の更識楯無しよ。」

 全校生徒の前に現れたのは、昨日一夏の遅刻の原因となった人物。

 「「「わあぁぁぁぁ!!!」」」

 歓声が1年1組を除いた全クラスから上がる。

 「今回集まってもらったのは名付けて『各部対抗織斑一夏争奪戦』の開催の予告よ!」

 「ふざけやがってぇ!!」

 間髪を容れずに一夏が反応する。勿論、その手にはロケットランチャーが装備済みである。

 「落ち着いて。これは、我ら生徒会の声明。織斑一夏君も我々の力はもう十分わかったはずよ。OK?」

 「O――」

 「生徒を救いたければ、無駄な抵抗はしないことよ。我々は、全員が死を覚悟している!私があのキーを回せば、この学園の200人の生徒が死ぬ。一瞬にしてね!」

 一夏が引き金を引こうとした、まさにその瞬間に勝ち誇ったように楯無が扇子を広げながらそういった。

 ところが、一夏も同じく勝ち誇ったように笑顔で言い返す。

 「どのキーだぁ?」

 「あのキーだ・・・誰だキーを抜いたのはぁ!」

 一転して焦る楯無。その慌て振りは、先ほどまでの立ち振る舞いが嘘のよう。

 「これをお探し?」

 ラウラが顔の前で鍵を振って見せる。

 「よくやったラウラ。」

 「い、いつの間に!?」

 織村一夏を侮った結果、このようなことになると彼女に創造するのは到底無理だろう。少なくとも現状では。

 「カカシには映らんぞ。」

 勝ち誇ったように言うラウラ。実際に勝っているが。

 \デェェェェェェェェェェン!!!/

 「体育館を救いたければ、無駄な抵抗はしないことだ。俺達(1組)は、全員が(お前の)死を確信している!俺がこの引き金を引けば、この体育館の200枚のトタンが飛ぶ。一瞬にしてだ!」

 ロケットランチャーを肩に担いだことで、組合員おなじみの効果音が自動的に流れる。

 言うまでもないが、照準はとっくに合わせられてる。

 「・・・お願いだから『各部対抗織斑一夏争奪戦』やらせて下さい。困ったことがあったら、何でも私に言ってくれていいから、ねえ?」

 手のひらを返したように下手に出る楯無。もっとも、追い詰めた敵にはまったく慈悲を出さない一夏には無効な手立てである。

 「困ったことがあったら何でも――」

 「キャー、会長良いわ!!」

 「最高!最高よー!!」

 だったら、俺の争奪戦はなしだというつもりだったのだが、集会に参加している大多数のクラスからの妨害によりかき消される。流石の一夏でも、この数を一発で黙らせる手立ては持っていない。

 「えぇい!静まれ!静まれ!この紋所――」

 「一夏!他作、他作!!」

 「!!」

 おっと失礼、これは語録にありませんね。鈴のおかげで助かりました。

 「決まりね。」

 「・・・もう会う事は無いだろうが、あんたの事は監視してる。」

 威圧感に質量があったなら、今の一夏のオーラは体育館を木っ端微塵に吹き飛ばしていたであろう。




B ・・・夏休みめ!・・・くそぉ、逃げたかっ!うぉぉぉっ!!
※西日本豪雨で学校の夏休みが一日先延ばしになりました。

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