IS《ISの帝王:小説版》   作:只の・A・カカシです

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B  ん?今週から夏休み?・・・何!?
学校 悪いな。夏休みでなくてよ。休みになった分の補充だ!


第38話 水色の髪の変態女がいるんだけど、彼女まともじゃないの

 放課後、1年1組では臨時のHRが行われていた。その議題はというと・・・。

 「さて、学園祭の出し物は何にする?」

 というものである。

 「はい!織斑一夏とアームレスリング!」

 「いやいや、織斑一夏とボディービル対決でしょ!」

 「そこは、ウエイトリフティング対決よ!!」

 様々な意見が、教室中から溢れ出てくる。その全てを聞き漏らすことなく拾い、一夏はこう結論づけた。

 「(客が)くたばっても知らんぞ。」

 途端に静まりかえる教室内。

 「・・・間を取ってボディービル喫茶は?」

 「・・・喫茶は何の間だ?」

これには、流石の一夏も頭の上に『?』マークが浮かぶ。まあ、当然と言えば当然だ。

 「ソレを知ったら、死んじまうぞ。」

 お決まりの文句は放って置いて、一夏は別の意見を尋ねる。

 「大佐、メニューは特盛りクレープで如何です?」

 「飯トレ喫茶でもしようってのか?」

 「だが、それでは客は喜ばん。違うか。」

 言われてみれば、わざわざ学園祭に体を鍛えに来るヤツなど居ない。誰もがこの流れでは拙いと思い始めたとき。

 「なら@クルーズみたいにメイド喫茶はどう?」

 「「「!!!」」」

 シャルロットが皆の度肝を抜くアイディアを提案した。補足だが、他クラスであったなら至って平凡な意見でしかない。

 「シャルロット。お前、まだ根に持っているのか?」

 「!?な、何のことかなラウラ?」

 図星を突かれ、シャルロットは慌てふためいてしまう。

 「まあ、いい。メイド喫茶で決まりか?」

 それを気にしてくれるほど、彼らに心はないのだが。

 「「「OK!」」」

 意見が満場一致で可決された。一夏は、ズバンッ!と提出用の書類に判子を押した。

 

 「――というわけだ。」

 一夏は職員室に、と言うよりは担任へ学園祭でのクラスの出し物を書いた書類を渡しに来ていた。

 「OK。受け取ろう。しかし、こんなのを発案したのは誰だ?陛下か?それともリアーデのアホか?」

 書類に書かれた内容に目を通しながら、千冬は半分呆れたような口調でそう言った。

 「シャルロットだよ。」

 「なるほどな。じゃあ、この申請書に必要な道具やら材料を書いてこい。期限は学園祭1週間前までだ。」

 書類に自分の承認判を押す。それにしても、意外なヤツのアイディアだなと珍しく感心したような表情になる千冬。

 「よし、分かった。・・・失礼しました。」

 長居することはないと、一夏が職員室から一歩出た瞬間。

 「やあ。」

 その声を掛けられたときには、既に銃を向けていた。

 「動くな!殺されてえか!」

 実を言うと、一夏は本気でやり合うとき銃は構えない。素手かロケットランチャーだ。つまり、この状況は相手の度胸を見ている時間なわけである。

 「ど、どうして警戒されているのかしら?」

 「最初の出会いでインパクトを与えすぎた。違うか?」

 「それはどうかしら?」

 とぼけることで、一夏に確信を突かれるのを逸らそうと考えた楯無。だが、残念。逸らされる前に到達するのが一夏のスタイルだ、

 「用は何だ?お前と立ち話している間にも筋肉が鈍っちまう。」

 「じゃあ言うわ。私が君のISコーチをしてあげる。どう?」

 「そりゃ良いな。気に入った。(燃費の良い)乗り方を教えてくれ。」

 白式の現状を知っているものと考えて一夏は話しており、既に齟齬が生じている。でなければ、一夏が楯無から教えて貰おうとなどしないのだが。

 「じゃあ、決まりね。早速――」

 行きましょうと、楯無がそう言をうとしたとき。

 「覚悟ぉぉぉぉ!!」

 一人の生徒が、イノシシのように突っ込んで来た。

 楯無は、それに対応しようと構えに入った。

 ドベキシッ!「オフィッ」【1/100】

 その瞬間には、襲撃してきた生徒はコンクリートの床を敷き布団に熟睡させられていた。

 「踏み込みに無駄が多い。」

 初めての襲撃を、辛口に採点する一夏。

 「えぇ!?」

 楯無からしてみれば、襲撃してきた生徒はかなり模範的に動けていただけに、彼の口から出てきた言葉が信じられない。

 ヒュッ・・・バリィンッ!

 そうしている間にも、次の襲撃者が現れる。

 そして、そいつはあろうことか弓で窓を破壊した。

 「学校を壊すな!」

 お前が言うかと言いたくなる台詞だったが、まあ、彼は壊して直すのでセーフと言うことにしておく。

 \デェェェェェェェェェェン!!!/

 ドゴォォォォォンッ!【1/100】

 全く躊躇うことなく、ロケットランチャーをぶっ放す。

 「ちょ、殺しは――」

 「してない。安心しろ、爆竹みたいなものだ。」

 その直後、彼の背後にあった掃除ロッカーがバンッ!と開き、追加で一人飛び出してきた。

 「そこに立ってろ。」

 が、最初から気配でいることを知っていた一夏は体が半分と飛び出さぬうちにドアを強引に閉め、掃除ロッカーの中へと生徒を押し戻す。ついでに、外側からテープでしっかりと固定。出られないようにした。

 「織斑一夏君、あなた一体何者なの?」

 暗部のプライドをズタボロにされ、楯無は顔を引き攣らせている。

 「俺からしてみればお前の方が謎だ。俺の情報網で調べられないとはお前何者だ?」

 「私は生徒会長よ。」

 仕返し的にそう言ったが、取り合ってくれる一夏ではない。

 「そんなことは分かってる。お前が来た途端、なぜ俺が襲われているのかを教えてくれ。」

 こんな命知らずは入学した頃のセシリア以来だと、一夏は呆れたように言った。

 「知らないの?IS学園の生徒会長は、最強の肩書きでもあるのよ。」

 「最強?お前がか?全くお笑いだ。1組の生徒がいたら、奴らも失笑するでしょう。」

 「それはどうかしら?生徒会長はいつでも襲撃して良いの。そして、勝ったらその人が生徒会長になる。そのシステムがあるのに私が生徒会長なのは、私が強いからじゃないかしら?」

 そこまで言われては生徒会長と暗部の両面のプライドが泣くと、楯無は意地を張って言い返した。

 「なるほど、そりゃものぐさなアイツらが喧嘩を仕掛けないわけだ。」

 つもりだったが、余計にコケにされる未来が待っていた。

 「そう言えば、昨日会ったときに気が付いたらいなくなったけど?」

 「お前が勝手に寝ただけだ。俺は何もしてない。」

 「そう・・・。」

 何か引っかかりを覚えながらも、ことの顛末(てんまつ)を聞いたら立ち直れそうになかったので止めておくことにした。

 「で?いつから(燃費の良い)乗り方を教えてくれるんだ?」

 「生徒会室に寄ってからよ。」

 少しでもペースを取り戻すべく、楯無は自分のホームグラウンドへ一夏を引き込んでやろうと考えていた。

 特に何か話をするわけでもなく二人は淡々と歩き続け、直ぐに生徒会室に着いた。

 『眠・・・夜――』

 『しっかりしなさい。』

 聞き覚えのある声が、中から聞こえてくる。コイツにはこれが一番効くと、楯無を差し置いて生徒会室のドアを開けた。

 「アホが寝てるんだってな?目覚ましのいい方法教えてやろうか?」

\デェェェェェェェェェェン!!!/

 「いいや結構~!遠慮させてもらうのだ~!」

 開けた瞬間は眠そうにしていた布仏本音は、一夏を見て目を覚ました。それも、彼の恐ろしさを知っているからだ。

 「!!これからもお願いしていい?」

 「今回が(最初で)最後だ。」

 「残念です。」

 えらく期待された目で見られたが、それに応えてやれるほど暇人ではない。

 「・・・あ、会長。おかえりなさい。」

 ふと、楯無も帰ってきていることに気付き、虚は挨拶をした。

 「そこにかけてて。虚ちゃん、織斑一夏君にお茶を。」

 「はい。」

 そう言われ、虚は隣の部屋へと消えていった。

 「おりむ~、ケーキ食べる?賞味期限今日なんだけど~。」

 「あぁ、どうも。」

 要は消費を手伝ってくれと言うことなので、一夏は遠慮せずに受け取る。

 「ところで会長。こちらの方は?」

 ひょこっと給湯室から顔を覗かせ、虚は楯無にそう訪ねる。

 「弟子よ。」

 「弟子入りしたつもりはないが?」

 一夏の言葉は、残念ながら楯無の鼓膜にシャットアウトされた。

 「ねーねー会長、何でおりむ~呼んだの?」

 本音にとっては、それが謎で謎で堪らなかった。

 「それは、織斑一夏君が弱いからよ。」

 「会長~、寝言は寝てから言うべきだよ~。」

 お疲れなら休んでもいいよと本音は勧める。仕事は替われないけどと、忘れずに付ける。

 「本音、お嬢様が一般人相手に後れを取るとでも思ってるの?」

 「只のカカシで――」

 「まあ、待て布仏。俺だってISに関しちゃトーシローだ。」

 担ぎ上げられることを嫌った一夏は、本音を制してそう言う。ただし、勝てないとは言わないあたり、自身の大きさが見て取れる。まあ、実際にそうなのだが。

 「あら、随分と物わかりが良いのね。」

 「俺だって馬鹿じゃない。」

 一夏はケーキを口に運びながら、楯無にそう返した。

 「おりむ~、フィルム頂戴~!」

 本音のこのマイペースさは、一夏を以てしても真似できない。

 「こんなんでいいのか?」

 「これが良いんだよ~。分かってないなぁ~。ありがと~。」

 一夏からケーキに着いていたフィルムを貰い、嬉しそうにそれを舐める。と・・・。

 「この意地汚い馬鹿妹が。」

 ゴチッ【180/200】

 「タコが。」

 姉の虚に頭を殴られる。ただ、一夏と授業を受けていた期間が長い本音には大して効いていない様子だ。

 「・・・この紅茶美味いな。種類は何だこれ?」

 胃を通れば何でも良さそうに見える一夏だが、実は味の違いの良く分かる男である。でなければ、美味い飯を作れるわけがない。

 「何だったかしら・・・。」

 残念ながらど忘れしてしまったようだ。

 「ローズヒップかと思ったよ。」

 「いや違うわ。」

 ウンウンと唸り、必死に思い出そうとするが銘柄は結局出てこなかった。

 「さて、食べ終わったみたいだし、行きましょうか。」

 「会長~。気を付けてね~。」

 「」

 何故心配される必要があるのかしらと、本音の心配に呆れる楯無であった。

 

 「これは何だ?」

 2人が移動した先は、道場であった。

 「袴よ。」

 「そんなことは見れば分かる。俺が頼んだのはISの(燃費の良い)乗り方だ。」

 一夏は苛立っている。

 「小手調べよ。まあ、ハンデとして織斑一夏君が私を床に倒せたら君の勝ちね。」

 「随分と不利なハンデだな。」

 一夏は、相手の技量を見誤ることはない。

 「あら?まだ欲しい?」

 「寧ろ緩めて欲しいね。」

 「その余裕、良いわね。気に入ったわ。まあ、どうせ私が勝つけど。」

 これは、楯無の情報収集能力が低いのではない。一夏の隠蔽能力が異常なまでに高いのである。

 「・・・どうした?来いよ。」

 「そこは男子からじゃない?」

 レディーファーストを実行していると思ったのか、楯無は舐められたと感じる。

 「お断りだね。」

 「じゃあ、お言葉に甘えて。」

 待っていてはキリがないからと、楯無が先制を仕掛ける。

 楯無的には100点満点の先制攻撃だった。だが、一夏には大きな余裕を持って躱された。

 「あれ?」

 「どうした?俺はここだぞ?」

 「・・・えい!」

 楯無は、流石に何かがおかしいと気付いたが、それを認めたくはなかったのでがむしゃらに攻撃を続ける。が、一夏は筋トレを交えながら躱し続ける。それも、楯無に原子一つ触れられることなくだ。

 「何で仕掛けてこないのよ!!」

 「お前を倒したら、生徒会長をしなくちゃならんのだろ?」

 実に下らないような、分からんでもないような理由。

 「今回は別よ!」

 「そうか。」

 その一言を待っていたと言わんばかりに、一夏が反撃に出た。

 「これで勝ちだな。」

 あっさりと楯無を床に倒してしまう。

 「!?!?!?」

 「帰って良いか?」

 下らない遊びに付き合うほど暇じゃないんだと、一夏は帰ろうとする。

 「ま、待って。まあ、水でも飲んで落ち着きなさい。」

 「・・・で、話は何だ?」

 差し出していたボトルの水を受け取る。どうせホーミングしてくるのだろうと諦めているので、大人しく話を聞いてやることにした。

 「そうね。あなたは一体何者なの?」

 水を飲み答え要とした瞬間だった。

 「俺か?・・・俺は・・・。」

 「・・した・?」

 楯無の声が上手く聞き取れない。急に意識が遠のき、一夏は床に倒れ込んだ。

 

 その頃、ラウラは本校舎の廊下を歩いていた

 〈大佐は何処に行った?電話にも出ない。〉

 クラスの出し物を纏めた書類を出しに行ったきり帰ってこない一夏を探しに来ていた。

もっとも、授業は終わっているので探し出す必要はないと言えばない。

 「どうした、ラウラ?」

 「教か――織斑先生。」

 そう言えば、一夏は千冬の下に提出に向かったと思い出し、ラウラは尋ねる。

 「大佐を見ませんでしたか?」

 「一夏か?知らんな。ISで探せばすぐだろ?」

 とっくの昔に帰ったと思っていたため、意外そうな表情をする。

 「(他の生徒に見られたら)条約違反(で通報されるの)では?」

 色々挟まっているが、気にしたら負けです。

 「なーに。見られたらちょちょっと記憶を消せば良い。」

 「了解しました!」

 素早い動作で、ISのコアネットワークを走査する。

 「どうだ?」

 「・・・部室棟の保健室にいるようです?」

 彼がその様な部屋に世話になるはずはないと思っているラウラは、自信が持てず疑問形で話す。

 「アイツが?見てこい!」

 「はっ!」

 ただ事ではないかも知れないと、千冬が指示を飛ばす。それに敬礼で応え、ラウラは走り出した。

 

 一夏は部室棟の保健室で眠っていた。

 「・・・。」

 目を覚ました一夏は、目だけを動かし周囲の様子を探る。

 「・・・睡眠薬よ。引っ掛かるとは思わなかったけど。」

 顔の正面に、楯無の顔が伸びてきた。

 「ここは?」

 「地球よ。」

 「」

 部屋の場所を聞きたかったのに下らないことを言われ、一夏は楯無を睨み付ける。

 「冗談よ。保健室。」

 「死にたくなかったら、さっさと逃げるんだな。」

 「?」

 一夏が何の前触れもなくそう言った。楯無には何が何やら分からない。

 「時間切れだ。」

 直後、その答えがやって来る。

 「!!大佐ァ!」

 楯無はまだ知らない。ラウラが彼女の考えている戦闘力のドイツ軍人ではないと言うことを。

 「あら?嫉妬?フフッ、可愛いわ・・・ふっ!?」

 「動くな。殺されてえか!」

 息をする間に床へ組み伏されてしまう。

 予想外だったが、体格差的に余裕と判断し扇子を取り出した。

 「試してみ――」

 スパッ!【0/200】

 しかし、それが武器であることを一発で見抜かれた挙げ句、真っ二つに切り分けられてしまう。

 「次はお前のバラバラ死体が生徒会室に届くことになる。」

 これは脅しではないと、楯無は周囲の気温が下がったように感じた。

 「ラウラ止めとけ。コイツに勝ったら生徒会長をやらなくちゃならん。」

 「!?そいつぁー、ごめんだ。」

 一夏の助け船(?)により、何とか生き延びることが出来た楯無であった。




待ってろ組合員。来週辺りにMAD版行くからなぁ!逃げるんじゃねぇ!サシで勝負だ! チキショウ!

※まだ小説版は続きます

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