IS《ISの帝王:小説版》   作:只の・A・カカシです

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来いよ組合員。筋トレなんか止めて、読みに来い!(腹筋が)楽に鍛わっちゃつまらんだろう。


第39話 ISの訓練なんて面倒だ!早いとこ終わりにしようぜ!

 セシリアとシャルロットが第四アリーナで訓練をしていると、ふらりと一夏が現れた。

 「あら一夏さんにラウラさん。どうしてこちらに?」

 殆どの場合がトレーニングルームにいるか箒とトレーニングをしているかの二者択一なので、それがセシリアにとっては非常に意外であった。

 「コイツがISの(燃費の良い)乗り方を教えてくれるんだ。」

 「それは私達にはできんだろ?」

 一夏の後方から、ラウラが同意を求めるようにそう言った。

 「そういうわけで、シャルロットちゃんにセシリアちゃん。『シューターフロー』で円状制御飛行やって見せてよ。」

 初対面の相手にいきなり頼み事をする楯無。話の主導権を握るために彼女がよく使う手法なのだが、残念なことに相手は乱用している連中なので全く効果はない。

 「朝飯前ではありますけど・・・?」

 「?別に構いませんが、(燃費の良い乗り方に)関係しませんわよ?」

 ここでもやはり話に齟齬が生じる。妙な違和感を覚えながらも、楯無は話を続ける。

 「一夏君の成績を見せてもらったんだけど・・・射撃はあまりよくないのよね。」

 ホッペに人差し指を当てながらそう呟いた。

 楯無は知らなかったが、その成績を付けたのは千冬なので辛くて当然だったりする。

 「このところ射撃する機会がなかったからな。」

 当然と言わんばかりに一夏が原因を述べる。

 「だから、敢えて至近距離で――」

 「ニッコリ笑って撃つのですわ。」

 「・・・え?」

 何か途轍もなく恐ろしいことを言われたような気がして、楯無は表情が固まる。

 「違いまして?」

 「いや、合ってるわよ・・・。」

 「「「???」」」

 不思議そうに楯無を見詰める一夏達。

 そんな彼らを楯無は、本当の戦場を知らない素人だから言っているのだと自分に言い聞かせ話を続ける。

 「さっそく始めてくれる?」

 「分かりました。」

 「では、参りますわよ。」

 それまでが嘘のように素直に指示に従ってくれるセシリアとシャルロット。

実になめらかな機体裁きで上昇。目印の高度まで到達すると、二人はシューターフローを開始した。

 「!?」

 しかし、そのシューターフローは尋常ではないほど高速で行われ、その上で2人がロープで互いを引っ張り合っているかのように正確な距離を保っていた。

 「アレをすれば(燃費が)良くなるのか?」

 一夏とラウラにとっては見慣れた光景で、特に何も感じない。

 「え?・・・えぇまあ・・・?」

 驚きのあまり、生返事をするので精一杯だった。

 「セシリア!シャルロット!いいぞ。」

 いつまでも楯無が終了を告げないので、一夏が代わりにそれを伝える。

 直ぐにシューターフローを終了し、2人が降下してくる。

 「減りは?」

 「早いですわね。」

 だろうなと、一夏は頷く。

 「本当に(燃費が)良くなるのか?」

 「?それは保証するわ。じゃあ、始めましょ。」

 一周回って冷静になった楯無は、一夏に訓練を始めるように促す。

 「そうね。さっき実演してもらった通り、バルーンを周回してもらうんだけど・・・流石にアレをやってもらうのは無理だから、手始めに1秒に大体1周の速さで回ってもらおうかしら。」

 「1秒に1周?無茶言うな、そんなに速くは飛べん。」

 そんなに速度の出せる機体ではないのだが、楯無の持っているデータ上では白式は二次移行していないことになっているので仕方がない。と言うより、持ち主が二次移行に長らく気付いていなかったのが主な原因だが。

 「いいからやるの。早く!」

 仕方ないと、一夏はISを展開し、目印の高さまで上昇した。

 時間を置かず、一夏はシューターフローに入る。

 「もっと!」

 その速度は、お世辞にも遅いとは言えず、楯無から檄が飛ぶ。

 え?文間違えてないかって?間違えてません。だって、白式は停滞という言葉が似合う速度でしか動いていないのですから。

 「全開だ!(エネルギー切れで)落とす気か!?」

 「ISは君が思ってるほど柔じゃないわよ。」

 機持ちの問題だと、楯無は一夏を叱咤する。

 「だが、限界を超えてまで飛べるガッツはない!もう半分を切ったぞ!」

 ISを飛行できる携帯電話としか見ていない一夏達にとっては、柔以外の何物でもないのだが。

 「まだ10周としてないのにそんなわけ・・・あれ!?」

 嘘を言って訓練を早く切り上げようとしているのだと思い、手元の端末でい白式のエネルギーを確認して、楯無は目を見張った。

 「分かったか!コイツの極悪燃費が!トビウオでももっと飛べるのによぉ!」

 「あれ?もしかして乗り方って・・・。」

 ここで初めて楯無は、彼我で意見に相違があると気付いた。

 「燃費向上の方法だ!それ以外にあるのか?」

 「」

 違和感の原因は分かったが釈然としない。それ以上に、白式の予想の範疇を超えた性能が楯無から言葉を奪っていた。

 「帰らせてもらう。」

 「あ!待って!」

 「もう会うことはないでしょう。」

 慌てて引き留めようとしたが一夏はそれを聞き入れず、アリーナを後にした。

 

 翌日の放課後。

 〈あぁ、疲れた。風呂入って飯に行くか。〉

 筋トレを終了し、自室である1025号室前まで戻ってきた一夏は、ドアに不自然な跡があることに気付く。

 〈・・・何かいるな。〉

 一夏は胸ポケットからある人物の皮を取り出し被った。

 そして、蝶番から発煙するほど素早くドアを開ける。

 「お帰りなさい。お風呂にします?ご飯にします?それ――」

 中に居たのは予想通りの人物だった。

 「何をしているんだ?更識?」

 「お、織斑先生!?」

 思ってたんと違う人の登場に、楯無は驚愕の表情を見せる。

 「その格好は何だ?今すぐ男子生徒の部屋への侵入罪で生徒指導室に――」

 「失礼しました!!」

 ヤバイと思ったのか、楯無は脇目も振らず廊下の彼方へとダッシュで消えていった。

 「・・・アイツの家は本当に暗部か?」

 その根性のなさに、一夏はただただ呆れていた。

 

 突如、派手な音を立てて窓ガラスが砕け散った。それを行った人物は。

 「更識、窓を破るのは止めろ。ガラスが勿体ない。」

 「そこ!?突っ込むところそこ!?」

 一夏の入学から夏休み前までロシアにいたのだから無理もない。

 そもそも、1組と一部の2組以外は破壊音を聞きつけて駆けつけたときには跡形もなく元通りにされているので、どのような壊れ方をしているのか知るよしもない。

 だが、その一部の人間が基準の一夏には、一生伝わらないことだろう。

 「何だ?天井裏から入るのが普通のヤツを紹介してやろうか?」

 そのため、更に上を行く人間がいることを知らされる。

 「いや結構、遠慮しと――」

 「一夏、麦茶ある?」

 そして、目撃することとなる。

 「ホラよ!」

 「あんがと。」

 本当にそれだけ受け取ると、外した天井板を元に戻して帰って行った。

 「今のだ。」

 「足音しなかったけど?」

 正直言って、あそこまで静かに移動できるのが信じられない。配下の精鋭部隊でも、先ほどのような芸当を出来るものはいない。まして天井裏でなど、まず不可能だ。

 「クソうるさいだろ。」

 「」

 確かに一夏は、図ったように紹介してやろうかと言った。ただの偶然に思えたが、思い返してみれば直前に麦茶を取りに行っていた。そして、まるでお持ち帰りを頼んでいたかのごとくお茶を投げ渡した。これらが全て、偶然に起こるとは想像し難い。

 本当に目の前にいるのは生身の人間なのかと、楯無は疑わざるを得なかった。

 「おっと、もう一人来客だ。」

 楯無は耳を澄ましてみたが、やはり何も聞こえない。

 騙されたのかと思ったとき、ドアが開いた。

 「一夏!差し入れにチーズとペパロニの・・・何だ、そいつは?」

 宅配かと言いたくなる様な台詞とともに、箒が現れる。

 一夏の部屋に、普段の面子以外がいると、箒は新鮮な気分を味わう。

 「丁度良いところに来た。コイツを追い払うのを手伝ってくれないか?」

 迷惑そうにそう言う一夏。そこには、遠慮も配慮も微塵も感じられない。

 「あら?私に勝てるかしら?」

 それを宣戦布告と受け取った箒が、竹刀を手に取った。

 「チェェェェス――」

 「待て箒、ラウラから聞いてないのか?」

 「危ないとこだった。」

 剣先がピタッ!っと、楯無から1mのところで止まる。実は、風圧がかなりヤベーことになってたりするので、1mの距離でも常人の突きより危なかったりする。

 「隙あり♪」

 それを余裕と見た楯無が箒を攻撃した。

 ゴッ【1999/2000】

   【4500/5000】

 が、楯無が手首を挫くほどのパンチにもかかわらず、箒はその場から微動だにしなかった。

 「避ける分は問題ないぞ。寧ろ避けてやれ。手を痛めたみたいだ。」

 「そうか、では次からはそうしよう。」

 しばらく大人しくしておくことに決めた楯無だった。

 

 「このピザ美味しいわね。」

 結局、一夏の部屋に残らせてもらえた楯無は、箒特製のピッツァを貰っていた。

 「ピザだぁ!?ピッツァだ!この馬鹿!!!ヴァカ女!マヌケぇい!」

 この方たちは、食えれば何でもいいというわけではなく、美食に関しては以下略。

 「ところっで、話って何だ?ピッツァ食うための嘘だったら只じゃすまさねえぞ?」

 「赤椿のこ――」

 紅椿の話を出してきたので、束が皮をかぶっていると勘違いした箒が、いつの間にか脇へ置いていた真剣を抜いて切りかかった。

 「止めろ!更識(コイツ)に残基はない!」

 流石にまずいと判断した一夏が、制止に入る。

 「そうか・・・。」

 勘違いだったかと、箒は刀を鞘に戻した。

 「それで聞きたいんだけど、ワンオフ・アビリティの絢爛舞踏って発動させたことある?」

 彼女はまだ知らない。そんじょそこらのISは、彼らにとって見方にいれば足手まとい、敵にいればただのカモでしかないということを。

 「ないな。」

 「使う機会なんかあったか?」

 「いや、IS自体必要ないな。今なら、福音ぐらい地上から始末できる。」

 「」

 恐ろしいことを言うなと、楯無は顔をしかめる。

 「さて、飯も食ったし帰るとするか。」

 「あぁ、また明日。」

 そう言うと、至極当たり前のように箒は楯無の肩を掴むと。

 「ちょ!?放してぇぇぇぇ!!!」

 そのまま厳寒のほうへと引きずって行く。

 「また来――」

 お別れの挨拶もさせてもらえず、楯無は共生退去させられた。

 「・・・。」

 だが、それ以外があることを一夏は気づいていた。

 「と見せかけての!」

 「除湿されてえか!」

 「わぁ!待って!止めて!これ水でできた分身だから!!」

 除湿機のリモコンを突きつけられ、楯無(水蒸気)は手を上げて降参の意を示す。

 「じゃあ黙ってろ。」

 「・・・。」

 「・・・。」

 黙々と部屋の掃除に取り掛かる一夏。

 「そこは黙るのかよとか言わな――」

 喧しく感じたので、一夏は容赦なく加湿器の電源を入れた。

 「あぁ!?水分が抜けちゃ・・・。」

 強力な除湿により、楯無(水蒸気)は跡形もなく消えた。

 「これで静かになった。」

 そう思った瞬間、何かが近付いてきた。そして、天井板が外れると。

 「何で除湿するのよ!」

 そこには楯無がいた。

 「!?何処で習った!」

 習得の早さに、一夏をもって驚きを隠せない。

 「MAD版を読んだのよ。」

 うーん、メタいですねこの人!

 「お前、案外頭良いな。」

 感心したように腕を組んで頷く一夏。

 「でしょ?そこでお願いがあるんだけど・・・。」

 「(天井裏をマスターするとは)気に入った。一つだけ聞いてやろう。」

 気をよくした一夏に、楯無は付け込む隙があるように感じた。

 「上手いと評判のマッサージをお姉さんにしなさい!」

 「・・・そこに寝ろ。」

 どうせろくなこと考えちゃないだろうと、一夏は何をするか決めていた。

 「はーい!」

 ドベキシッ「オフィッ・・・・・。」【1/5000】

 

 夜。

 「・・・は!私しいつの間に寝てたの!?」

 楯無が目を覚ますと、見知らぬ部屋にいた。そして、先ほどのことを思い出してそう叫ぶ。

 「始めたら直ぐにコロッと逝ったよ?普段からあれぐらい大人しけりゃ、直ぐに嫁の貰い手がつく。」

 「あらそう・・・?」

 何か不穏な文字が当てられていた気がして、楯無は背筋が冷えた。

 

 翌日、昼休憩中の1組の教室。

 「一夏君!お昼作ってきたわよ!」

 突如として現れた楯無は、迷うことなく一夏の机の上に包みを置いた。

 「重箱五段?前菜か?」

 「え?いや、メインというかお弁当・・・。」

 「そうか。いや、気にするな。」

 普段タッパーに入れてきているので、ずいぶんと小柄に見えてしまったようだ。

 「・・・?ところで何か避けられているのは気のせい?」

 気がつけば、モーゼの海割りのように1組の生徒が楯無を避けていた。

 「お前に触れて倒れられでもしたら、生徒会長をしなくちゃならんから離れてるんだろ?・・・違うか?」

 「「「それ以外にあると思う?」」」

 「言ったろ。」

 「」

 2・3年からは最強と崇められている楯無にとって、1組の空気は異質以外の何者でもなかった。

 「では、いただきます。」

 そんなことに興味がない一夏は、早速弁当を広げた。

 「どう?美味しい?」

 心が折れそうだったので、教室は見ないことにする。

 「あぁ、上出来だよ。・・・俺に比べりゃまだまだだがな。」

 貶している?事実を言っているまでです。

 「・・・あら、箒ちゃん。はい、あーん。」

 メンタルがボロボロになった楯無は、何とか評価してもらおうと通りかかった箒にも試食させる。

 「どう?美味しいでしょ?」

 「あぁ、確かに上手いな。・・・だが私ほどではない。」

 これまた一夏と同じような反応を示した。

 「・・・みんなも食べる?」

 「「「・・・。」」」

 ちなみに彼女たちがためらっているのは、味の問題ではない。

 「安心しろ。当たったぐらいじゃ生徒会長を押しつけられることはない。」

 当たり勝ちを恐れていただけだったりする。

 「じゃあ、一口。」

 「返事を聞くのが怖いんだけど・・・美味しい?」

 「「「あぁ、美味いな。だが、織斑君や篠ノ之さんに比べりゃ、足下にも及ばない。」」」

 散々に言っているが、2人は食堂のピンチヒッターを片手間にこなすレベルなのだから比べる方がかわいそうだ。




読者 よお、ご機嫌いかが?
作A 最高だよ。今日か明日には貴様(の腹筋)は死ぬか硬化される。プロテインでお祝いだ。

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