IS《ISの帝王:小説版》   作:只の・A・カカシです

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読者が安全な場所で休憩をする時や、腹筋を鈍らせたくない時に頼って来るのが俺達、カカシなんだ。後に読者の連中がマッチョマンとして登場できるよう、俺達が厄介な脂肪や腹筋を片づける。


第41話 IS過撃団

 午後に入り、客足も落ち着いた1組。

 「一夏君いる?」

 そこへ、楯無が現れた。

 「厨房にいらっしゃいますわ!」

 「あら、ありがとう。」

 それに答えたのはセシリアだった。

 聞いたことには素直に答えてくれるんだけれどと思いながら、厨房を覗く楯無。

 「一夏くーん、いる?」

 「フロアにいらっしゃいますわよ!」

 すると、またセシリアがいてそう言った。

 「あら?そうなの?」

 きびすを返し、客室に引き返す楯無。

 「・・・!?」

 やはりいない。そう思ったとき。

 「何やってんだアンタ?」

 厨房と客室を仕切る壁の客室側に、一夏はもたれ掛かっていた。

 「あ、一夏君。さっきフロアと厨房に同じ人が・・・。」

 「それが普通だ。俺なんかしょっちゅう(厨房と往復)だ。」

 さっきまで忙しくて大変だったと、一夏が肩をもみながらそう言う。

 「ところで一夏く――」

 「この馬鹿!ヴァカ女!マヌケぇい!」

 突然そんなことを口走ると、一夏は自分の顔を掴んで皮を剥ぎ取る!

 「楯無!なんだこのザマは!この私の安物の仮面に騙されやがってぇ!」

 「」

 その下にあったのは、箒の顔だった。よくよく考えてみれば、顔から下は女子生徒の服装だった。だが、今まで全員がそれだったので、いまひとつ違和感がもてなかったのである。

 「まあ箒、そのくらいにしといてやれ。で?用は何だ?」

 「今から演劇をやるから来ない?」

 流石に慣れてきたのか、楯無も深く気にしなくなった。

 「炎撃?いっちょ派手に殺るか。」

 「流石!分かってる。」

 ただこういったところの詰めは、まだ甘さ(蜂蜜入り)があった

 「その炎撃は私も参加して良いのか?」

 「えぇ、どうぞ。他の人は?」

 「勿論です。」

 「やりますわ!」

 「何か間違ってる気もするけど・・・みんながするなら僕も。」

 シャルロットはどちらかといえば楯無寄りの人間だが、あえて言わない辺りは一夏と同類だった。

 

 20分後、一夏が更衣室で着替えていると。

 「一夏君、開けるよ?」

 既に開けておきながら、楯無は許可を求めてきた。

 「開演か?」

 まあ、相手が相手なのでセーフとする。

 「何その格好・・・。もう時間がないわね。はい、これバンダナ。」

 一夏の格好は、上がポケットつき防弾チョッキで、下は明らかに頑丈そうなズボンというものであった。

 「・・・ラソボーでもしようってのかい?」

 間違えてません、隠語です。

 「間違えたわ。はい王冠。」

 「付けろってのか?」

 似合わないだろと、一夏は拒否しようとしたが。

 「そうよ。それから台詞はアドリブだから。頑張ってね。」

 分かってきたのか、話す間を与えず一方的にそういって楯無は出て行った。

 

 開演前、舞台上で楯無はナレーションを行っていた。

 『昔々、あるところに――』

 「茶番はいい。早く始めろ!」

 一夏から野次が飛ぶ。

 『こういうのは雰囲気作りが大事なの。シンデレラという――。否!ソレは最早――群がる敵兵を――ふさわしい称号!それがTHE☆肉体派シンデレラ!出でよ!猛者達!』

 結局長々としたナレーションにつき合わされ、一夏は立ちながらにして眠っていた。

 「もらったわよ!」

 その隙を突いて鈴が襲い掛かる。

 ドベキシッ「オフィッ」【1/1600】

 「鈴、お前にやれるほど俺は柔じゃない。」

 が、まずもって歯が立たなかった。まあ、相手が悪すぎる。

 そう吐き捨てた直後、パシュッ!パシュッ!と消音装置つきの銃の発砲音を一夏の耳が捉えた。

 弾の着弾点を音から予測。一夏はその場から動かずに、玉を掴み取って見せた。

 「俺に当てたきゃ、気付かれないようにゼロ距離から撃つんだな。返すぞ!」

 バスッバスッ!【1/1500】

 「く、この私が・・・。」

 一夏が投げ返した弾は、発射速度よりも早くセシリアの元へ飛んで行き、命中した。その弾は麻酔弾だったため、セシリアは物陰から転がり落ちて大地に大の字で眠った。

 その瞬間、殺気を感じて一夏は柱の陰に隠れる。

 「大佐ァ!腕(の調子)はどんなだ?」

 次の刺客はラウラだった。

 「こっちへ来て確かめろ!」

 肉弾戦なら付き合ってやると、一夏が誘惑する。

 「いいや結構。遠慮させてもらうぜ。・・・大佐ぁ、頭出してみろ。一発で、王冠をぶち抜いてやる。古い付き合いだ、苦しませたかねぇ」

 「ラウラ、楯無の劇は関係ない、無視してやれ!目的は俺だろう!」

 「ヘハハハハハハ!」

 「・・・来いよラウラ。銃なんか捨てて、かかってこい!楽に落としちゃつまらんだろう。ナイフを突き立て、俺が苦しみもがいて、王冠が落ちていく様を見るのが望みだったんだろう。そうじゃないのかラウラ!」

 「てめぇを倒してやる!」

 あっさりと一夏の挑発に乗ってしまう。これは意識的にしているのではない。体が勝手にそうしてしまうのだ。

 「さぁ、台本を放せ、一対一だ。楽しみをふいにしたくはないだろう。・・・来いよラウラ。怖いのか?」

 「ぶっ殺してやる!台本なんて必要ねぇ!へへへへっ・・・。台本にはもう用はねぇ! へへへへっ・・・ハジキも必要ねぇや、へへへへっ!誰がてめぇなんか、てめぇなんか怖かねぇ!・・・・・野郎、ぶっ殺してやぁぁる!!!」

 ドベキシッ「オフィッ」【1/8000】

 イノシシの如く突っ込んできたところを、軽く捻られてラウラも先の2人と同様、眠りについた。

 「さて、次はシャルか?」

 彼女は潜んでいたのではない。隠れていた近くで戦闘が起きただけだ。やられ方を見ていたため、眠らされてはたまらないと脱兎の如く逃げ出した。

 「さて、楯無!」

 戦意のない奴を、一夏が追いかけることはない。

 『何かしら?』

 「校舎は何棟まで潰して良いんだ?」

 『ISの重爆撃にも耐えられるように造ってあるのよ?壊せるものなら壊してみなさい。』

 いくら逸般人とは言っても、そこまでの破壊力は出せないと、楯無は高をくくっていた。そう、何のための逸般人表記なのかを深く考えることもなく。

 「言質は取った。やろうじゃないか。箒。」

 「久しぶりだなぁ。お前と本気でやり合うのはいつ振りだ?」

 気がつけば、箒と一夏は対峙していた。

 「前は剣道場を壊さないようにセーブしてたからな。篠ノ之道場以来だろう。」

 「では・・・」

 「「行くぞォォォォォ!!」」

 2人が斬り合った瞬間、衝撃波が発生。

 次の太刀を振った瞬間にソニックブームが起きる。

 『!?!?!?』

 このまま剣技が続くのかと思った刹那、2人がロケットランチャーをぶっ放す。

 たまらず校舎は崩壊。瓦礫の山と化す。

 〈クソッ、砂埃が。〉

 こればかりは、一夏を以ってしてもどうにもならない。音で箒の場所を探し出す。そう思ったのと同時に、足の接地感が消えた。

 「!?」

 スロープぐらいあればいいのだが、残念なことに垂直落下していた。

 ま、彼はどんな高所から落ちてもビクともしないですが。

 「いらっしゃい。」

 その先に待っていたのは。

 「どっかで見た顔だな。」

 「午前にお会いしましたわ。」

 一夏のクソ重いISに追加装備を提案して地面に投げ捨てられた阿呆であった。

 「あぁ、あのマヌケか。何でまだいるんだ?」

 「えぇ。この機会に白式を頂こうと思いまして。」

 挑発の応酬が行われる。

 当然、誰も止めてはくれない。いたところで、止めてくれないから一緒ではあるが。

 「欲しいのか?」

 「とっとと寄越せやガキィ!!」

 「面白い奴だな、気に入った。殺すのは最後にしてやる。」

 彼はこの余裕を後悔することになる。

 「へ、その余裕がいつまで持つか楽しみだなぁ。えぇ?」

 そう彼女は思っていた。

 バキッ!【2800/3000】

 思いっきり殴り掛かったところまでは良かったが、それ相応に思いっきり手首から変な音がした。

 「・・・。」

 そして、一夏には全く以てダメージが入った様子はない。強いて言うなら、ポケットの蓋の位置がずれたぐらいだ。

 「てめぇ、どんな体してんだ?もう手加減なんてしてやらねえ!こいつを使ってやらぁ!」

 勝手に逆上を始める謎の女性。

 「ISか。」

 一夏はその正反対で、まるで1匹のアリンコを眺めるような余裕があった。

 「刺激が欲しいかえぇ?ズキズキするような刺激だ!刺激が欲しいだろ!お前にも痛みを味わわしてやる!」

 鋭い(彼女的に)パンチを一夏へと振るう。

 が、大して見もせず全てを躱していく。それも、半径50センチと動くことなく。

 「一つ聞きたいんだが、お前何者だ?」

 剰りのヘボさに、欠伸をしてからそう訪ねる一夏。

 「あぁ!?教えてやるよ!悪の組織・・・秘密結社『亡国企業』のオータム様だ!」

 「亡国企業!?滅ぼした筈じゃあ。」

 「残念だったな。トリックだよ。」

 ここに来て、初めて一夏の顔から余裕が消えた。勿論、消えたのは余裕だけで、圧倒的に優位なことは変わっていない。

 「・・・お前かぁ!!第2回モンドグロッソのときに私達を地獄に送ってくれたヤツは!あんときの仮を返してやらぁ!」

 それまでよりも更に気迫が入った攻撃が繰り出される。ただし、入ったのは気迫だけで、一夏にダメージはまだ入っていない。

 「できるならな。」

 更に挑発する一夏。体が温まってきたのか、動きには更にキレが出てきていた。

 「へ。ところで何か気付かないか?私の動きをよ。」

 「糸を張ってんだろ?知ってるぞ?」

 オータム的には、完全にしてやったりだったのだけれども、とうの昔に読まれていた。

 「勿体ないから集めておいたぞ。」

 ぐう畜のごとき笑みを浮かべ、束ねた蜘蛛の糸を差し出す。

 ただ読むだけで終わるなら、かなりの人が出来る。一夏が一夏たる所以は、仕込んでいる相手に感づかせぬよう先手を打つことにある。

 「」

 まさか見切られると思っていなかったオータムは、目を点にして固まる。

 「さて、俺も少し遊ぶとするか。」

 そう言って、一夏がIS展開する。

 「!!待ってたぜぇ!?そいつを使うのをなぁ!」

 その瞬間、オータムが待ってましたと言わんばかりに攻撃を仕掛けてきた。

 「!?」

 気が付けば、一夏のISは消えていた。

 「これをお探しぃ?は!大したことねえな!」

 「オータム!そのアッシーは関係ない、放してやれ!目的は白式だろう!」

 「ヘハハハハハハ・・・は?」

 苦し紛れの言葉だと、鼻で笑っていたオータムだったが、言われてみれば機体が白かったことに気付く。

 「お前の狙ってる白式はここにある。」

 一夏が手に持っていたのは、極秘ルートで入手した白式の待機状態とされる写真に写っていたものと同じ形状のもの。

 「は!そんな嘘に誤魔化されるかよ!」

 敢えて強気に出て様子を探るつもりだったが、辺り一面を蒸発させられる攻撃をするか、テレポートで逃げるべきだ。

 「なら、返してもらうぞ!」

 一夏が、戦闘態勢に入った。

 「どうやってだ?」

 「こうやってだ!」

 まるでイノシシのようにオータムへ直進する一夏

 「フハハハハハッ!?手前はもう終わりだ!」

 のんびりせずにさっさと逃げるべきだったのに、ISの優位性を過信するあまり生身の人間相手にその発想が出なかった。

 「ISに正面から突っ込むなんてよ!この馬鹿!ヴァカ野ろ――」

 バキッ!【20000/30000】

 ものの見事にタックルが決まり、オータムは激しく床に叩き付けられる。

 「馬鹿野郎!何やってんだ!てめえ正気か!死にてえのかてめえ!どっかし天丼!てめえ何やってんか分かってんのかい!」

 「お前がわざわざ構えて待ってくれてんだ。正面からぶっ飛ばす以外の方法があるのか?」

 「」

 コイツ人間じゃないと、オータムは思った。残念ながら、一夏はれっきとした人の子である。ただ逸脱しているだけで。

 「アッシーは返してもらったぞ。」

 「手前!」

 気が付けば、手からISのコアがなくなっていた。

 「約束だ。白式をくれてやろう。受け取れ!」

 「おわ!?」

 投げられた白式の待機状態に似たものをオータムは反射的にキャッチし、そして地面に顔から突っ込んだ。

 「何してんだ?」

 呆れたように一夏が尋ねる。

 「手前、舐めてんのか!?展開状態のISでもこんな質量はないぞ!!」

 両手でそれを何とか抱え、生まれたての子馬よろしくプルプルとしながら二本の足で立ち上がった。

 「だから聞いたろ?こんなのが欲しいのかって。」

 「あぁ、笑えない冗談だ。」

 笑えない原因は、手首捻挫や今ので腰をやりかけたなど多岐に及ぶものの結晶だ。

 小分けの大ダメージを与え、体力を削って来ることにオータムは身が震え始める。

 「手前、マジで何者だ?ISはぶっ飛ばす、ISで持ち上げられないものを(片手で)ぶん投げる。てめぇ人間なのか!?」

 そう思うのも無理はない。だが、残念ながら一夏は人の子だ。さっきも書いたけど。

 「残念だが、お遊びもここまでだな。」

 一夏の表情に、初めて笑みが浮かんだ。厳密には、笑みの奥に途轍もない恐怖を隠したまま。




ネタ潰しもやった。しかし思われてる以上に、崩壊した腹筋もあった。

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