IS《ISの帝王:小説版》 作:只の・A・カカシです
Bもっと刺激が欲しいかえぇ?ムキムキするような腹筋だ!腹筋が欲しいだろ!お前にも寝るだけアンダーコア味わわしてやる!
夜になった。打鉄弐式の整備を終え、自室である1025号室で一夏がくつろいでいたときのことだった。
「誰だ?」
見当は付いていたが、ドアをノックされたので条件反射でそれを言う。
「ちゃお!」
そう言ってドアを開けて中に入って来た楯無に対して、一夏は飲み物を出した。
「・・・何これ?」
「茶だ。」
他の何かに見えるのなら教えてくれと、一夏は楯無に迫る。。
「何で?」
「『茶を』って言ったろ。違うのか?」
因みに、これは救済のための確認である。
「いや、挨拶の方の・・・。」
「じゃあな!」
直後、一夏はロケットランチャーを構え、楯無に向けて発射した。ただし、先日楯無に切られ張本人に修理させたドアは耐久性に不安があったので、今回は珍しく空砲だ。
「ゲホッ、ゲホッ!何するのよ!」
そんなことを知らない楯無は、当然文句を垂れる。
「チャオってのはサヨナラって意味の方が強いぞ。知らないのか?」
「あら、そうなの・・・。」
「辞書読め。」
「そうするわ。」
珍しく一夏の言うことを素直に聞いた楯無である。
「で、何の用だ。」
「雑談よ。一夏君と織斑先生は仲が良いなと思って。」
勿論そうしたのも、物理的に一夏に吹っ飛ばされないためだ。
「腐れ縁。」
「織斑先生は君にだけ厳しいでしょ。」
「嫉妬しているだけだ。」
「分かってないな。死んでほしくないから、厳しくしてるんでしょ。」
淡々と帰すばかりで、一向に取り合ってくれない。それでも口を尖らせつつ、根気よく楯無は質問を続ける。
「死ぬ?俺が?あり得ないね。」
そして遂に、楯無の望んでいた台詞を一夏が口にした。
「そうかしら・・・あら?」
「これか?」
待ってましたと言わんばかりに、一夏が胸ポケットから何かを取り出して広げた。
「そう、その『油断大敵』扇・・・。」
「まだやるか?」
気が済むまで付き合ってやろうかと、一夏は続ける。
「・・・疲れたわ、マッサージして。」
そして勝ち目がないとみるや、楯無は攻め方の方向を変えた。
「俺の部屋に来て言うな。」
本当に嫌そうに、言い返される。
「えぇ、君が一番上手いもの。」
ところが、それに対しての返事がない。
「・・・あれ?一夏君?」
楯無が一瞬気を抜いた瞬間に、一夏は1025号室から悠々と脱出を果たしていた。
「簪。丁度良いところに来た。」
脱出したのは、この場面にうってつけの人材が来ていることを察知したから。。
「・・・何?」
「俺の部屋に水色のGがいるから、荷電粒子砲で消し飛ばしてくれ。」
「分かった。」
一夏の言葉を疑うことなく、簪は打鉄弐式の武装だけを部分展開する。
「開けるぞ!」
一夏の声かけに合わせ、簪は3度引き金を引いた。
「あっつ、あっつ!ちょ、一夏君!?!?!?」
直後、部屋の中にいたものは荷電粒子砲の直撃を受けたのか、大声でそう言いながら跳ね回り、破壊音を残し離脱していった。
「窓割って逃げたか・・・。」
そう言ってはいたが、荷電粒子砲の直撃を熱いで済ましてしまうのかと、楯無のタフップリに一夏は感心していた。
「・・・今の声?」
簪が首を傾げる。
「さあ、誰だろうな。ありがとう。これで今夜はぐっすり寝られる。」
それを悟られまいと、一夏は何食わぬ顔で会話を逸らした。
「そう、・・・良かった。」
しかし、簪はその場でモジモジして帰ろうとしない。一夏が「何をしているのか」と尋ねようとしたとき、彼女は口を開く。
「・・・あの、これ作ったから・・・その、・・・食べてみて。」
「カップケーキか。」
渡された袋の中身を見て一夏は尋ねる。
「嫌い?」
「いや。」
早速頂くよと、一つを取り出して口にした。
「・・・中身は、何だこれ?」
初めて食べる味だと、一夏はレシピを聞こうとした。だが。
「知らない方が・・・良い。」
「」
まさか実験台にされるとは思ってもみなかった一夏は、それを聞いて固まる。
「じゃ、じゃあ、おやすみ!」
その様子を見て危機を感じた簪は、全速力で退却していった。
「・・・?寝るか。」
体に不調はないし気にすることもないかと、一夏は部屋の中に戻っていった。
「それでは、生徒会長の話です。」
遂にタッグマッチトーナメントがやって来た。今は、その開会式が行われている。
生徒達の前で壇上に上がったのは、全校生徒(一組の生徒と一部例外を除く)から学園最強と言われる楯無であった。
「おはよう、皆さん。今日は――タッグマッチトーナメントですが、――勉強になると――」
「あのお方、いつまで喋る気でしょうか?」
その話の長さに、セシリアが退屈そうにコメントする。
「止しなさいよイギリス。アンタの何もそうでしょ。」
「な・・・。」
直後、鈴から口撃を受けてセシリアは固まった。
「一本取られな、セシリア。」
それを更に箒が煽る。
「二組から話し掛けるのは止せ。箒も煽るな。」
流石に今は拙いと、柄にもなく一夏が制止を行う。
「それじゃあ、今回の特別イベントよ!じゃぁん!『優勝ペアを当てて食券をゲットしよう!』」
「賭けは止せと言ったろ!」
と、真面目ぶったのも束の間。楯無のつまらない企画にブチ切れ、ロケットランチャーを撃ち込む。
「やったか?」
「(急所は)外した。」
当てても死ぬことはないだろうが一応と、一夏は補足を入れる。
「一夏君!まだ試合は始まってないわよ!」
煙が晴れると、少し黒くなった楯無がそこに居た。
「ピンピンしてる。」
「分かってちゃいたが、タフだ。」
前衛(盾)なら活躍するかも知れないと、一夏と箒は脳内でプランを練り直す。
もっとも、一夏達に軽くあしらわれることを理解していた楯無は深く追求することなく話しを先に進める。
「それでは、第一試合を発表します!ドンッ!」
楯無が指差した先のモニターに、第一試合の組合せが表示される。そこには、『織斑&更識(簪)VS篠ノ之&更識(楯)』となっていた。
「では、移動して下さい!!」
その号令が掛けられた数秒後には、1年1組は開会式の場に誰も残っていなかった。
一夏とその仲間達は、第一試合の行われる第四アリーナにて雑談をしていた。
「久しぶりに本気で暴れられそうだ。」
「全くです、大佐。」
一夏がそう呟き、ラウラがそれに賛同する。いつも通りのやり取りだ。
「このところ豆腐みたいなのばかりが敵だったからな。」
最近のテロリストはたるんでいて仕方ないと、一夏が欠伸をしながら言い放つ。
「みんな、しっかり準備運動しときなよ。」
「シャルの言う通りだ。始めよう。」
流石に本気を出すと怪我の危険が高くなる。一夏達は、珍しくアップを開始した。
それは、アップを開始してから少ししたときのことだった。
「どうした。上ばっかり見て。」
シャルロットがしきりに上を気にしているので、気になった一夏は何が見えるのか尋ねた。
「・・・もしもし、問題発生。伏せてぇー!!」
その声と同時に、全員が地面に伏せる。間を置かず、銃弾やビームが上から降り注ぐ。
「伏せろ、伏せてろ!」
頭を上げようとしたシャルロットを、一夏が押さえ込む。
攻撃は止むことなく続き、地面を震動させる。
「くそ、あのウサギ、からかいすぎたか・・・。」
地面を転がり散会する。
「・・・!?やばいですわ!」
直後、狙いを定められたセシリアは慌てて物陰に隠れ攻撃を避ける。
隙を突き、一夏が応戦するも、あまり効いていない様子だった。
「前より硬くなってない?」
「おそらく。クソッ!火力が足らん。」
箒が悪態をつく。それ程までに厄介なのだ。
「イギリス!バカなこと聞いて悪いけど、弾余ってたら貰える?」
後先考えずダイナミックにぶっ放していた鈴は、流石に残弾が減ってきたので、補給を要請するが・・・。
「弾倉が小さいのですわ。」
「んなことだろうと思った。」
スナイパーに頼んだのは確実に間違いであった。
「ボーデヴィッヒ、節約しろ!」
「お前もな、篠ノ之。」
当ててはいるが今ひとつ効果がないため、救援が来るまで時間を稼ぐ方向にシフトする。
そのとき、一夏の携帯に着信がある。
「俺だ!」
『織斑、追い返せそうか?』
電話を掛けてきたのは千冬だった。
「チェーンガンでもあれば。」
しかし、特に返事はない。救援は駄目そうだと、一夏は諦める。
「・・・どうした一夏?」
一夏がしきりに後方を気にし始めたため、箒は敵の増援でも来たのかと身構える。
「弾が切れそうだ。また戻って来る。」
「戻れるのか?」
ドアは全部封鎖済みだぞと伝えると・・・。
「・・・イピカイエーか。」
どうやら、失念した様子だ。
「伏せろ!」
そうは言っても、敵が攻撃の手を緩めてくれる訳がない。
避けることに精一杯で、反撃の糸口が掴めない。
「箒、弾は?」
「後、1発。撃つか。」
南無三と、箒は物陰から飛び出して発砲した。
駄目かと、諦めが付いたその瞬間!
ドガガガガカガガガンッ!!!【【【0/20000】】】
途轍もない発砲音と共に、上空にいたISが次々と叩き落とされる。落ちたそれらは、1箇所に固まって墜落していた。そこへ、最後の一機が落ちると、手榴弾が投げ込まれ一機残らず機能を停止した。
勿論、この手榴弾は発砲前に投げられたものである。
「・・・やったのはどなたかしら?」
恐る恐るといった感じで、セシリアが物陰から這い出る。
「私は弾切れよ。」
セシリアの視線を受けた鈴は空の弾倉を振り、弾切れをアピールした。
「・・・誰がこんなことを?」
「知らん。だが、私達を殺る気なら、もう撃ってる。」
ラウラが不思議そうにいい、箒が自身の考えを述べた。
「おい、鈴!あれを見ろ。」
数秒して、何かを指差しながら一夏はそう言った。
その先にはグラサンをし、肩からアサルトライフルを下げた男が歩いてきていた。
「落ち着け、みんな。」
一夏が、動くなと全員に注意する。
歩いてきた男は、一夏達と対峙するとグラサンを取った。
「日本は狭いなぁ、鈴、一夏。」
「御手洗じゃない!噂じゃ死んだって聞いたわよ!」
鈴は両手を広げて、信じられないといった感じで彼をまじまじと見る。
「それは俺も聞いた。調子はどうだ?」
「まあまあね。・・・全部一人で?」
辺りを指差しながら、鈴は更に尋ねる。
「今は一人だ。知ってただろ。」
御手洗は、つまらなそうにそう返した。
「聞いてたけど、信じてなかったのよ。」
「うん、信じたな。・・・学友か?」
御手洗が鈴と一夏から目を逸らし、後ろにいた者達と目を合わせる。
「えぇ、篠ノ之、セシリア、ラウラ、シャルロット。それに更識簪よ。」
鈴がそれぞれを紹介した。
「御手洗。」
紹介されるや否や、ラウラがずいっと前に出た。そして、御手洗の匂いを軽く嗅ぐ。
「お前は一匹狼というやつか?」
「そう呼ばれてきた。(一夏と鈴が居なくなって)だいぶ丸くなったが。」
その瞬間、山積みになったISを見た鈴は胡散臭そうにこう言い返した。
「・・・そうでもなさそうね。別の噂を聞いたわ。あんた、マムシに噛まれたって?」
「ああ噛まれた。その後5日間苦しみのたうち回って・・・・・マムシが死んだ。」
「だろうな。会いたかったぞ数馬。」
それでこそ親友だと、沈黙を続けていた一夏が前に出て、御手洗と固い握手を交わした。
「こんな狭いところで何してるんだ?」
感動の再会から少しして、一夏と御手洗は皆と少し離れた場所へと移動し話していた。
「知ってるだろ?」
「気が付いたらお前が居なくなってた。」
「新聞読め。」
『男性初のIS操縦者』と連日のように報道されていただろうと、呆れたような一夏。
「興味ないな。」
「んなことだろうと思った。・・・何でここに来た。」
尚更ここへ来る理由が分からないと、一夏は尋ねる。
「誰のものでもないISが飛んでいるのを見つけてな。あれは携帯の中の携帯だよ。売って大分稼いだ。」
「出所を知ってるか?」
「篠ノ之束ってヤツだよ。」
「それは知ってるんだな・・・。」
逆に俺の居場所を知らなかったのが不思議と、一夏は眉間に皺を寄せた。
「生きて連れ帰るんなら人数が必要だ。」
それは、捉えるのに人数が必要という意味ではない。荷物を運ぶのに人数が必要という意味である。
「ああ・・・数馬、手を貸すか?」
「悪いが一夏、俺は一匹狼だ。」
「ああ、悪いな・・・。」
言われてみれば、お前がつるんでいるところはほとんど見たことが無かったと、一夏は2度頷いた。
「うん。じゃあ元気でな、一夏。」
「ああ、また会おう。」
踵を返し、颯爽と御手洗は去ろうとして。
「そうだ一夏、忘れるところだ。」
そう言って振り向いた。
「?何だ。」
「乱暴者の友に、友情の印を。今日は、弾の妹の学園祭だそうだ。」
「中止って聞いたが?」
まさか蘭に誤情報を掴まされたのかと一夏は思う。
「学園と、生徒はそう思ってない。これが招待状だ。弾から預かった。」
差し出された招待状を、一夏は受け取った。
「そうか、分かった。ありがとよ、数馬。・・・そろそろ試合に戻らなきゃ。」
「良いさ、ガンバッテー。」
今度こそ、御手洗は立ち去っていった。
一夏も、皆の待っている場所へと戻る。
「・・・私、何を見逃したのかしら?」
一夏が港合流すると同時にピットから楯無が飛んで出てきて、上空から辺りを見回し不思議そうに呟く
「試合しながら語ってやる。さぁ、行こう!」
え?試合?1回戦の一夏と箒が決着着かずで、日没コールドになりました。
次の日の夜。一夏は学園の敷地内を歩いていた。
「ん?織斑、散歩か?」
そこで、千冬とばったり出くわした。
「まあ、そんなところだ。」
「迷子になったような顔だ。」
「ほっといてくれ。」
一夏が暗い理由。それは、招待状あったのにも関わらず、聖マリアンヌ女学院の学園祭の入場を拒否されたから。
何も話さずその場より立ち去ろうとした一夏だったが、ふと立ち止まった。
「・・・丁度良い。思い出したついでに言っておく。」
「何を。」
「家族のこと。」
千冬が眉をひそめる。
「なぜ。」
「家族がいた。」
「おい、一夏。夏バテでボケたのが私だけじゃないのは嬉しいが、奴らはもうあの世だろ。」
一体いつのことを話しているのかと、千冬は呆れる。
「妹がいた。」
が、その一言で真顔になった。
「・・・ソイツは可哀想に。」
詰めが甘かったと千冬。
「そう思うか?」
「あぁ、思っている。」
「俺もだ。」
珍しく意見があった2人。
「織斑、そっとしておいてやれ。」
「心に誓おう。」
「まだ心があるなら。」
少し軽くなった足取りで、一夏は部屋へと戻っていった。
ちゃんと(コメントを)書けるよな?
では、年末(二週間後くらい?)にMAD版で会おう。