IS《ISの帝王:小説版》 作:只の・A・カカシです
〈う・・・。分かるわ。起きたばかりの私でも寝たいと思うもの。〉
体育祭の翌朝。目を覚ました楯無は起き上がるのも億劫なほど体調がすぐれなかった。
ゆえに、時間を少し見るとまた布団に潜り込み目を瞑った・・・にもかかわらずである。
まるで、寝起きを待っていましたかと言わんばかりのタイミングで、部屋のドアがノックされる。
「!!・・・。」
その気配から誰が来たのかを察知した楯無は、息を殺して気配を小さくした。が。
「楯無、ちったあ編めるようになったかよ。」
突如として天井板が外れ、そこからさも当たり前のように一夏が顔を覗かせた。
「どこから入ってきてるの!?」
「いつもやってることだ!今更御託を並べるな!」
「」
デリカシーの欠片もない行動に楯無が抗議を行うも、思い返してみればこの手のことを先に仕掛けたのは自身であったことを思い出して黙り込む。
それを納得とみて、一夏は用事を切り出した。
「落とし物だ。」
「お、落とし物?私が?」
「あぁ。ほらよ。」
「あり得ないわ」と言おうとした、その瞬間に一夏がポイッと何かを投げてきて、受け取った楯無はそれが何であるのか一瞬で気が付いた。
「?!!?きゃぁぁぁぁぁぁっ!か、返しなさい!!」
パニックのあまり、全く纏まっていない言葉が口から飛び出していく。
「今返したろ!」
「そういうことじゃないの!」
ならどういうことかと聞かれても答えられないが、感情的に返すことしかできないほど一夏に追い詰められていた。
「いつものキレはどうした!熱でもあるのか?」
「ないわよ!」
遊ばれていることに感づいた楯無は、大声でそれを否定する。
「じゃ、何だ。疲れが抜けてないのか?」
「疲れてる?私が?あり得ないわね。」
「(パンツ落としといて)よく言うぜ。」
強がって見せたものの、一夏にはそれを見抜かれていて鼻で笑われる。
「ば、馬鹿!一夏くんの変態!」
「今度落としてみろ、溶鉱炉で溶かすぞ。」
「聞くのが怖いんだけど、何を?」
「知らない方がいい。それを知っちまったら、殺されちまうぞ。」
「」
「じゃあな。」
一通り遊んで満足した一夏は、天井板を閉めて去ろうとする。
「ま、待って!」
それを楯無は呼び止めた。
「何だ!」
「この後買い物に行くから付き合いなさい!」
一夏の強い口調に、負けじと楯無も応戦した。
「付き合いが必要ってのは分かってるんだが、出かけてる暇がねえ。」
「いいから!」
「あっらー?あべこべだぁ。」
結局、何だかんだあったが一夏は楯無の買い物に付き合っていた。
「んー、確かにロシアでは通用しないわね。」
眺めているコートは丈が短く袖も短いのに、襟だけにはモフモフの毛皮が巻かれていると言う代物だった。
「あぁ、あそこ(モスクワ)はクソ熱いのなんの。」
ジメジメはないがと、一夏は付け加える。
「私は快適だったけどね。」
「ふふーん、だといいがぁ?」
楯無をジト目で見ながら、一夏はコートをハンガーに掛けてラックに戻した。
それから一通り店内を見て回ったのち、二人はベンチに腰掛ける。
「あ!一夏くん!私あそこへ行ってみたいわ!」
しばらく外の景色を見ていた楯無がゲームセンターを見つけ、それを指差した。
「駄目だ。」
しかし、一夏はにべもなく拒否した。
「駄目ェ!?何で!」
「出禁だ。」
「・・・何したのよ。」
「パンチングマシンを手玉に取り、法と道徳に背く――」
「もういいわ。近くで見るだけにしましょう。」
聞くだけでも恐ろしいと、楯無は一夏の話を最後まで聞かず立ち上がる。そして、店から出るとゲームセンター目指して歩き出す。
「楯無!危ない!」
歩いていた楯無の腕を、一夏は唐突に引っ張った。
「ギャッ!?何するのよ!」
勢いあまってしりもちを着いた楯無は一夏を睨みつけながら苦情を言う。
「危ねえだろ!」
そういわれて、初めて自分がどこを渡ろうとしていたかに気が付く。
「車が壊れたらどうする!」
「そっち!?私の心配をしなさいよ!」
が、一夏の心配は彼女自身に対するものではなかった。
「いつまでお硬い女ぶってるんだ!お回りから交通教育を受けなかったのか!」
「この筋肉にだらしのないヴァカ男が。」
「いやぁ、その通り。それが悪いのか?筋肉には興味ないのか。」
「一夏くんがありすぎるのよ!」
一通り言い争いをしたのち、二人は道交法を守ってゲームセンターの前へと歩いて行った。
「よく買うもんですな。全くお笑いだ。箒や鈴がいたら、奴らも笑うだろう。」
時刻は過ぎて、夕方になっていた。二人は沿岸にある公園のベンチに座り、買いものの整理を行っていた。
「沢山のバックを見てきたから分かるわ!これは企業の陰謀よ!」
「(これだけ買い漁って)よく言うぜ。」
大量のブランド品に、一夏は呆れた様子だ。
「消費者の脳みそににサブリミナルメッセージを送って、嗜好を操作してるのよ!」
「そこまで分かってなぜ買う。」
「・・・。」
いつもなら何か言い返して、更に言い返されて何も言い返せなくなるタイミングで、不意に楯無は反論をやめた。
〈
それは返す言葉が思いつかなかったのではなく、緊急の連絡が来ていたから。
「一夏くん、ごめんね。急用ができちゃった。今日はここまで。」
手早くブランド品をカバンに収める・・・どちらかと言うと圧入する楯無。
「すまねえ、ロシア語はさっぱりなんだ。」
「日本語なんだけど・・・。」
聞く耳を持たないという宣言なのだが、楯無は一発で理解しきれない。
「一人で(仕事を)抱え込むなってんだ、この大バカやろう!けど、手を貸せるのも俺しかいないぞ。」
「・・・分かったわ。勝手にして。」
秘密裏に仕事を済ませる気でいただけに、楯無は肩を落とす。
「さっさと行って、さっさと帰ろう。」
海への転落防止柵の前に立つ一夏の周りに、光が発生し始める。
「ちょ、一夏くん!?」
それを見た途端に楯無は、ひどく慌てた様子で制止する。
「何してるの!?」
「ISを展開するんだ。悪いか。」
悪びれる素振りもなく言い切った一夏。
「悪いわよ!ていうか、どこに行くか分かってるの?」
「沖にある、アメリカの秘匿空母だろ?」
知らない筈がないということは分かっていても、つい訪ねてしまう。
「よくご存じで。でも、ISは無しよ。」
「いつもやってることだ!今更御託を並べるな!」
もっとも、そこで『常にでしょ』という正しい言う突っ込みができなくなってきた辺り、楯無も末期だ。
「駄目!そんなことをしたら、日米双方ののIS部隊が飛んできて包囲されちゃうわよ!」
「どうなるか試してみるか?」
顔を真っ青にする楯無をよそに、一夏は堂々とISを展開する。言うまでもないだろうが『アッシー』の方だ。
「IS部隊は来る。俺のところにも来るし、お前のところにも来る。」
「」
「だが今日じゃない。」
別の語録な気がしなくもないが、まあ空母に行くのでセーフということで。
「どうしたの?」
突如としてソワソワし始めた一夏。
恐れを知らぬ男のその動作に、心配になる楯無。
「突撃ラッパ吹いて空母に乗り込んで、戦利品は山分けするんだァ♡!」
「速さが肝心。そうと決まれば、さっさと行きましょ。」
が、ただの思い違いと判明したので自身もISを展開したのだった。
「着艦!」
超高速で着艦したため、空母甲板の舗装が剥がれ飛んでいく。
「甲板が壊れた!?」
何十トンもの重量が掛かってもビクともしないはずのそれが壊れる様に、流石の楯無も驚きを隠せない。
「ギャーギャー騒ぐな!」
「何よ!」
「こんなのは損傷のうちにも入らんよ!」
「」
人のものを壊しておいてこの開き直りである。これには楯無も返す言葉を失う。
「どうした!何事だ!」
その時、バタンッとドアを蹴っ飛ばして乗員が現れた。
「やあ、イーリスさん。ご機嫌如何です?」
その乗員の顔を見るや、一夏は欠片も申し訳なさそうにすることなく話し掛けた。
「ご機嫌さ。目の前の大物がカタパルト発艦しちまえばな。」
不機嫌この上ない対応。出会って五分と経っていないのだから当然だ。
「試してみるか?俺だって元艦載機だ。」
「飛んでってマニラ。」
「!?」
やり取りを聞いていて目を白黒させる楯無。勿論一夏は「いつもやってることだ!今更真に受けるな!」と叱責する。
「何しに来た特ダネ屋。」
そんなことはお構いなし。イーリスは突然の来訪者に不機嫌この上ない様子だ。
「今夜、この空母を爆破しようって連中がいる。」
「何も聞かされてないが?」
一転。一夏の持っている情報に興味を示した。
「そうだろうな。テロリストは丁度ここを爆破して帰る、丁度ティータイムだ。」
「どこにある!答えろ!」
「無理無理、無駄なこったよ。全員退艦させろ。死体が増える前にな。」
このやり取りがなければ、あるいはできたかも知れないが、バァクダンを回収して回るには時間が足りない。
「分かった!」
そう言って、出て来たドアを開けようとノブに手をかける。
「どうした。」
「鍵が掛かってる。」
が、何故か出て来たドアが開かない。オートロックでもないのに。
「退け!」
時間が惜しいと、一夏が万能のスマッチョキーでドアを開けた。
「これで開いた。」
「聞きたかないが、お前の連れはどこに行った。」
そう言われて横を見る。楯無の姿はどこにもない。
つまり、一夏達が追ってくるのを防ぐためにドアに鍵をかけたのだ。
「・・・小娘め!クソォ逃げたか!」
「あの機関銃娘、どうにかならんのか!」
「無理無理、無駄なこったよ。」
偶にだが、一夏をも出し抜く実力を楯無は持っていた。
そのころ楯無はと言うと、秘匿空母のデータールームに潜り込んでいた。
一心不乱にキーボードを叩き、目的の情報を探す。やがて、それを引き当てた。
「嘘!スコール・ミューゼルは死んでる!?」
しかしそこには衝撃の事実が隠されていた。
「残念でした、外れ。」
それまで誰も居なかったと思っていた背後から、突如としてそう話し掛けられた。
「しかも今の方が若い!?」
振り返ってその顔を見た途端に、楯無は目を見開いた。
「言葉遣いを知らんヤツめ。」
スコールのIS『ゴールデン・ドーン』の攻撃により、秘匿空母にはいくつもの亀裂が走る。
水の浸水とともに大きさを増していき。遂に空母は海水中へと消えていった。
初期の投稿に比べれば目クソ鼻クソさ・・・(編集期間の長さが)