IS《ISの帝王:小説版》   作:只の・A・カカシです

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土日は投稿をほっぽらかしてたのに、良く読者がいるもんですナァ。全くお笑いだ。
語録は縛ってろ、その口も閉じとけ。



第58話 おぉい、怒るこたねぇだろ!?

 「Zzz・・・」

 楯無がとある人物と接触して旅館に戻ってみれば、山田先生が玄関でひっくり返って眠っていた。

 「いびきをかき続けたら撃ち殺してやるわ・・・」

 「Zzz・・・」

 だが、いつまで経っても玄関を塞いだままで起き上がる気配がない。

 「山田先生!」

 「ねぇ!ターミネーター4のサイボーグがいた!」

 「起きねえとぶっ殺すぞぉ!!」

 「あ、ゴメンネェ」

 大声で呼びかけ続け、ようやく目を覚ました。

 「さて、山田先生。一つ派手にやってくれ、学生時代にキリングシールドを名乗った時のように。」

 「あ、あはは・・・私は忘れたい。」

 昔の話を持ち出されて、山田先生は居心地悪そうにする。

 「結構、では行きましょう。」

 それだけ自覚があれば十分と、楯無と千冬、山田先生はオータムをほったらかして出かけていった。

 

 「く・・・なんで無人の白式が白騎士に・・・?!」

 一夏がぶん投げて無人となった白式は、どういうわけかその姿形を変えて、かつて白騎士事件でISの存在を世界に知らしめた白騎士の姿になった。

 「一夏!ISでもどうにもならないよ!?」

 かれこれ一〇分以上戦っているが、一向に弱る気配がない。

 「だったら殴ればいいだろ!」

 「そんなぁ・・・」

 それもこれも一夏が参戦していないからなのだが、それを加味しても白騎士が強い。

 「大体お前は・・・(ISが)チームメイトになろうとしたのに、友達になろうと言ったのにアンタはよぉ~、聞く耳も持たなかっただろうが!」

 「そんなセリフあったか!?」

 膠着状態に業を煮やした鈴から戦闘の責任をなすりつけられて、一夏が目を大にする。

 「残念だが、ない。」

 それに対して、箒が冷静に返した。

 「クソォォォォォォ!だましやがったなぁ!?」

 「おぉい、冗ぉ談だよぉ!?怒るこたぁねぇだろ!?」

 ただまあ、ちょっと気を抜いた程度で戦況が崩れるほど強い相手ではないので、つまらない茶番を挟む。というか、これが膠着の最大にして唯一の原因だった。

 「みんな、お待たせ!」

 そこへ楯無と山田先生が到着する。千冬?さあ?

 「山田真耶、行きます!」

 普通のラファールとは違う、明らかな専用機。気合いの入り方が違った。

 「Foo!ええぞぉ!あんた気前良いじゃねえか!こんな時こそISを使わねえとな!」

 「ヤッチマエ」

 それを見て回りも、よいしょよいしょと持ち上げる。

 「お任せを!シャッタードスカイ!!」

 雰囲気に後押しされて、山田先生はより一層気合いが入る

 「よぉし、派手な葬式といこうか。」

 しかしそれは、ドスンと落とすための通過儀式みたいなものだった。

 「え、ちょ織斑君!?」

 「くたばりやがれぇ!!!」

 刹那、近くに落ちてた雪片弐型を見つけた一夏は、力の限りそれを白騎士に投げつけた。

 「あんたさ、偶には人に手柄を譲ろうと思わないワケ?」

 見事にそれが命中し、白騎士は落ちていく。それを見て、山田先生の立場はどうなるのよと、鈴がごまをすりに行く。

 「同じ状況ならお前もそうする。」

 「いやぁその通り。それが悪いのか?」

 けれどそれは、一夏の指摘によりあっさりと打ち砕かれた。

 「皆さん・・・酷いです・・・。」

 「俺が悪かったよ、熱い場面につい我を忘れちまって・・・。」

 打たれ強い筈の山田先生が、珍しく凹んでいたので、一夏は流石に哀れに思って謝るのであった。

 

 「お帰りなのサ。」

 白騎士を撃ち落として一夏達が旅館に戻ってみれば、そこにアリーシャだけがいて、オータムの姿はどこにも見当たらなかった。

 「アンタ何考えてんだよ。せっかくのホシを逃がしちまって。」

 いないのなら別にいないで気にならないため、一夏はそこまでアリーシャを責めないでいた。ところが。

 「・・・これよりイタリア代表アリーシャジョセスターフは、亡国企業に下るのサ。」

 アリーシャの口から告げられた、衝撃の事実。

 「え!?」

 「畜生!マジかー、誰もこんなこと言ってなかったぜ、驚きだ!」

 オーバーなリアクションをする一夏達。それを見たアリーシャは「驚いているようには見えないナ」と皮肉る。

 「ブリュンヒルデと戦いたければ直接言えば良いだろ。」

 言えないのなら仲を取り持ってやる。一夏が提案をしたが、それでも彼女は止まらなかった。

 「私はあくまでISで戦いたいのサ。その舞台を用意できるのが亡国企業なのサ。」

 「・・・ガンバッテー。」

 ぶっちゃけ、千冬がISを使う可能性はグッと低い。去年までなら、あるいはISを使う場面もあったことだろうが、今は一夏が居るからまずあり得ない。その残酷な事実を、伝えるべきか迷った鈴だったが、応援しておくだけに留めることにした。

 「逃がして良かったの?」

 玄関から去って行った、アリーシャの背中が見えなくなった。

 心配そうにシャルロットが、一夏に尋ねる。

 「・・・俺たちは知らぬ存ぜぬで通すんだ。」

 それが一番の方法と、一夏はシャルロットに説明した。

 「私たちはまともなことをやってないって、気がするんだな。」

 「気のせいダヨ。」

 もっともな指摘に、一夏は目を逸らすのだった。

 

 「千冬姉、酒まだあるか?」

 その日の夜。旅館の大浴場にて千冬が晩酌をしていると、一夏が堂々と入ってきた。

 「ちょ、ちょっと織斑君!?なにしれっと入って来てるんですか!?」

 ここは男子禁制(法律)の女風呂。山田先生は慌ててタオルで身体を隠す・・・が、悲しいかな。一夏の視界に、山田先生は一ミリも入っていなかった。

 「何だー、一夏。お前にはまだ飲ませんぞー。」

 既に顔が赤くなり始めた千冬は、少し回っていないろれつで、徳利をいれ湯船に浮かべている風呂桶を抱きかかえる。

 「ただの補給だ。・・・大分酔ってるな?」

 今日ばかりは観光だからと、一夏は()()()の差し入れを持ってきた。

 「おおともよ、それがどうした?」

 途端、手の平を返して瓶を受け取る千冬。

 「いや、あとの連中が気の毒だ・・・。」

 風呂で飲むと長風呂になる。更に、酔いが回ってくるとただの変態に成り下がるので、一夏は脱衣所の連中を哀れむ。

 「?・・・一夏、本当に酒を注ぎに来ただけかぁー?」

 一夏がそれだけのために、わざわざ出向いてくることはない。千冬は、よくそのことを知っていた。

 「アリーシャが逃げた。」

 「KOROSE☆」

 報告を聞き終わるや否や、千冬は端的に告げる。

 「俺に仁義を破れというのか・・・?出来ねえ相談だ。」

 「だろうな・・・だが最後、やらなければならないことは分かってるな?」

 「・・・追いかけ見つけ出して殺す」

 舌の根も乾かぬうちに、一夏は先ほどと正反対の言葉を口にする。

 と、そこへ。

 「たくもー、一夏ったらどこに行ったのよ!」

 鈴を先頭に、数名が脱衣所から浴場に移動してきた。

 「やぁ、お嬢さん方。ご機嫌いかがですぅ?」

 自分の名前が出たので、一夏は話し掛けてみた。

 「ご機嫌さ、目の前の目障りな筋肉バカが消えっちまえばな。」

 除く気がゼロなのは言うまでもないとして、流石に女子風呂に堂々と現れるのはどうなのかと鈴は不快感を示す。

 「随分冷てぇじゃねえか。」

 「いや、いい湯加減ね。」

 どこから話しが切り替わったのか、温泉の話になっていた。

 「一夏、今夜暇かい?」

 「糞して寝な。」

 「あ、どーも。最近の一夏キツイや。」

 どさくさに紛れて、シャルロットは予定を尋ねてみたのだが、あえなく撃沈された。

 「って、あ!千冬さん酔ってる!」

 その時、鈴が千冬の手に酒瓶が握られていることに気が付き青ざめる。

 「おいおい・・・勘弁してくれぇ!」

 「酒に酔ってる場合じゃねぇってんだこの元代表!」

 何も知らないシャルロットとセシリアは、解放しようとして千冬に駆け寄る。その後の自分達の運命も知らずに。

 「それじゃお嬢さん方、ごゆっくり?」

 疑問符を付けながら、一夏はピシャリッと浴場と脱衣所とを仕切るドアを閉めた。

 「待って、止まれ!ウワァァァァァァァァァ!!!」

 「にゃっはっはっはっは!」

 その後、酒が完全に回った千冬により、女湯はカオスになったとさ。

 

 翌日の昼。

 「あー・・・二日酔いだ。」

 帰りの新幹線に乗り込み席に着くや否や、千冬はグッタリと席に身体を預ける。

 「飲みすぎだ。」

 一夏が横目でそれを見ながら呟く。

 「飲ませたのは誰だ?」

 「何でしょー、聞こえませんよー?」

 「」

 いつもなら「嘘をつけ」というところなのだが、生憎気分が悪いため千冬は何も返さずに目を瞑った。

 「一夏、私達あの後ひどい目にあったんだからね?」

 今朝から何度目になるのか。流石に耳にたこができた一夏は、餌で釣る作戦に打って出る。

 「出来立ての小籠包・・・南京中華街テクノロジーの結晶。やるYO。」

 「ぃやった!」

 その作戦は目論見通り、見事に鈴の脳内から嫌な記憶を一掃した。

 へ?兵庫は遠い?ちょっと近所に散歩に行った程度です。

 「意地汚い雌猫が!」

 一夏に貰おうと狙っていた箒が、ありつけずに悪態をついた。

 「それより皆さん、好きなお弁当は買えましたかー?」

 山田先生が、騒がしくなる目にと話題を変える。

 「スタミナ丼!」

 「すっぽん定食!」

 「プロテイン弁当!!」

 ものの見事に脳筋なバリエーション。

 「この筋肉にだらしのない、ヴァカどもが!」

 「いやぁその通り、それが何か悪いのか?」

 悪態をついた山田先生だったが、誰一人としてそれを気にしなかった。

 

 「束様、紅茶が入りましたよ。」

 移動式の研究式の中で、クロエは束のために紅茶を入れた。

 「やったぁ!クーちゃんの紅茶だぁ!」

 久方ぶりの休息の時間。束は工作中だった物体を放り捨ててテーブルに着いた。

 「お茶請けはいかがしましょう?」

 「リガトーニが食えりゃ文句はねえ。」

 お茶請けだって言ってるのに、それではしっかりとした食事になってしまう。

 「分かりました。」

 それでも、少女が逆らうことはない。

 「あ、ねークーちゃん。すこーりゅんが持ってきた生チョコ八つ橋はー?」

 クロエが調理(?)のために退出しようとしたところで、束は待っている間にお土産を食べようとしたのだが。

 「あれは毒物反応があったので、昨晩の内に束さまの胃の中に押し込んでおきました。」

 「そっかぁ~、楽しみにしてたんだけどなー。」

 もうないのか。残念がる束であったが、傍とあることに気が付いた。

 「・・・・・胃の中に押し込んだ!?」

 「・・・ご機嫌ですね?」

 「ご機嫌じゃないよ!ママに何押し込んでるの?!」

 どういう解釈をしたらそうなるのか。束は身体に異常がないか触って確かめる。

 「?毒です。」

 「シレッと言わないで!」

 「でも生きてます。」

 大丈夫でしょうと、クロエは切って捨てる。

 「そうだけどさ~・・・。」

 束もまた、異常がないことを認めると、それ以上の追求は止めた。

 「は~~~。まあ済んだことだし・・・白式というオンボロが悉く私の予想を裏切っていくのに困惑せざるを得にゃいにゃー。」

 「困惑?しているようには見えませんが。」

 それだけ話題の振り幅があるなら、もう大丈夫と判断する。

 「・・・そういえばどうして束様はISをお作りになったんですか?」

 クロエは、これまではISこそが世界の中心と思っていた。実際、世間でもそう認識されていた。けれど織斑千冬を始めとした者達に出会ってからと言うもの、古くから彼らのことを知っている束がなぜISの性能をこの程度に抑えているのかが分からない。

 「私に目標なんかない!女の子を羽ばたかせたいだけなんだ!」

 「それから?」

 「ん~、アメリカ、もらっちゃおうかな♪」

 満面の笑みでそう言い放った束。付き合ってられないと、クロエは調理のために立ち去った。

 

 

 

 「やっほー、おりむーお帰りなのだー。」

 一夏がIS学園に帰り、お土産を以て生徒会室に出向くと、一番に本音が出迎えてくれた。

 「あ、あの、織斑君、向こうで弾君に会いませんでしたか?」

 続けて、少し心配そうな顔をした布仏虚にそれを尋ねられる。

 「俺は忙しかったから会ってません。セシリアとラウラが会ました。しばし遅れを取りましたが、今や巻き返しの時です!」

 突然、一夏は携帯を取り出して電話を掛け始めた。

 『おー、一夏か!』

 一夏は、電話をスピーカーモードにしていた。そしてその相手は、まさにいま虚が一夏に尋ねた相手であった。

 『お前の友達のおかげで虚さんにプレゼントが買えそうだよ、随分弾んでくれて、何だよまるで大統領だな。』

 まさか虚に聞かれているとは夢にも思ってない弾は、意気揚々に現状を話す。

 「ちょっと弾君!私の誕生日プレゼントなら無理しなくていいって言ったのに!」

 顔を赤らめ一夏から電話を奪い取った虚。

 『え、虚さん!?ちょ、一夏おま・・・』

 弾もまた、赤くなっているのが声だけで分かった。

 「ごゆっくりどうぞ?」

 「あ!織斑君!」

 「何です?」

 用事が済んだと、立ち去ろうとした一夏を虚が慌てて制止した。

 「バナナはおやつに含まれません!」

 『いやいやいや、虚さんそれは・・・』

 小学生の遠足ではあるまいしと、弾は電話の向こう側で笑ったのだが・・・。

 「嘘だァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 カロリーが低くエネルギーの補給ができるバナナを絶たれ、一夏はダアァァァンッと倒れ込んだ。

 「「「」」」

 その様子に、居合わせた全員が目を丸くした。

 

 

 

 「で、また買い物か・・・。」

 そして週末。またしても一夏は買い物に付き合わされていた。

 「一夏・・・間違っても壊物はするなよ?」

 「も、もちろんだヨ;」

 「ふっふーん?だといいが?」

 一夏が目を逸らしたので、箒はうさんくさそうに彼を見た。

 「・・・・・ちょっと天気がいいので、密売人を殺しに・・・。」

 (((逃げた)))

 うっかりしたらやりかねないと、一夏は別行動を選んだ。

 と言っても、特に買いたいものがあるわけでなし、適当に店内を見て回る。

 「あら、ご機嫌いかがですぅ?織斑一夏君。」

 オイル売り場に差し掛かった、まさにその瞬間。一夏は声を掛けられ振り向いた。

 「ご機嫌だ。目の前のサイボーグが消えっちまえば。」

 流石にドンパチできない。一夏は不満を垂れる。

 「あら~つれないわねぇ」

 「すっげぇ筋肉、今も鍛えてんの?」

 「それは筋肉って言わないわよ。」

 「そいつは残念。」

 無理矢理に話題変更を狙ったが、それ故に続かない。

 「今日はオイルを買いに来ただけ。敵対する気はないわ。」

 「オイル。あんたの作動油か?」

 「そうよ。新しい腕はよかったのだけど、どうも馴染んでな・・・違うわよ!」

 この売り場にあるのは美容用のもので、断じてマシン油ではない。

 「・・・織斑千冬には気を付けなさい、倉持技研にも。」

 これ以上いたら、何をされるか分からない。京都でのことがフラッシュバックしたスコールは、手早く商品をかごに入れる。

 「それ脅してんの?」

 「さてどうかしら?」

 「・・・」

 そう言うと、スコールはさっさと会計を済まして去って行った。




~没Part~
「やったぁ!クーちゃんの紅茶だぁ!」
「イッショケンメイ、100パセント、シマシタ」
「!?」
A 誰が気づくってんだこんなネタ
B 最近はソ連でもベースボールが流行ってる
A それとこれとじゃ話が別だァ・・・

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