IS《ISの帝王:小説版》   作:只の・A・カカシです

61 / 72
よし、じゃ俺の腹筋と交換だ。いい筋肉だぜこりゃあ。組合員・語録の結晶、1000ドルもするんだ。



第61話 見たら絶対その気になるって

 一夏たち一行が昼食を摂っているハンバーガー屋の外にて、ちょっとした騒ぎが起きようとしていた。

 「向こうにIS学園の制服を着た大男がいるんだけど、彼、一般人じゃないわ。」

 柱の陰から様子をうかがっている女は、携帯を使って仲間に連絡を入れる。

 「ビックス、いるの?ビックス。頭のいかれた大男がいる。一人では手に負えん。」

 「!!すぐ行くわ。・・・かっこいいとこ見ましょう!」

 と言っても、すぐそばにいるので携帯を使う意味は全く以てない。

 「全女性客へ。3階で非常事態よ。敵機来襲、大型機だ。髪は茶、筋肉モリモリマッチョマンの変態よ!」

 それは一斉攻撃開始の合図であった。

 

 その存在に気が付きながらも、髪は茶、筋肉モリモリマッチョマンの変態は動くことなく相手の出方を見ていた。

 もっと厳密に言うなら、逃げ場を失って逃げるに逃げられないでいた。

 「女を引っ掛けるにはいい場所だな。かすがゴロゴロして・・・もう一人増えたぜ。じゃあ、行くか。」

 ろくでもないのばかりが集まってきたと、マッチョマンは立ち上がる。

 まごついている内に、脱出の方法は突破のみとなっていた。

 「ここで何をしてる?」

 スススーッと一人が寄ってきた。

 「友人を待ってる。」

 「一緒に生きましょ!・・・えいっ!うわっ!?」

 「こいつっ!きゃぁっ!」

 ついに戦いの火ぶたが切って落とされた。

 

 「何の騒ぎかしら?」

 その騒ぎは、ハンバーガ屋の中にいた楯無にも伝わっていた。

 「・・・あれは・・・一夏くん!?」

 「俺はここにいる。」

 彼女は外を見て、そこにいた人物を見るなり驚いたが、横にいる本人に言われて冷静さを取り戻す。

 「・・・・・あれは・・・誰?」

 「篠ノ之さん辺りかしら?」

 更識姉妹が予想を立てる。

 「俺の知り合いになまくらはいない。」

 仮にそうだとしたら、あの程度を粉砕できないはずはないと一夏は一蹴。

 「ハーレムでも作りたいペテン師が、俺の格好をしてウロついてんだろ。」

 「あぁ、道理で・・・。」

 「圧死しそうなのだ~。」

 確かにあれは偽物だ。それも彼女らの知らぬ他人の。

 「裏切りに陰謀、セックスに決闘、錯乱に幽霊、そして最後には皆が死に果てる。」

 「フッフゥーン、だと良いけど?」

 一夏が悪態をつくように言い放ち、楯無がそれを少しだけ冷やかした。少しだけだったので、今回は見逃してもらえたようだ。

 その後は全員ペテン師の存在など忘れたようで、話に没頭していた。

 それからしばらくして、ぴんPON☆ぱんPOON☆と変なチャイムが鳴った。

 『間もなく屋外展示場でヒーローショー〈アイアンガイ〉を開始します。』

 そのチャイムに続いて、館内で行われる催しの案内がされる。

 「一夏、行こう!・・・OK?」

 一秒と間をおかず、簪が興味を示し、そして見に行こうと一夏を誘う。

 「簪ちゃん!?もしかしなくても最初からこれが目的だったのね!嘘つき!買い物だの食事会だの、あれは私たちを引っ張り出すための口実だったの!?!?」

 そんな予定は聞いていないと、楯無が猛抗議する。

 「いやぁ、その通り。それが悪いのか?」

 「まさか一夏君、グルなの?!」

 あの一夏が反論しない。それはおかしい。

 「いやぁ、その通り。それが悪いのか?」

 楯無の懸念は現実のものとなる。

 「ハッ!まさか本音ちゃんも?」

 「これは~最高のイベントなのだ~!見逃す手はないよ~。今から行って、いい席をとるのだ~!」

 本音の聞く耳は既に何処かへ言ってしまったようで、楯無の問いかけにはピクリとも反応することなく歩き出す

 簪と本音たっての希望に、四人はアクションガイの会場に向かう。

 四人が会場に着いたのはショー開始の五分前で、既に客席は子連れの家族でいっぱいだった。

 「みんなー元気かな?」

 アクションショーの開始時間になると、司会のお姉さんがそう問いかけ、返事を待っていることをアピールするために耳を傾ける。

 「「「はーい!」」」

 「それじゃあ呼んでみよう!アイアンガーイ!」

 元気な子ども達の声に、司会のお姉さんは満足そうに劇を進行する。

 「「「アイアンガーイ!」」」

 ひときわ大きな声が会場に響く。勿論、簪の声である。

 「ちびっ子のみんな!待たせたなぁ!俺がアイアンガイだ!」

 「操り人形だよ!」

 みんなのヒーローの登場。そして、それと同時に低い声質の、これぞ悪役というイメージのドスの利いた声が会場に流れる。

 「早速、敵さんのお出ましか。全く、ヒーローには休日がない。お前暦は持ってねえのか?ユダヤ教の休日だ。」

 休日にまで仕事をするなんて、随分とブラックな職場だなと自分のことを棚に上げてアイアンガイが皮肉る。

 「ガッハッハッ!アイアンガイ!君の今のような反応が命取りになる!」

 「そんな・・・マスターX!殺されたんじゃ・・・・・。」

 セットの背面の垂れ幕の切れ目から現れたマスターX。アイアンガイは倒した相手がまた出て来たことに驚きを隠せない。

 「残念だったなぁ・・・トリックだよ。てめぇに舞台を追い出されてからずーっと復讐を想い続けてきた。よぉやくその日がやって来た・・・・。長かったぜ!」

 武器を構えるマスターX。

 「来やがれ!どうした?やれよ!殺せ!どうした、こいよ!俺はここだ!さぁ殺せ!殺せ、殺してみろ!どうした!ここだと言ってるだろうが!どうした!さぁ殺せ!殺してみろ!」

 この間と同じように倒してやる。アイアンガイが胸を叩きながら挑発を行う、と。

 「フハハハハハハッ!これを見ても、それが言えるか?」

 「おのれマスターX!卑怯だぞ!」

 いつの間にやらマスターXは人質を捕らえていた。そしてその人質は本音であった。因みに、簪は羨ましそうに見ていた。

 「「「ブー!ブー!」」」

 会場から、卑怯な手段をとるマスターXにブーイングが起こる。

 「静まれ静間れぇい!この紋所が――」

 「おい!」

 懐から何かを取り出そうとしたので、慌ててアイアンガイが圧力をかける。

 「ん、ゲフンゲフン!俺は悪の幹部だ!アイアンガイ、お前自分のあだ名知ってるか?ついこの間までは鉄のアゴだったが、今じゃ鋼鉄マンだってよ。あっちの方も鋼鉄並か?」

 軽く咳をして失言を誤魔化した後、マスターXは人質を盾にして、無抵抗のアイアンガイに殴りかかった。

 「グアァ!」

 もろにパンチを受け、吹っ飛んでいくアイアンガイ。

 「アイアンガァイ、腕はどんなだ?」

 「こっちへ来て確かめろ。」

 セットの物陰に身を隠しつつ、アイアンガイはマスターXと話しをする。

 「いや結構。遠慮さしてもらうぜ。・・・アイアンガイ、顔出してみろ。一発で、眉間をぶち抜いてやる。古い付き合いだ、苦しませたかねぇ」

 マスターXが、アイアンガイが隠れているセットに向け玩具の銃を構えた。

 「マスターX、その子達は関係ない、放してやれ!目的は俺だろう!」

 「ヘハハハハハハ・・・・・!」

 以前やられた経験から、マスターXは簡単には乗ってこない。

 「右腕をやられた、お前でも勝てる。・・・来いよマスターX。銃なんか捨てて、かかってこい!楽に殺しちゃつまらんだろう。ナイフを突き立て、俺が苦しみもがいて、死んでいく様を見るのが望みだったんだろう。そうじゃないのかマスターX。」

 「てめぇを殺してやる!」

 しかし、弱り切った宿敵にそこまで挑発されては、悪として応じぬわけにいかない。

 「さぁ、子供達を放せ、一対一だ。楽しみをふいにしたくはないだろう。・・・・・来いよマスターX。怖いのか?」

 「ぶっ殺してやる!」

 「いやぁっ!」

 マスターXが人質(本音)を放り投げるように解放すると、観客が代わりに奇声を上げた。

 「ガキなんて必要ねぇ!へへへへっ」

 「キャー!」

 狂い始めたマスターXに観客から更なる奇声が上がる。

 「ガキどもにはもう用はねぇ!へへへへっ・・・ハジキも必要ねぇや、へへへへっ・・・・・誰がてめぇなんか、てめぇなんか怖かねぇ!・・・野郎、ぶっ殺してやぁぁる!!!」

 「みんなー!ヒーローに力をあげて!大きな声で呼んでみましょう!せーの!」

 みんなで応援してピンチのアイアンガイを励ましましょうと、司会のお姉さんが呼びかける。

 「コマンドー!」

 だが、それが本音のねらいであった。

 反射的に一夏は立ち上がった。それも\デェェェェェェェェェェン!!!/と効果音が聞こえるほどに。

 「本音!ハメやがったな!?このクソッタレ!嘘つきみぃ!ヒーローだ主役だの人質だの、あれは俺を引っ張り出すための口実か!?」

 「そうなのだー!」

 最高席と最前席の間での応酬。

 「あれは・・・・・織斑一夏!」

 「嘘!それならそっちの方が良いわ!」

 誰もが一夏の存在に気が付いた。

 「断る。」

 すぐに一夏は腰を下ろす。

 「ルール1、契約厳守、か。」

 どこからともなく、そんなつぶやきが聞こえてくる。

 「・・・何だこいつ。どういうこと?」

 「さぁ・・・。」

 こういう時だけ楯無に話を振る一夏。

 「さて、みんなで呼びましょう!織斑一夏~!」

 司会のお姉さんが一夏をはやし立てる。

 「やるならギャラ上乗せ。」

 「危険手当ってヤツだな。」

 そもそもギャラ貰ってないから、『上乗せ』よりも『発生』の方が正しいのだが、簪が知れっと乗っかってきたので誰も突っ込まない。

 「さあ、もう一度!織斑一夏~!」

 「イピカイエーか・・・。」

 「もう一度!織斑一夏~!」

 「俺は知らねえぞ・・・今行くよ!」

 だが司会のお姉さん含め、誰も知らなかった。一夏が暴れれば、こんなデパートぐらい一発で無に帰すことを。

 

 

 

 12月4日の夜。セシリアは偶然にも貸し切りとなっていたIS学園の大浴場でくつろいでいた。

 「ふーっ・・・。いい湯ですわ。」

 「バババンッ!」

 どこぞの曲の合いの手が入る。

 「!?・・・・・誰も居ませんわ?」

 驚き見まわしたセシリアは、しかし何も発見できない。空耳だったのか。そう思い始めたとき。

 何かを吹っ飛ばしたような、ガッシャンッという音が聞こえたかと思うと声が響いてきた。

 「待ってろケモノ()、今行くからなぁ!逃げるんじゃねぇ!サシで勝負だ! チキショウ、待てェ今すぐ行く!勝負するんだ、逃げるんじゃねぇぞ、サシの勝負だ!待ちやがれェ!」

 「一夏さん?」

 その声の主に心当たりがあったセシリアが呼びかける。

 「セシリアか!良いところにいる!シャニーが行った!」

 「お任せを!」

 次の瞬間、脱衣所と浴室とを仕切るドアを押し開けて、一匹の猫が飛び込んできた。

 待ち構えていたセシリアは素早く猫を捕まえる。

 「ニャァ?」

 そして、そのまま風呂にゴールデン・トラァイ!

 「ギニャァァァァァァァァァッ!!!」

 悲鳴を上げるシャニー。

 「いやぁ、助かった。」

 「後でお連れしますわ!」

 引っかかれない絶妙な距離を保って、セシリアは風呂を満喫したのだった。

 

 それから一時間後。一夏の部屋にセシリアが訪ねてきた。

 「フミャァ・・・。」

 彼女の腕には、赤くのぼせた(?)白猫が一匹。

 「この茹でダコは何だ?」

 「知らない方が良いですわ。」

 「」

 いったいどれだけお湯に浸けていたんだ。さすがの位置かもドン引きする。

 「ところで一夏さん。お暇でしたらここでも如何です?」

 「いいね、行くとしよう。」

 ただまあ、二人とも風呂場に逃げ込んだ方が悪いというスタンスなので、シャニーはのぼせたまま放っておかれた。

 

 

 

 次の週の週末になった。

 「セシリアのヤツ、遅いな。」

 待ち合わせ場所で待ちぼうけを食っていた一夏は、あたりを見回して彼女が来ていないかを探す。

 「お待たせしましたわ!」

 さらに待つこと数分、ようやくセシリアが到着した。

 「なあ、友情を邪魔したくはないが、20分遅れてる。」

 「道が混んでいましてよ。」

 「フッフゥーン?だといいがぁ?」

 少なくとも、一夏が来た時には空いていた。本当は化粧や服選びをしていて遅れた照れ隠しじゃないかと、一夏は疑いの目を向けながらも歩き出した。

 

 そんな二人の背後を、ついていく一行がいた。

 「見た目はオトコ、心もオト娘!これが、ザ・名探偵『シャルロック・ホームズ』の真髄だ!!三輪車に轢かれても、チェアーから落ちてもビクともしねえ!PON☆骨ラファール乗りはお子様設計!!愛する友を救うため、一人、敵のアジトに忍び込む。その賢さ、もうどうにも止まらん!全員まとめてかかってこんかい!!これぞ豪快スーパークイズアクション!!」

 優等生のシャルロットは、渡された台本のセリフを完璧に暗記して一字一句違わず完璧に読み上げた。

 「名探偵しゃーろt・・・しゃるるく・・・あれ?」

 他方、シャルロットに続けてナレーションぽく名前を言おうとした簪は、どうにも名前が出てこない様子。

 「シャルロック・ホームズだよ。」

 すかさずフォローが入る。

 「名探偵シャルロック・ホームズ・・・・・あなたは、一体何だ?」

 「アナタハイッタイ・・・・・ナンダ・・・?探偵さ・・・じゃないよ!って言うか、なんで僕たちこんなことしてるの?!」

 もうつまらない茶番に付き合わされるものか、そう心に誓ったのは昨日。しかし今日もまた、シャルロットはつまらない茶番に付き合わされていた。

 「トレーニングだ。」

 「トレーニング?どこが?」

 こんなの遊んでいるだけだよと、ラウラに聞き返す。

 「この人混みの中から大佐を見失わず、見つからないように尾行するトレーニングだ!」

 「」

 IS学園の中にいても追いかけきれないのに、どして屋外で追いかけようという考えに至るのか。シャルロットは言葉を失う。

 「さあ、行こう。つまらん茶番のために見失った。後は更識姉がどこまで行けてるか、だが。」

 「そ、ソウデスカー・・・・・。」

 つまらない茶番という自覚はあるんだな。それを認識したシャルロットは、今日もまた『二度とつまらない茶番に付き合わされるものか!』と心に誓ったのだった。

 




腹筋に一発撃ち込んで、(ネットの)海にドボンだ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。