IS《ISの帝王:小説版》 作:只の・A・カカシです
「疲れさ」
「投稿が始まるまで寝てる気だろう」
「っく、強い・・・。」
デュノア社のアリーナで行われたラファールリヴァイブとコスモスの対決は、誰の目にも勝敗が明らかな形で終了した。
「
「分かった!分かった!リヴァイヴに乗ることを認める。」
終わってみれば、というか戦闘が始まったかどうかも怪しいほどに短時間でシャルロットが勝利した。
「結構。よろしく。」
シャルロットはそう言ってデュノア社の社長、あるいは父親の前から歩き去る。
「で?お前はいつまで寝てるんだ?オータ・・・ゲフンゲフン。ショートニング・ショートケーキ。・・・?」
シャルロットにてきぱきぽきぽきとやっつけられたISのパイロットは、未だにアリーナの中央でくたばっている。
「・・・一夏。それ、どっちもお菓子。」
そんな甘いお菓子みたいな名前なわけがない。一夏がわざと言っていることは分かっても、簪は突っ込みを入れずにはいられなかった。
「あぁ、それは分かってる。で、マジでこいつの名前なんだっけ?」
「ショッパイナ・ショッボイナだ。違うか大佐。」
耳に残っていたイントネーションと一夏の言った言葉から名前を推測して、ラウラが名前を考え出す。
「ショコラデ・ショコラータだ!」
馬鹿にされたことに怒り勢いよく起き上がると、凄まじい剣幕で一夏たちを怒鳴りつける。
「黙ってろオータム!」
名前を隠そうとしていた、あの努力はどこへやら。間髪を入れず一夏が言い返したことで全てが無駄になった。
「オータム?もう12月だよ?」
「今度はクリスマスにでもするか?」
何も知らない社長が、一夏に問いかける。それに悪乗りしてラウラが付け足す。
「あぁ?!手前ら人の名前を出世魚みたいに――」
「真ん中に寝てなきゃ。真ん中に。」
敗者は敗者らしく、やられた場所で寝ていないとオータムを押し返す一夏。
「私は真剣にいってるからな?」
「何?もう良いじゃない。」
負けたのだから潔く認めろと説得されるのだが・・・。
「クソが!私も久々頑張ったのに、なんだよ!いい役持っていきやがって!!」
「吹雪OKね?それでは、オータムさん、どうぞ!」
往生際の悪さにしびれを切らした一夏は、彼女に現実を見せてやることにした。
「ヤロー、ぶっ殺っしゃー!!」
「(本性が)見えたぞー!待ちやがれ!」
向かってくる相手に待ちやがれというのはいかがなものか。それでも、チェーンガンをぶっぱなすことだけは忘れない
「へっ!ガキの動きなんざ単調なんだよ!この最新鋭機は頂いた!」
これまで散々やられてきたことを忘れたのか、弾幕をいとも容易く避けられたことに気が付かない。
「なにか忘れてません、か?」
「あ?忘れるわけがっ?!何だ?!身動きが!!」
用意されていた罠に誘導されたと気が付いたのは、罠にはまってからのことだった。
「見ろ、蜘蛛が自分の糸に絡まってら。」
「・・・・・ダサイ。」
必死に笑いをこらえながら見てくる一夏。
「手前ェ!!何だこれは!この私をこんな安物の糸で捕捉しやがってぇ!」
「お前の忘れ物だ。受け入れろ。」
その恥ずかしさから顔を真っ赤にして怒るオータムは、何とか逃げ出そうと必死にもがいて一夏たちに爆笑される。
「な、何と言うことだ。私はまた娘を危険にさらしてしまったのか!」
というその横で、デュノア社の社長は顔を真っ青にしていた。
「娘を危険に?社長、お前、オータムの親だったのか。」
まさかテロリストの親父が大企業の社長。掴んでいなかった情報に一夏は驚く。
「違う!あんな出世魚は知らん!私の娘はシャルロットだ。」
まあ、ありもしない情報なので掴みようがないわけなのだが。
「なら、大丈夫だ。今の情けない格好を見ろ。おかげで安全だろ?」
「まぁ・・・・・テロリストからはな。」
それよりお前の方が胡散臭いと社長に睨まれる始末。
「疑ってるのか?」
「実を言うと・・・あれは何だ!!」
その時、社長は視界の端で落下してくる物体を捉えた。
「あ?クロエだ。遠くから見てることしか出来ないチキン野郎。」
構ってやるまでもないと、一夏は切って捨てる。
「こっちに向かっているように見えるが?」
そんなことくらい一夏は承知済みだ。
「大佐、命中させておきました。」
「ご苦労。」
ラウラと一夏が短く会話を交わした直後、クロエがシールドバリアーを運動エネルギーだけでぶち破る。
「あ、切れた。」
そしてオータムへ命中すると、彼女を捉えていた糸が切れる。そして、エネルギー保存の法則に従い打ち出された。
「(糸の)予備がある・・・あ、なかった。」
ポケットを探ってみた一夏だが、以前集めた分は今の分が最後であった。
「そ、それどころじゃない!避けろ、避けるんだ!!シャルロット!」
などとのんきに話しているその横で、やはり社長は慌てふためいている。
「ん~、そいつはどうかな?」
直後、オータムがシャルロットに命中した。
「シャルロット!!」
社長が叫ぶ。しかし彼は知らない。シャルロットが知らないうちに強くなっているということを。
「もしかして?!」
「私達!!」
「「入れ替わって・・・ないね。」」
二人が何に期待したのか知らないが、ちゃんと自分の体のままだったようだ。
「ないんかい!って、あれ?」
「あ、何かISもらっちゃった。」
ただISに関しては、どういうわけかオータムのコスモスはシャルロットに吸収されていた。シャルロット、まさかの一人勝ちである。
「あぁ?!何が起きてやがる?!」
「何が起こっている!?」
本当はこっちが親子だろと言いたくなるほどのハモリで、社長とオータムが叫ぶ。
「コアが融合したんだろ?」
一夏は特に驚くことはない。ISは分かってないことの方が多いから、何でもありというのが彼の認識だからだ。
「クソが!こういう時は逃げる!」
アラクネを展開するとそそくさとオータムが逃げていく。
「おい、逃げられるぞ!」
「ほっとけあんなもん。それよりクロエだ。」
テロリストをみすみす逃すのかという社長と、別に捕まえるまでもない相手と思っている一夏たちには温度差が随分とあった。
「おぅ、
その頃、ラウラはクロエと対峙していた。
「初めまして、完成品の『付き落とし子』。私はYOU。YOUになれなかった、もう一人のYOU。」
ルー語のような何かを使って話すクロエ。
「何だって?」
そこへ一夏が到着する。
「差し詰め、誰かさんの変換ミスさ。」
「誰かって誰だ。」
一夏とラウラがつまらないことで盛り上がっていると、クロエがしびれを切らした。
「そこの男。」
「社長、呼ばれてる。」
話を切られたくなかったのか、わかっていながらも近くにいた社長を巻き込む。
「違う、隣の男。」
「だってよ、技術者。」
「まぁじかよぉ!」
まだ近くにいたのかと言われなくもないが、ちゃっかり同行していた。
「・・・織斑一夏。YOU。」
これは不毛なことが続くと見て、クロエは名指しで呼ぶことにした。
「俺に何の用だ?」
「YOUは完全なるイレギュラー。ママのため・・・・・・オエェッ!我がマスターのために消えてもらいます。」
うっかり変な言葉を発してしまい、吐き気を催したクロエ。
「 」
「?」
「大佐、見事な消え方でした。私から学んだのかな?」
突然、一夏は口パクを始めた。その意味が分からずクロエが首を傾げていると、ラウラが説明をした。流石は姉妹。
「YOU達が見ているのは幻影。」
得意げに告げた筈だったが、一夏達に特に変化がない。
「幻影?奇遇だな。俺達もだ。」
「・・・?!?!」
そして返ってきた事実に理解が遅れた。
「二つに一つだ、今すぐ立ち去れば何も無かった事にする。嫌ならここを爆破して帰る!丁度ティータイムだ!」
「やめてくれい!」
一夏達の破壊力をまざまざと見せつけられた社長は、彼がでまかせで言っているわけでないことは分かった。
一夏に睨まれ、クロエはすぐに消えていく。
「クロエは帰った。俺達も帰ろう。」
直後、一緒に戻ろうと言い出した一夏はスーッと消滅し、少ししてラウラも同様に消えていった。
翌日、一夏達はイギリスへと飛ぶためにパリの空港へと来ていた。
「世話になったな。」
「小僧に口の利き方を教えてやる。」
執事の男に一夏が言うと、彼は不満そうに言い返してきた。
「私もそう思うな。世話んなったな!」
一瞬、執事の肩を持つ振りをしてラウラだったが、一字一句一夏の言葉をなぞった。
「学ばん小娘が。」
口元をヒクつかせ、今にも爆発せんというオーラを醸し出す。
「じゃあ、行ってきます。」
「お嬢様、お気を付けて。」
それでもシャルロットが声を掛けると、落ち着いた声と上品なお辞儀をするのだから大したものだ。
「おぉイエイエイエイエふざけんなこんなのアリかよマジで契約違反だ。辞書にマーカ線引いて挨拶したのに、こんな塩対応しやがって!ピザのトッピングにエスカルゴ頼んだらデンデンムシのっけてきたようなモンさ!サギだよサギ!」
「・・・何を言ってるんだこの男は?」
「あは、あははは・・・。特に意味のない、挨拶みたいなものだから気にしない方がいいかも?」
いよいよ青筋の浮かんできた執事を、シャルロットがなだめる。それは一夏のみを案じたからではない。執事の自信を喪失させないためだ。
「貴公、織斑一夏と言ったな?ご学友とは言え、お嬢様にバカが移っては困る。ささ!離れて、離れ・・・離れ!離れェェェェェェッ!」
しかしシャルロットの心遣いもむなしく、執事は一夏へと掴みかかった。
「おじいさん、似合わないことはおよしなさい。指を脱臼するのが落ちだ。」
当然、織斑筋の存在など知る由もない執事は、ビクともしない一夏を何とか動かそうと向きになった。
そして一夏の心配を超えて肩を脱臼した。
「ほら、言わんこっちゃない。」
呆れた顔で一夏は呟いた。
「一つ伝えとくね。一夏はバカじゃないから。ちょっと織斑筋な所があるだけで。」
どう違うのかは教えない。肩の脱臼でそれを痛感したと信じて。
「おっと、飛行機の時間だ。じゃあ、行くぞ。」
「あぁっつ!何だここは!北上してるのにパリより暑い!」
12月のイギリスの空港に降り立ち、一夏が最初に言った言葉がこれだった。
「あぁ?!手前正気か?馬鹿野郎!何言ってんだ!てめえ正気か!死にてえのかてめえ!どっかし天丼!てめえ何言ってんか分かってんのかい!」
そんな一夏に、もこもこの格好をした女性が掴みかかる。
「気温について感想を言ったまで。違うか?」
驚くこともなく淡々と言い返す。
「あのー、一夏さん。こちらの方は?」
到着ロビーで出迎えてくれたセシリアが、見慣れぬ来邦者に目を丸くする。
「バカでちょっぴり大ドジな、クリスマスだ。」
「クリスマス?もう12月だよ?」
「もうじきクリスマスじゃないか!」
勝手に人の名前で遊び始めた一夏達。
「ウルセえ!手前ら、このオータム様を何だと思ってやがる!!」
耐えかねて、公共の場で大声を出した物だから視線を集めてしまった。まあ、既に一夏が随分と引き寄せてはいたが。
「複数の殺人。」
「誘拐」
「強姦」
「恐喝」
「通貨法違反」
「それに、麻薬の密売だ。」
「・・・最低。」
「テロリストだからな。いや、待て。私はそこまでワルじゃない。」
身に覚えがあるものもいくつかあったが、これ見よがしに好き勝手言われたものもあったのでオータムは言い返す。
「ISを奪うってのは、重罪なんだが?」
すかさず一夏が言い返した。
「ISぐらい・・・いや、そうか。お前達といると、どうも感覚が・・・・・。」
随分と毒されていると言うことにオータムは気が付き、頭を振ってそれを記憶から追い出そうとする。
「で、一夏さん。何故この方を連れて?」
普通なら退場頂くか、そこら辺に放流する。わざわざ同行を許すとは、一体どういう心境の変化なのか、セシリアは気になった。
「可哀想なことにな、俺達が放流してやったあとすぐにフランスのIS部隊に囲まれてたんだ。」
「おお~、可哀想に~w」
わざとらしく高笑いをするセシリアの姿は、どちらかというと悪役の令嬢だった。
「何だとこのクソガキ・・・!」
オータムはこめかみに青筋を浮かべる。恐らく、セシリア相手なら勝てると思ったのだろう。しかし。
「クソガキってどなた?私のこと???」
「全く容赦のない・・・」
半年前の彼女ならいざ知らず、一夏達とつるんでいたために、彼女は大幅にパワーアップしており、一瞬にしてオータムの意識を刈り取った。
「最近にしては早い投稿だな」
「早いと役に立たねえのか?」
「準備不足はミートバイバイの元だ」