IS《ISの帝王:小説版》 作:只の・A・カカシです
読 名作と、頭の悪い作品
作 そいつは深いな
「遅いぞ!織斑一夏!」
一夏が正門に到着したとき、すでにアイリスはそこで待っていた。
「道が空いてた。」
「ならば尚更早く来ぬか!」
「行こう行こう、いつも先を急ぐ。そしてある日死ぬ。たまには足を止めて人生の楽しみを味わうべきだ。」
どんな言い訳だと怒るアイリスをなだめるように一夏は語りかける。
「そうかも知れぬが、そのせいでわらわは何度も生徒に間違われたのじゃぞ!何度も!それも中学生じゃと!」
しかし彼女の本当の怒りは別の原因であった。
「お前の国がどうかは知らんが、日本じゃ一四歳は中学生だ。間違われたくないならドレスを着とくんだな。」
間違っていないことを言われて怒るくらいなら、最初からそう見えない格好をするべきと指摘する。
「わらわを馬鹿にするか!死刑にするぞ!」
「やってみろ。返り討ちにしてやる。」
アイリスがIS学園に来てから何日かたったが、すでにこのやり取りもおなじみの物となっていた。
「ふん、嫌みなヤツじゃ!早く車を回せ!」
「OK!」
威勢よく返事をすると、一夏は近くに駐車されていた車を持ち上げ指の上で回し始めた。
「」
驚きのあまり絶句するアイリス。
「喜べ、いつもより速く回してるんだ。」
「お主、人間か?」
あまりにも平然としているので、アイリスは一夏が機械なのではないかと疑い始める。
「おうともよ。それがどうした。」
「もうよい。歩いて行くぞ。」
これ以上見ていたら頭がおかしくなるかもしれない。そんな気がして、アイリスは歩き出した。
「ところで、何と呼べば言い。」
歩き出してすぐ、一夏はそれが気になった。母国と遠く離れた日本とは言え、来日したときにメディアが騒いでいたので世間に名は広く知られている。何人が来ようと跳ね返せるのは間違いのないことだが、面倒なことに変わりはない。
「名前か?いつも姿を隠すときは、アリスと名乗っておる。そう呼べ。」
「あなたは稲妻の~。」
「???」
突然、一夏が歌い始めた。アイリスはそのギャップに目を丸くする。
「何でもない、気にするな・・・。」
一夏は歩く速さを上げた。
「この城は何じゃ?今からお主が攻め落とすのか?」
ショッピングモールに到着する。その大きさを見てアイリスは驚いていた。
「バカ言え。ここはショッピングモールだ。服を買うならレゾナンス。新作!人気作!!!なぁーんでも揃ってる。」
見上げる彼女に、どこの回しもんだと聞きたくなるようなことを言う一夏。
「そうか。随分と大きな施設じゃな・・・。」
「バカ言え。IS学園はもっと大きい。」
そういう意味で言ったわけではないのだけれど、突っ込みを入れる気力もなかったので「そうか」とだけ返す。
「ところでじゃが、わらわはそばというものを食べてみたいのじゃ。」
まだ昼までには時間があるが、歩いたことで背中と入れ替わるほどおなかが空いていた。
「
「随分と気が利くではないか。褒めて使わすぞ。」
なぜそこまで気が利いているのか、アイリスが気にかけることはなかった。
恐らくそれは、普段から身の回りのあれこれを、周囲が先んじて整えてくれる生活を送っているからだろう。
レゾナンスへ向け歩き出す。しかし、胸を張って歩いたために重心が後ろにあった。
故に、バランスを崩し後方へ倒れる。
「転けるなよ。脚を痛める。」
それを一夏が受け止めた。
「お主、心があったのじゃな。」
「そうみたいだな。」
力量に不足がないか、時間があるときは手出しをしないだけで、危なければそれなりに手出しをする。が、頼りにされても困るので適当に答えた。
蕎麦屋に入り、注文を済ませた二人。
お昼前ということもあり、注文してほとんど待ち時間もなく料理が出てきた。
「これがわらわの待ちわびた天ざるそばか!」
配膳されたそれを見て目を輝かせるアイリス。
「違ぁう!厳選素材の天ぷらと繋ぎなしのグッチョ美味いそばだぁ。激うまだでぇ!」
場に似合わないテンションでそれを言って、そして去っていった。
「なんじゃ、あの店員。」
目を丸くするアイリス。
「気にするな。」
一方、一夏は相手にしていなかった。
「それよりお主、世界に興味はないか?」
切り出す寸前に料理が来てしまったので、中途半端なタイミングで話し始めてしまう。
「世界はもう見てきた。」
随分と興味なさそうに切って捨てる一夏。
「そうか。わらわの国に興味はないか?」
「ルクーゼンブルクか?いい国だった。十年前までは、な。」
「わらわの祖国を馬鹿にするのか?」
知らなければぜひ一度来いと誘うつもりだったが、つまらなそうに返されてアイリスはムッとする。
「違う。」
そういったかと思うと、一夏は近くにいた店員の襟を掴んで引き倒した。
「こいつが滅茶苦茶にしたからだ。どうした、やることなくなってこんな所でバイトか?」
「ひぃ!い、いっくん。こ、これは!」
その店員は先ほど変なことを言ってきた店員で、アイリスは見覚えがあった。
「篠ノ之博士ではないか!久しいのう!」
「は?あんた誰?興味ないんですけど。勝手に話しに入ってこないでくれる。」
アイリスの中で何かが切れた。
「・・・お主には今後一切、時結晶は差し出さぬからな。」
「ひっどぉおい!フローレンスが虐めるよう!」
アイリスの頭に血が上ったことが見えたので、騒ぎ出す前にクールダウンさせる。
「気にするな。こいつは名前なんて覚えたことがない。自分のも、な。」
「そうか。」
一夏に言われればそんな気がすると、怒りが収まる。
「ねえ、束さんが呼んだんだから返事をしなよ!」
が、デリカシーの欠片もないので束はガソリンをぶちまけた。
「死刑にするぞ!」
「できっこないのさ!私はオーバースペックだからさ。」
いつものノリで調子に乗ったのだろう。目の前に一夏が居ることも忘れて。
「織斑一夏!」
「お任せを!」
「わぁ!!なしなし!!謝るよぉう!」
「分かったら店の邪魔をする前に帰れ!」
頭蓋骨からメリメリという音が立つほどに握られて、束はすたこらさっさと退散していった。
「折角の美味いそばがのびちまう。早いとこ喰おう。」
「そうじゃな。」
悟りの境地に達したアイリスは、条件反射でそう返した。
一足先に、一夏がそばを啜った。
「そうやって音を立てて食べるのか?」
食べ方を見たアイリスが問いかける。
「あぁ、そうだ。日本じゃ、イタリアン以外の麺はこうやって食べる。」
「う・・・むむむ・・・・・。難しい。」
挑戦してみるアイリスだったが、初めての食べ方のため上手く啜ることが出来ない。
「気にするな。食べ方なんて、美味く食えて人に不快な思いさえさせなければ何だっていい。」
「なるほど。」
一夏の助け船に乗り、アイリスは箸で蕎をさながらパスタのようにクルクルと巻き取って口に運ぶ。
「美味い!ミヤビじゃなあ!」
「それは良かった。」
その後、黙々と蕎を食べる二人。
「・・・ん?わらわは目が回・・・。」
粗方食べ終わったとき、突然アイリスのろれつが回らなくなった。そしてベンチタイプの椅子に倒れ込んでしまう。
「・・・。」
一夏はアイリスが完全に眠ったことを確認する。
そして店員の様子を窺うと、一夏は倒れた振りをする。
「お客様、大丈夫ですか?お休みされるなら、どうぞこちらに。」
不審な店員により、二人は運び去られた。いや、自らのアジトに一夏を運び入れてしまったと言うべきだ。
薄暗い部屋の中で、アイリスは目を覚ました。
「う・・・ここは?」
覚醒しきらない意識のまま周囲を見回す。
「お目覚めですか?王女殿下。」
声を掛けられそちらを見る。
「おぬし、何をしておる。」
そこには召使いの一人が立っていた。アイリスは彼女の行動の意図を図りかねる。
「あなたには人質になってもらいます。利用価値が大いにありますからね。」
「どうする気じゃ?」
「心配ご無用です。どうでも良くなりますから。今から、ね。」
カッと頭に血が上る。それでアイリスの意識はハッキリと目覚めた。
「見くびられたものじゃ。最後に三秒だけ時間をくれてやる。」
人差し指、中指、薬指の三本を立ててた。
「?」
その意味を理解しかねて、召使いは首を傾げる。
「神へのお祈りは済ませたの?では・・・・・参れ!『セブンス・プリンス』!」
光の粒子とともにアイリスがISを展開する。
「あの世で懺悔するがよいぞ!」
声高らかに宣言し、召使いへと飛びかかる。
「あなたがね。」
驚いた表情さえ見せず、召使いはそう言い放つ。
「?!」
ISを持っていることを知りながら、それを奪っていなかった時点で気が付くべきであった。何かを仕組んでいると。
アイリスは急に体の自由が利かなくなり、勢いそのままに倒れ込んだ。
「神経毒か!!おのれえぇぇぇぇぇ!」
「今からあなたのお気に入りの執事を殺してあげる。目の前でね!連れてこい!」
あざ笑うような表情を見せる召使い。アイリスの怒りは頂点に達するも、体は言うことを聞かない。
「遅いじゃないか。待ちくたびれたぞ!」
だが、その声を聞いた途端にその感情は綺麗さっぱりなくなった。
「お仲間も寝ちまった。」
そう言いながら、わざとらしく引き摺ってきた人間を彼女の前に投げて寄越した。
「な!貴様、眠っていたはずじゃ!」
先ほどまでの余裕が嘘のように動揺を見せる召使い。
「残念だったな、トリックだよ。」
形勢が逆転した瞬間だ。
「一夏!気を付けるのじゃ!こやつら毒を!」
「黙れ、裸の王女。さて織斑一夏か。私らだけでケリ付けようじゃないか。どうだおい、ガチの勝負だ。どっちがさっさと相手の背骨をへし折るか、テキパキボキバキと。なんなら、ISでも使うか?」
「いいや、必要ない。」
ISが必要ないというのは、お前には手加減をしてやらないという宣言である。
「では、参る!」
ドベキシ「オフゥイ」
学生ごときと思ったのか、愚かにも一夏の真正面から突っ込んだため一瞬でKOされてしまった。
「これで片が付いた。巻き込んでしまってすまないと思ってる。」
全て計画通りに進んだことに間違いはないが、一夏は薄情な人間ではない。
「べ、別に構わぬが・・・お主、この数を一人で?」
「まさか。来たときには寝てたのさ。」
笑ってみせる。それが一夏の優しさであった。
夕方。IS学園の寮に一夏はいた。
「なんたる失態!なんたる無様!」
机を叩き、ジブリルがヒステリックに声を荒げる。
「介錯はしてやる。いつでもいいぞ!」
そんな彼女の横に、箒はよく切れる日本刀を持って立っていた。
「その刀は何だ!」
「今から切腹するんだろ?介錯は私がしてやると言ってるんだ。」
普段の会話と何ら変わらぬ調子で恐ろしいことを言う。
「ここだけの話、篠ノ之は剣術の達人だ。」
そしてまわりも、それに気が付いている感じが強いない。
「お前のことだ!織斑一夏!貴様が付いておきながら、誘拐されるとは!」
このままでは本当に切られかねないと、ジブリルは名指しで一夏を非難する。自身の職務を全うせずにどの口が言うと、これが一夏達でなければ言っていただろう。
「だから事前に伝えたろ!スパイがいると!あぶり出して殲滅するためにはこの手が最善だ。いわゆるコラテラルダメージというものに過ぎない。軍事目的の為の致し方ない犠牲だ。」
「犠牲者は、出てないと思うけど?」
鈴が冷静に突っ込むが、一夏としてみれば巻き込んだ時点で犠牲者という扱いであった。
「王女殿下を巻き込んでおいてどの口がほざく!織斑一夏!貴様はルクーゼンブルク本国へ連れて帰り、然るべき罰を受けてもらう。」
自分のことは棚に上げて、ジブリルが立ち上がった。
「無理無理、無駄なこった!」
その時、珍しく山田先生が割り込んだ。
「真耶!貴公、IS学園の教師だろう!この生徒を引き渡せ!」
「私如きじゃ、この人達の処遇については対処出来ません。」
キッパリと要求を跳ね返す。
「上に取り合うくらい出来るだろ!」
「織斑君達に言うことを聞かせられると思いますか?」
もう何ヶ月も一緒にやって来ているので、山田先生は一夏達との接し方がある程度分かるようになっていた。
「そうやって逃げるのか!前もそうだった!逃げるというなら、今度は捕まえるまで追い続けてやる!イエェェェェェア!」
何をとち狂ったのか、襲いかかってくるジブリル。しかし山田先生は、いとも容易くそれを返り討ちにすると、眠ってしまった彼女にこう告げた。
「私だって、伊達に織斑君達と生活してるわけじゃないんですよ?」
一夏達といたがために弱く見られていた山田先生だが、それはあくまで一組内での話しである。
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