ストライクウィザーズ ~第501統合戦闘航空団補助部隊~ 作:S'sran
(さて、そろそろ来るかな)
オリッパは一度止まり、周りを確認する。
そしてすかさずペイント弾が飛んでくる。
「おっと……」
シールドで難を逃れるが、今度は違う向きから飛んでくる。
(姿が見えない……何故だ?)
発砲音から位置の特定を試みるが、すかさず移動してるのか判断できない。
オリッパは一度上昇し、高い位置から見てみるが、されど姿は見えず。
(まさか、固有魔法?)
「おいおい、北のウィザードはこの程度かい?」
「ッ! どこだ!?」
まるで天の声、エコーのような声誰かが話しかけてくる。
「俺はオリマー。お前ももう察してるだろうがこいつは俺の
明らかな挑発、オリマーは勝ちを確信している。
オリッパは静かにこぶしを震わせる。
目を閉じ、感覚を研ぎすます。
(こちら目には見えない、姿を消す固有魔法と考えていいだろう。なら……)
オリッパはホルスターに入れていた小銃を手に取る。
これもペイント弾に代えられている。
「面白れぇ……探して当ててみな」
(固有魔法には……固有魔法で対抗、だね)
オリッパが淡く、青く輝く。
風の音、波の音、遠くから聞こえる人の声、今はすべて消えて無音。
捉えるべき音は一つだけだ。
ゆっくりと時間が流れ、三分の時が経った。
(結局ハッタリ、見損なったぞ)
オリマーは銃を構え、引き金に指を重ねる。
しかし、先に発砲音が鳴る。
オリマーの腹部に黄色いペイント弾がべっとりとついていた。
徐々にオリマーの姿が浮かび上がる。
「な、なんでバレたんだ!?」
「音を一つに絞りました、引き金の音に」
暑くもないのに大量の汗を頭に浮かべるオリッパ。
固有魔法の影響なのだろうか。
「お前の固有魔法は圧倒的な聴力ってとこか? なら相手が悪かったぜ。ほれっ」
オリッパはオリマーからキャンディーを受け取る。
「勲章変わりだ、名誉撃墜賞ってとこか」
「ありがとうございます!」
オリッパは一度上に掲げてからポケットにしまう。
無性に嬉しそうだ。
(見た目のわりに恐ろしい奴だ)
オリマーはフラフラとおぼつかない飛行で戻っていった。
◇ ◇
(うぅ、散開したけど一人で相手にするなんて不安だよぉ)
些か不安が残る赤松。
相手は上官のカールスラントウィザード、自分より場数を踏んでいる。
そんな相手と渡り合えるのか、不安で仕方ない。
頭を悩ましていると早速ペイント弾が飛んでくる。
「ひえぇ!」
情けない声を出しながら逃げる、無慈悲にも弾は止まない。
これではハンターと逃げる鹿だ。
ジグザグに飛んで回避しているが、当たるのも時間の問題だ。
一度上にUターンして、逆さの状態でフーゴと対峙し、過ぎ去る。
(やっぱり手慣れてる、なんとかして回り込まないと)
すぐさま元の形に戻し、相手の後ろに着こうとする。
しかし、相手は下降して背後をとられないよう回避。
そして下から赤松を狙い撃つ。
シールドで防ぎ、一度距離をとる。
相手が止まり、こちらも止まる。
「撃て」
「へ?」
「撃たなきゃ落とされるよ。止まってる今がチャンス、さあ、早く」
何故かわからないが、チャンスを自ら作ってくれる。
これはどういうことなのか、赤松は困惑する。
当のフーゴは軍帽を取り、少しずつ近づいてくる。
赤松は銃を構えるが、指に力が入らず、引き金が引けない。
それどころか、金縛りにあったかのように動かなくなる。
(なんで!? 指が重い!)
そうしているうちにも近づいてくるフーゴ。
そして、鼻と鼻がくっつきそうな距離までやってきた。
「悪いけど、模擬戦とはいえ戦いに変わりはない。だから、君には落ちてもらうよ」
そう言ってフーゴは赤松のストライカーユニットに弾を当てる。
「さて、試合は終わっただろう。戻ろう」
赤松はフーゴに肩を借り、ゆっくり飛行して戻っていった。
◇ ◇
「お、もう終わったのか?」
「お帰り~」
先に戻っていたオリマーとカーチャに出迎えらる。
「彼を預けに来ただけ、僕はすぐ戻る。バッツ少佐が心配だし」
「あ~、少佐スタミナないもんな」
フーゴはもう一度ストライカーユニットに乗り、高度を上げて戻っていった。
「ねぇ、さっきから俯いてどうしたの?」
「……僕って臆病なのかな?」
「へ? なんで?」
「……帰ったらゆっくり話すよ」
「わかった」
赤松は静かに腰を下ろした。
これで8話は終わり。
次から少し暗い雰囲気になりそうな予感。