煌翼のユースティア   作:Re:o

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序章 第一章

序章

 

 私は消えたはず、なのにどうして……

 白く輝く部屋で、私は宙に浮いていました。

 私はカイムさんを救った後、身体を失ったはずなのに腕も足も顔も全部元通りだけど、翼がない。

 そうしてボンヤリとしていると、大きなお髭を持つお爺さんが私の前にいつの間にかに立っていました。

 ――あなたは誰ですか、私はどうして…

 お前は世界を浄化し世界と完全に溶け合おうとしていた、その瞬間を私達が捉えた。

 ――それじゃあ、カイムさん達は。

 ――お前の知っている通り、大地は浄化された状態のままだ、心配する必要はない。

 ――そう、ですか……

 その言葉を聞いた私はホッと胸を撫で下ろしました。

 天使様になってしまった私の頭には知らない知識が頭に湧きだすみたいで、この方……神さまの言うことには嘘がないと信じられました。

 

 ――私はユースティアと人間を見定めたい。

 ――ノーヴァス・アイテルの人間達は人間同士の争いにより自滅し悲惨な目に合うと考えていた。

 ――しかしそこにユースティアとあのカイムという男が現れノーヴァス・アイテルを救った。

 ――その価値を見定めたい。

 ――しかしお前の精神は人間を完全に超越することが出来ていない、不安定で移ろい易いままだ。

 ――そこで不安定なお前の力を制御させてもらった。

 そう言われ、ふと自分の指を見てみました。

 指には飾り気の無い銀の指輪がはまっていて、押さえつけられるような力を感じます。

 そして神さまは手をかざすと小さな丸い玉が現れました。

 ――私は、これからお前と人間を見極めさせてもらう。

 ――この世界はお前と人間に託せる物なのか、否か。

 

 

 

第一章

 

 最近何度も夢を見る、同じ夢の続きだ。

 小麦畑が果てまで広がる豊かな世界だ。

 そこでは大きな国によって安定した治世がなされていた。

 幼馴染で世話焼きなエリス、父の逝去で早くに領主になったリシア、酒場兼宿屋を経営しているメルト、それだけではなくたくさんの知り合いが存在している世界――

 最初は自分がこんな夢を見られるような想像力があるのかと驚いた。

 不可思議なことなど何も起きない夢だが何故かティアが居ない。

 それに引っかかっていた――

 俺を呼ぶ声が聴こえる、今日も起きる時間が来た。

 不思議な夢を見たままで居たいとも思ったが、今日もそうはいかないようだ――

 「ねぇ、カイムったら。 起きて、起きてってば。」

 体を揺すられるのが気持ち良く感じる、優しい起こし方だ。

 「……寝てるなら、こっちにも考えがあるから。」

 布団をゴソゴソと動かし何か温かく柔らかいものを肌に感じる。

 「……エリス、人の布団には入るなといつも言ってるだろ。」

 目を開けるとエリスの顔がすぐ近くでこちらを見ていた、相変わらず整った綺麗な顔だ。

 少し頬が色付いている、恥ずかしいならやらなければいいものを。

 「カイムと一緒になるなら既成事実を作ったほうが早いでしょ。」

 「俺にその気は無い、お前なら引く手あまただろうに。」

 そっけない態度をしながら手でベッドから押し出してやる。

 エリスは牢獄や戦場で医師として活躍し、多くの人間に慕われていた。

 「もう、カイムだって周りに女侍らせて何言ってるんだか、最初から私はカイム以外とそういう気はないわよ。」

 わざとらしくため息を付きながらエリスは去っていった。

 エリス・フローラリア――あの革命の時に怪我を負った人々の治療で大忙しとなっていたが、手が空いてきたようで最近地上にやってきた。

 最初は以前のように同じ家に住もうと要求してきたが、飯を作って貰うだけで妥協してもらい隣に住むようになった。

 以前のエリスより更に人間らしさが出てきたようで、そのせいか熱の入ったアプローチをしてくるようになり手を焼いている。

 

 ティアの力で救われたノーヴァス・アイテルの人々は何とか和解をし、大地に根を張り徐々に生活圏を広げていた。

 

 「だってカイム……一人だとご飯もちゃんと食べないみたいだし、当然心配するわよ。」

 「お前は俺の母親か。」

 「私がなりたいのはカイムのお嫁さんよ。」

 わざとらしく真面目くさった顔でそんなことを言う。

 「だってカイム、あの日から一人にしちゃうと何処かに消えて居なくなっちゃいそうなんだもの。」

 実際俺は革命が集結した後、熱りが覚めたら世界を旅しようと思っていた。

 ティアが切り開いてくれたこの世界を――

 「……カイム、ティアのことでぼけーっとしてるのはまだ良いけど、とにかく勝手に居なくなっちゃダメだからね。何処かに行くなら付いて行くから。」

 少し心配そうに見る瞳がこちらを覗いていた。

 「ああ……って、考えこむのは良いのか?」

 「やっぱダメ、カイムをあんな小娘に未だに取られてるなんて業腹だわ。」

 エリスはこういう所はまだ余り変わってないなと、再確認した。

 

 「……それよりエリス、夢には詳しいか?最近夢をよく見るんだ。」

 「……何よ、それ? 精神がおかしくなってる人の事だったら少しは分かるわ。」

 「そういう話じゃない。」

 「夢の中では自分を客観的に見ていて、夢の続きを寝る度に毎日見る――そんな夢だ。こんなことってあるのか?」

 「そんな夢聞いたことないけど……やっぱりカイムどこかおかしいんじゃ。」

 訝しむように言うエリスに辟易するが変な夢であるから仕方がないか……

 「心配するな、俺は別に精神病じゃない。」

 

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