デート・ア・ライブ 黄金の精霊   作:アテナ(紀野感無)

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今回はかなーり早めの投稿です。
過去篇はストックがあったので、案外早くかけました。

それではどうぞ


32話

「まあ、それはそれとして。神夏さんの過去は知っておくべきでしょう。そして貴方達の敵となりえる相手も。そのためにもわたくし達はあなた方に協力をするつもりですわ」

 

「…指輪?だよな。これ。けど…かなり年季が入ってるな」

 

そう言って狂三が見せてきたのは1つの指輪だった。

 

「…これがどうかしたの?」

 

「まあまあ。そう急かさないでくださいまし琴里さん。これは神夏さんが実際に身につけていた指輪ですわ。イギリスでつけていたものですわ。あなた方がどこまで知っているかはわかりませんですけれど神夏さんが自らの両親を殺めてしまった日より前からずっと身につけていた物ですわ。

そしてわたくしの天使は『時間を司る』。大仰に言ってはいますがそんな能力ですの。ですので…さあ士道さん。これをお持ちくださいまし」

 

「え?」

 

「持った上で、それを側頭部へつけてください。そうすれば、きっと士道さん達が知りたいことも、知れますわ。わたくしの【刻々帝(ザフキエル)】で、ですが」

 

「…本当に、何が目的なんだ狂三。ここまで俺たちに加担するって…」

 

「きひひ。そう邪険にしないでくださいまし。わたくしの目的のために今の神夏さんでは不都合、というだけですわ。それだけ、ですわよ。今士道さん達に協力をするのも利害が一致しているだけですわ。さぁ、わたくしの気が変わらない内に、するのか、しないのか決めてくださいまし?」

 

狂三が笑いながら急かしてくる。

…信じて、良いのだろうか。

 

「…心配しないでいい。狂三は嘘をついていない。つまり…過去を知れるというのも本当だ。どうするのかはわからないが……信用して良いだろう」

 

「あらあら、そういえばこちらの心情は観測できるんでしたわね。茶番もできないのですわね。さあ、士道さん。覚悟ができたのなら、指輪を側頭部へつけてくださいまし」

 

狂三はそう言いながら古式の短銃を俺へ向けてくる。

 

「…っ、信用してるぞ、狂三」

 

その行為に一瞬怖気付いてしまったが、改めて自分を鼓舞し狂三へ向き直る。

 

「ええ、大船に乗った気でいてもらって構いませんわ。では…【刻々帝(ザフキエル)十の弾(ユッド)】。では士道さん。ごゆぅっくりと、堪能してくださいまし」

 

そうして狂三は俺と指輪を一緒に、撃ち抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「ねえ、どうだった?」

「ダメ、返事すらしてくれない」

「そう……そうよね。お父さんたちを目の前で亡くしたものね……」

「もう少し様子を見ないと」

 

 

ある部屋の中では、1人の少女が暗い暗い部屋の中で蹲っていた。

金髪だった煌びやかな髪も、紅い神秘的な目も、美しい顔も何もかもがその影を潜め、酷くやつれている。

 

「(これは…もしかして精霊の力を得た直後の、俺や四糸乃が体験した記憶の直後か?)」

 

なんというか、幽霊になってみているかのような気分だった。

そんなことを考えていると目の前の少女の心の中がまるで聞こえてくるかのように、わかった。

 

 

 

 

 

ヒトを殺してしまった。お父さんを、お母さんを、殺してしまった。無関係な、ヒトを殺してしまった。

 

 

どうしたらいいのか、わからない。

 

 

どう償えばいいのか、わからない。

 

 

償う資格があるのか、わからない。

 

 

 

ヒトとして生きていいのか、わからない

 

 

 

部屋から出たくない。

誰とも会いたくない。

ご飯も食べたくない。

 

 

何も、したくない。いや、する資格すらない。

 

 

ずっと、そんなことを考えていた。

何をするにも無気力で、死にかける寸前まで絶食をし、軽く食べてまた絶食、ということを繰り返していた。

 

少しでも死にたくないと思ってしまう自分に腹が立ってしょうがない。

 

けど、何もする気が出ない。

 

 

 

 

いや、きっと私に何かをするという資格なんてない。何も、しちゃいけない。きっと、存在することすら、いけない。

 

 

 

 

 

目を閉じると、泣き叫ぶ声がこだまする。

聞こえるはずのない怨嗟の声が聞こえる。

 

『何で殺したの?』『なんで、無関係なのに』『憎い』

 

と、私に言い続ける。

 

発狂しそうになった。けど、耐えた。それは、私には発狂することすら許されないから。

 

友達が、会いに来た。

けど、言ってくる言葉は慰めの言葉ばかりで誰も責めてくれない。

責めてくれたらどれだけ楽になったか。

 

 

 

 

 

しばらく……友達が会いにきてから2ヶ月くらいだったとき幼馴染……名前が出てこないけど、その男の人がきた。無理やりドアをこじ開け、私の肩を揺さぶる。

 

ああ、やっと責めてくれる人が出てきたと思った。

けど、違った。

 

突然、告白をしてきた。ずっと好きだった、と。

だから、正気に戻ってくれ、と。

 

何を言っているんだ、と思った。私は正気だ。と言い返すと、正気じゃない、と言われ、正気だ、と言い返し、正気じゃない、の言い合いになった。

 

そのとき、持ってきていた全身鏡を目の前に建てられた。

 

そこに映っていたのは、とてもひどい()()()()()()()()()だった。

魂が抜けたかと思うような、生気のない目、やせ細った体。とにかく全身が、雰囲気が、そのニンゲンは屍になる直前だ、と訴えていた。

 

幼馴染の男が言う。

 

 

「ご両親のためにも生きるんだ」

 

 

ちがうんです、私が殺したんです。

 

 

「自分を責める必要はない」

 

 

ちがうんです、私のせいなんです。私にすべての責任があるんです。

 

 

「一緒に1からやり直そう」

 

 

ちがうんです、私にはやり直す資格なんてないんです。

 

 

けど、それらのことは口から出なかった。

 

私の前にいたみんなは、私を無理やり部屋から引っ張り出した。抵抗することもできず、無理やりリビングに連れていかれた。

 

そこには、たくさんのご飯があった。

無理やり、椅子に座らされて、みんなに食べなさい、と言われる。それを断るも、幼馴染の男が無理やり食べさせてくる。

 

私に、人並みのご飯を食べる資格なんてない、と言うとさらに食べさせてくる。

抵抗ができない。なんで?

 

食べてから、涙が止まらない。泣きながら、私の身体は食べ物を摂取し続ける。私の意思とは関係なく。

 

なんで?そんな疑問を残したまま、その日の久しぶりのご飯を食べ終わった。

 

 

次の日、また幼馴染の男がきて、今度は少し低めの椅子に座らされて、首から下を布で覆われる。

そして、男の手元にはハサミ、髪留めなんかがたくさんあった。

 

どうやら、こんどは整髪をしてくれるらしい。

 

断るも、無理やりやられた。

 

気づかないうちに寝てしまって、起きた時には髪はサラサラになって、肩より少し下で切りそろえられていて、前髪もちゃんと揃っていた。

 

そのまま外に連れていかれそうになった。けど、こればかりは本気で抵抗をした。

 

外には、出たくなかったから。

 

 

 

 

 

 

しばらく経って、自分の今後について、本気で考えてしまった。

 

自分は何をすべきか、そればかりをずっと考えた。

 

そして、一つの結論に至った。

 

『恥じないよう、精一杯生きる。精霊として』

 

自然と、精霊という言葉が出てきた。

けど、精霊というのが私はよくわかっていなかった。

 

精霊として生きる、ことがどういったことかはまだわからない。

もしかしたら、怪我や病気をしない限りは生き続けるかもしれない。

 

けど、お父さんやお母さん、殺してしまったみんなに懺悔をしながら、精一杯生きる、と決めた。

 

決めたからには、やり通す。

 

そう決心してから、私は自分からずっと家に置いてくれていた親戚の人に謝りにいった。

最初こそ驚かれたが、泣きながら喜んでくれた。

 

友達にも会いにいった。少し涙ぐみながらも普通に接してくれた。

 

幼馴染の男にも会いにいった。

すると号泣された。

泣き終わった後、また告白された。

 

けど、その時は恥ずかしすぎて返事はうやむやにしてしまった。

 

 

 

 

次の日、私は幼馴染に返答するために外出をした。

けど、また事件は起きた。

 

 

 

 

「精霊【アロガン】だね?」

「……」

「この子供がですか?」

 

男の人が1人、女の人が2人、私の前に立ちふさがった。

 

「自己紹介がまだだったね。わたしはアイザック・ウェスコット。DEM社に勤めている」

 

と、ツンツン頭の白い髪と青い瞳の三十代くらいの男が名乗ってくる。

 

「どうも……そんな人が私に何のようなんですか……?精霊、とは」

 

「ああ、とぼけなくてもいいよ。キミが精霊だということはもうわかっている。本当は顕現してくれたその日のうちに会いたかったが、なにぶん君は閉じこもっていたからね」

 

「………私が精霊だからってなんのようなんですか……?」

 

「なあに、簡単だよ。()()()()()()()()()()んだよ。じゃあ、エレン、マナ頼むよ」

 

エレン、マナと呼ばれた二人が襲いかかってくる。

 

機械に身を包んで、私を襲ってくる。

私はがむしゃらに逃げた。

 

そして、気づくと私は意識を失っていた。

 

 

 

「ほぉ。この世に顕現されてからというもの、()()()の在り方に吐き気を催してきていたが、それがようやく治ろうとしているところだというに。我が身へ刃を振りかざすその不敬。どう処分してくれようか」

 

突然、少女の体が光った。胸が少し成長し、黄金の鎧を下半身の身につけ、上は黒いシャツのみがつけられ、右腕を鎧で包んでいる。

シャツの隙間から紅い紋様が見える。

 

「そうさな、手始めに、この程度か?」

 

女2人は突然の変貌に驚きを隠せておらず距離をとって観察をしていた。

 

が、少女が右腕を空へ掲げると空中に黄金の波紋が数十程が現れた。

その波紋からは剣、槍などありとあらゆる武器の先端が覗いていた。

 

 

 

 

 

「ふん。生き延びたか。まあ良い。雑種共、次その身を晒したならば、死の裁きを下す。嫌ならば、二度と現れぬことだ。不敬への免罪は、これくらいにしておいてやる」

 

「上等です。私も、次会うときは打ち滅ぼしましょう」

 

少女はそう言い、歩き出した。それに対して銀髪の女は言い返す。

 

その周りは、まるで爆弾でも落とされたかのように、破壊され尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

気づくと、病院にいた。

周りには、看病をしてくれていたのかたくさんの人が。

 

不思議に思って、どうなっていたのか聞くと、肩から血を流し、身体中アザだらけで帰ってきたらしい。

そして帰ってきた瞬間倒れて気を失った、と。

 

幸い、さほど怪我は深くないらしく、すぐに退院はできた。けど、また私は家から出ることをためらうようになってしまった。

 

 

 

 

二日ほど経って、親戚の人たちが少し買い物に行った。結果的に、家には私一人になった。

 

それがダメだった。

外に出ると、また襲われると思っていたから。家にいれば安全だ、と思っていた。

 

インターホンが鳴り、それに出ると、そこには……

 

「……っ!この前の…」

 

「覚えていてくれましたか」「私もいやがりますよ」

 

そう、2日くらい前に襲ってきた二人がいた。

 

即座にドアを閉めるも女の人とは思えないほどの力強さにより無理やり開けられた。

 

 

「きゃっ!」

 

「どうしました?前回の『()』を使わないと死にますよ?」

 

痛いー痛いーー痛い!

 

きりつけられ、蹴飛ばされ、家の中が散乱して行く。

 

他の家より、ちょっと広いとはいえ、家の中でにげれるわけもなく、首を掴まれ壁に叩きつけられる。

 

「エレン、そのくらいにしねーとです。死んじまうです」

「わかっていますよ。さて、アロガン。私はあまり気の長い方ではありませんので、素直に答えてくださいね。あなたの『力』について詳しく教えなさい」

 

「な……んで……」

 

そう一言発した瞬間に右腕が焼けたかのような痛みが襲う。

確かめなくても分かる。刺されたんだ。

 

(たわけ!さっさと我の力を解放せんか!)

 

(だ……れ……)

 

 

心の中から、自分の声なのに自分じゃない声が聞こえてくる。

それが誰かをわかる前に……私は『()』を求めた。

 

 

死にたくないがために。

 

 

 

 

 

「……っ」「やっとですか」

 

襲った二人の少女-----白銀の長髪の美少女、エレン・M(ミラ)・メイザース、青髪の中学生ほどに見える少女、崇宮真那-----の前には、先ほどまでの少女より少し成長した少女がいた。

 

まるで黄金のような金髪を肩より少し下まで伸ばしており、下半身、右腕のみを黄金の鎧で纏い、上半身は黒いシャツのみを身に纏い少し胸が強調されている。そして、紅い目が特徴の精霊【アロガン】がいた。

 

「雑種ども、(われ)は言ったはずだが?次その身を我の前に晒した日には、死の裁きを下す、と」

 

「やれるものならやってみやがれです!」

「私も言ったはずです。次会うときは、討ち亡ぼす、と」

 

と、雑種二匹は飛び込んできたが、家の中、しかも()()()の住む場所なため、雑種をこの場で排除するわけにはいかない。

 

空間転移をし、家の外に転移する。

 

雑種二匹はすぐに我に気づき追ってきた。

 

()()()()()()()、腕を組み、追ってきた雑種どもを見下す。

 

「逃げれると思っていやがりますか?」

 

「たわけ。何故わざわざ貴様ら雑種に裁きを下すのに逃げる必要がある?場所を変えただけだ。裁きを下すにも、それ相応の場所があると言うものだろう?」

 

「やれやれ、まだ身の程をわかっていないようですね。私たち二人を前にしてまだそんなことを言う余裕があるとは」

 

と、銀髪の雑種がなんとも的外れなことを口にする。

 

「クク……まさかとは思うが、昨日の()()()()()で我の力を推し量ったとでも言うのか?残念だが、アレは()()()を生きながらえさせるための手段だ」

 

「「なに?」」

 

「特別に、王たる我の力を見せてやろう。王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)。そうさな……砲門の数も特別だ。光栄に思うがいい、雑種。ここまでの数はなかなか見れんぞ」

 

と、雑種には多くても20前後ですませるところを、()()()()()砲門を開く。

 

「ちょっ、あれは予想外にもほどがありやがるですよ!」「私もですよ!」

 

雑種どもに向かって、無数の()()()西()()()()()()()()()()()()を撃ち放つ。

 

1000本ほど撃ち込んだところで一度止め、武具を回収した。

 

「他愛ない。これを防げぬ程度の力量で我の前に立つとはな。しかも我を()()()()などと世迷言を……」

 

言いかけたところで気配を感じそちらを一瞥すると、先ほどまでの雑種がいた。

 

どちらも、互いに傷を負っていた。

銀髪より青髪の雑種の方が傷はひどい。

 

「ほぉ、面白い。凌ぎきるとはな。褒めてつかわすぞ。雑種」

 

「……マナ、ここは一度退避です」

「えっ!なんでですか!」

 

すると、銀髪の雑種が逃げ出すことを考え始めた。

 

「逃すと思っているのか?我の決定に背くと?不敬も大概にせよ。雑種!」

 

我に、無様に背を向ける様を見せ付けてきた雑種に向かって、ゲートを開き、武具を連射する。

 

「……逃げたか」

 

武具の連射により起こった爆煙が晴れる頃には、雑種は二匹とも消えていた。

 

「あれほど痛手を負わせておけばすぐにはくるまい。さてと…」

 

そして、我は地上に降りた後神夏の()に消えた。




ここからは過去編になります。

4〜5話続く予定です。

士道は過去の神夏に、正確には身につけていたモノ(今回は指輪)に憑依しているような感じになっています
モノを通して本人の感情、考えが流れ込んでいる、そんな感じです
多分原作だと描写が違いますがご了承を


読んでくださりありがとうございます

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