デート・ア・ライブ 黄金の精霊   作:アテナ(紀野感無)

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過去編第2話

それではどうぞ


33話

〜現実世界にて〜

 

「あらあら…余程辛い体験だったのでしょうねぇ。すぐに昏睡してしまって」

 

「本当に大丈夫なんでしょうね?」

 

「ええ。ただ絶望という感情を持った記憶を一度に浴びたような、言うなれば脳にとてもとても負担がかかっていますわ。しばらくは安静にしておくべきでしょう」

 

士道は狂三に『刻々帝(ザフキエル)』の能力で撃たれたのち、数秒と待たずに涙を流し、昏睡した。

慌ててその場にいる皆が介護し、狂三を睨むがどこ吹く風、といった顔だ。

 

「さて、やることはやりましたしこれにてお暇させていただきますわ。最後に…神夏さんの姿でも見てみましょうか」

 

「ちょっと待ちなさい。あなた自身が神夏の反転化は精霊の力がトリガーになると言ったじゃない。ならあなたの力もトリガーになる可能性があるわ。だからやめてもらえないかしら?」

 

「あらあら。それで言ったら今いる四糸乃さんはどう説明しますの?それにトリガーとなり得るのは神夏さん自身の力ですわ。ご心配なく。心配ならついてきたらよろしくて?」

 

「…そうね、そうするわ」

 

琴里は狂三の言うことを信用して2人で神夏の元へ向かった。

 

 

 

 

 

「はい、神夏さん。あーん…です」

『しっかりお口開けねー』

「んぁ…」

「神夏さん。お次はこちらをどうぞ。これもなかなか美味しいですよ」

「はむ…」

 

「…」

「あらあら。お可愛いことですわね。以前の神夏さんからは想像もつきませんわ」

 

神夏は四糸乃と中津川によりご飯を食べさせてもらっていた。

一口食べ、咀嚼し、飲み込み、微笑む。

これを毎回やっている。四糸乃も喜んでもらえるのが嬉しいのか微笑まれる度に四糸乃も笑っている。

 

「神夏…さん。えらいえらい…です」

『四糸乃からのヨシヨシだよ。幸運だねぇ』

「…♪」

 

 

『すまぬな神夏よ。少し体を借りるぞ』

 

 

突然声が響いた。かと思うと神夏の体が光る。その体は変貌していき、いつもみる『精霊アロガン』と呼ばれている神夏になった。

つまりは、英雄王ギルガメッシュと成った。いや、表へ出てきた、の方が正しいのだろうか。

 

「なっ…ちょっ!精霊の力は反転…の」

 

「五月蝿いわ。少し黙れ。我は疲れている。ただでさえ抑えつけねばならぬと言うのに…」

「大丈夫ですわよ琴里さん。この方の顕現はあくまでも精霊の力を使い終わった後の事象なため反転化には影響しませんわ。そうですわね…計算でいう答えの部分がこの方で、精霊の力は計算にて答えを出していく過程ですわ。つまり、この方の顕現は精霊の力は関係ありませんの」

 

「そ、そうなの?」

「ええ」

 

「四糸乃よ。神夏のやつをよく面倒を見てくれた。褒めてつかわすぞ。これからも、神夏の阿呆をよくしてやってくれ。そこな雑種もだ。感謝するぞ。今のところ()()()が心を許しているのはお主ら2人『よしのんもいるよー!』…そうさな。お主ら3人のみだ。これからもこやつを、精霊の力を使わせぬよう、見張っておれ。まあお主らがいる間は大丈夫そうだが。そこの小娘。時間がないから簡潔に伝えるぞ。()()()から道化へ対して疾く心を開かせろ。でなければスタートラインですらない。今は我が抑えつけてはいるがいつまで持つか分からん。…チッ、目を話すとすぐこれだ。ではな。四糸乃よ、これからもこやつをよろしく頼むぞ?」

「…はい!」

 

ギルガメッシュは伝えるだけ伝え、すぐさま神夏の中へ戻った。

すると神夏はまた倒れ込んだ。それをなんとか四糸乃が支え、それを中津川も手伝い再度ベットに寝かせた。

 

「…どういうことよ。心を開かせろ、って。言われなくても将来的にはそうするつもりだけれど…」

 

「おそらくは、心を開かせることで今の状況が打破できるのではございませんか?あの方、無駄なことは絶対に言いませんもの。それでは…わたくしもこの辺で失礼しますわ。神夏さんにもよろしく伝えておいてくださいまし。士道さんにも」

 

狂三も伝えることを伝え影の中へ消えていった。

 

 

 

 

 

〜神夏の過去〜

 

 

〜DEM社〜

 

「アイク、申し訳ありません。このような事態になってしまい」

「も、申し訳ねーです」

 

「ああ、()()()()()。そもそも、今回は【アロガン】を殺すことが目的でも捕らえることが目的でもない。()()()()()()()だったんだから。この情報を次に活かせばいいだけだ。さて、エレン、マナ」

 

「「はっ」」

 

「次は、ジェシカたちの部隊も連れて行くといい。壁役くらいにはなるだろう。世界最強の魔道士(ウィザード)、エレン、期待しているよ。もちろん、世界最強に次ぐ実力者、マナもね」

 

「もちろんです。今回はしくじりましたが、私に倒せぬ敵など存在しません」「この雪辱は絶対に果たしやがる、です」

 

「「必ず、あの精霊は、仕留めてみせます」」

 

 

 

 

 

 

またみんなに心配をされた。

 

それもそうだ。買い物から帰ってきたら家が荒らされていてかつ私がまた自分の部屋の隅に縮こまっているんだから。

 

何があったか聞かれたが、言うわけにはいかない。

 

もし、私が精霊(人ならざる生命体)であることや、そのせいでこうなったことを話してしまったら、きっと見放されてしまう。

 

 

また、孤独(ひとり)になってしまう。

 

 

そんなのは、もう嫌だったから。

私は黙秘を貫き通した。

 

 

あと、もう一つ、黙秘を貫き通した理由がある。

それは………

 

「あぁぁぁぁぁぁぁ………」

 

はっっずかしいから。ただでさえ厨二病だったのにまさかあんなことになるなんて…。

 

しかもさ!どう考えても私のやってたことってギル様の振る舞いだよね⁉︎いや、嬉しいんだけども!恥ずかしさが優ってるといいますか……。

 

「……でも、この力とも向き合っていかないといけないんだよね……」

 

恥ずかしいけど、自分で蒔いたタネだから仕方ない。

 

いや、まあ?ギル様の力が自分の身に宿ったことは嬉しいですよ?ただ……恥ずかしいというか。

 

「なりきりの時は勝手に想像した人に雑種とか叫んでただけだし……まさか本当の人に雑種!って叫ぶことになろうとは……」

 

 

この光景をこっっそり見ていた人たちは、神夏が昔のように喋ったりしているのを見て嬉しく思いながらも、変なことをしてる光景に笑いを堪えるのが大変だったとか。

 

 

 

 

 

 

 

〜翌日〜

 

よく、わからない感覚に陥った。

 

自分の体なのに、自分の意思で動かせない。

昨日のような、自分以外の人格が自分の体を動かしている。

 

「そう戸惑わなくてよい。少しばかり体の主導権を借りているだけだ」

 

自分の口で、声で、自分にそう言われた。

 

「初めて我を喚び出した時もそうだが、まだ力の使い方を理解しておらぬが故に、()()()()()()()が起こるのだ」

 

そんなことを言われ、()()()()()が見ている景色を改めて見る。

 

そこには、この前襲ってきた二人を含めた、機械に身を包んだ雑種がとても多くいた。……あれ?なんで私も雑種呼びになってる?

 

「ふむ、およそ50、といったところか。ま、所詮は烏合の衆。雑種どもが集まっただけにすぎぬ」

 

いやいや、ギル様風の喋り方をしてるもう一人の私よ。英雄王は慢心をしすぎて雑種たちにちょくちょく寝首をかられてるんですけど?

 

「よし、神夏よ。あとで罰を与えてやろう。貴様が崇拝する英雄王たる我からの罰だ。喜んで受けよ」

 

ちょいまって⁉︎いや、まあ確かに英雄王様からの罰だと喜んで受けますけども!

 

いやそれより!なりきりすぎでしょ!

 

「なりきりではないわ!我は正真正銘、万夫不当の英雄王だ。そもそも、貴様が我を喚び出したのだろう。その我を信用せぬというのか?」

 

おおう、なんか会話が成立してる。それより、さっきから攻撃されているのに悠長ですね。なんか不可視の壁で全部防いでるけど。

 

「…はぁ、現実逃避も大概にせよ。だが、まあ今は良い。さて、意識はあるのだろう?ならば英雄王たる我の戦いを特等席から存分に見るがよい。今から、先程から我に刃を向けている不敬者を処分するのでな」

 

 

 

 

 

 

1vs50。

その圧倒的な人数差で押しているにもかかわらず、攻撃を始めた精霊は圧倒的に、暴力的に強く、誰一人として近付かせなかった。

展開された百を超える黄金の波紋から幾度となく武器が降り注ぐ。

それを魔術師(ウィザード)達は必死に避け、さばいていた。

 

いや、正確にはエレンとマナはまだ戦闘には参加しておらず観察をしていた。

 

精霊は、近付いてくるものに的確に武器を飛ばしていた。

 

「マナ、予定通りにいきますよ」

「了解でやがります!」

 

「………雑種ども、我に刃をむける不敬な態度、死でもって償うがよい」

 

精霊は、右手を上にあげた。

 

「…っ!総員散開!」

 

先ほどまで10足らずだった黄金の円の波紋は軽く50を超える数まで増した。

 

それを見てマナがバラけるように指示を出すがもう遅かった。武具の雨がDEMの魔術師(ウィザード)に降り注ぐ。

 

「この程度で我の前に立つなというに。この世の雑種はつくづく哀れな生物よな」

 

「そーでもねーですよ?」

 

「なに?」

 

武具の雨を凌ぎ切ったマナは精霊に言い放つ。

マナの他に凌ぎきれた人間は2桁に届いていなかった。

 

「わりーですが、この前は意表を突かれてあの結果になっただけです。本気のエレンはあなたとは言えども手がつけられませんです」

 

「ほぅ、言うではないか雑種」

 

「だから…あたしらはその時間を稼ぐだけ!」

 

マナが精霊に突撃する。

それに対し精霊はマナに一点集中で武具の雨を降らせる。

 

マナは軌道をそらし、体ごと反転させ、真正面から迎撃し、時たま受け流しながら精霊の目の前まで近づいた。

 

そして、ブレードを振り下ろした。

 

「……っ」

「生半可な実力は寿命を縮めると言うことを知らないのか?」

 

だが、マナのブレードは霊力による不可視の壁により止められた。

ピクリとも動かすことさえ叶わなかった。

そして精霊はマナの周りに黄金の円の波紋を出しマナに武器の先端を向け、いつでも殺せる状態を作る。

 

「ふむ、偶然とは思っていたがまたもや我の攻撃を凌ぎきるとはな。貴様、名はなんという」

 

「タカミヤ・マナ、でいやがりますよ」

 

「マナ、か。さて、我の攻撃を凌ぎ切った褒美だ。何か言い残すことがあれば言うがよい」

 

「はは、なにも言うことなんてねーです。……ああ、一つだけありますね」

 

「ほう、述べてみよ」

 

「……慢心が過ぎやがりますよ!」

 

その瞬間、精霊の背後からエレンが飛び出した。

精霊が後ろを振り返るもすでにエレンの刃は不可視の壁を突き破り精霊に振り下ろされ…。

 

「戦術は褒めてやろう。我でなければ死んでいたかもな」

 

「な…っ!」「……」

 

エレンの真横から出された武器により受け止められていた。すぐさまエレンは距離を取る。マナも隙をついて精霊から離れた。

 

「我がこの場にいる雑種の中で最も力のある貴様を見失っているとでも思ったか?我をナメるのも大概にせよ。……だが、前回の我の攻撃を凌ぎきり、今回は我の霊力の壁を容易く破ったのは褒めてやろう。貴様、名は何という?」

 

「……エレン・M(ミラ)・メイザースですよ」

 

「メイザースか。ではメイザースよ、その技量に免じて貴様ら雑種の不敬な態度を免罪とするチャンスをやろう」

 

「ほう?前から思っていましたが、たかが精霊ごときが偉そうな口を叩く者ですね」

 

「よい、今はその不敬な態度、口も罪をとうまい。さてメイザースよ」

 

と、精霊が話し始めた時だった。

 

精霊の背後から一人の魔道士(ウィザード)が現れ、精霊に向かって斬りつけた。が、それは当たるものの鎧に弾かれた。

 

「ばっ……なにをしていやがりますか!」

 

「なにを言ってるんですかぁ!チャンスじゃないですか!無防備な今攻撃せずしてどうするんですか!」

 

「その行為はエレンの邪魔をするとは思いつかなかったですか⁉︎」

 

「何を………」

 

斬りつけた魔術師(ウィザード)は、精霊を確認し、その瞬間に悟った。

 

今、自分のやったことはとてつもなく愚かだった、ということを。

 

「…雑種ごときが、王たる我に刃を我に向けるだけでなく話の邪魔をし、我の鎧に傷をつけるか!その罪は万死に値する!メイザースよ、気が変わった。免罪とするのは貴様とマナの二人のみだ。残りは処刑とする」

 

「避けろです!」「えっ……きゃっ!」

 

精霊がいつの間にか手に握っていた斧により斬りつけられた魔術師(ウィザード)は軽々と吹き飛ばされビルに激突する。

 

それを見て、エレン、マナを含むこの場にいる魔術師(ウィザード)が精霊を取り囲む。

 

「貴様らはメイザースとマナを除き我を見るに能わぬ。雑種………いや、虫ケラは虫ケラらしく……死ね」

 

黄金の波紋の砲門が、一気に、数百まで開く。

 

 

 

 

 

 

勝負は、一瞬で決着がついた。

 

エレンを除くほぼ全ての人間が死にかけており、エレンは誰かを盾にしたのかほぼ無傷、マナは死にかけた人間ほどではないとはいえ見るからに重傷を負っていた。

 

「い……や……だ、死に……たく…ない……っ」

 

「……」

 

そんな中、一人の人間がそんな言葉を漏らす。

それを聞いた精霊は門を展開しその人間に向かって黄金の波紋を作り武器を向ける。

 

「ま、待て……っ!」

 

マナが制止するよりも早く、武器は放たれた。

それだけではなかった。周りの、エレン、マナを除く全員に、トドメといわんばかりに武器を的確に放つ。エレンは傍観していたがマナは一人でも守ろうとし、結果として一人しか助けることはできなかった。

 

「……なに、もう時間か。………さて、最後まで凌ぎ切った雑種どもよ。褒美に、次に会うときは、真の王者たる姿を見せてやろう。そうさな……貴様らの主人も連れてくるがよい」

 

そう言い、精霊は空間に溶け込むようにして消えた。

 

DEMの魔術師(ウィザード)で生き残った人間は、エレン、マナ、ジェシカのたったの3人だった。

その身に敗北が刻まれた3人は、一人は不敵に笑い、一人は怒りに満ち、一人は絶望をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

〜その日の夕方 公園〜

 

また関係ない人を殺してしまった。

 

そして、あそこまで英雄王気取りしてたのを思い出してまた羞恥に身も心も刻まれてもうHPが1なんです。

 

このまま羞恥に殺されるくらいなら自ら死を選ぶ!

 

なんなら人を殺したことよりそっちの方が嫌だ。殺すのも嫌だけど。

 

……まぁ、体が死ぬことを拒否するからやろうにもできないんだけど。

 

 

「ていうかさ……絶対あの人達またくるじゃん……!まじで私なに言ってんのさ……!」

 

去り際にした、精霊化して英雄王の性格になっていた私が言い放った宣戦布告。

もう、もしかしなくても、またあの人達と対峙することになるのは決定した。

 

「こうなりゃ……海外に逃げるか。いや……現実的でもないし……」

 

 

ていうかさ、私ってなんで目が覚めたらあんなところにいたんだろうね。

 

対峙してた時は昼だったんだけどさ。

()()()()()()()()()()()

 

なんか、こう……思い出したくないかのように、体が、脳が思い出すことを拒否する。

 

「……考えても仕方ないし、家に帰ろう。またおばさん達が心配する」

 

と、家に帰ろうとした時だった。

 

「ねえ」

「ん?」

 

突然、話しかけられた。

 

そちらを見ると、黒髪の、日系のような顔立ちの、長身で結構美少女な人が話しかけてきた。

 

「……?誰ですか?」

 

「あ、自己紹介が遅れました。私、アメミヤ・サキと言います」

 

「はぁ、私は神夏ギルです。で、何の用ですか?私、あなたと会ったことないと思うんですが」

 

「はい、会ったことはないです。でも、私は知っていますよ。()()()神夏ギルさん」

 

「…っ!」

 

その言葉に、思わず距離を取る。

 

「ああ!大丈夫ですよ!DEMの人たちみたいにあなたを襲うつもりはありません!」

 

「……?何、要件を手短に話して」

 

 

「実はですね…()()()()なんです」

 

 

その言葉を理解するのに、10秒くらいかかった。

 

「……で、精霊だから、なんですか?私に何の用ですか?」

 

「いえ、実はですね……

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()




どうでしたか?

過去篇はほとんど構成は終わってるので早いペースで投稿できると思われます

読んでくださりありがとうございます

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