それではどうぞ
マイラが、死んだ。
首を、惨たらしく斬られた。
もうマトモに考えれるわけがなかった。
「うぁぁぁぁぁ!!!!」
「!」
「ちょ…」
「な…」
とにかくがむしゃらに砲門を開きマイラの遺体から引き剥がすように武具を滅茶苦茶に撃ちまくる。
全員が退避したあたりだろうか、とにかく人が居なくなったのを見てすぐにマイラの元へかけつけた。
「ああ、マイラ。すぐに、すぐに治すから…。みんなも…すぐに…」
傷を治せるものをゲートの中から取り出して真っ先にマイラの首を繋げ、叔父さんと叔母さんの傷もすぐに治す。
叔父さんと叔母さんの息がまだあるのは確認できたけど一番生きていてほしいマイラだけ、息がない。
「いやだ、ねえ、目を覚ましてよ。わたしを、独りにしないで…。ねえ、あの時みたいに、陽気に話してよ。私にまた告白してよ。私、次してくれるって聞いて、次されたらちゃんと返事するった決めてたんだよ…ねえ、マイラ…。私……」
けれど、マイラからの返事はない。
なんで
なんでなんでナンデナンデナンデナンデ
「……もう、なんだっていい」
「全く、手間をかけさせないでください。ですが、もう私の仕事は終わりですので。あまり関係はありませんでしたね」
メイザースがすぐそばに戻ってきてはいるが、その全てがどうでも良かった。
この世界にいる意味なんて、もう何も見出せなかった。
「もういい、全員…死んで、しまえ」
全員を巻き込むように、大規模な爆発を起こした。
〜次の日〜
「……」
叔父さんと叔母さんは家に送り届けた。
大丈夫な保証はないけど、あの場にいるよりはマシだろう。
マイラを抱え、改めてDEM社までたどり着いた。
目的は一つ。
全員を殺す。
「あらあらあらあら。これは想定外ですわね」
あの黄金の精霊を見守っていると無表情で、涙を流しながら最愛の人間の遺体を抱えてDEM社まで向かった。
見ていていたたまれない気持ちになるが、昨日のことを考えるとそれも仕方ないのだろう。
きっとあの死体をよく見れば自らの間違いにも、あの人間たちの行ったことも、全てがわかったでしょうに。それに気づけなかったのでしょう。それほど心をへし折られた。
そしてあろうことかDEM社の玄関から殴り込みに入った。
…仇の相手は誰も居ない本社に。
さてさて、ここから何をするか、どうするかはあの方の意思次第。見守っておきましょうか。最悪の場合はわたくしが…。
『ちぃ…手遅れか。
【よく言うよ。君は…痛い痛い。喋らせて】
我は神夏の中で元に戻った一部を縛りつけた。
精神世界のようなものではあるが、自由にさせるよりかは遥かにマシだろう。
なにせ、今の神夏が消えれば
『これ以上、心を折られるなよ?神夏ギル。我の依代になったのだ。その程度ではあるまいて?』
「何処だ…どこにいる」
メイザースを探すも、いるのは雑種どもだけで、あいつは何処にも居ない。
マイラに、土下座をさせてやる。その上で、同じように首を切り落としてやる。
メイザースだけじゃない。ここに属する人間を、全て殺しつくしてやる。
「……どこ。なんで、いないの」
屋上までしらみつぶしに殺し回ったと言うのにメイザースも、これを引き起こした張本人のあの男も、いなかった。
「何処に…ドコ」
周りは阿鼻叫喚の地獄絵図。
建物は燃え、救急車やパトカーのサイレンがうるさい。
火事が広がり、それを止めようにも私がいるから止められない。
余計に広がり止めようとすると私に撃ち殺される。それの繰り返し。
「……」
マイラを地面に寝かせる。
……そういえば、あの時、袋に入れられていた人間はなんなのだろう。
でも、もう関係ない。
「あーその、神夏ちゃん?」
「……」
そんなことを考えていたら話しかけられた。誰?私に話しかけれる人なんて…。
「…アメミヤ、さん?」
そこにいたのはアメミヤ・サキさんだった。真っ白な、まるでウェディングドレスのような、それでいて天使を思わせるような、そんな衣装に身を包んでいた。
…そういえば、この人も精霊なんだ。
なら…
「ねえ、アメミヤさん。貴女、自殺をしたいと、言っていましたよね?」
「うん、言ってたね」
「それなら…『残念だが、そこから先は言わせんぞ。愚物が。貴様に任せた我が阿呆だったわ』」
また突然体の支配権?っていうのかな。それを奪われた。
けど、もうそれすらもどうでも良かった。
この世に未練も何もない。あるとすれば、アイツラを殺すことくらいだ。
「戯けが。人間は今死ぬか後死ぬかの違いだ。貴様が死ぬのは勝手だがそれは我に対する狼藉と知れ。…さて、そこな雑種よ。一つ貴様に問う。無論、嘘偽りを吐いたらその瞬間に貴様を処刑する」
「?」
「アメミヤ・サキよ。神夏の親族及びあの男…マイラとか言ったか?
…え?どういうこと?
「…?なんのことかな?」
「よく考えればわかることだった。あの時は神夏をおびき寄せようとした罠だと思ったがメイザースはこう告げた。『保護しているだけだ』と。我を前に嘘偽りをほざいてはおらん。なれば、誰がやったという?」
「……」
「沈黙は肯定とする。よかったなぁ?神夏よ。貴様の親族を傷つけた者が判明したぞ?」
『……。ええ。そうです、ね。……全力で、殺す』
肉片一つ足りとも残しはしない。
「
「
神夏ギルが黄金の波紋を展開するのと同時にアメミヤ・サキは自身の天使を呼び出す。周りにビットのようなものが展開されるが、神夏ギルはそれを
「ねえ、アメミヤ・サキ。一つだけ…一つだけ、聞いてもいい?」
「なんでしょうか?」
「……マイラを襲った理由を、話して。それだけ」
「えー。今それ言わなきゃいけません?」
「…それを話したら、せめてもの慈悲に少しくらい、苦痛なく、殺してあげるよ」
それを告げられたアメミヤ・サキはそれまでの笑顔が歪んだ。
「私のお願い、何か覚えてる?」
「…私に、殺されること」
「でもねぇ、正確には貴女に殺されるのではなくてね、
「反、転…?」
「そう。反転。精霊強い絶望を味わった時に起こる現象。反転した精霊は通常の精霊よりも残虐で、冷酷で、強い。そんなのに殺されるなんて…それはそれはもう至高の時間でしょう?元よりこの世界に未練なんかない身。死に方くらい、選ばせてほしいわ」
それを聞いた神夏は、冷静に、無表情に、涙を流しながら
「…ああ、そうかい。じゃあ……遠慮なく、殺してやるよ。雑種が。お前は、その頭蓋を、一片たりとも残しはしない」
「まあそれも良いけど、どうせなら最大最高火力で一瞬で消しとばして欲しいなぁ?でも…その前に君を反転させないとね?」
「
「……」
「
「児戯だな」
神夏はアメミヤ・サキの攻撃の悉くを真正面から受けきる。
絶滅天使の羽を展開されるたびにその全てを撃ち落とす。
「…天の、鎖よ」
「まーたそれ?芸が無いよ?」
神夏は宝具を射出している中、その一つから天の鎖を射出する。
神夏ギルは直感で理解した。これは、精霊にも効くと。
本来は神の力を持つ者に絶大な効果を及ぼすものだが
撃ち落とせばいいとタカをくくっていたアメミヤ・サキは一度鎖に触れて直ぐに意識を切り替えた。
だが、もう遅かった。
互いに手数の多さで攻めるが天の鎖という新たな脅威をアメミヤ・サキは無視できず次第に追い詰められていった。
「地に、堕ちろ」
「ぐうっ⁉︎」
足をつかまれた天使は、地面に叩きつけられた。
「虫ケラ風情が、手間をかけさせおって」
ゆっくりと、神夏はアメミヤに近づく。
来させまいと
「…ね、ねえ。待って」
「待たない。キミは、イマココで、殺す」
神夏は、ハルペーと呼ばれる回復ができなくなる鎌のようなものを撃ち込んだ。
それは的確にアメミヤ・サキの肩を割いた。
続けて複数の武具を致命傷にならないように撃ち込まれる。
本来は重症でない限りはすぐに治るがハルペーという武器によりそれも叶わなかった。アメミヤ・サキはだんだんと武器が体に突き刺さり、血に濡れた。
「お……願い。た……す………けて」
「…」
命乞いをされても、明確な殺意を、殺すという意思を持ち神夏は近づく。
「ねえ……私たち、友達……で……しょう?」
最後の情に訴えるという手段をアメミヤサキは取ったが、それは余計に神夏ギルを、更には英雄王を怒らせた。
「貴様ごときが我と友だと?傲慢な考えもほどほどにせよ。我の友はこの世で一握りだ。そして、神夏の奴も貴様を友などとはもう思うてない。神夏を騙した罪に見合った罰を与えてやろう」
「いや……いや……いやぁ!」
血だらけになって地に這いつくばっている雑種精霊に向けて、これでもかと、武器を突き刺す私。その顔は、怒ってもいなければ悲しんでもいない。
ただ、この世の全てに絶望をしていた。もう、この世なんてない方がいい、と。本気でそう思った。
その瞬間、私の中のナニカがひっくり返る感覚が起きた。
「【
突然、なにかを撃ち込まれた。
その瞬間、ナニカがひっくり返る感覚が戻るような、そんなよくわからない感覚に陥った。
「……〜〜っ!はぁっはあっ…。…あれ、私、は…」
「御機嫌よう、神夏ギルさん。いえ、アロガンとお呼びしたほうがよろしいかしら?」
「あ、あ…。キミ、は?」
「わたくしは時崎狂三。DEMの間ではナイトメアとも呼ばれてますわね」
「その、精霊が、何の…用?今すぐ、消えて欲しいんだけど」
「あらあら、命の恩人に対して酷い言い様ですわね」
命の…恩人?
「何を…あれ?マイラ…?マイラ…どこ」
周りを見渡すと、手元にいたはずのマイラがいない。周りを見るも、
しばらくすると胸のあたりから白い宝石の様なものが抽出されていた。が、それもすぐに霧散していた。
「ねえ、マイラは…?マイラは、どこに…」
「……」
けど赤く黒い精霊は何も答えてくれない。
「ねえ、神夏ギルさん。貴女どこまで覚えていらっしゃいますか?」
「え?……。そういえば、何で私こんなところに…。叔父さん達を家に送り届けたはず…」
「…少々
「?」
赤く黒い精霊は何かを言ったがよく聞こえなかった。
でもその目は、これからの事をまるで同情する様な、そんな目をしていた。
「…性格も少しばかり変わってますわね。それはもうしょうがないですわ。…さて、神夏ギルさん。貴女に真実をお伝えしようと思いますの。その後にすることにも手をお貸しします。ですがその代わりに…」
「…?」
真実?一体何のことなのだろう。
「貴女の力を、お借りしたいのですわ」
「まず貴女が死んだと思っているマイラ・カルロスさんですが、生きておられます」
…?何を言ってるの?マイラは、さっきまでずっと手元にいたんだから死んでるわけないのに。
「貴女が抱えていたマイラさんはこちらです。先ほど、預からせていただきました」
そういって精霊はマイラを影の中から取り出した。
それを見て思わず飛びかかろうとしたが先に銃を当てられた。
「少々お待ちになってくださいまし。さて、この方ですが…
……え?
「この方はどこの誰かも知らない人間ですわ。その証拠に…【
精霊がマイラの体に弾を撃ち込むとまるでビデオを逆再生しているかの様にマイラの体が変化していった。
まずは首がとれ、そして再度元に戻る。
そこで止まらず、さらに戻る。
すると、骨格や肌の色、マイラを構成していた要素の全てが変化していった。
出来上がったのは、全く別人。
ナンデ?どういうこと?」
「お分かりですか?マイラさんはまだ生きておられます。ですが、それは
そういって精霊は何もないはずの瓦礫に向かって銃を撃ち放つ。
何も当たらず通り過ぎると思ったら、その辺りの空間が歪んだ。
さらに連続で撃ち続け、そのうちの一発がガキン!と大きな音を立てると共に1人の男が姿を現した。
それは…。
「ちっ、さすがはナイトメア。お見通しだな」
見間違えようもない。
私の大事な、マイラ・カルロスだった。でも、おかしい。メイザースの様な
「いえいえ。貴方のことはずうぅっっっと観察しておりましたもの。さて…お分かりですか?神夏ギルさん。この方は
…は?いや、何を…言って。
「はぁーー、全部お見通しってわけかよ。てことは、俺の目的もわかってる口か?」
マイラは否定するわけでもなく、ただめんどくさそうに言う。
なんで?否定してくれないの?
「ええ。貴方の望みはDEM社の社長さん…アイザック・ウェスコットでしたかしら?その方と同じ」
「はっはっは。バレバレでやんの。まーしょうがないか。でもよぉ、ナイトメア。お前にとって
……え?
どうでしたか?
過去編はおそらく次で終わりです。
さて、感想をもらった方が感化されて似た様な作品を書いたらしく……
いやまぁ、それ自体はいいんですが中身が余りにも似すぎてるというか…私自身はいいんですが色々引っかかったりしないのか心配です。
アンケートを見る限り、皆さん神夏ギルが救われるのは見てみたいらしくて軽くホッとしてます(私みたいに絶望に叩き落される様をみたいとかいう変人がいなかった)
まあ救われない物語にしてもいいのですが後味悪すぎるので流石に救われるように物語は進めるつもりです(多分)
原作と同じところまでは…まあ頑張りましますがどうなるかはわかりませんね。そうそう、今回のアメミヤ・サキの天使、実は○○さんと同じですよ。アニメまで見てる方はわかるよね。
読んでくださりありがとうございます
サブタイトルあったほうがいい?
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あったほうがいい
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無くてもいい