デート・ア・ライブ 黄金の精霊   作:紀野感無

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54話 ルナ

「ええと、どこまで話したっけ。両親に家を追い出された後に私は手を出してはいけないものへ手を出し、挙句の果てに肉親、親友、何もかもを殺し尽くした、までだっけ?」

 

「多分そのあたりかな」

 

「ん。こんな悲劇が起こったと言うのに新聞記事には『ガス爆発による大事故』とだけ記されていた。多分、精霊のことを知ってる人間の隠蔽、なのだろうけど。

 

それからその場でうちしがれていた私は病院に搬送されてしばらく入院した後にお父さんの弟さんにの家庭に引き取られてね。それでも暫くはずっと引き篭もってた。

 

誰にも会いたくない。あったら殺してしまうかもしれない、ってね。

 

 

……士道は狂三に見せてもらったって言ってたけど、どこまで見たの?」

 

 

「見たところ、と言うと……純白の精霊と戦った後に狂三が来て、マイラ・カルロスって呼ばれてる人が来て……ってあたりかな」

 

「ああ、なるほど。そこまで見たの。

 

その後からとなると……叔父さん達がDEMに人質にされてたのもみてる?」

 

「ああ」

 

「そっか。じゃあ勿体ぶる必要はないかな。

私はそこでまた精霊の力を、王様の力を無作為に使って、辺り一帯をぐちゃぐちゃにしようとしたんだ。

 

マイラを何が何でも殺そうと、ね。

 

だけど殺せなくて。なんど手を伸ばそうとも届かなくて。

 

 

その後はがむしゃらに当たりを壊し尽くしたらしい。

らしいって言うのは、あの時はもう頭の中がぐしゃぐしゃで何覚えていなくてね。

狂三が止めてくれたらしく、結局マイラ達には逃げられた事。DEM社自体にはなんの損害にもなっていない事、純白の精霊は死にはしたけど力の源はどうなったかわからない事なんかを教えられた。

 

で、そこからは正直記憶があまりない。

 

叔父さん達に日本の学校に行くのを勧められて、全部がどうでも良くなってた私は、私を知っている全てから逃げたくてここに来た。そして今後は二度と精霊の力を使わないと、誓ったんだ」

 

「それは過去のことを思い出したくないから?」

 

「それもあるね。この力を使うたびに誰かを殺す。そんな事態にしたくなくて、と思って使わないと誓ったのも確か。

 

でもさ、一つ考えてよ。当時の私は厨二病だった。でも終わる頃には厨二病に冷めてた。冷めざるを得なかった。

なんせ私の振る舞いのせいで大惨事になったのだから。

 

んで、自分のことを振り返って至極冷静に色々と考えた瞬間、めっちゃ恥ずかしくなった。だから使いたくなかった」

 

「さっきまでの真面目な話はどこいった⁉︎確かに過去の言動を振り返ると恥ずかしくなるけど!」

 

「へぇ?てことは士道も経験あるんだ?」

「い、いや?そ、そんなことな、ないぞ?」

「瞬閃轟爆波、だっけ」

「なんで知ってんだ⁉︎」

「あとポエムとかギターをコイツとか言ってたっけ」

「だぁぁぁやめてぇぇぇ!」

 

と、琴里に教えられてた士道の黒歴史の一部をバラすとものの見事にその場に蹲った。おもしrゲフンゲフン。

 

「ま、当時の私もそんな感じだったんだ。それに加え、過去の私を捨てようと、性格も何もかもを偽って過ごしてた。名前と容姿だけは……唯一両親の形見とも言えるから偽れなかったけど。ほら、最初会った時と今の私、だいぶ性格違うでしょ?」

 

「え?あ、ああ。言われてみれば……」

 

「こっちにきた時の私は、過去を忘れたいがために私自身を偽ったんだ。精霊の力を使わないのは過去を思い出すからじゃない。トラウマが嫌だからじゃない。

ただ単に厨二病臭くなるのが恥ずかしすぎて嫌なだけだってね。両親のことも、マイラのことも、何もかもを忘れて、生きようと思ってた。精霊の力も、二度と使うまいと思っていた……はずなんだよね。ま、誰かさんに関わったおかげでガッツリ使ってる羽目になってるけどね」

 

「俺のせいか⁉︎」

 

「間違ってないよ?あの日に君に話しかけられた結果が今と言っても過言じゃない。あの日君に着いて行った結果十香と会って、精霊の力を使わざるを得なくて、あとはもう君と関わったせいで何度精霊と出会って鳶一折紙たちASTに命を狙われたか」

 

「いやいや待て待て!あの日外まで勝手に着いてきたのお前だろ⁉︎」

 

「そうなんだよね。あの日の私はどうかしてた。君なんて放っておけば良かったはずなのに何故かあの時は君に執着してた。これも精霊を引き寄せてしまう君の体質のせいだったりしてね」

 

「そんなまさか」

 

「私もそう思う。でもこの調子だと士道の周りに全精霊集まったりするんじゃない?」

 

「あり得そうだから困るな…いや困らないな。むしろ全部来るってなら大歓迎だ」

 

「それはまたなんで?」

 

「俺は精霊のみんなを救うと決めたからだ」

 

大真面目にそんなことを言うもんだから少し笑ってしまった。

 

「な、なんだよ。おかしい事言ったか?」

 

「いや、ごめんごめん。うん、頑張れ。応援してるよ」

 

「他人事みたいに言ってるけど神夏もその対象だぞ?」

 

「ついさっき聞いたよ。私は……まあ、うん。気長に待ってるさ」

 

「どうした?何か不安でもあるのか?」

 

「不安というか、君の中に私の精霊の力が宿ったとして君が王様みたいな振る舞いし出したら正直、気持ち悪いなって」

 

「ひでぇな⁉︎」

 

 

 

 

まあ実際のところ、そこまで時間は残されていないだろうけど。

 

今は言う必要は、ない。

 

 

 

 

「ま、これがイギリスにいた時から今に至るまでの私さ。他に何か聞きたい事はあるかい?」

 

「いや、大丈夫だ。聞かせてくれてありがとう。神夏」

 

そこでふと、ほんの気まぐれだけど士道に一つ、教えようと思い口を開く。

 

「……ルナ」

 

「え?」

 

「ほら、神夏だとなんか他人行儀みたいだから。もうここまできたし私のことも名前で呼んで。ギル呼びだと王様とごちゃごちゃになるだろうし男っぽいし。それに万が一表に出てるのが王様だったら士道の首チョンパされるし」

 

「た、たしかに……」

 

「だから、私のことはルナって呼んで。イギリスの友達や親戚からはそうやって呼ばれてたから。ルナは女の子ぽくて気に入ってるんだ」

 

「ああわかった。ル……ルナ」

 

「うわぉ、違和感しかない。一瞬寒気した気がする」

 

「ひどいな⁉︎」

 

「そりゃ今の今まで神夏って言われてたから。なんかゾワッとした」

 

自分から言っておいて酷いとは思うが本当に一瞬寒気がしたんだからしょうがない。

 

「ま、これからもそう呼んで。十香や四糸乃達にもそれは伝えるつもり。そうすれば嫌でもルナって呼ばれる事に慣れるだろうから。で、他に聞きたいことってある?」

 

「そうだな特には……あ、いや。一つある」

 

「何?」

 

「神夏、前に一度公園で大怪我負ってた時あっただろ?今までの神夏の強さを見てるととてもそんな大怪我しそうにないなって、ふと思って。あの時何があったんだ?」

 

「というと……ああ、十香とイチャコラして封印しようとしてた時か」

 

「言い方酷くないか⁉︎」

 

「私視点間違ってないし。んーあの時かぁ。ただ単に久しぶりに精霊の力を使うもんだからペース配分をミスして逃げる前に目の前で精霊化が解けたんだよね。それでそのままフルボッコ」

 

あの時はよく逃げれたと思うよ、うん、ほんとに。

 

「あのあと強引に力を使って、隠れて、やり過ごした。で、家に帰る気力もなくエリクサーなる回復薬を少し使って致命傷だけ回避。んで休んで霊力回復するのを待ってたところに君がきて治療をしてくれた。こんな所」

 

「もしかしてあの時俺が見つけなかったらやばかった?」

 

「やばかったね。ワンチャン白髪の鳶一折紙含んだASTの皆様方をコロってしちゃってたかもね」

 

私がサラッというもんだから士道は軽く青ざめていた。

まあ死にはしなかっただろうけどASTに見つかってどっちかが死ぬまで殺しあった可能性は高いね。

 

「おっと、もう6時なのか。思ったよりも話し込んだらしいね。んじゃ、この辺で私はお(いとま)するよ。また学校で会おう」

 

「おう。無理するなよ?」

 

「善処するよ。あ、2つ…いや3つ、かな。ラタトスクに…というよりは例の小さな赤い司令官と副官サマに伝言頼めるかい?」

 

「琴里に?」

 

「うん。『ルシフェルを攻略するというのならできるだけ早く。あいつは何をしでかすかわからない』『近いうちにイギリスに行きたいから手助けが欲しい』『私の体のことは私が一番よくわかってる。だから余計なことはするな』って伝えておいて」

 

「え?ちょっと待ってくれ。最後のって…」

 

「んじゃ、そゆことで。遅刻するんじゃないぞ。精霊の救世主サマ」

 

聞き返そうとしていた士道を無視し外に出る。

勘付かれるだろうが、その時はその時だ。

 

 

 

 

「……」

 

その時何かが頬を伝っていた事に神夏は気づかないフリをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近姿をあまり見せなかったザフキエルの分身体を見つけ、食事をしていたところ急にエレン達が現れて剣を向けられる。周りを確認すると20人はいるだろうか。

 

「これはこれは大勢な事で。悪いけどオモテナシの用意はしてないぜ?」

 

「構いません。アロガンの反転体。私達と共に来てもらいます」

 

「嫌だと言ったら?」

 

「無理矢理にでも。ですが素直に来るというのなら貴女にも五河士道達にも今は危害を加えないと約束しましょう」

 

「ふーん。ま、いいよ。面白くなりそうならなんでもいいや」

 

最近退屈だった私は敢えてこの誘いに乗る事にした。

利用できるものはなんでも利用しなきゃね。

 

 

 

 

 

 

連れてこられた先は高層ビルの一角。

そこにいたのはアイザック・ウェストコット。傍にはエレン・M・メイザースが控えておりさらに周りには数十人の機械に身を包んだ人間が。

 

「よく来てくれたね。大した歓迎はできないがゆっくりしてくれ」

 

「これだけ殺す気満々なくせしてなーにがゆっくりしてくれ、だ。何の用?」

 

相変わらずこのアイザック・ウェストコットという人間を前にすると少しばかりイライラする。こう、生理的に受け付けないと言えばいいのだろうか。

 

「もう本題に入ってしまうのかい?少しは世間話をしようかと考えていたんだが」

「勘違いするなよ。私がここまで素直に来たのは単にお前の考えてる事、やる事に興味があっただけだ。お前自身に対してはどうでも良い」

「全く、君もアロガンもせっかちというか。君の興味の範疇になかったらどうする気なんだい?」

「別に何も?私は普段通りに過ごすだけだ。お前達のやろうとしてることも好きにやれとしか思わない。それに、だ。お前達自身はどうでも良いって言ったろ」

「もし君をこの場で取り押さえる、と言ったら?」

「君とエレン以外のこの場全ての人間の心臓を抜き取って見せよう」

「そんなことが出来るのかい?」

 

と、疑われるので少しイラッとして堕天王(ルシフェル)の力を使う。

 

 

顕現()い、呪腕のハサン」

 

 

私が呟くと同時にウェストコットとメイザースを除く全てが臨戦体制に入る。

一斉に距離を取ってきたがその中の一番近かった人間の胸をハサンの右腕で撫でる。

 

「……」

「ほう。あの一瞬で」

 

「で、まだそんな戯言を言うのかい?」

 

右手でさっきの人間の心臓を掲げる。その人間は心臓を抜き取られた事に気づいた瞬間に倒れていた。

 

勿体無かったかな。どうせなら獣の権能を使う時に試せばよかったかもしれない。

 

「素晴らしい。君の力の片鱗を初めて目にしたよ。アロガンやプリンセスと同等、それ以上かもしれない。力を疑ったことを謝罪させてくれ」

 

「御託はいい。要件はなんだ」

 

力を霧散させて心臓をその辺に放り投げる。

そこまでして漸くこの男は話し始めた。

 

「じゃあ単刀直入に言わせてもらおう。私達と手を組まないか?」

 

「何の為に」

 

「無論、双方の目的の為さ」

 

「私と組んでお前達は私に何を差し出す?」

 

「私たちの出せるものの全てを以て君に協力をしよう。その代わり私達は君の協力を得たい」

 

「具体的に言えよ人間。次遠回しに言おうとしたらこのビルごと破壊するぞ」

 

「これは失礼した。そうだな、手始めに私たちの捕らえている精霊の力、というのはどうだろうか」

 

「……」

 

「君がここ数日間でナイトメアを殺し、霊力を吸収しているのは確認済みだ。だが最近はナイトメアの分身体がそもそも姿を現さなくなり霊力の吸収がうまくいっていないんじゃないのかい?」

 

「で?」

 

んなもん、見られてるのは百も承知だ。手を出してこなかったから見逃していたが。

 

「先ほど言った通り、私たちは精霊を捕らえている。それを殺さない範疇でなら好きにしてくれて構わない。まず私達から出せるものの一つはそれだ」

 

「……」

 

「更に、君の権能を試すための実験場も用意しよう」

 

「そんなもの要らん。実験ならどこでも出来る」

 

「では……そうだね。君の望むものを聞いてもいいかな?」

 

それくらいならまあ、良いだろうと思い口を開く。

 

「私が望むのは五河士道と神夏ギルのみ。他はどうでもいい。お前が暴虐公だとか他のマガイモノの力を手にしようが、それで何をしようが心底どうでもいい。本当ならこの場を今すぐグチャグチャにしてやってもいいんだぜ?」

 

「というと、ナイトメアを狩っているのはその神夏ギルに関係するのかな?」

 

「そうだよ。それに……あのマガイモノ達が一斉に反転したら、それはそれで物凄く楽しい事になりそうだからね。そのためには霊力がまだまだ足りない。なんせ、人類悪そのものを……いや、喋り過ぎたな」

 

「ふむ、精霊達を一斉に反転させるというのは実に興味深い。だから少し提案を変えようと思う。その目的の為に私たちの全てを以て協力する、というのはどうだい?利害は一致しているとは思うが」

 

「回りくどいって言ってるだろ?要件のみ言え」

 

「君は普段通りにしてくれていい。私達からも協力は要請しないし私とエレン以外の全てを好きに使ってくれて構わない。これでどうだろう?」

 

コイツとの協力体制など、個人的感情で嫌だったけど人間という素材を好きに使えるというのは少し魅力だった。

なんせ好きにアレを作れ、それを隠蔽することができるのだから。

 

「一つ答えろ」

 

「何だい?」

 

「お前達は人間のクローンは作れるか?」

 

「無論だ」

 

「OK。交渉成立だ」

 

「おや。もう少し条件をふっかけられると思っていたんだが」

 

「私が現状欲しいのは霊力の安定した供給先と素材となる人間だ。それに君の元にいればもう少し面白いものが見られそうだ。特にそこの人類最強のウィザードといるとね。それじゃ話は済んだし私は帰らせてもらう」

 

「君との連絡はどうすればいいのかな?」

 

「んなもん、勝手に連絡をしにくればいい。神夏ギルと違って私は霊力を隠していないからお前達ならすぐ見つけられるだろ?」

 

「なるほど。了解した。では互いに良い関係を築けることを願っているよ」

 

元よりコイツらに着く気でいたのと破格の条件を飲ませることには成功したから私としては万々歳だ。

 

 

 

マガイモノ達の心をへし折るには人間の素材はいくらあっても足りないのだから。

 

 

 

 

 

「人類悪……ビースト、か。うん、我が宿主の記憶は実に良い。思う存分利用させてもらうとしよう」




正直なところ、前書きor後書きに話を書くようにしたのは良いものの、それなら本文に全て乗っければ良いじゃねえかということからそのスタイルはやめることにしました。

結局普段の近況報告があればそれを書く程度にします。

とある人に前書き後書きに作者の事情を書かれると萎えるとか言われたから書かないようにしてましたがそもそもそれすら一読み手の感想でしかないよな、と思い直しました。

てことで普通にします。


最近"も"投稿遅く大変申し訳ないです。

ですが私の中では今書いているルシフェルと神夏ギルの物語を最終地点として描く予定にしていますのでもう少しだけ亀更新にお付き合いしていただければ幸いです。


それでは読んでくださりありがとうございました。
皆様の暇つぶしになれば幸いです。

感想、評価もしてもらえると嬉しいです(小声

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