デート・ア・ライブ 黄金の精霊   作:紀野感無

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「ルナ。一ついいかな」

「はいはい、どしたの士道」

「……絶対に、死なないでくれ」

あまりにも神妙な顔とクソ真面目な声でそう言うもんだから、思わず吹き出してしまった。

「な、なんだよ、変なこと言ったか?」

「ひひっ、ひー。めっちゃ面白い。あっはー、はー、しぬぅ…」

「どうか…したんですか?」
『なになにーどしたのさルナちゃーん
「シドーを馬鹿にするな神夏ギル!」
「あらあら…あのルナさんを爆笑させるなんて、さすがは士道さんですわね」
「驚嘆。これまで数多くの精霊を堕としてきた士道にとっては余裕のよっちゃんなのでしょう」
「……こんなちゃんと爆笑するのに、なんで普段の私の時だけ真顔になるのよこいつ」
「あーっ!みなさんお揃いですね!では遠慮なく…!」

と、騒ぎを聞きつけた精霊たちが大集合してくる(若干一名ほど、ダイブしてきたが)。
唯一、琴里だけは呆れた様子でチュッパチャップスを舐めていたが。

「い、いやぁ……、あんなクソ真面目に『死ぬなよ』って、死亡フラグ立ててくるもんだから……おかしくておかしくて……。あと『お前が言うか』案件すぎるのも……ぐふっ…」

士道を馬鹿にしてると思い込んだ十香に殴られました。
解せぬ。





「くく…神夏よ、随分と嬉しそうだったな?」
「え、そうですか?」
「うむ。ようやく貴様にも春がきた、と言うべきか」
「いや、王様。それは、それは無いです。ほんっとうに、それだけは無いです」
「さて、どうだかなぁ?……ああ、忘れておったわ。神夏よ。----------」準備はできた。だが後戻りはできない

「……はい、わかってます。それに、私が選んだ道ですから……。後悔は、しません」

「ならば良い。最期まで我へ忠義を捧げよ」

「御心のままに。我が王よ」


75話 不撓不屈

「みーんな!いっくよー!」

 

ジャックの掛け声でラフム達が一斉に鳴き声をあげる。不協和音にも等しい騒音に耳を塞いでしまう。

 

「っ……エゼキエル!パンテオン…」

 

このままだとマズイ。早く英雄の力を借りないと…。

 

「ギィ!」

「痛っ⁉︎」

 

その瞬間、私の右側を何かが通り過ぎた。同時に感じたのは激痛と生暖かい液体が脚にかかる感触。

 

原因は火を見るよりも明らかで、肩から先が無くなっていた。

 

振り向くと、そこでは人の腕を美味しそうに咀嚼しているラフムが。

どうやら十数年の付き合いだった右腕はいとも簡単に、霊装ごと喰い千切られたらしい。

 

「は、は……ふざけろ」

 

目で追えなかった。つまりは…精霊と同格以上の強さと見ていいかも。

 

「ぐっ…エゼキエル。【英雄達の譚歌(パンテオン・サーガ)】」

 

ならもっと格が上の、右腕の欠損如きでは何の弱体化にもならない英雄を。

 

 

()い。----」

 

 

こんな早く、奥の手を使う羽目になるとは思わなかった。

あの王様が認める数少ない英雄の1人。

 

「……すごい。こんな、風景なんだ」

 

私が顕現させ、身に宿したのは基礎的な能力値といくつか持っているスキル。

全体で見れば半分以下とはいえ、それでもその凄さはヒシヒシと感じる。

 

今までよりはっきりと眼前の景色を感じた取れ、ラフムどもは異変を感じたのか全ての個体がその場に留まり、躊躇いを見せていた。

 

----の持つ力、その象徴とも言える圧倒的な身体能力の半分程度を宿し、錫杖の形状を手槍の形へ変化させる。

 

だが、それでも代償はかなり大きかった。

 

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」

 

 

ああ痛い痛い痛い痛い!ああもう!死ぬ!

 

でも、そんなの気にして、られない。

 

激痛を伴いながら、地面に降り立ち、手槍を向ける。

 

 

ジャックも、叔父さんや叔母さんだったモノも、ラフムも、全てが私を見てくる。

 

 

ああ、十香。あの時の君は、こんな気持ちだったんだね。

 

あの時の私が赦される訳が無いのはわかってるけど、十香に心の底から謝りながら

 

 

()()()()()()()()()()()

 

 

 

「殺して(ころ)して(ころ)し尽くしてやる。死んで()んで()に尽くせ」

 

 

 


 

 

「ッ!ルナさんとの通信、復活しました!」

「他の子達もです!」

 

「状況の確認を。特にシンとルナ、四糸乃の状態を…」

 

突然、映像や霊力感知などができるようになった。不可解だったが、そんなことを気にしている暇はなく、全員が必死に安否の確認を行なっていた。

 

 

ビーッ!ビーッ!ビーッ!

 

 

突如鳴り響く警報に、全員が戦慄する。

 

「四糸乃ちゃん⁉︎四糸乃ちゃん返事して!」

 

「……まさか」

 

「四糸乃ちゃんの霊力パターンがマイナスに振り切れています!これは…」

 

嘗て十香やルナが見せた霊力の反転。それと同じ現象が四糸乃から観測される。

 

「な…これ、は……。ルナさん、非常に不安定です!まるで…」

「十香ちゃんはおそらく無事です!ですが…」

「狂三さん、オルトリンデさんは無事だそうです!」

「琴里司令、ホームズさんもです!」

「耶倶矢さん、夕弦さん、牛若丸さんは…えっ?なんで…」

「美九さん、モーツァルトさんは…」

 

他にも急を要するのはルナと十香だろうか。大方予想通りと言えば聞こえはいいけれど…

 

「落ち着いて。十香の時と同様、シンの力なら四糸乃を反転から救い出すこともできる可能性が高い。それよりも、これ以上反転する子が増えないよう最大限の警戒を……」

 

ズドォォォン!

 

次々とモニターが映し出されていく中、ルナの画面が映ったと同時に激しい爆発音が鳴り響く。

 

 

『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!』

 

 

司令室全体が震えているのではと勘違いしてしまうほどの、ルナの咆哮。

その声はまるで怒りや憎悪というよりは、痛みを我慢する時の叫びのような……。

 

手槍を歴戦の戦士かのように扱いながら、時には肉体のみで殴る蹴るなど、ギルガメッシュ王を宿していた時とは真逆の戦法でラフムの大群を蹴散らしていた。

 

だが、あれほどの力。どのような代償を支払ったのか…。

 

「すご……」

「あのラフムの群れを…」

「あの白い子供。あれがジャック・ザ・リッパー?」

 

「…………。中津川君。これをどう見る?」

 

餅は餅屋に。私が考えても埒が開かない。

 

私の問いかけを理解したのか、それとも既に予想していたのかすぐに答えを出してくれる。

 

「ハッキリ言いますと、()()()()()()()

「「「「「えっ⁉︎」」」」」

「やはりか…」

 

当たってほしく無い予想は的中しているようで、中津川はモニターに様々なデータを出しながら説明を始めた。

 

「まず、ラフムの大群を圧勝という言葉すら生ぬるいと感じるほどに蹂躙しています。そのレベルの英雄となるとかなり格の高い英雄だと考えられます」

 

「ふむ…。ルナの言っていた『どんな願いでも叶える願望器』を使って宿したのだろう」

「あっ……」

 

ルナの精霊の力、その能力を他のクルーも思い出したのか、血の気が引いていた。

 

「ルナさんは分かりやすく『霊力が無尽蔵になる』とだけ説明されていましたが、私はそうは思いません。何より、代償が伴う精霊の力。あのような規格外の能力を顕現させて何も代償が無い訳がありません」

 

「ルナの状況から、どのような英雄を喚び出したのか分かるかい?」

 

「申し訳ありません。そこまでは…。ただ、紅い紋様が身体に現れていることから、かなり格式の高い、半神や神代クラスの英雄だとは思うのですが……」

 

 

ガコン!

 

突如、何かが起動する音が鳴り響いた。

 

 

「……?ルナさんのカメラが突然暗く…」

「暗転したってわけでは……どちらかと言うと『夜』になったような…」

「霧のようなものまで出てきました!」

 

「マズい!あれは…!」

「あの白い子供が観測機から消えた。神無月君、すぐに探知を…」

 

『も…う、遅、い、です。そ、れより、ほか、みて、あげて』

 

「ルナ、生命力が著しく落ちている。それ以上力を使わない方が良い。そこならすぐに回収ができる」

 

『だ、から、も、おそ、い。わた、いいから、ほか、ひと、よしの、とお、かを、うぐっ……ア゛ア゛ア゛ア゛!』

 

通信に応じてくれたと思うと、今にも死にそうな声で、まるで痛みを紛らわすかのように、ただ叫んでいた。

みんなが思わず心配な声をかけるも、本人は笑いながら立ち上がった。

 

『だい、じょ、だ、から。わた、を、し、じて』

 

ルナはラフムの死体で出来た絨毯を、腕を振った勢いだけで吹き飛ばす。そのまま霧の中で仁王立ちをした。

 

 

『それじゃあ、解体するよ」

 

 

続けて、霧の中から先ほどの白い髪の子供、ジャック・ザ・リッパーの声が響く。

音の発生源から捕捉しようにも、無駄に終わってしまう。

 

「中津川君、ジャック・ザ・リッパーは何をしようとしているんだ?」

 

「おそらくは、彼女の逸話に由来する必殺の一撃です。女性であるルナさんが受ければ、即死は免れないかと」

 

「……そう、か。ここから何かできることは?」

 

「神無月さんでも捕捉できないとなれば、私達に出来ることは無いと思われます。ルナさんを信じる以外は」

 

管制室全てが動揺に包まれる。

他の子達を見ているクルーは、常に情報を更新し続けてもらい、一番大きなモニターへ表示してもらう。

 

「みんな、ここは中津川君の言う通り、ルナを信用しよう。他の子の状況を見て援護が必要かどうかなど判断を下し、各自動いてくれ。特に反転してしまった四糸乃を重点的に。こちらから常に声をかけてあげて」

 

「「「「「「ハッ!」」」」」」

 

 

お願いだ、ルナ。

 

シンを、裏切らないでやってくれ。

君のいない日常なんて、嘘だろう?

 

 

 

 


 

 

 

「ハアッ、ハアッ」

 

ルナによる猛攻によりラフムがほとんど死ぬと同時、ルナの叔父さんと叔母さんをつかったラフムとジャックが霧の中へ消える。

それを見たルナは、辺りを見渡すが無駄な努力になると考え、その場に立ち尽くす。

 

「(……固有結界に引き摺り込まれてないだけマシ、か。この『夜』も『霧』も偽物だろうけど……それでどこまでジャックの本領が発揮されるのか)」

 

ジャックの持つ必殺の一撃は、夜かつ霧の出ている時、更に相手が女性であるならば文字通り必ず殺せるほどまで強化される。

 

それを知っていたルナは、全神経を集中させる。

 

()よりは地獄』

 

必殺の一撃を撃たんと、詠唱を始めたジャックの声が、響き渡る。

 

「(キタ…。悟られるな。痛みなんか忘れろ。全神経を研ぎ澄ませ…)」

 

ルナはより神経を研ぎ澄ませる。

 

 

『わたしたちは炎、雨、力』

 

「エゼキエル、----」

 

わずか数秒が、まるで永遠に感じられそうなほどな、静寂に包まれる。

 

 

殺戮(さつりく)を此処に!」

 

ルナの背後、ゼロ距離にジャックが姿を現す。

 

 

「【解体聖母(マリア・ザ・リッパー)】!!」

 

 

ルナがそれに気づいて振り向こうとするが、時すでに遅く、ジャックの両手に持たれた逆さナイフがルナの体を切り裂く。

 

子宮(はら)を背後から深く一刺、そのまま横に切り裂き一度バックステップ。ルナが振り返えると同時に走り出し、今度は前から子宮(はら)目掛けて突き刺した。

 

ルナは痛みのあまり暴れるが、ジャックは終始冷静にルナの身体を--まるで子宮(ソコ)に恨みがあるかのように執拗に--切り裂き続けた

 

「くっ…そ」

 

ルナは踏ん張ろうとするも叶わず、ドバドバと血を溢れ出し、その場に倒れ込んだ。

 

 

 

 

「うんっ!おわりー!お母さん、おじさん、終わったよ!」

 

『へぇ……我が宿主を』

『おお!流石は切り裂きジャックだネ。タイミングはどうだったカナ?』

 

「うん、ぴったりだったよ。すごく解体しやすかった!」

 

『てか殺すなって私言ったよね?』

 

「でも、解体しなかったら私が解体されちゃってた。ごめんなさい」

 

『はーーー。ま、やっちゃったもんは仕方ないか』

『ふむふむ!ではその調子で次の精霊の元へ向かってくれるかい?』

『そこからならイフリートが一番近い。コイツの言う通りに動いてくれ。あとは好きに動きな』

 

「はーい!」

 

笑顔を見せながら、元気にその場で手を振る。その様子はさながら、本当の10歳児だった。だがその横に立つのはラフムだったが。

 

「つぎ、どこいく?」

「イフリートって人のところだって。えーとね……」

 

 

 

だがルシフェルも、ジャックも、ラフムも知らない。

 

神夏ギルが死んでしまったと思っているラタトスクのクルーたちも知らない。

 

 

……

 

 

英雄の力を。

 

 

その象徴たる力を。

 

 

執念を。

 

 

 

 

 

何も知らない。

 

 

 

 

 

「……?ギッ⁉︎」

 

ラフム最後の生き残りが、神夏ギルの叔母を素材に作られた生物がジャックの横から消える。

 

「え?どうし…きゃっ⁉︎」

 

ジャックは、ラフムがどこに行ったのかを見つける前に、ナニカに顔面を掴まれる。

 

「なっ、なんで⁉︎なんで⁉︎」

 

 

ソレは、ジャックのこめかみに--喰われたはずの右腕を伸ばし--指を食い込ませながら、嗤う。

 

 

 

「は、は…!英雄を、舐めすぎだクソガキ。もう容赦しないから、せいぜい足掻きな」

 

 

 

神夏ギルは確実に息の根が止まったと、誰もが思っていた。

ジャックも、ちゃんと命の灯火が消えたのを、その手で感じていた。

ラフムも、獣の如き直感から死んだことを疑っていなかった。

 

ラタトスクすら、生体反応が消えたことから死んだことを疑わなかった。

 

 

だが、神夏ギル(ソレ)は起き上がった。

 

ジャックが必死に逃れようと腕にナイフを何度も何度も突き刺すが、涼しい顔をしながら、慈愛に満ちた笑顔を向ける。

 

 

「ジャック・ザ・リッパー。娼婦連続殺人鬼の怨霊。本当に、本当に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

メキョッと、ジャックの頭から鳴る。神夏ギルはジャックの顔面を掴んだまま勢いよく壁へ叩きつけた。

 

「ッ〜〜……!」

 

「即死した方が、良かったかもよ?」

 

続けて、空いている手で何度も殴りつける。

 

「ゲホッ…ガホッ…」

 

「フンッ!」

 

虫の息のジャックを今度は地面へ叩きつけ、手槍に変化させていた錫杖を子宮(ハラ)に深々と突き刺し、地面へ固定する。

 

 

「この技は慈悲だよ。()()()()()()()()()、君へのね」

 

そう言って、等身大の金色の戦斧を顕現させる。

 

 

「ばいばい、ジャック・ザ・リッパー。あの世でルシフェルを恨むんだね。

射殺す百頭(ナインライブス)】!」

 

それは主神ゼウスと人間の間に生まれた半神。ギリシャ神話の大英雄【ヘラクレス】の持つ規格外の技量を宝具--英雄の逸話に基づいた必殺の一撃--へ昇華させたもの。

 

血反吐を吐いているジャックを、手に持つ戦斧で1回、2回…と、合計9回、神夏ギルはその身に宿したヘラクレスの筋力と技量でもって、一瞬で叩き込んだ。

 

「や…だ、やだぁ!」

「終わりだ」

 

最後は高々に掲げた戦斧を、ジャックの--見た目相応の幼い子供のように泣き叫んでいたが躊躇なく--頭目掛けて振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

「か、み、やぁ……ご、めね……ごめ、んね……」

 

遙か上空から見ていたのは、ルシフェル達の制御に自らの意思で逆らった歪なラフム。

異端すぎるがあまり、同族のラフムすら気持ち悪がり関わりを持とうとしていなかった存在。

 

ルシフェルのことをお母さんと呼ぶこともせず、他の自我を得ているラフムと喧嘩をすることもなく、ただひっそりと隠れていた。

 

だが神夏ギルを見た瞬間、ずっとずっと謝り続け、張り付いていた人間の顔からは涙が延々と流れていた。

 

 

「いか…なきゃ……こん、ど、こそ、たす、け……」

 

 

ソレは何かを決心し、誰にも見つからなかった隠れ家を放棄し地上へ降り立った。





*読まなくてもいい解説
神夏ギルは確かに一度死んでます ですがfate世界におけるヘラクレスは【戦闘続行】というスキルがあります
簡単に言うと (死んでも)もう一回遊べるドン みたいなものとお考えくださいませ
……ま、みんな知ってるか(

次回 神夏ギル ○ルート

実は大雑把には出来上がっているので案外早く投稿できるかも?
気長にお待ちくださいね(汗


読んでくださりありがとうございました
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